『名前、呼んでほしい』遠藤雄弥が語る、外山監督との出会い、田中麗奈との共演

『名前、呼んでほしい』遠藤雄弥が語る、外山監督との出会い、田中麗奈との共演

外山文治監督がメガホンを取り、田中麗奈さんと遠藤雄弥さんが主演を務める映画『名前、呼んでほしい』。本インタビューでは、遠藤雄弥さんと外山文治監督にお時間をいただき、お二人の出会いから、田中麗奈さんとの共演に関するお話をたっぷりとうかがいました。

■ 映画『名前、呼んでほしい』遠藤雄弥、外山文治監督インタビュー

▼1.遠藤雄弥:名前の由来

ー: 雄弥さんの「弥」の字が珍しいと思ったのですが、何か由来があるのでしょうか?また、お誕生日が3月ということもあり、何か関係があるのでしょうか?

遠藤雄弥: おっしゃる通りで、3月の弥生から来ている「弥」の字なんです。

ー: では、「雄」という字には何か由来があるのでしょうか?

遠藤雄弥: 「雄」という字は、祖父の名前が久佐雄(ひさお)というのですが、その久雄の「雄」の字から取ったんです。雄大の「雄」ですね。

ー: お祖父様のお名前から一字取られたのですね。とても素敵な名前ですね。

▼2.遠藤雄弥と外山文治監督:初対面の印象と出会い

ー: お二人が初めてお会いした時のことについて伺いたいと思います。2023年の東京国際映画祭で初めてお会いしたとのことですが、その時の第一印象はいかがでしたか?また、どちらから声をかけられたのでしょうか?

遠藤雄弥: はい。初めてお会いしたのが東京国際映画祭でした。お互いに作品を通して知ってはいたんです。

外山文治監督: しっかりとした面識があったわけではないのですが、お互いの存在は知っていて、ニアミスのような形が多かったんです。東京国際映画祭の時に、映画『辰巳』の小路紘史監督のご紹介でご挨拶させていただく機会があり、そこで遠藤さんとご挨拶させていただきました。

遠藤雄弥: そうでしたね。

外山文治監督: 遠藤さんのことは映画『辰巳』を拝見して強烈な印象を受けていました。それと、遠藤さんが私の監督作品である『茶飲友達』をご覧になった感想をツイートしてくださっていたんですよね。それを出演者の一人である鈴木武くんが反応しているやり取りを偶然SNSで見かけました。そういった経緯もあって、映画祭でご挨拶させてもらいまいた。

遠藤雄弥: 僕ももちろん外山さんの作品は『ソワレ』の頃から拝見していましたし、存じ上げていました。最初は、勝手なイメージで、もっと怖い方なのかなと思っていたんですよ。

外山文治監督: よく言われます(笑)。

遠藤雄弥: はい(笑)。『ソワレ』もそうですし、『茶飲友達』も拝見して、もっとこう、なんていうのかな、硬い方なのかなっていうイメージがあったんです。でも実際お会いしてみたら、すごく柔和で、柔らかくて、優しいし、とても話しやすい方でした。有楽町の劇場でご挨拶させていただいた時、「なんて素敵な方なんだ」と思ったのを覚えています。

外山文治監督: そう言っていただけると嬉しいです。私からすると、小路監督の方が『辰巳』のイメージそのままの屈強なヤクザかと思っていましたけど(笑)

遠藤雄弥: 小路さんは作風とご本人の印象が全然違いますよね。本当に、皆さん面白いですよね、ギャップがあって。

ー: では、お二人が直接お会いしたのは、その時が初めてだったんですね?

遠藤雄弥: そうです、初めてでした。なんか意外な感じもしました。もっとどこかの現場で、すでにお会いしているような気がしていたんです。もちろん、外山さんの作品は以前からすごく感銘を受けています

ー: そこから、雑誌の取材でお写真を撮るという流れになったんですね?

外山文治監督: そうですね。当時やっていたDOKUSOマガジンという企画で、「これからの映画界を支える俳優」として、年齢に関わらず、私が声をかけたいと思っていた方にオファーをしていたんです。遠藤さんは間違いなくその一人でした。それで、お声がけをさせていただいたんです。私自身、趣味で写真を撮っているので、「被写体になっていただけませんか?」というお願いもしました。そうしたら、とてもいい写真が撮れて。

遠藤雄弥: ありがとうございます!

外山文治監督: その後、遠藤さんの出演された作品を改めて拝見して、ますます興味を惹かれました。日本のトニー・レオンだと思ったんですよ。それで、いつかご一緒したいなと思ったんです。「いつか仕事が出来れば…」と先延ばしにするのはもったいないと思い、この企画で遠藤さんにお声がけしたという流れです。本作は最初に「遠藤さんを撮りたい」という思いがあったんです。

遠藤雄弥: そうだったんですね。ありがとうございます。その時はまだ、僕は全然カメラにハマっておらず、カメラにハマったのは去年末からになります。もっと早く始めていれば、僕も外山さんを撮りたかったと思っています。

▼3.共演:遠藤雄弥と田中麗奈の心の通い合い

ー: 今回、『名前、呼んでほしい』で田中麗奈さんと共演されて、田中さんが「繊細な心の通い合いが出来たような気がして」とコメントされていました。まずは共演が決まった時の印象からきかせていただけますか?

遠藤雄弥: 田中麗奈さんは、僕にとって世代的な憧れの存在なんです。共演が決まった時は、本当にガッツポーズが出たのと同時に、緊張もすごくありました。まさかご一緒できるなんて、夢にも思っていませんでした。

ー: そうだったんですね。実際に共演されて、特に「心の通い合い」を感じたのはどのような瞬間でしたか?

遠藤雄弥: そうですね、やはりホテルの一室での会話のシーンです。あのシーンは、台本通りに進む部分もあったんですが、即興的な要素も結構あったんです。田中さんとお互いを信頼していないと、なかなか成立しない難しい場面だったと思います。

ー: どのような点が難しかったのでしょうか?

遠藤雄弥: 台本では決まっているセリフはあるのですが、その時の感情の流れや、お互いの表情を見て、自然に出てくる言葉や動きも大切にしました。お芝居のベースはありつつも、その場の空気感で生まれるものを捉えていくような、そんな感覚でした。あの状況下で、お互いの気持ちが通じ合ったからこそ、あのシーンが出来上がったんだと感じていますし、出来上がりもすごく素敵だったので、本当に心の通い合いがあったんだなと思いました。

ー: 田中麗奈さんの現場での様子はいかがでしたか?

遠藤雄弥: 田中さんは、現場の空気をすごく和ませてくれるんです。僕が少し緊張していた部分もあったんですが、田中さんが逆にリラックスさせてくれて、「大丈夫だよ」という雰囲気を作ってくださったので、すごく助けられました。

ー: 具体的に、何か印象に残っているエピソードはありますか?

遠藤雄弥: 脚本のト書きには書かれていないような、役の二人の日常的な所作みたいなものを、田中さんが積極的に振ってきてくださったんです。例えば、手の握り方一つにしても、自然な形を二人で探りながら作っていくような、そんなやり取りがありました。本当に胸を借りるような気持ちで、ご一緒させていただきました。

ー: 田中さんのそういった姿勢が、「心の通い合い」に繋がったのですね。

遠藤雄弥: まさにそうだと思います。田中さんの俳優としての経験やキャリアに触れることで、僕も安心して役に入り込むことができました。世代的な憧れの存在である田中さんと、ああいった形で一緒に豊かな時間を過ごせたことは、本当に光栄でした。

ー: 遠藤さんから見て、田中麗奈さんの演技はいかがでしたか?

遠藤雄弥: 言葉にできないほど素晴らしかったです。共演させていただきながら、客観的に見ても、今まで見たことのないような田中麗奈さんのポテンシャルを感じました。今回の『名前、呼んでほしい』での田中さんの演技は、ベストアクトと言っても過言ではないと僕は思っています。

ー: お互いをリスペクトし合いながら、素晴らしい作品を作り上げられたのですね。

遠藤雄弥: 田中さんとご一緒できたこと、そして外山監督をはじめとする素晴らしいスタッフの皆さんと作品を作れたことは、僕にとって本当に大きな財産になりました。

▼4.遠藤雄弥: 役作りと演技の余白

遠藤雄弥さんが語る「名前、呼んでほしい」での役作り・演技

ー:さて、今回の短編集のコンセプト「かたすみのひかり」や、短編映画「名前、呼んでほしい」におけるコンセプト、そして特に演技で意識したことについてお伺いできればと思います。ご自身の中で、この作品で一本筋を通して考えて演じたことはありますか?

遠藤雄弥:脚本を読んだ時に、最終的なふたりの関係は分かっていましたから、それをどう捉えて演じるかを考えました。まず最初に悩んだのは、「観客に彼の行動を客観的に見せるべきか」、それとも「彼の行動にしっかり寄り添って演じるべきか」という二つの方向性でした。


その時、私は「彼の行動にしっかり寄り添って演じるべきだ」と判断しました。これはある種の覚悟も必要だと思ったんです。なぜなら、彼(涼太)は最低なことをしているという角度で、観客に見られる可能性もあるからです。

ー:不倫という関係性の部分ですね。

遠藤雄弥:はい。ただ、個人的には、寄り添って演じる方が作品としては面白くなると考えました。また、田中さんが演じる沙穂とのコントラストもより際立つと思ったんです。そういった理由で、今回は涼太を演じようと思いました。

ー:実際に作品を観た方からは、どのような感想がありましたか?

遠藤雄弥:皆さんの感想を聞いてハッとさせられたのは、「憎めないね」というお声を多くいただいたことです。これは、私が意図してそういうつもりで演じていたわけではないので、すごく面白いなと思いました。

ー:意図せずとも、観客にそう感じさせる何かがあったのですね。

遠藤雄弥:はい。そこで意識したのが、「余白」を持たせた演技です。彼の私生活や家族との関係、沙穂との関係期間など、涼太の生い立ちや背景については、外山監督からキャラクターシートをいただきました。それを熟読しました。

ー:キャラクターシートがあったのですね。

遠藤雄弥:はい。例えば、「池袋の大手パチンコ店の店長をやっていて、そこから今は大元の会社、本社に行った」といった背景は覚えています。ただ、その生活感みたいなものはあえて蓋をするというか、全てを説明しきらないようにしました。観ている方々が、ご自身の感性で「こうなのかもしれない」「いやこうだろう」と思っていただける方が面白いと思ったんです。その余白を観客の皆さんに委ねるような方向性の演じ方を意識しました。

外山文治監督:その「憎めない」というのは興味深いですね。やはり不倫関係ですから、遠藤さんの中で、どこか「ああ、こういう結末になるよね」という納得感を感じていたのだと思います。その納得感をきちんと受け入れているあたりが大人だと感じました。別れを切り出されても訳を聞いたり、すがったりせず、あの表情、そして手をポンと置く仕草でそれを示唆するという演技は素晴らしかったですね。

ー:あのシーンはとても印象に残っています。

遠藤雄弥:ありがとうございます。あのホテルの一室での会話シーンは、台本通りに進みつつも、ある種の即興性もあって、先ほどもお話ししましたが、相手(田中麗奈さん)を信頼していないと成立しない難しい場面でした。田中さんとのお芝居で、本当に心の通い合いを感じました。しかも、出来上がりもすごく素敵でした。

ー:なるほど、共演者との信頼関係が、あのシーンの演技に大きく影響したのですね。

遠藤雄弥:はい。外山監督があえてああいう撮り方をしてくださったというのもあると思いますが、役者としての「通い合い」があったと感じています。田中さんのコメントで「繊細な心の通い合いができた」と書いてくださっていて、個人的にすごく嬉しかったです。とても大切なシーンだったので、特に印象に残っています。また、田中さんは現場の空気を和ませてくださったので、私自身も助けられました。

ー:監督から見て、遠藤さんの俳優としての魅力はいかがですか?

外山文治監督:遠藤さんの魅力の一つは、映画『辰巳』のような「男の血を感じる」役柄ですが、もう一つの軸として、この恋愛映画のように女性が惹かれてしまう役柄があると思います。しかも記号的なプレイボーイ像ではなく、その人の人間味に惹かれるという。今後、こういう恋愛映画での出演も増えるのではないかと思っています。遠藤さんには、その交わらないはずの二つの軸がバランスよく備わっているところがすごいですよね。

遠藤雄弥:嬉しいですね。確かに、自分自身、恋愛映画や恋愛要素の強い作品はあまり経験がなかったので新鮮でした。外山さんにそう見ていただけて、ありがたいです。これまでの「男祭り」のような役柄とは違う一面を見せられたかもしれません。今後は、外山さんがおっしゃるような、ナチュラルに人を魅了するような役柄にも挑戦したいと感じています。

▼5.映画制作の温かい現場

遠藤雄弥さん・外山文治監督が語る「名前、呼んでほしい」の現場

ー:さて、今回の短編映画「名前、呼んでほしい」の現場の雰囲気や、外山監督の現場作りについてお伺いできますでしょうか?共演された田中麗奈さんもコメントで、監督が刺激を与え、スタッフの皆さんが心から作品作りを楽しんでいる温度感があったとおっしゃっていましたね。

遠藤雄弥:そうですね、まさに田中さんがおっしゃっていた通りで、監督の外山さんご自身が楽しんで、ワクワクしながら俳優のお芝居や映画作りに取り組まれている空気感がありました。その雰囲気のおかげで、俳優としては非常に溶け込みやすかったです。お芝居のしやすい土俵を作ってくださっていたので、とてもリラックスして演じさせていただきました。本当に、短編なのがもったいないと感じるくらい、またご一緒したいと思える現場でした。

ー:監督ご自身が楽しまれている雰囲気が、俳優さんにとって非常に重要だったのですね。

遠藤雄弥:そうなんですよ、外山監督は怒るのかなって思ってましたが、怒らないんですよね。

外山文治監督:怒らないですね。個人的な話になりますが、私は20代前半の頃に「助監督」として現場に「居場所がない」と感じた経験が沢山あるんです。その経験から、「こんな私の作品のために、皆が現場に集まって一緒に作ってくれている」という考え方になったんですね。だから、スタッフやキャストの皆さんには感謝しかないんです。

ー:監督ご自身の経験が、現在の現場作りのスタンスに繋がっているのですね。

外山文治監督:もちろん監督ですから、映像に対する確固たるビジョンはあるのですが、俳優やスタッフは、それを形にするための「駒」ではないんです。そうではなく、「彼ら、彼女たちとしか作れないこと」を一緒にやっているという感覚です。スタッフの方々に対しても、その人の良さを引き出したいという思いがあります。だから、私の現場はみんな上手くて、そして自由ですよ(笑)。そういう目線でやっています。

遠藤雄弥:まさにその通りで、監督のその雰囲気が現場にそのまま出ていましたね。

ー:素晴らしい関係性ですね。遠藤さんもおっしゃっていましたが、ぜひ長編でまたご一緒していただきたいです。

▼6.映画を観る方々へのメッセージ

外山文治監督と遠藤雄弥さんが語る、映画「名前、呼んでほしい」に込めた想い

ー:さて、この作品をこれから劇場でご覧になる方々へ、メッセージをいただけますでしょうか。まずは外山監督からお願いします。

外山文治監督:はい。とても大人の映画が出来上がったと思っています。不倫というイメージにだけ囚われず、大人の恋や、誰かに惹かれる気持ちというものを見ていただきたいです。特に、若い頃とは違う、立場や環境がある中で、登場人物たちがその関係にどう向き合い、どう答えを出していくのか。そこに注目していただきたいです。

また、私たちは「ユウスケくんのパパ」とか「ヒナタちゃんのママ」というように、それぞれの役割の中で生きて、自分の名前を喪失している人もたくさんいると思うんです。そういう人たちが、ふとした時に自分自身の本当の心に触れてくれる相手を見つける、という色気のある映画だと感じています。短編作品集「東京予報」には色んな世代の物語がありますが、大人のふたりが締めくくります。ぜひ劇場で楽しんでいただけたら嬉しいです。

ー:ありがとうございます。遠藤さんからもメッセージをお願いします。

遠藤雄弥:はい。まさに今、外山監督がおっしゃったような、社会的な枠組みの中で生きる自分と、人として持つピュアな部分との間の乖離や葛藤…。この天秤が、脚本にも、そして田中麗奈さんの表情にも、非常にグッとくる形で描かれていると思います。ぜひそこに注目していただきたいです。

そして何より、田中麗奈さんの本当にグッとくる表情!これは、これまで見たことのないようなものだと、僕自身も完成した作品を見て強く感じたんです。ぜひ劇場で感じていただきたいです。
外山さんはじめスタッフの皆さん、そして田中さんと僕という共演者の皆さんでしか作れなかった「名前、呼んでほしい」になったと、心から思っています。

私自身も、この作品は現時点での自分にとって一番だと言えるくらい、やりきったという気持ちがあります。役者としても、この作品を通してまた一つ更新されたと感じています。ぜひ劇場に足を運んで、アンテナをビンビンに張って(笑)何か一つでも感じ取っていただけたら非常に嬉しいです。

外山文治監督:そういえば、別の取材で田中さんも遠藤さんのことを「本作の見どころは遠藤さんだ」とおっしゃっていました。お互いが見どころだって言い合える、そんな良い作品になったんだなと思いました。


▼上映情報(アフタートーク、来場者プレゼント)

シモキタ K2では、先着80名様への来場者プレゼントや、アフタートークを連日開催

詳細は、劇場「シモキタ K2」のホームページ、および、映画公式SNSアカウントをご確認ください。

https://k2-cinema.com/event/title/537


「東京予報―映画監督外⼭⽂治短編作品集―」

『名前、呼んでほしい』『はるうらら』『forget-me-not』収録


公式 HP: https://tokyo-forecast.studio.site/
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2025 年 5 ⽉ 16 ⽇(⾦)
シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』を⽪切りに全国順次公開予定

東京予報

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