2025年7月期の日本テレビ系連続ドラマ『ちはやふる-めぐり-』では、シリーズ累計発行部数2900万部を超える大ヒット漫画『ちはやふる』の映画から10年後の世界が描かれ、を経て選ばれた次世代を担う15名の注目若手俳優が競演する。そのひとりを演じるのが、名優・市川雷蔵にあやかって名付けられた石川雷蔵さん。「見た目に似合わず中身は乙女」というユニークな役柄に挑む石川さんにお時間をいただき、彼自身の俳優としての探求心や将来の目標について、深くお話を伺いました。

1. 「雷蔵」という名前の重み:名優・市川雷蔵を背負って
一: 石川さんは「雷蔵」というお名前ですが、幼い頃にご自身の名前の由来となった名優・市川雷蔵さんについて調べたり、それについて何か感じたことはありましたか?
石川雷蔵: 元々、名前の由来は知っていたのですが、正直、この業界に入るまでドラマなどにあまり興味がありませんでした。ずっと外で遊んでいるような子どもだったので、なかなかそのすごさは分からず。親から「これが市川雷蔵だよ」と見せてくれたこともありましたが、当時は「ふーん」という感じでした。
この業界に入ってから「これはやばいぞ」と思いましたね。同じ名前の大俳優がいると知り、そこから改めて作品を見たり調べたりしました。時代や活動場所は違いますが、やはりお芝居という点で「僕の名前の由来になった俳優さんなんだ」と思った時に、知名度はもちろんのこと、「この名前でやっていくなら生半可なことはできないな」と感じました。

2. 『ちはやふる-めぐり-』オーディション秘話
一: 今回の作品は、2000人を超える大規模なオーディションを経て選ばれたとのことですが、どのようなオーディションだったのでしょうか?
石川雷蔵: オーディションはグループ形式で、台本も2、3パターンあったのですが、コメディ調の台本でした。とにかくコメディっぽいから「全力で笑わせたら勝ちかな」と思って臨みました。
一: そのオーディションの結果、出演が決まった時の気持ちはいかがでしたか?
石川雷蔵: 最初はかるた部ではない役で決まったと聞いて、「かるた部じゃないのか、うわ、悔しいな」と思ったのが一番最初の報告での気持ちでした。そこから「かるた部になりました」という報告が来て、嬉しさもありましたが、正直実感がなかったですね。
10年前の作品に自分がいるということが全く想像できませんでした。受かって、役柄が違って悔しく、またかるた部になって嬉しく、ただプレッシャーも半端ない、という流れでしたね。心配の方が大きかったかもしれません。
3. 篠原陽介役との向き合い方:乙女な内面を表現
一: ご自身が演じる篠原陽介は「見た目に似合わず中身は乙女」というキャラクター設定とのことですが、このユニークな役柄を演じるにあたって、やりがいや難しさはどのように感じましたか?
石川雷蔵: 「乙女」という部分ですが、いわゆる「キャピキャピ」した感じではなく、かるたを取る時の手先の器用さや、読んでいる時の姿勢の丁寧さで表現しています。札を渡す時も、普通は片手で渡すところを、篠原は両手で丁寧に渡したりします。特技の面でも「乙女」な部分が出ているので、普段の話し方と、かるたをやる時のギャップを演じるのが難しさであり、やりがいでもありました。見た目と中身のギャップが、僕がこの役に選ばれた理由の一つかもしれません。
一: オーディションや本番の演技において、「台本の文字に縛られず、周囲と差別化できる自分自身の演技を見せること」を心がけていると以前お話しされていましたが、今回も自分ならではの「違い」を出してみた部分はありますか?
石川雷蔵: オーディションは得意ではないので、「どうすれば記憶に残るか」を考えます。グループでやる場合、他の人と絶対に被らないプランを持っていくこと、そして「大きくやれば小さくすることは簡単なので、絶対に小さくならないように大げさと言われてもいいから、台本の役をデフォルメしてやる」ということを毎回心がけています。

4. 撮影現場は「学校の休み時間」:若き才能との切磋琢磨
一: 撮影現場は「学校の休み時間のような」とても楽しく、和気あいあいとした雰囲気だと多くのキャストがコメントされています。特に印象的だったエピソードや、共演者との絆を感じた瞬間があれば教えてください。
石川雷蔵: 本当に学校の休み時間のような雰囲気でした。撮影中は授業で、撮影がないご飯の時間や休憩時間は、本当の休み時間のような感覚でした。これといった特定のエピソードを挙げるのは難しいのですが、ずっと流動的に何かを喋って、楽しい時間を過ごしていました。現場は上下関係があまりなく、僕自身は今年で22歳なので「年長組」なのですが、それでも年下の第一線で活躍している俳優さんたちが多く集まっているので、彼らの溢れるエネルギーと仕事に対する全力な姿勢から、固定概念を打ち破るような多くの刺激や学びを得ています。
例えば、僕だと「今日何時に入って撮影が何時くらいに終わるから、朝からこのテンションでやったら疲れるな」と考えてしまうのですが、彼らにはそれがなく、終始全力なんです。それは「すごいな」と思いました。
5. 転機となった中学時代:アニメが導いた新たな道
一: 中学時代に不登校の経験があったそうですが、そこから抜け出すきっかけは何だったのでしょうか?
石川雷蔵: 本当にしょうもない理由なのですが、ただただ勉強が嫌で学校に行かなくなってしまいました。友達とは遊んでいたのですが、家に引きこもっていた時期にアニメにハマり、特に『黒子のバスケ』と『スラムダンク』というバスケ漫画のアニメを見たんです。それまで幼稚園から中学1年までずっとサッカーをやっていて、他の競技にあまり触れていなかったので、「うわ、バスケやりたい!」と思いました。
でも、バスケットゴールはないし、体育館を借りるお金もない…「どうしよう、部活がある!」と思って、学校のサッカー部の顧問に「サッカー部やめてバスケ部に入りたいです」と伝えました。するとその顧問の先生がたまたま生徒指導の先生で、「じゃあお前1週間学校に来たら、サッカー部やめてバスケ部入っていいよ」と言ってくれて。そこから1週間学校に行ってバスケ部に入るところから、徐々に学校に行くようになりました。引きこもりから抜け出すきっかけはアニメでした。
6. 二人三脚の役作り:スーパー戦隊での経験
一: スーパー戦隊シリーズ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』で桃谷ジロウ役を演じる際、「スーツアクターさんと二人三脚でキャラクターを作り上げていった」ことが印象に残っていると語っていますが、具体的にどのようなプロセスだったのでしょうか?
石川雷蔵: 変身してからは、戦いやアクションに関してはスーツアクターさんにお任せしていました。その中で、後からアフレコをするのですが、アフレコの時に僕が思ったことを話したりしていました。スーツアクターさんとはK-POPが好きという共通の趣味で盛り上がっていたので、色々な話をしました。僕が想像する役の動きを、ほぼ指示しなくても僕と同じように読み取って動いてくれていたので、とてもやりやすかったです。何が一番盛り上がったかというと、ずっとK-POPの話でしたね。
7. 役者としての覚醒:映画『高津川』で得た教訓
一: 映画『高津川』は、錚々たる大先輩に囲まれて多くのことを学んだ「ターニングポイントになった作品」と挙げていますね。特に主演の甲本雅裕さんをはじめとする先輩方から学んだことで、ご自身の俳優としての基礎を築いた、あるいは演技の方向性を決定づけたと感じる最も大きな教えは何でしたか?
石川雷蔵: そもそも僕が事務所のオーディションを受けたのはPS4が欲しかったからで、正直ドラマも映画も全然知らなかったので、言葉を選ばずに言うと「舐めていた」んです。仕事がどんなものか分からなかった。そんな中で『高津川』という作品に出演させてもらえることになり、台本はちゃんと覚えて「僕はこういう役なんだ」と落とし込んで行ったつもりでした。しかし、主演の甲本さんの台本の読み込み方や、現場での話し方、監督にもOKと言われても「いや、ちょっとこうかな」と相談している姿を見て、「これは僕はダメだ」と思いました。僕が生きてきた年数よりも長くこの業界で働いている方々が、ここまで細かく台本に書き込み、色々考えて、さらに僕のことまで気遣って優しく教えてくれるのを肌で体験して、「ダメだ」と思ったんです。そこからちゃんと考えるようになり、自分が思うことを深掘りしたり、分からないことは人に聞いたりしているうちに、どんどん楽しくなってきて、「もっとやりたい、もっと続けたい、もっと考えたい、作品に出たい」と思うようになりました。本当にあれがなかったら、どうなっていたんだろうと思います。
8. 意外な素顔と探求心:現在の趣味とものづくりへの情熱
一: 多趣味な石川さんですが、2022年頃は「お菓子作り」、中でもマカロン作りに熱中していると語られていました。筋トレで鍛えられたイメージとは意外なこの趣味にハマったきっかけや、マカロンの生地が膨らまない悔しさから研究を重ねて成功した経験は、俳優としての探究心や粘り強さと何か通じる部分はありますか?また、現在ハマっていることとそのきっかけ、面白さなど教えてください。
石川雷蔵: 今、ちょうどハマっているのは、フォークやスプーンでリングを作ることです。元々フォークが好きで、家にあるアンティーク調のフォークを見て「これリングにするの見たことあるな」と思い、ただの思いつきでやってみたくなったんです。家を探したらバーナーやトンカチ、指のサイズの芯などを見つけたので、試しにやってみたら、形は汚いし道具も使ってない手でねじ曲げただけなのですが、「これちゃんとやったら面白そうだな」と思いました。今はリサイクルショップで良い感じのスプーンとフォークを買って、リング用の万力をネットで注文していて、届くのが楽しみです。自分で作ると愛着がわきます。


マカロン作りは、スーパー戦隊の撮影中に、週によっては僕が出ない日もあって意外に暇な時期があったのがきっかけです。親が元々お菓子作りをしていて道具が家にあったので、「暇つぶしで作ってみるか」と始めました。僕は甘いものが得意ではないので、作ったものは全部家族や友達にあげていたのですが、ただの暇つぶしのつもりが意外に面白くなって、ハマってしまいました。
筋トレは今でもずっと続けています。『高津川』の撮影が終わった頃、美味しいところに連れて行ってもらった結果、自分でも分からないくらい太ってしまっていたようで、実家に帰ったら母親に「お前は誰だ」と言われました。それがきっかけで走り始め、自重トレーニングを続けているうちに体が変わり、「痩せるより筋肉があった方がかっこいい」と思って、ダンベルなどを買って本格的にやるようになりました。ハマると突き詰めるタイプです。ただ、他の趣味と違って、筋トレは僕が食べるのが好きなので、食べ続けるために太らないようにやっているという例外的な部分もあります。

9. スパイスとなれる俳優へ:今後の展望と挑戦したい役柄
一: 将来の目標として、「作品のスパイスとなって、見ている人たちの記憶に残る“バイプレーヤー”として活躍できたら」と、様々な役をこなせる俳優を目指していると語っていますね。今後、どのような「スパイス」を作品に加えていきたいと考えていますか?また、具体的に挑戦してみたい役柄やジャンルがあれば教えてください。
石川雷蔵: 主役を張れる俳優さんはもちろん素晴らしいと思いますし、僕も主役ができるならやりたいと思っています。しかし、ドラマや映画を見ていて、一番目に飛び込んでくるのは主役の方々ですが、たとえ1話で少ししか映る回数がなくても記憶に残る俳優さん、つまり演技が特徴的な俳優さんに魅力を感じます。それはやはり「上手い」というか、素晴らしい演技をしているから目に残るのだと思います。そういう役をたくさんできるのであれば、作品にも出続けられますし、「なんでもできるようになりたい」というのがまず目標としてあります。少ししか出ていなくても「あの俳優さん良かったね」と言われるような、予想外のところから「この人すごい」と思われるような俳優になりたいです。主役が「絶対に勝つからここでこう切って」と役割が決まっているのに対し、ベテランがやる「絡み」の部分、つまり主役がこうなっているから自分はどうするとか、そういう周りの役にも慣れたいと僕は思います。それが格好良いと感じますね。
一: 具体的に挑戦してみたい役柄やジャンルはありますか?
石川雷蔵: 以前はサイコパスのような猟奇的な役をやりたいと言っていたのですが、よく考えたら『ドンブラザーズ』で演じた桃谷ジロウが変なやつだったので、もうやってるなと(笑)。最近は尖った役が多かったので、逆に今はスーツを着た会社員の役をやってみたいです。普通の人、法を犯さない人の役をやりたいですね。ストーリーやジャンルとしては、恋愛系も良いですが、恋愛しない人のポジションの役が良いです。最近は医療系や殺人系のドラマが多いので、心が若返るような、王道の青春ドラマに出演してみたいです。

10. 『ちはやふる-めぐり-』は「青春を取り戻せるドラマ」
一: 最後に、ドラマ「ちはやふる-めぐり-」をご覧になる方々へメッセージをお願いします。ご自身の「ここを見てほしい」という点もあれば教えてください。
石川雷蔵: はい。前回の映画から10年後の世界を描くオリジナルストーリーです。OB(卒業生)も出演しますし、広瀬すずさん演じる「ちはや」も登場します。これまでの「挑む側」だった瑞沢高校が、今回は「挑まれる側」の強豪校として描かれ、前回の瑞沢高校に相当する新たな高校(梅園高校)が登場します。
僕たちキャストは皆、長い期間、かるたの練習を重ねました。膝が真っ黒になったり、足の甲の皮が剥けたりするほど熱心に取り組みました。多くの第一線で活躍している若い世代の俳優が集まっているので、間違いなく面白いものになっています。僕もそうだったのですが、このドラマは「青春を取り戻せるドラマ」だと思います。現場でも、台本を読んでいても「こんな学生時代最高だな」「あの頃こうだったな」と、部活に打ち込んだ日々を思い出したり、懐かしくなったりしました。学生だからこそ何にも考えずに打ち込めるあの時間が大切だったな、と思い出させてくれる作品です。
キャストが「120%の気持ち」で撮影しましたし、良いものになっていると確信がありますので、ぜひ見ていただきたいです。この作品は王道の青春ドラマであり、スクールカースト問題、登場人物の失踪、不倫、死といった暗い要素は一切含まれていません。最近では珍しい、真っ直ぐな青春を描いたドラマなので、安心して見られる作品だと思います。

2025年7月期日本テレビ系連続ドラマ『ちはやふる-めぐり-』



■出演者
當真あみ 原菜乃華 齋藤潤 藤原大祐
山時聡真 大西利空 嵐莉菜 坂元愛登 高村佳偉人 橘優輝
/石川雷蔵 瀬⼾琴楓 高橋佑大朗(※「高」は正式には「はしごだか」)/藤枝喜輝 大友一生 漆山拓実
上白石萌音
■スタッフ情報
原作:末次由紀『ちはやふる』(講談社「BE・LOVE」所載)
ショーランナー:小泉徳宏
監督:藤田直哉・本田大介・松本千晶・吉田和弘
脚本:小坂志宝・本田大介・松本千晶・金子鈴幸
脚本協力:モノガタリラボ
音楽:横山克
プロデューサー:榊原真由子・巣立恭平・中村薫・平田光一
企画・プロデューサー:北島直明
チーフプロデューサー:松本京子
制作協力:ROBOT・ウインズモーメント
製作著作:日本テレビ
■番組公式HP・SNS
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