20代の未婚女性が突然「排卵障害」と診断され、自身や周囲との関係に向き合っていく姿を描いた野本梢監督の最新作『藍反射』。第38回東京国際映画祭にも出品された本作が、全国を巡り池袋シネマ・ロサにてムーブオーバー上映をスタートしました。公開直後の週末には、監督や道田里羽、滝澤エリカらキャスト陣による舞台挨拶が連日開催され、大盛況となりました。本稿では、作品情報とあわせ、知られざる悩みや制作秘話が語られた上映2日目および3日目の舞台挨拶の様子をレポートします。

■池袋シネマ・ロサでの凱旋上映スタート キャストが語る役への思い
映画『藍反射』、東京3館目・池袋シネマ・ロサ上映も大盛況にてスタート。2週目は日本語字幕付き上映を実現。俳優の清水尚弥を呼んでのトークショーも開催。 渋谷での公開から関西・東北を巡り、再び東京へ帰還した映画『藍反射』。池袋シネマ・ロサで行われた上映2日目の舞台挨拶では、野本梢がMCを務め、道田里羽、滝澤エリカ、大貝瑠美華、逢坂由委子、小沢まゆの5名が登壇。それぞれが役への思いや作品を通じて感じたことを語った。
凱旋上映を迎えた今の気持ちについて問われた道田は、「今までの上映では上映後のサイン会のときに、ご自身のことやパートナーのことをお話ししてくれる方も多かった」と振り返り作品の思いがお客様に届いていることを実感していた。 優佳里役の滝澤は、優佳里の役柄を「両親は仕事も忙しく、妹の中学受験のことで精一杯である」家庭環境の中で、生理不順の悩みや“妊娠したかもしれない”という不安を抱えていても打ち明けられず、時間だけが過ぎていってしまう人物だと捉えていたことを明かした。
一方、優佳里の妹・まりんを演じた大貝は、姉について「送り迎えをしてくれたり、荷物を持ってくれたりして優しいが、何を考えているかわからない存在」だと感じていたとコメント。しかし完成した作品を観て、「こんな悩みを抱えていたんだ」と、役の内面に改めて思いを巡らせたという。 そんな姉妹を習い事のスタッフという立場から見守る主人公・はるかを演じた道田は、「親の愛情を受けているか心配な部分もあった」と劇中の姉妹を案じる気持ちを吐露。
すると、母・悦子役の逢坂は、「(愛情があるから)2人のことを思って一生懸命働いていた」と涙ながらに語り、会場も静かに聞き入った。 また、劇中で主人公・はるかを説得する印象的なシーンに出演している小沢へ話題が及ぶと、小沢は「本当にご覧になった方からの反響が大きいです」と周囲から寄せられる声を紹介。さらに、キャスティング当時、野本監督が「小沢さんのまっすぐな瞳」に惹かれてオファーしたことが明かされると、小沢は「あまりそういう役を演じたことがない」と当時台本を読んで自分の役柄に驚いたことを伝えると、道田が“それは意外”という表情を見せ、会場の笑いを誘う場面もあった。
イベントの最後には、キャスト陣から「他者に寄り添えるようになりたい」「知らないことばかりだった自分と同年代の中高生にも観てほしい」「自分の体と心に目を向けたり、対話が生まれたりするきっかけになれば」と、それぞれの願いが語られ、舞台挨拶は締めくくられた。
■上映3日目舞台挨拶 疾患への気づきと当事者への共感
さらに3日目の舞台挨拶には、橋本紗也加、藤主税、千綿勇平、しゅんしゅんクリニックP、野本梢監督が登壇し、稲村久美子エグゼクティブプロデューサーがMCを担当。作品に込めた思いや制作秘話について語り合った。 冒頭、野本監督は「シネマ・ロサさんには、最初に長編を撮った頃からお世話になっている」と劇場への思いを語り、「稲村さんとの初めての長編作品でここに帰って来ることができて、皆さんにも観ていただけて嬉しい」と感慨深げに挨拶した。
本作では、主人公・はるかが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と向き合う姿が描かれる。はるかの上司役を演じた橋本は、「“まさか自分が”という戸惑いから、自分自身と向き合い、自分を大切にし始めるきっかけを与えてくれる作品だと思う」とコメント。「届ける側として関わることができて、本当に幸せ」と作品参加への思いを語った。 また、キャスト陣からは、“知らなかった”からこそ感じた驚きについても言及があった。
千綿は、「PCOSという言葉も知らなかったし、将来子どもを望んだ時に、こういう壁に直面する人がいるんだと改めて感じた」と振り返り、「人ごとではないんだと、この作品を通して実感した」と話した。 医師でもあるしゅんしゅんクリニックPも、「医療関係者でも、産婦人科領域に携わっていなければ知らないことは多い」と率直に告白。「映画を通して、自分自身も知ることができたのがすごく良かった」と語り、医療従事者からも反響が届いていることを明かした。
■監督が明かす演出のこだわりとラストシーン誕生の裏話
さらにトークでは、野本監督の演出意図についても話題が及んだ。 橋本から、主人公・はるかと友人・葉奈が襖越しに会話するシーンについて質問されると、野本監督は「面と向かって話さないことで、逆に話せることってあると思って」と、自身の実体験がもとになっていることを説明。はるかの気持ちに寄り添うために、「あのシーンは、ドアを開けたり、葉奈の表情を見せたりはしないようにしようと思っていた」と演出のこだわりを明かした。
また、はるかが父と布団を敷きながら本音を打ち明けるシーンについても、「家族だからこそ伝えづらいこともある。でも、何か作業をしながらだと少し話せることがある」と振り返った。 イベントでは、ラストシーン誕生の裏話も披露された。 野本監督は、「当初は、はるかとゆかりが手を取り合って歩いていくラストを考えていた」と明かす。
しかし、「婦人科系の悩みを抱えた女性同士が連帯し、男性とは交わらずに生きていくようなメッセージになってしまうのは違うと思った」と感じ、撮影当日にラスト変更を提案したという。 その変更について、稲村久美子エグゼクティブプロデューサーと千種ゆり子プロデューサーはすぐに同意。「はるかもゆかりも別々の人間だから、それぞれの未来に向かって進んでいくラストにしたかった」と演出意図を語った。
さらに、東京国際映画祭出品決定時の裏話も飛び出した。 藤から「決まった瞬間はどんな感じだったのか」と問われると、野本監督は「ある日メールが届いて、寝起きで見たら“東京国際映画祭”って書いてあって飛び起きた」と当時を回想。「でも、いたずらメールじゃないかと思って、担当者名をずっと検索していた」と明かし、会場の笑いを誘った。
イベント終盤には、登壇者らから「映画を観た後、いつもの景色が少し違って見えることがある。この『藍反射』が、皆さんにとってそんな作品になれたら嬉しい」というメッセージも送られ、温かな拍手に包まれながらイベントは幕を閉じた。

映画『藍反射』は、池袋シネマ・ロサ にて5月21日(木)まで上映される。
5月15日(金)からの2週目上映では、日本語字幕付き上映を実施。さらに、5月17日(日)には俳優・清水尚弥 をゲストに迎え、手話通訳付きトークショーも開催される。
【池袋シネマ・ロサ イベント情報】
https://www.cinemarosa.net/news/ranhansha_event/
■5月13日(水)18:00の回(上映後)
登壇者(予定):美桜子、土屋直子、関口蒼、村田啓治、知多良(撮影)、野本梢監督
■5月15日(金)18:00の回(上映後)
登壇者(予定):小島彩乃、岡本宗史、稲村久美子(エグゼクティブプロデューサー)
■5月17日(日)13:40の回(上映後)
登壇者(予定):清水尚弥(俳優)、道田里羽 ※手話通訳あり
■5月21日(木)18:00の回(上映後)
登壇者(予定):道田里羽、大木空(アバンティーズ)、小沼朝生、岡本詩織、野本梢監督
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