8月23日、東京・有楽町ピカデリー1にて、映画『木の上の軍隊』のロングランヒット御礼舞台挨拶が開催され、本作で安慶名セイジュン役を演じた俳優の山田裕貴さんと、監督・脚本を務めた平一紘監督が登壇しました。上映後の会場は温かい拍手に包まれ、ふたりが観客へ感謝を伝えるとともに、映画制作の舞台裏や登場人物の心情について深く語り合った。

■ 映画『木の上の軍隊』ロングランヒット御礼舞台挨拶
山田さんは、このイベントがロングランヒットの証であることに触れ、「有楽町ピカデリーでこのような舞台挨拶ができるということは、劇場の方がこれからも長く『木の上の軍隊』をかけてくれることを祈ります」と述べ、作品への継続的な支援を呼びかけました。平監督も、6月13日の沖縄先行公開から長い時間が経ってもなお、多くの人々に愛されていることに喜びを表しました。監督は、本作の舞台である沖縄の沖縄尚学が甲子園で優勝したという嬉しいニュースにも触れ、山田さんは撮影中にも関わらず車中のテレビで試合を観戦していたエピソードを披露し、会場を和ませました。

幅広い年代の観客が劇場に足を運び、夫婦や親子三世代での鑑賞も見受けられる本作は、SNS上でも「山下と安慶名が紡いだ言葉、表情、どれもが忘れられない」「生きることを諦めないを強く感じた」といった熱い感想が多数寄せられています。平監督は、それらの感想を自らX(旧Twitter)やInstagramで逐一チェックし、時には数秒で「いいね」を付けにいくほどの熱心なエゴサーチぶりを明かし、会場の笑いを誘いました。山田さんも、撮影現場のスタッフの話や、自身の母親と妹も映画を鑑賞し、母親からは「今までで一番の演技だった」という感想をもらったことを明かし、「いつも最新で最高を叩き出す男」として、常に演技を更新し続けていると語りました。

質疑応答のコーナーでは、観客から映画の内容に関する具体的な質問が寄せられました。安慶名が「海に行きたい」と願うシーンについて問われると、平監督は当初、それが死を企図しているかのようにミスリードさせる意図があったとしつつも、実際は「死ぬなら海がいい」という、木の下での死を避ける安慶名の心理を描いたものであると説明しました。山田さんはこのシーンの撮影について、これまでにないほど感情を作るのが難しかったと振り返り、海を見た時の感情は「見れた嬉しさだけではなかった」と語りました。戦場と化した海への悲しみと喜びが入り混じり、どのような表情をすれば良いか分からなくなった複雑な心境を表現した結果、それが「正しい」演技になったのではないかと述べました。最終的に感情が解放されたのは「帰ろう」という台詞であったとも明かし、台本では海に浮かんでいる予定だった安慶名が、完成版では立ったまま海を見つめる姿に変更されたことで、「生きてることを確認できる」希望に満ちた場面になったと語りました。
また、山田さんのアドリブに関する質問では、平監督が夜の兵舎で幻影の与那嶺(津波竜斗さん)と語り合うシーンと、夢の中の母親とのシーンの二つを挙げました。特に兵舎のシーンでは、山田さんの感情の出し方が台本の予定をはるかに超えるエモーショナルなものとなり、監督は「このままがいい」と判断してそのまま採用したと述べました。山田さん自身も、母親との夢のシーンでは台詞がなく、「何も考えずにもう思ったことをバーって言ってただけの即興芝居だった」と語り、その言葉の力強さが津波さんを泣きそうにさせたエピソードを披露しました。
安慶名が現実の与那嶺と幻想の与那嶺に対してどのような心境であったかという質問に対しては、山田さんは「安慶名も一応それを夢だということを把握し、理解しながらいようと思ってました」と答えました。夢だと分かっていながらも、与那嶺と話したいという思いが溢れ、それが夢であるという事実を受け止めつつ語っていたため、与那嶺が「帰ろう」と言っても安慶名がそれを無視して話し続けるのは、「帰れないのが分かっているからだ」とその心情を深く解説しました。
さらに、終戦を知った時の安慶名の気持ちと、米軍のゴミ捨て場で破壊行動をするシーンの解釈について質問が挙がりました。終戦を知った時の安慶名の気持ちについて、山田さんは「もうどっちでもいいって思ってたと思います」と回答。「戦争が終わって負けようが勝とうが、とにかく帰れたらそれでいいという一心であり、戦争に対する嫌悪感と、母や与那嶺の無事を願う純粋な気持ちが勝っていた」と解釈を述べました。一方、米軍の物資を破壊するシーンについては、平監督が「直前で入れたシーン」であると明かしました。これは、絶望的な状況に置かれた二人の兵士に、せめて一度でも「勝たせてあげたかった」という監督の意図が込められていると説明。旗から見れば惨めな行為であっても、彼らにとってはそれしかできない、人間のもつ弱さや攻撃性が現れたシーンであり、「誰かの大事なものを奪っていく、他者のもの」という戦争の側面を象徴的に描いたものであると語り、観客のわじわじ(もやもや)とした気持ちを解消しました。
イベントの最後に、平監督は「この作品は恐らく映画が終わったとしても何かの節目で目にかかることがあるような、そんな作品になったんじゃないかな」と述べ、特に戦争を知らない世代にこの映画が届き、「これから本当にそういうことにならないように」と平和への強い願いを語りました。山田さんも、映画のヒットそのものよりも、観客がこの映画のメッセージを「ちゃんと受け取ろうとしてくれる」気持ちこそが何より嬉しいと強調。「ヒット、ヒット、ヒットじゃなくて、心にホームラン」という言葉で、俳優としての信念を改めて表明し、会場は再び大きな拍手に包まれました。

映画『木の上の軍隊』
【STORY】
太平洋戦争末期、戦況が悪化の⼀途を辿る1945年。⾶⾏場の占領を狙い、沖縄・伊江島に⽶軍が侵攻。激しい攻防戦の末に、島は壊滅的な
状況に陥っていた。
宮崎から派兵された少尉・⼭下⼀雄(堤 真⼀)と沖縄出⾝の新兵・安慶名セイジュン(⼭⽥裕貴)は、敵の銃撃に追い詰められ、⼤きなガジュマ
ルの⽊の上に⾝を潜める。仲間の死体は増え続け、圧倒的な戦⼒の差を⽬の当たりにした⼭下は、援軍が来るまでその場で待機することに。戦闘経験
が豊富で国家を背負う厳格な上官・⼭下と、島から出たことがなくどこか呑気な新兵・安慶名は、話が嚙み合わないながらも、⼆⼈きりでじっと恐怖と飢
えに耐え忍んでいた。やがて戦争は⽇本の敗戦をもって終結するが、そのことを知る術もない⼆⼈の“孤独な戦争”は続いていく。
極限の樹上⽣活の中で、彼らが必死に戦い続けたものとは――。
【原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案井上ひさし】
作家・井上ひさしが⽣前やりたい事として記していたオキナワを舞台にした物語。タイトルは「⽊の上の軍隊」。
井上が遺した1枚のメモを基に、井上ひさし没後、こまつ座&ホリプロ公演として2013年、藤原⻯也、⼭⻄惇、⽚平なぎさを迎え初演された。その後、
「⽗と暮せば」「⺟と暮せば」と並ぶこまつ座「戦後“命”の三部作」位置づけられ、16年、19年にはこまつ座公演として⼭⻄惇、松下洸平、普天間かお
りが出演し、再演、再々演され、19年には沖縄でも上演。世界からも注⽬され様々な国から上演依頼がある作品である。2023年6⽉より韓国公
演がスタートし8⽉の終演までソールドアウトの⼈気を博した。
出演︓堤 真⼀ ⼭⽥裕貴
津波⻯⽃ ⽟代㔟圭司 尚⽞ 岸本尚泰 城間やよい 川⽥広樹(ガレッジセール)/⼭⻄ 惇
監督・脚本︓平 ⼀紘
原作︓「⽊の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案井上ひさし)
主題歌︓Anly「ニヌファブシ」
企画︓横澤匡広 プロデューサー︓横澤匡広 ⼩⻄啓介 井上⿇⽮ ⼤城賢吾
企画製作プロダクション︓エコーズ 企画協⼒︓こまつ座 制作プロダクション︓キリシマ⼀九四五 PROJECT9
後援︓沖縄県 特別協⼒︓伊江村
製作幹事・配給︓ハピネットファントム・スタジオ ©2025「⽊の上の軍隊」製作委員会
公式サイト︓https://happinet-phantom.com/kinouenoguntai/
公式X(旧Twitter)︓@kinoue_guntai
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