映画『なぎさ』アフタートーク。津田寛治、青木柚登壇。憑依・役にのめり込む感覚とその経験

映画『なぎさ』アフタートーク。津田寛治、青木柚登壇。憑依・役にのめり込む感覚とその経験

5月21日(日)、テアトル新宿にて公開中の映画『なぎさ』のアフタートークが行われた。ゲストには津田寛治と、本作主演・青木柚(文直 役)を迎え、古川原壮志監督とともに登壇した。アフタートークは、作品を観た津田の印象に残ったシーンや質問に対して、青木、古川原監督が答える形式で話が進んだ。

なぎさ

その中で、同じ役者として青木から津田に問いかけられた「憑依すること」、「役にのめり込むこと」がどういう感覚でなされているかについてのやり取りをピックアップします。

■ 映画『なぎさ』 主演・青木柚(文直 役)の問いかけと津田寛治の回答

青木柚
よく「憑依してるね」みたいに言われることがあるじゃないですか。僕、今回それを言っていただくことが多かったんですけれども、正直、あまり憑依みたいなことって、あまり大きな声では言えないですけど、僕は信じていない側の人間なんです。

そういう何か役に…(本作を例にすると)文直に…じゃないですけれども、そういった“のめり込む体験”のようなものって、どういう感覚でやられているのか、今、とても気になっています。

なぎさ

津田寛治
そういった体験は、あるにはあるんですけれども、数は多くないですね。しかも、自分のコンディションというより、誰とやるかというのがすごく重要で、僕ももう(役者を)30年以上やっている中で、そういったことがあったのは、3回ぐらいかな。

もう台本も何もかも周りのスタッフの状況も忘れてストーリーの中に没入してしまった瞬間が、二、三回あるうち、どれもそんなに状況は一緒ではないんですけど、一つ共通しているのは、あまりお芝居をやったことない方か、全く初めての方が相手だったときなんですよ。その時にそういう状態に陥りました。

なんでそういう方が相手だとそうなったのか、謎は解けてないんですけれども…。だから、自分でコントロールしてできるもんではないというのはすごくあります。

じゃぁ、柚くんは今回は憑依していなかったんだ。

なぎさ

青木柚
憑依していなかったっていうと不誠実に聞こえるかもしれませんが、今回は役というよりも、(僕自身が)ボロボロの状態でオーディションを受けに行った経緯があったので、自分がただ単に限界だったというだけで、ある意味で、(文直自身の)実際の精神状態だったのかもしれないです。

それがすごくいい具合に、タイミングも良かったんだと思います。監督の文直への演出というか、文直にかける想い・『なぎさ』にかける想いが一緒になったから、僕は撮影をやりきれたので、すごく集中して、もう何も考えずできたみたいなことがあるんだと思います。

人・監督によって、憑依・入り込むみたいな感覚って全然違うと思っていて、こんな機会がないので、今聞いてみました。

なぎさ

津田寛治
監督によっても全く違っていたりしますね。ディレクションのガイドみたいな本にもよく書かれているのが、「一番監督が言っちゃいけないのは、役者を物語から現場に引き戻すような言葉は使ってはいけない」ということです。

例えば、「そこをもうちょい間を空けてもらっていいですか」とか、「今のところ、もうちょっとキャラを立ててもらっていいですか」とか、そういうふうに、役と全く関係ない、“俳優に対しての注文”みたいなことは、言っちゃいけないらしいんだよね。

なぎさ

津田寛治
僕の場合は監督から、「今、どういう気持ちで言いました?」、「そういう気持ちですか」、「でも、僕の中での、この役っていうのは、もっとここに来たときにぐっと感情が上がると思うんですよ。なんでかって言ったらその前にこういうことがあったじゃないですか」…なんて、監督がストーリーを説明しながら、「そこで役者の感情が上がっていくっていうふうに僕は思うんですけど、そういう気持ちにはなりませんでしたか?」みたいなのを監督から受けるのが僕はベターなんじゃないかと言うのはありますけど、古川原監督はどうでしたか。柚くんは。

なぎさ

青木柚
古川原監督の演出は、とてもやりやすかった…というと表現が違いますけど、文直の心にストレートに入っていけるように感じました。
先ほど、自分の状態が限界だった…みたいなことはあったんですけど、だからといって自分でやっているわけでもないし、きちんと文直として成立するようにしていただくことができるのって、もう監督しかいないと思っていたので、演出というよりかは、文直の時間を教えてくれるような感覚で、とにかくミーティングや話し合いをしていました。

なぎさ

古川原壮志監督
話に付き合ってもらったというよりも、付き合わせたと言う方が正しいのかもしれないけど。そういった時間を過ごせたの本当に良かったなと思います。
僕から見て柚くんは、ちょっと心配になるぐらい、ナイフのように僕はギラギラ見えて、「申し訳ないな…」と思いつつ、でもすごいやりきっていただいたから、僕は憑依というか、文直に見えています。

なぎさ

青木柚
それはすごく嬉しいですね。

なぎさ

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脚本・監督 古川原壮志


プロデューサー:明里マミ
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協力:佐賀県フィルムコミッション 制作プロダクション:フラッグ
配給:アークエンタテインメント
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2023 年 5 ⽉ 12 ⽇(⾦)テアトル新宿ほか全国順次公開

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