映画『由宇子の天秤』公開初日。春本雄二郎監督 x 片渕須直プロデューサー トークイベント

映画『由宇子の天秤』公開初日。春本雄二郎監督 x 片渕須直プロデューサー トークイベント

9月17日、映画『由宇子の天秤』が渋谷ユーロスペースにて公開を開始。上映初日のトークイベントには、本作の春本雄二郎監督と片渕須直監督(本作では、プロデューサー)が登壇。二人の出会いや、春本監督の脚本に対するプロデューサー・監督視点からの意見のエピソードが語られた。

由宇子の天秤
左)春本雄二郎監督 右)片渕須直プロデューサー

■春本雄二郎監督x片渕須直プロデューサー トークイベント

※映画のストーリーに大きく影響する部分に関して、除外して記事化しております。

冒頭、春本監督は、作品と作品をより楽しむためのパンフレットの内容について紹介した。

春本雄二郎監督
本イベント中は皆さん、写真を撮っていただいて構いませんので、ぜひSNS等で使ってください。
映画『由宇子の天秤』の監督をしております。春本雄二郎です。この映画はみなさんの想像に委ねる終わり方をしていると思います。劇場で販売しているパンフレットには、今日ゲストで来られている片渕須直プロデューサーによる、プロデューサーの視点から、紐解いてくださったとても深い論評が載っております。こちらをぜひお読みいただければと思います。由宇子が一体どこでつまずき、何をどこで間違ってしまったのかという視点から見ていただいています。

由宇子の天秤
春本雄二郎監督


その他に評論家・上野昂志さんによる映画批評。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんがジャーナリストの視点から、この映画と社会の問題について深く切り込んでくださっております。報道の関係者が内側からその行動を批判することに対して、どのような風潮になっているのか。そこも含めた注目すべきコラムになっております。ぜひ、お読みください。
そして、最後の方にすごい仕掛けを施しております。「この映画って、なんかちょっと後味が悪かったな」とか、「どこかでちょっと安心したいな」というふうに思った方々に向けて、最後に仕掛けをしておりますので、ぜひ、買って(考え方のひとつとして)確かめてください。

▼トークイベント開始

春本雄二郎監督 x 片渕須直プロデューサー トークイベント

春本雄二郎監督
本日のトークゲストをおよびしたいと思います。
『この世界の片隅に』、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開継続中の片渕須直監督です。どうぞお入りください。では、片渕監督からひとことをお願いします。

片渕須直プロデューサー
(今回は)監督じゃないよ(笑)

春本雄二郎監督
そうでした(汗)今回は監督ではなく、プロデューサーですね。どうもクセで(汗)

片渕須直プロデューサー(以下、片渕須直P)
そうですね、いつもそうよばれていらっしゃいますものね。

春本雄二郎監督
改めて、自己紹介をお願いします。

片渕須直P
普段はアニメーションの作品を作っていたりするのですが、いろんな縁があって、春本監督の映画作りをお手伝いさせていただくことになり、今回プロデューサーということで参加させていただいております。プロデューサーは3人いて、春本監督自身がプロデューサーで、私以外にもう一人いるんですけど、今日は春本監督と私の2人でお話させていただきます。よろしくお願いします。

由宇子の天秤
片渕須直プロデューサー

▼春本監督と片渕プロデューサーのつながり

春本雄二郎監督
今、プロデューサーの話になったので、そこから皆さんにお話していきたいと思います。またそのあとで作品の中身について話をしていきたいと思います。そもそも何で片渕須直監督がアニメーション監督であるにも関わらず、自主映画、それもゴリゴリの社会派映画のプロデューサーをされているのかについて、まずはお話したいと思います。
私は、練馬にある日本大学芸術学部(日芸)映画学科を卒業しております。もう1人いるプロデューサーの松島哲也という人物が、私の学生時代の恩師で、松島哲也も映画監督をしております。このユーロスペースで、おそらく2015年くらいに上映をしている『ソ満国境15歳の夏』と言う映画の監督をしております。日芸でも教授をしている松島が私の恩師です。その松島と片渕監督が…

片渕須直P
同期であって、僕もいま日芸の映画学科で、特任教授という形で、職員室で毎週顔を合わせているという仲なんです。お互いそれぞれ自分たちの映画を作っていて、映画の中身の話じゃなくて「お金揃った?」と言った話をしていたります。

春本雄二郎監督
そのときって、『この世界の片隅に』を作られ、お金を集めたときですか?

片渕須直P
そうです。まだ本当に完全に手弁当だった時期で、「そっちは何年かかってんだ?」とか「お前のところはどうなってるの?」って二人で言い合いをしていた、そんな時期ですね。

春本雄二郎監督
「クランクインできるのか?」みたいな。

片渕須直P
「俺が紹介してやろうか?」と松島に言われて、聞いたら、それを紹介されるとやばいかなとか(笑)

春本雄二郎監督
出所が…(苦笑)

▼春本雄二郎監督の前作『かぞくへ』について

春本雄二郎監督
そういったお互いにご自身の作品を作られる中で、苦労を共にされた時期があったんですね。そんな中、私の『かぞくへ』という初監督作品が2016年に東京国際映画祭でノミノートされたんです。これも100万円ぐらいで作った映画なんですけども。それでやっと錦を飾れるなと思って、10年ぶりぐらいに大学に足を運んだんです。
そのとき、松島は映画学科で一番責任のある立場で教鞭を振っておりまして、「お前のその映画がせっかく公開できるなら応援してあげるよ」っていうように、舞台挨拶の登壇者として片渕監督をご紹介いただく形で縁ができたという流れになっています。

片渕須直P
2016年からなんですよね。ちょうど僕が最初の『この世界の片隅で」を作っていて、目処が立った時で、松島の映画もその前の年に公開されたりして、自分たちの目標をある程度達成できたから、「じゃあ今度は、後からやってきて、ひょっとしたら追い抜いていくかもしれない人たちみたいな、そういう人たちのことも、これから考えようぜ」って松島が言い出していたんです。
私が「具体的にはどうするんだ?」と尋ねたら、「これからやるやつなんだよ」っていう、「これから上映するやつなんだよ。」といって松島から教えてもらったのが『かぞくへ』でした。
それを観に行って、そうしたら『かぞくへ』の時から、もう既に春本監督が舞台挨拶をすごい盛んにされていました。

▼春本監督が片渕監督から学んだこと


春本雄二郎監督
毎日やってましたね。ユーロスペースに住んでるのかっていうぐらい。

片渕須直P
僕も2009年の『マイマイ新子と千年の魔法』の時から舞台挨拶を何日間連続やったっけかな。とにかくものすごい数の舞台挨拶をしていたので、「同じことをやっている人がもう1人いたんだな」ということに対して、すごく親近感がわきました。

春本雄二郎監督
片渕監督が映画でこれだけ成功されているにも関わらず、1人1人のお客様を大切にする姿勢というか、そのあたりを学ぶべきだなと思って、SNSだったり舞台挨拶に来られたお客様と、直に一人一人と対話する・大事にすることを学ばせていただいてます。

片渕須直P
本当に同じことをやってるなと思ったら、春本監督から「マイマイ新子の時のやり方を見ていたんです」と言われて、そういうことだったのかと思いました。

由宇子の天秤

▼映画作りと資金集めの難しさ


春本雄二郎監督
そういった形でご縁ができました。『由宇子の天秤』は、実は1500万円で作った映画なんですけれども、はっきり言うと、商業映画でいうとかなりのローバジェット(低予算)です。だいたいローバジェットと言っても1億ぐらいをかけるのが商業映画では普通なんです。1億、2億ですね、これが1500万って言ったら、簡単に言うとVシネレベルなんですね。『かぞくへ』よりは15倍の予算になっているんですけど、お金集めに僕は苦労していました。
スタッフ・キャストはかなり協力してくれてる部分があります。そんな中で私が1人でお金を集めないといけない。
僕は、表現者が表現だけで勝負できるものを作りたい。きちんとそれを回収できるところまで持っていきたいというのが、私が掲げている映画工房春組という団体のコンセプトなんですね。
今の日本の商業映画ってどうしてもその有名な俳優を使ったり、原作物を使ったりしてお金を出している部分で、資本を出している企業の政治だって忖度があったりしてクリエイティブな部分が結構ないがしろにされるというかですね、どうしても監督がこれをやりたいんだということを削らないといけないことが多々出てくる。これを何とかしたいというふうに僕は思っています。
その中で私は個人で、“忖度されないお金”を集めなくてはいけない状況の中で、片渕監督と松島監督のお2人から少しずつ融資をしていただいていて、協力してくださるということを言っていただいたので、もう二つ返事で「お願いします」と伝えました。
そんな中で、台本の部分に関しても、お2人にかなりの部分で相談に乗っていただきました。

片渕須直P
相談に乗っただけですよ(笑)
春本くんが書いてきたやつを見て、意見を聞かれて「OKじゃないですか」みたいなことを言っていただけです。それをずっとやってたような感じなんです。

▼台本の推敲と相談

春本雄二郎監督
僕は今回の台本を第10稿まで10回書き直してるんですね。一番最初の稿が出来上がったのが2014年の6月ぐらいなんですけど、そこから第1作の『かぞくへ』を2015年に撮って、あえて台本を寝かせていたんです。そして、2017年ぐらいからまた書き直し始めて、ユーロスペースの北條支配人にも3稿目から5稿目ぐらいまで相談に乗ってもらっていました。そこから6稿目、7稿目は確か最初に読んでいただいたと思います。確か、2018年、2019年頃だと思います。

片渕須直P
そう。2019年ですね。『由宇子の天秤』の撮影が始まって、撮影現場を見学に行きたい・見学に行かないといけないと思ってたんですけど、高崎での撮影だったので遠くて、最終日だけ東京の日芸で撮るということで、そこだけはなんとか行かないと・行きたいなと思っていたんですけど、それが12月19日公開の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の追い込みで12月8日がいけなかったっていう感じでした。
本当に映画っていうのは、いくつもの昼、いくつもの夜を乗り越えて、やっとスクリーンにかかるようになるわけなんです。2019年に撮影されてからずっと2年ぐらい、ここへたどり着くまでにいろんな道のりがあったというわけです。どんな道のりがあったかというと、いろんな道のりだったんですけども、2019年に台本を見せてもらったところから撮影、撮了になるところまでがいろいろあったってことですね。それがほぼ2年ぐらい前の話です。

春本雄二郎監督
それこそ、男3人がコーヒー一杯で喫茶店で3時間ぐらい粘ってですね、ここはこうしようああしようと。

片渕須直P
熱い時間でしたね。

▼物語に大きく関わる片渕監督のアドバイス

春本雄二郎監督
そうですね、夏頃…2019年8月ぐらいだったと思ういます。片渕監督と松島監督が今回のシナリオに良いアドバイスをいただいたなと思うのは、特に萌(メイ)のところです。萌のことで言われて印象的に残っているのは、片渕監督から言われた言葉でした。私も「なるほどそうか」と思いました。由宇子が主人公だけれども、この萌に関してもきちんと愛を注ぐという。

片渕須直P
由宇子に関しては松島と二人でボロクソに言っていて、ドキュメンタリーディレクターとしてもB級だからって。萌はなんとかしてあげたいなと思いました。

片渕須直P
家庭がね、家庭がやっぱり大事かなっていうことなんですよね。

春本雄二郎監督
「片渕監督のその最後のご意見っていうのは、哲也に対するすごい良い部分だと思ったので、「即採用!」ってなりました。…すいません。「採用!」って上から目線で。

▼片渕監督と松島監督という2人のプロデューサーが行ってきたこと

片渕須直P
僕と松島が二人でやっていたのは、春本監督が書いてきた脚本を自分たちなりに、“より砕く”というのを延々と行う作業だった気がします。そこに何か「俺だったらこうするな」という、「これ、こういう意味で書いてるんだな」っていうのを全部確かめていくためといった感じでした。
だからやっぱりいろんな出来事とかを、例えば由宇子が昼はドキュメンタリーディレクターをやっていて、夜は塾の講師のアルバイトみたいなことをやってるんだけど、昼と夜の彼女にとっての意味とかね。「なんかそういうことなんだよね」って、「ここに象徴的に書いてあることはひょっとして…」というのをいちいち、全部自分たちで1回確かめたいなっていう、そういう打ち合わせをずっとやっていた気がします。

春本雄二郎監督
僕にはそれがすごく助かりました。自分が脚本を書いていく上で、自分自身の主観を入れながら人物を動かしていくわけです。自分のフィルターを通してキャラクターを行動させていくので、私自身がそこに1回没入しなくてはいけない。で、1回書き切ったら抜く、主観を引いて抜き去って、客観でそれをもう1回見直す。その主観と客観の入れ替え作業が常に反復し続けるんですけど、やっぱり限界があるわけです。
そこを片渕監督と松島監督が「このキャラクターはこうだよね」っていうふうに、俯瞰で言ってくださるので、すごい助けられました。「そうかそういうふうに見えているのか」って思いました。

片渕須直P
プロデューサーっていろんな役目があってね、それこそ「上映をどうしようか」とか、いろんな台所事情の判断をやるとかっていうのも、今回は全部、春本監督自身がプロデューサーで、そこを自分で負ってしまっているわけなんです。
僕と松島がやっていたのはどんなふうにその作品が出来上がっていくのかっていうのをその内容に関して、クリエイティブなところで確認するっていうそういう作業でした。
なので僕らは春本監督から「今回海外の何とか映画祭で賞を取りました!」っていう報告をもらうだけで、「いつの間にそんなのに出してたんだ?」って思っていました。

▼春本監督が感じる日本のプロデューサーの問題

春本雄二郎監督
これはちょっと余談になるんですけど、今「日本のプロデューサーってどれだけ育ってるのか」っていう問題があると思っています。彼らは演出的視点に立つことができないんです。演出経験がなく、脚本も書いたことがないから、脚本の読解力もないし、分析能力もないわけです。そんな人が脚本について意見をするって恐ろし過ぎませんか?

それが、今回のプロデューサーは二人とも監督なわけです。しかも確かな演出力を持った。その人たちがクリエーションに関してプロデューサー的な視点から言ってくる。これほど頼もしいことってないんです。お2人とも監督をやってるんで、僕が言われたら嫌なことってわかってるんです。
監督って基本、褒めて欲しいんです。「ここがさぁ」って指摘されると、「いやあ..」って反発したくなるんです。そこをわかっていて、僕がカチンと来ないようにうまく転がすような進め方をしてくれているのが、やはり、お2人は経験があるからこその言葉選び。自分が今まで言われてきて、素直に従いたくなくなるような感じの言葉を避けて、言葉を選びながら言ってくれてるんだなって強く感じました。

▼『由宇子の天秤』に片渕監督が出演!?

片渕須直P
松島もさ、ひどいこと言っててさ。「塾の先生役、由宇子のお父さんは、片渕がやればいいんじゃないか?」って。それはないなと思いつつも、春本監督が、「タイプが違います」っていう否定の仕方をして、演技力のことを問題にしなかったんです。同じようにここをおさえると凹むなってお互いわかってるなと。

由宇子の天秤
片渕須直プロデューサー

春本雄二郎監督
それを言われまして、これをマジで言ってるのかどっちなんだろうっていうのがありました。でも、片渕監督が演技したら、意外とうまいのかなとちょっと思いました。でも、僕の頭の中のイメージとちょっと違うっていう。

片渕須直P
実際違っててね。三石さんじゃないとあれはああいう風にならないから。そんなところは全然欲を出すところじゃないんですけどね。
っていうか、俺がなんでそんな所に抜かれたんだろうって思いました。

春本雄二郎監督
そういうことが確かにありました。「松島舌禍事件」ですね。

▼俳優部の芝居と呼吸


春本雄二郎監督
今回は俳優部が本当によく頑張ってくれたなと思います。三石さんがいてくれたからこそ、他の若い俳優部が安心して芝居をできたというか胸を預けられたというか、芝居ってやっぱり、皆さん、呼吸なんですよ。片方だけじゃ駄目で、片方が上手くても、その相手が呼吸というか、相手のリアクションを受け取ってのキャッチボールなんですよね。自分が投げたボールを相手がしっかりと受け止めて、相手もその球に対しては俺はこういったものを投げるよって、心の中でちゃんと会話をしているってことですね。
それが片方だけが上手いと無理なんです。160キロの剛速球や、すごいナックルを投げるピッチャーがいたときに、キャッチャーが下手くそだと、どうしようもないですね。取れないから、せっかくいい球投げてくれるのにそれをストライクにできないことがあるんです。ただ今回は三石さんという強大なキャッチャーがいたんで、もうピッチャーはどんな球を投げようが確実にストライクにしてくれるんです。

片渕須直P
塾の教室のあの雰囲気みたいなもの、あの静まりかえり方が印象的だったと思います。それは三石さんが黙っていても、そこにものすごい雰囲気があって、その場所の空気ができるみたいな。何かすごい場面になっていたなと思います。

▼現実を相手に映像化する仕事の怖さについて

片渕須直P

昨日、映像の仕事をされている方に『由宇子の天秤』の話をこれなんですけど、「明日から上映なんですよ」っていったら「これはどんな話ですか?ドキュメンタリーですか?」と聴かれたので、「ドキュメンタリーを作っているディレクターの映画です」って言ったら、「こえー」って。「こわいなー」って。つまりね。

現実を相手に、それを映像化していく仕事ってね。一歩間違えると踏み外す場面が待っていると思うんです。すごい意識しながらやってる仕事なんだということを、その「こえーっ」というひとことから分かりました。すごい真面目な方なんです。改めてそういった部分が、この映画の何か大事なところを占めている。天秤のその一番のその軸のところなんだなと思いました。

それから春本監督が脚本を書くときにそのドキュメンタリーのディレクターの方に取材されたんですけれども、その方々の中に映画の完成とご覧になる前に亡くなられてしまった方がいらっしゃいます。

春本雄二郎監督

ご病気で。

片渕須直P

「誰だったのって?」て聞いたら僕のTwitterの…

春本雄二郎監督

そうなんですよ。Twitterのフォロワーで。

片渕須直P

Twitterの相互フォローしている方で、「『この世界の片隅に』はすごい良かった」っていうことを言ってくださってる人だったりして、何かそういうご縁で何か包まれていたんだなと、改めて思いました。

その人たちはドキュメンタリーのディレクターなんだけど、ドキュメンタリーのディレクターが失敗していく映画について、ものすごく親身にアドバイスしてくださって、それが“ドキュメンタリーを作る”っていう、その心根なんだろうなって思いました。

▼春本監督からのメッセージ

春本雄二郎監督

自浄作用というかですね、自分自身の行為が正しいのか正しくないのかということを常に疑いの目を持ちながら、カメラを対象者に向けると。カメラの対象者に向けるという暴力性についても十分に意識をしていると。今一度考えていただければと思います。

この映画は私が一番言いたいこと・表現できてよかったなと思っていることは、真実は多面的なものではないだろうか、ということです。

誰かから見た真実は他の人から見たら真実ではないかもしれない。自分から見えている真実は、他の角度から見ると違うふうに見えるかもしれない。そういった視点を、今この超情報化社会の中で、普段最適化された情報しか流れてこない状態になっていることに無自覚の私達が、想像を膨らませ、これがもし何か自分たちがつまずいたときに、石を投げられる当事者になったときに、もう一度歩み出せる、社会を育んでいく、一つのきっかけになるんじゃないかっていうふうに思います。

ぜひ皆さんの言葉でこの映画の感想をTwitter等のSNSでつぶやいていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ご鑑賞いただきましてありがとうございます。


■映画『由宇子の天秤』

瀧内公美  河合優実 梅田誠弘 川瀬陽太 丘みつ子 光石研
脚本・監督・編集:春本雄二郎 プロデューサー:春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
キャスティング:藤村駿 ラインプロデューサー:深澤知

撮影:野口健司 照明:根本伸一 録音・整音:小黒健太郎 音響効果:松浦大樹 美術:相馬直樹 装飾:中島明日香 小道具:福田弥生 衣裳:星野和美 ヘアメイク:原田ゆかり
製作:映画「由宇子の天秤」製作委員会  製作協力:高崎フィルム・コミッション 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
配給:ビターズ・エンド 2020/日本/152分/カラー/5.1ch/1:2.35/DCP ©️2020 映画工房春組 合同会社

映画『由宇子の天秤』は9月17日から公開。動員1万人突破。全国で上映館拡大中。

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