映画『雨降って、ジ・エンド。』古川琴音インタビュー。自分にとって初主演映画になると思い、気合を入れて挑んだ。

映画『雨降って、ジ・エンド。』古川琴音インタビュー。自分にとって初主演映画になると思い、気合を入れて挑んだ。

2月10日(土)より、映画『雨降って、ジ・エンド。』がポレポレ東中野ほか、全国順次公開。孤高の映像ユニット「群青いろ」による17年ぶりの劇場公開作品。フォトグラファーを夢見る日和役に古川琴音。ピエロのようなメイクをした雨森役に、「群青いろ」の廣末哲万。
今回、古川琴音さんにお時間をいただき、本作出演の際を振り返るとともに、彼女自身についても語っていただきました。

■ 映画『雨降って、ジ・エンド。』古川琴音インタビュー

▼本作出演にあたって

-本作出演に至るまでの経緯を聞かせてください。脚本家の髙橋さん、俳優の廣末さんの映像ユニット「群青いろ」の作品への出演された当時、ご存じでしたか?参加にあたっての思いなどを含めてお聞かせいただければと思います。

古川琴音
映像ユニット「群青いろ」について、当時は存じ上げていなくて、最初にマネージャーから台本をいただいて、「この監督のオーディション・面談があるけど、行ってみますか?」という話がありました。
それで最初に台本を読んだときに主人公の女の子の役だっていうことは事前に聞いていたので、「これをもしやることになったら、この作品が自分の初主演の映画になるんだな」と思いました。
物語序盤のコメディー感やポップさは、すごく自分っぽいというか、自分に合っているなと感じ、読んでいて自分が演じる想像ができたんです。だからぜひ参加したいという気持ちで監督に会いに行きました。

-事前に台本はご覧になっていたんですね。結構難しいテーマも含まれているので、考えることや葛藤みたいなものはありましたか?

古川琴音
そうですね。台本を読んだときは日和の行動に驚いたというか、雨森さんに「告白しようよ」と言ってしまったことに対して、これはいいのかな、どうなのかなっていうのは自分の中にあったんですが、日和の気持ちとして、世間的に良いか悪いかは置いておいて、自分とこの人の関係の中で正解を作っていく、探していくというよりも、2人で正解を作っていく姿に私は勇気をもらえました。

-先日、群青いろの髙橋さんと廣末さんのインタビューを先におこないまして、オーディションのときの話をうかがいました。オーディションで古川さんの番が来た時に、「日和が現れた」というコメントがありました。そのオーディションはどんな感じだったか、覚えていることをおしえてください。順番的には最後だったそうです。

古川琴音
監督面談という形で、監督といろいろなお話をさせてもらいました。自分がどういうことを考えていて何が好きかなど、そういった自分のことを知ってもらうお話をして、ワンシーンだけ本の読み合わせがあったと思います。

ーオーディション自体の手応えはいかがでしたか?うまくできた・できないなど感覚的なものはいかがだったでしょうか?

古川琴音
課題を演じて…という形ではなかったので、実感としてはわからなかったです。でもすごく自分自身のことが見られているんだなという感じはしていました。
監督の中で、私と日和と重なる部分があればいいなと思いながら話していました。

-そこが見事にマッチした感じなんですね。出演が決まったときはいかがでしたか?

古川琴音
ほっとしました。やりたいと思っていた作品だったので、オーディションに挑むときはもうほとんど自分がその役をやる心づもりというか、気合を入れて行ったんです。それが現実になって、ひとまずほっとしました。

▼役者を目指したとき

-今回の上映にあたってのパンフレットのインタビューなどを読ませていただいて、古川さんが演劇・映像の世界に入ったのは就職活動がきっかけといったことを知りました。中高大とお芝居を続けられて就職活動をするとなると、進路の選択に悩まれたのではないかと思うのですが、当時どのように考えていたのでしょうか?

古川琴音
厳密に言うと就職活動の前にチャレンジしてみようという気持ちだったんです。なのでどこの企業に入るとかといった深いところまでは考えていませんでした。他にもいろいろな習い事もやってはいたのですが、中高大と続けてこれたのがお芝居しかなくて、長く続けられていて、自分で言うのも恥ずかしいのですが、周りの人からよかったよと褒めてもらえるのがお芝居でした。なので、これは自分の得意なことなのかなって客観的に考えることができていたんです。
だからやりたいという気持ちももちろんありましたが、自分の得意なことなのではないかという思いもあり、挑戦する気持ちで、事務所のオーディションを受けました。

▼日和を演じるにあたって与えられたカメラと写真撮影

-演じられた日和はフォトグラファーを目指す役で、撮影前には実際にカメラを渡されて、シャッター切ったといった話を目にしました。それまでカメラに触れることはありましたか?
カメラに初めて触ると、なにを撮ればいいだろう…とか、写真を撮影する難しさのようなものを感じられたのではないかと思うのですが、カメラを渡されてどのように写真を撮りすすめていったのでしょうか?

古川琴音
私が演じた日和は自分のポートレートを撮る人だったので、基本的には遠隔操作のボタンを持って自分を撮っていました。「自分を撮るってどういうことなんだろう…自分のどういう写真が撮れたら満足するんだろう…」みたいなことを考えていたような気がします。
自分がかっこつけすぎて写っていたら、それは自分が見たときに気持ちが悪いし、さっきも自分の撮った写真を見返していて思ったのですが、少しダラけたというか、なるべく自分の素が写っていて、かつ、写真に残すからには、「綺麗だな」って自分で思えるような写真を撮りたいと思いながら撮っていました。

ただ、ポートレートは遠隔で撮っていたのですが、雨森さんを撮るときは、自分でレンズを通してファインダーを覗きながら撮っていて、そうすると肉眼で見たときの印象と、カメラで撮ったときの印象にズレがありました。
いいと思ったアングルで構えているはずなのに、それを捉えるのが難しかった記憶があります。

-私も写真を撮るので、肉眼とカメラのレンズを通してのズレという点、よくわかります。
カメラはその後も続けられていらっしゃいますか?

古川琴音
続けてはいないのですが、スマートフォンで写真は撮っています。

▼音楽、アニメについて

-本作の劇中で「ロマンティックあげるよ」という曲が出ていて、口ずさむシーンなどもありますが、この曲はアニメ「ドラゴンボール」のエンディング曲として使われていました。脚本家の髙橋さんがアニメが好きでこの曲を選んだといった話があったのですが、この曲はご存知でしたか。曲を聴いて、歌詞について考えたことはありますか?

古川琴音
知らなかったのですが、曲を聴いて本当にこの映画そのもののような歌詞だなと思いました。最初は、なんだか雨森さんが日和に新しい世界を見せてあげるよっていざなってるようなそんな歌詞に感じていました。
けれども物語の後半は、日和が雨森さんを引っ張っていくというか、雨森さんに違う世界を見せてあげたいという日和の気持ちが歌詞になっているような気がしました。
なので、2人の曲なんだなって思いました。
日和にかけてもらっている言葉でもあるし、日和が言っている言葉でもあるという、そんな感じです。すごく好きな曲になりました。

-ちなみにアニメや漫画をみることはありますか?もしよろしければ、作品名などもおしえてください。

古川琴音
最近いいなと思ったのは『BEASTARS』(ビースターズ)というアニメです。登場人物が全員動物で、草食獣と肉食獣の共学の学校があって、でも共生しなければいけないので、肉食獣が本能を抑える薬を飲んでいたり、お肉は大豆タンパクでできたものが食堂に肉食獣用のメニューとして置かれていたり、そういう面白い設定もあるんです。
ドラマが生っぽいというか人間らしくて、主人公の狼は強いことがコンプレックスで自分の強さを恨んでいるというか、隠すのに苦しんでいるんです。そういうカットの仕方に共感するし、動物だから見ていられるのかなっていうぐらい、生々しい人間ドラマです。
ちょっと不思議なバランスの作品で面白いんです。
その動物の特性がうまくそのキャラクターの性格に反映されているので、それが「そういう人っているよね」って人間にも共通するというか。

-ありがとうございます。観てみますね。

▼古川琴音さん自身の質問(好きな色、好きな画家・イラストレーター)

◆好きな色について

-古川さんご自身について質問してみたいと思います。今回の作品は色や光が特徴的だと思うのですが、ご自身が好きな色や理由を聞いてみたいと思います。

古川琴音
今好きな色は山吹色です。最近買ったソファーのクッションが山吹色で、今日気づいたんですけど、うちの猫の目も山吹色だったんです。それとほとんど同じ色で、黄色系って元気が出る色ですけど、山吹色ってちょっと影もあるから、そこまで盛り上がらなくていいというか、自分もローなテンションだから、そのテンションにあった山吹色ってなんかいいなと思いました。

-確かに黄色というと元気や陽気さをあらわす色のイメージがありますが、山吹色となると、日本の伝統色というか、映像ユニット「群青いろ」にも話が重なるようなイメージが浮かびました。

◆イラスト。好きな画家・イラストレータについて

- インスタグラムを拝見させていただいて、アカウント名も“琴音”に合わせたHarp Toneというのが素敵だなと思いました。ご自身でイラストを描かれているのを見つけたのですが、絵を学んだことがあるのでしょうか?

古川琴音
いいえ、学んだことは無くて、適当に描いたものを載せただけです。今はあまり描いていないのですが、そのイラストを描いた当時は女の子を描くのにすごくハマっていました。

-好きなイラストレーターさんがいらして、模写とかをされているのかなとも思ったのですが、好きな画家やイラストレーターの方はいらっしゃいますか?

古川琴音
模写はしていないのですが、好きな画家やイラストレーターさんはみんな女の子を描いています。だから多分それに影響されて私も描いたと思います。
好きな画家は上村松園(https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/4126/)さんという日本画家の人で、その人も女性をたくさん描くのですが、その人の描いた日本人の女性が本当に綺麗なんです。和装の女性をたくさん描かれていて、乱れた髷(まげ)からちょっと落ちている髪までも綺麗なんです。

好きなイラストレーターさんは、NAKAKI PANZ(https://nakakipantz.flag.gg/)さんです。
女の子をたくさん描いている人なのですが、最近リバイバルされているアニメ『うる星やつら』のオープニングテーマ曲のミュージックビデオに使用されているイラストを描かれていて、そのラムちゃんがすごく好きでした(参考 https://x.com/PANTZ41/status/1580383918184099840?s=20)。

ーたなかみさきさんも好きそうですね。

古川琴音
たなかみさきさんも好きです。
ちょっと色気のある女の子を描かれている。
確かにそうですね。

-古川さんのイラストから好きそうだなというそんな雰囲気を感じました。

▼アフレコでの出来事

-群青いろのお二人からうかがったのですが、録り直しとなったアフレコの部分で、
すごく、群青いろのお2人が感銘を受けたというか、すごいと思ったことをうかがいました。ファーストテイクの良さがあるのでそれを使いたかったんですけれども、やむを得ず録り直しをしなければいけないとなったときに、アフレコを入れた古川さんがとてつもなく良かったということでした。

古川琴音
どっちが良かったんだろう…。本編より良かったら、それはそれで複雑な気がしますが。

-お二人の話しからすると、「ファーストテイクと同じものが出てきた」というお話をされていました。つまり、初め(本編)の良さが撮り直しでも、もう一度出てきたそのこと自体がすごかったということらしいんです。
その辺りで、意識されていたことや覚えていらっしゃることはありますか。

古川琴音
アフレコのときに初めて映像での自分を見たのですが、多分それで撮影時の感覚を思い出せたのかなと思います。

-そこで初めてご自身の姿をカメラ側からみるわけですものね。

古川琴音
演じているときは自分の中から出るものに集中するんですけど、アフレコのときはその画で見たときの印象をそのまま声に出すようなイメージなのかなと思います。

-私自身では得られない感覚なので、お話をうかがっているとすごく新鮮です。

▼共演された廣末さんの印象

-メインの共演者となる廣末さんの印象だったりとか、お芝居をしての感想みたいなものを聞かせていただければと思います。

古川琴音
ピエロの雨森さんの印象があまり廣末さん自身と変わらないというか、廣末さん自身に対してずっとユーモアがある方だと思っていました。劇中に2人で笑い合うシーンがたくさんあるんですが、それは、半分アドリブでやっているようなところもあって、例えば公園で、「屁をこいたんじゃなくて、こかされた」って2人で言いながら笑うところも、台本だと何回か言い合って笑うって書かれていたと思うんですけど、お芝居では確かふたりで踊っていたと思うんです。盆踊りのようになっていったみたいな、そういう動きとかもあって、廣末さんの動きにいざなわれて勝手にそういうテンションになっていったりとか、演じているときも演じていないときも、その境目があんまり廣末さんには見えなかったです。

-常に自然な感じなんですね。

古川琴音
いつもそのままな感じでした。

▼メッセージ

-映画を観にいらっしゃる方へのメッセージをお願いします。

古川琴音
どういう映画だといえばいいでしょうかね…。
きっと、映画を観た方は驚かれるだろうなと思います。

-驚くというのは?

古川琴音
急展開に驚かれると思うのですが、私も台本を最初に読んだときに驚きました。
でも、日和が初めて自分の人生を自分で歩もうとしたその一歩の話でもあると思うんです。
そういう日和の勇気に私自身もすごく勇気をもらったので、今もいろいろと考えることはありますし、何か正解を求めようとすると、わからなくなっていくんですけど。
でもこの2人の生きざまというか、生き方というか、そういったところを温かく見てもらえたら嬉しいなと思います。

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▼ポレポレ東中野 上映情報

<公開初日~上映最終日>
2024年2/10(土) 〜 3/8(金)

<最終日>
2024年3月8日(金)

<タイムテーブル>
3/3(日)~3/8(金) 21:10
*3/2(土)のみ 21:30

※3/2(土) 『雨降って、ジ・エンド』は『彼女はなぜ、猿を逃したか?』のトークイベントの為、21:30開映。

<イベント情報>
3/6(水・サービスデー) 21:10の回上映後、Q&A
廣末哲万(本作出演)、髙橋泉(本作監督)

3/8(金) 21:10の回上映後 最終日舞台挨拶
廣末哲万(本作出演)、髙橋泉(本作監督)


映画『雨降って、ジ・エンド。』

STORY……
フォトグラファー志望の日和は、偶然撮ったピエロ男・雨森の写真がSNSで大バズり。さらなる「いいね」を求めて雨森に近づくうち、日和の思いはいつしか恋心へと変わっていくが、雨森には想像を絶する秘密があった……。それぞれが心に秘めた「思い」を相手にぶつけ合ったとき、未知の扉が開き、淡色の世界はカラフルに色づいていく。

出演:古川琴音、廣末哲万、大下美歩、新恵みどり、若林拓也

監督・脚本:髙橋泉|音楽:平本正宏|撮影:彦坂みさき|照明:金子秀樹|録音:皆川慶介|美術:泉佳央里|衣裳:石原徳子

ヘアメイク:南辻光宏|助監督:菊地健雄|プロデューサー:齋藤寛朗|企画:群青いろ|制作:カズモ

配給:カズモ 宣伝:MAP+山口慎平  

2020/日本/カラー/84分/5.1ch/ビスタサイズ 
公式HP :amefuttetheend.com 
公式X: https://twitter.com/amefuttetheemd 

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