『おいしくて泣くとき』の横尾初喜監督最新作、映画『いろは』(5月22日公開)は、長崎を舞台に、妊娠して父親探しの旅に出る自由奔放な姉・花蓮と、それに巻き込まれる内向的な妹・伊呂波の不器用な姉妹の絆を描いた青春ロードムービーです。本作で正反対の姉妹を演じたのは、本作が初主演となる川島鈴遥さんと、実力派として注目を集める森田想さん。全編長崎ロケという濃密な環境の中で、二人はどのように役と向き合い、互いに影響を与え合ったのでしょうか。撮影の裏側や役作りについてたっぷりとお話を伺いました。

■ 映画『いろは』川島鈴遥×森田想インタビュー
お二人の名前の由来
インタビュアー:当サイト(1st Generation)恒例の質問です。みなさんのファーストイベントとなる“名付け“という観点から、お二人の名前の由来を教えていただけますか?
川島鈴遥(以下、川島):私は母から「遠くにいても、自分の鈴の音色で輝けるように」とつけてもらいました。表現の道に進んだからか、この名前に導かれているような気がします。
森田想(以下、森田):私は「人のことをおもいやれる子に」という意味です。母が「ここちゃん」という音で呼びたかったらしくて。苗字と名前で「木」がつく漢字が多いので、自然が好きになって良かったなと思っています。

脚本と現場での印象の変化――「殻がない」妹と「器用に見える」姉
ー:台本を読んだ時と実際に演じた後で、ご自身の役や相手の役に対する印象は変わりましたか?
川島:台本の時点では、私が演じる伊呂波はすごく弱くて、殻にこもっているというより、中身がないからこそ自信が持てない、ふわふわした女の子だと思っていました。でも、実際にお芝居をしていく中で、実は芯があるからこそ、それをうまく言葉で伝えられないもどかしさを抱えているんだと気づかされました。姉の花蓮についても、最初は強くて意地悪なお姉ちゃんかと思っていたのですが、実はすごく優しくて、出力の仕方が不器用なだけでした。お芝居を通して「私、お姉ちゃんのことこんなに好きだったんだ」と気づかされる瞬間がたくさんあり、その姉妹感が現場にいてとても愛おしかったです。

森田:私も、自分の演じる花蓮は、もっと逞しくて色々な場所で味方をつけるのが得意なタイプだと思っていました。でも実はそうではなく、ほんの少しの要素で上手く渡り歩いているだけで、自分自身でも自分のことがわかっていないような部分があったんです。伊呂波に対しても、ただ当たりが強いから嫌われているのかと思いきや、感情的に似ている部分もありました。物理的に離れていたことで思いが通じ合わなくなっていた二人が、一緒に時間を過ごすことで心が溶けていく。最初の印象と最後の立ち位置が逆転していく姉妹像がとても面白いと感じました。

想定外だった感情の揺さぶりと、現場で生まれる生きた掛け合い
ー:森田さんは以前、「妹を自由奔放に振り回すつもりが、一緒になって揺さぶられた」とコメントされていましたが、これはどういうことだったのでしょうか?
森田:花蓮は妊娠という不安の中で、父親候補の3人に会いに行くのが普通に怖いんです。でも一人では行きたくなくて、強引な理由をつけて伊呂波を引き連れていきます。最初は着替えさせたりしてイベントっぽく楽しんでいて、自分でもどうしていいかわからないから「強いお姉ちゃん」のままでいようとしていました。でも、3人の男と会ううちにその鎧が崩れ、弱さを妹に見せてしまう。そこで伊呂波から強い言葉や本音をぶつけられ、こっちも堰を切ったように感情が溢れ出してしまいました。自分でも意図していなかったところで脆い部分を突かれ、自分の内面と向き合うことになり、想定外の揺さぶりを受けました。

ー:川島さんは、その揺さぶりに対してどう返そうと考えていましたか?
川島:事前に「こう言おう」と考えるよりも、想さんがお姉ちゃんとしてそこにいてくれるという絶対的な信頼があったので、私は素直にただそこにいるようにしていました。プランを立てるというより、“現場で感じたままに返したらああなった“、という感覚に近いです。

ー:今回が初共演のお二人ですが、お互いの印象はいかがでしたか?
川島:ずっと憧れの存在だったので、現場でどうお芝居を考えているんだろうと気になっていたのですが、想さんはいつセリフを覚えているんだろうと思うくらい早くて、常に余裕があってかっこいいんです。私は一言一句間違えないように必死だったのに、想さんは完璧にお芝居されていてすごいなと思いました。
森田:私は現場で感じたことを反射で返したいタイプなのですが、鈴遥ちゃんもそれが似ていると思いました。今回の役は、お互いがやってくることを受けてなんぼというか、リアルな反応が大事な作品だったので、その準備がお互いにできていたことがすごくやりやすかったです。鈴遥ちゃんは長崎の現場への溶け込み力も高くて、伊呂波の処理できないモヤモヤした感情を体全体で表現するのがとても上手でした。
相手の熱量に引き出された、役者としての瞬発力
ー:お互いのお芝居に刺激されたシーンはどこでしたか?
川島:第2の男と別れて、車に乗るまでのシーンです。花蓮を追いかけている伊呂波からはお姉ちゃんの背中しか見えていなかったのですが、想さんが現場でずっとお姉ちゃんとしての姿を築いてくれていたおかげで、背中と声だけでも感情がすごく伝わってきました。役者として本当に尊敬しましたし、想さんがいたからこそこの作品が仕上がったと思っています。

森田:私は、第3の男に妊娠の事実を告げた後、伊呂波がその男に対して怒るシーンですね。伊呂波がどれくらい怒るのか想像できなかったのですが、本当に鈴遥ちゃんがお姉ちゃんのために全力で怒ってくれたんです。花蓮としては余裕がない場面だったのですが、鈴遥ちゃんが向けてきた視線やセリフの熱量に影響されて、私の表現も全く意図せず変わっていきました。
キャラクター作りと取り組み
ー:伊呂波は周囲を分析するキャラクターですが、川島さんご自身は今回の役をどう分析して臨みましたか?
川島:伊呂波は内向的や劣等感といった要素を持っているのですが、逆にそれに囚われないようにしました。現場で色々な人と対峙して自分が演じる伊呂波がどう感じたかを大事にしたくて。言葉以上にエネルギーの交換をする作品だと思ったので、「こうあるべき」というものを持たず、現場にフラットにいようと意識しました。
ー:森田さんは、3人の男それぞれに対するキャラクター作りについてどう考えていましたか?
森田:花蓮は、第1の男に対しては外面の良さを出し、第2の男に対しては少し機嫌を伺うように浮かれていて、第3の男に対しては無意識に献身的になっていました。彼女自身は意図してコロコロ変えているわけではなく、相手に好かれようと無意識に合わせていたんだと思います。だからこそ、本来の自分がどこにいるのかわからなくなって葛藤する。使い分けというよりは、その落差を意識して演じていました。

長崎の地で育まれた、本当の人生のような時間
ー:森田さんは「本当の人生の時間軸のように感じた」とコメントされていましたが、これは長崎での撮影が影響しているのでしょうか?
森田:そうですね。順撮りだったことも大きいですが、長崎という知らない土地で、鈴遥ちゃんや監督、スタッフの皆さんと1日1日、1歩ずつ仲良くなっていきました。全員が思いやりを持って近づいていく過程と、作品の中の姉妹の会話がリンクして、自分の人生の中で起こっている出来事のように近い感覚になりました。
川島:私も同じで、順撮りで仲良くなっていったことも含めて、役も撮影期間も現実の時間とリンクして、本当に長崎に住んでいるんじゃないかと思うくらい身近に感じました。
ー:川島さんは「ご褒美のような時間」ともおっしゃっていましたね。
川島:初主演というプレッシャーはありましたが、それを負わずに現場でお芝居ができたのは、監督やキャスト、スタッフの皆さんのおかげです。本当に穏やかで優しくて温かい人たちに囲まれて伊呂波を演じられたことは、役者人生の中で本当にご褒美だと思っています。

スタイリスト 後藤加奈枝(川島鈴遥)、入山浩章(森田想)
ヘアメイク 成美(川島鈴遥、森田想)
映画『いろは』
【スI•’ーリー】
将来が見えず、今の自分にどこか納得できないまま長崎•佐世保市の実家で暮らす22歳の伊呂波(いろは)。
ある日、5年ぶりに姉•花蓮が帰ってくる。自由奔放で恋愛体質、いつも大胆に人生を選んできた姉。しかし彼女が抱えていた のは、「妊娠した。でも父親が誰かわからない」という現実だった。心当たりは三人の男たち。自意識過剰な御曹司、バツ2の ワケアりおじさん、借金を抱えた大学生5年生。どの関係にも“愛”とは言い切れない曖昧さが残っている。半ば強引に父親探 しへ同行させられた伊呂波は、姉とともに長崎の各地を巡る旅に出る。
なぜ姉は、傷つくと分かっている恋を繰り返してしまうのか。旅のなかで伊呂波は、恋愛の裏側にある孤独と承認欲求、そし て強く見えていた姉の本当の姿を知っていく。そして、男性に会うにつれ、伊呂波が抱える劣等感も浮き彫りになっていきーー
【キャスト•スタッフクレジット】
川島鈴遥 森田想
遠藤健慎 山口森広 田川隼嗣 石本愛 長崎亭キヨちゃんぽん
田中明日実 石長由紀子 明石純美玲 吉田ひかる 小宮みどり 宮崎裕子 加々良宗澄 井上真緒 中山祐太 若杉康平
金子大地(声の出演)
遠藤久美子 鶴田真由
監督:横尾初喜 脚本:藤井香織 音楽:上田壮一
エグゼクティブプロデューサー:高田大 枝折祐紀 川口福太郎 諏訪貴彦 外間広ー
プロデューサー:加藤毅 福田済
撮影:松本康平 照明:前田香奈 美術:渕上聖 録音:木戸翔太 スタイリスト:芦原豪 ヘアメイク:成美 制作担当:長沼優可 編集:松山圭介 サウンドデザイン:安藤友章 音響効果:梅本佳夏 カラーグレーディング:上野芳弘 デザイン:おかもとゆりこ 製作:BLUE.MOUNTAIN 配給:BLUE.MOUNTAIN / LUDIQUE 助成:文化庁 ©2026 BLUE.MOUNTAIN
©2026 BLUE.MOUNTAIN
公式 HP http://iroha2026.com
公式X https://x.com/blue mountain_7
公式インスタ https://www.instagram.com/Hue.mountain inc/
5月8日(金)長崎先行公開
5月22日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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