映画『ラフラフダイ』 松本卓也監督、イグロヒデアキインタビュー

映画『ラフラフダイ』 松本卓也監督、イグロヒデアキインタビュー

4月15日(土)~21日(金)までの期間、映像制作チームのシネマ健康会 松本卓也監督の新作長編映画 『ラフラフダイ』が新宿K’s cinema にて1週間限定の特別レイトショー、全国順次公開予定。松本卓也監督とイグロヒデアキさんにお時間をいただき、本作製作の経緯や撮影時のエピソードなどをうかがいました。

ラフラフダイ

■ 松本卓也監督、イグロヒデアキインタビュー

▼制作の経緯

-本作製作の経緯を教えてください。監督のコメントによると、2012年よりも前から温めていた企画だそうですが、どういったことをきっかけで、今回の『ラフラフダイ』に繋がる企画が立ち上がっていったのでしょうか。

松本卓也監督
僕は、M・ナイト・シャマラン監督作品が大好きで、ホラーなのに笑いの要素も含む表裏一体、といったジャンルが面白いなと思っていました。
そのような中で、笑いまくって死んでしまう伝染病「笑い死に」が流行り、恐怖で世界が笑いを禁止する、というアイディアにつながりました。しかし、このB級SFっぽい企画はお金がかかるので、「なかなか撮れないよな」と思いながらずっと温めていた企画だったんですよね。
B級映画がA級映画を倒すぐらいの面白さになることが僕の一つの夢です。B級なんだけど、観てみたらA級を倒すような映画って爽快なので。そういう話になると思ってずっと温めていた企画でした。

-壮大な設定なので、撮影時期を待っていたそうですが、その設定は『ラフラフダイ』で網羅できたのでしょうか。

松本卓也監督
制作に入るまで時間がかかっていた一番の理由は、お金の調達の問題でした。“SF的な部分”と、“全世界”ということが重要だったので、自分の中ではどうしても、自主製作映画で、自腹で制作するのは難しいと思っていたのですが、新型コロナウイルスがやって来たタイミングで、いろいろなことが重なって、それがケツを叩く要因になりました。

早くやらないと古くなると思ったんです。「10年も前から温めているのに、今やらないと、いまさら何やってんだよ」となってしまう怖さがありました。お金の面では、ARTS for the future!(AFF)というものが、文化庁の支援策としてあったので、「もうこのタイミングしかない!」と思って撮りました。

自分が元々思ってた壮大な雰囲気に届いているかというと、予算規模では厳しいかもしれませんが、やりたいことはこの時期に出せて、良いものが撮れた・出来たと思っています。

低予算でもインディペンデントならではの面白い映画っていうのをやってきたんですけど、『ラフラフダイ』については、お金がないなりに、お金をかけて、最低限の世界観作りをやってみました。

ラフラフダイ

ーコロナウイルスや世界の状況が、『ラフラフダイ』の 世界観と重なる部分がとてもありますよね。

松本卓也監督
元々あった企画とはいえ、古くなる危機感と同時に、新型コロナを体験したからこそ、付け足された部分がかなりあるので、本当に出せてよかったです。いま自分が体験したものと昔から温めたものを融合して出せたリアリティは本当に今しかないなと思います。よりパワーアップしたというイメージがあります。絵空事ではなかったという。

-企画はご自身の中だけで温めていたのでしょうか?

松本卓也監督
公の話をすると、ショートショートフィルムフェスティバルでピッチコンテスト

(参考:https://www.shortshorts.org/content/creators/6941/)があって、

日本だとあまり、ピッチコンテストという言葉は有名じゃないんですけど、海外的には有名らしいんです。

そのショートショートフィルムフェスティバルでは、審査員の前で英語でプレゼンをするんです。それが7,8年…いや10年くらい前だったかもしれません。その企画については周りの人には結構話していたので、イグロさんも知っていたんじゃないかな?

イグロヒデアキ
僕は知らないですね。

松本卓也監督
当時、ショートショートフィルムフェスティバルのピッチコンテストに参加していた監督には、今回、Facebookに『ラフラフダイ』について書いたときに、「あれ、ついに撮ったんだ」って言われまして、「そういえばピッチコンテストで俺やったな」と思い出しました。

イグロヒデアキ
そのコンテストの結果はどうだったんですか?

松本卓也監督
それは別の手堅いところがとっていきましたね。そこで認められると、ハリウッドが見学できるんです。僕が駄目だったのは、まあ当たり前なんですけどね。

片言の英語と、急に笑い出して死ぬみたいなとこからスタートして、「こんなのあったらやばくないですか!?」といったことを話して、笑いはちゃんと取りました(笑)

▼松本監督とイグロヒデアキさんの出会い

-監督とイグロさんが、いつ頃であったのかを聞かせてください。監督が1976年生まれで、イグロさんは1982年生まれですよね。松本監督はお笑いを高校生の頃からはじめていて、イグロさんは小劇場での演劇をされていたということで、どのあたりから接点があったのかが気になりました。

イグロヒデアキ
私の知り合いの役者さんから、「知り合った監督と飲み会をやるんだけど、そこが“基地”みたいなんだ。」という話を聞いたんです。

それを聞いて、「“基地”???」と思いました。

よくわからないものの、お誘いされたので、「行ってみるか…」と、行ってみたら松本監督がいたんです。

松本卓也監督
2010年くらいですかね?

イグロヒデアキ
私もその頃飲み会が好きだったんで、喋っていたら仲良くなって、そこからたまに連絡がくるようになりました。

松本卓也監督
僕は島が好きで、その頃から何年かずっと、ライフワークのように離島の盛り上げ役をやっていたんです。新潟の粟島という人口300人ぐらいの小さな離島なんですけど、そこで映画を撮ったことがきっかけで、映画を撮ったこととは関係なく、毎年1回のお祭りを盛り上げに行くことをやっていました。島の方から呼んでいただいたんです。

最初にイグロさんと知り合いになった頃は、映画とは関係なく一緒に盛り上げに行っていましたね。それが彼との一番レギュラーのお仕事でした。

イグロヒデアキ
私はその頃は舞台ばかりだったので、いわゆる“監督”という方と知り合う機会がなかったんです。その機会になるかと思って飲み会に行ったと思うんですけど、知り合って何かしらお話をくれるかなと思ったら、最初の声がけは、「粟島の物産展を東京でやるから手伝わないか?」というお誘いしかありませんでした。「盛り上げたい。島に行くんだ」、「じゃあ行きます」という感じで、作品というよりは離島関係の話ばかりでした。

それが何年か続いて、作品としては、2014年の『帰ろうYO!』が作品としては初だと思います。簡単な作品のオファーはちょこちょこあった気がするんですけど、前日にオファーが来るスピード感に慣れていなくて、「すみません無理です」みたいなことを続けていました。ただ『帰ろうYO!』の時には、頑張って予定を何日間か空けて、やっと映画に参加できたということがありました。

ラフラフダイ

-イグロヒデアキさんが監督された『マツモティアンドリーム』(2016)の方が先かと思ったら、違うんですね。

イグロヒデアキ
その後ですね。『マツモティアンドリーム』は 見た人がなかなかいない貴重な作品です。

松本監督が撮った作品の第2弾を撮るときに、松本監督がそのプロデューサーに私を4、5番目くらいに推薦してくれたんです。

その話にプロデューサーが乗ってくれて、僕に話が来たんです。でも僕に監督の経験がなかったので、松本監督が「渋谷国際映画祭」という、役者と監督が組んでやる企画をすすめてくれたので、松本監督が主役で、私が脚本を書いたのが『マツモティアンドリーム』です。

-イグロさんのプロフィールには、「2016年、映画監督活動を開始」といった記載がありますね。

イグロヒデアキ
監督経験がないのに、松本監督の推薦で、そのプロデューサーが受け入れてくれたことにびっくりましたね。

-映画を撮る前は、イグロさんは「イグロ横丁」というお笑いの企画をされていたそうですね。

松本卓也監督
これがすごかったんですよ~

イグロヒデアキ
松本さんも共同でやった企画なので、自分ですごいっていっちゃうとアレですけどね。

松本卓也監督
その頃の辺りを紐解いていくと、映画『帰ろうYO!』の2014年以降に一気にいろいろとやりましたよね。

イグロヒデアキ
めちゃくちゃいろいろやってきましたね。イグロ横丁は毎年一回ずつ、計3回やってます。

松本卓也監督
ネタをやる、生のライブですよね。

イグロヒデアキ
そもそもが1人芝居がやりたくて、松本監督に話をして、台本を頼むかどうかくらいの時だと思うのですが、監督から「お笑いをやろうよ」と言われたんです。

「(一人芝居じゃなくて)お笑い?」と思ったのですが、松本監督がお笑いの人だというのを知っていたので、「じゃぁ、やりましょうか」と答えたと思います。

 いろんな人が出るので、ほぼ一人芝居じゃないんですけど、イベント名には僕の名前をつけて、共同でやる企画でした。

松本卓也監督
僕もイグロさんみたいな人を待っていたんですよね。いわゆる役者の枠に収まっていない人というか、物産展を手伝ってくれるし、この人の枠ってないなというイメージがありました。そういったところで、島の人と盛り上がっているのを見ると、「これ、お笑いもあるな…」と思ったんです。

なので、監督をしたことも、役者という枠にこだわっているタイプではないというか、面白いことは何かしらやるような人だと思いました。

イグロヒデアキ
監督と出会って映画に2作品出演した頃、私が長く演劇をやってきた中で、演劇に行き詰まった時期でもあったんです。

舞台役者をやっていましたが、すごいうまいわけでも、すごい個性的なわけでもなくて、周りにすごい人がいっぱいいる中で、自分は何をするべきかを考えたのですが、答えが見つかっていない時期でした。

そういう時にいろんな変なお誘いを松本監督がくれるので、「まずは、行ってみるか…」という時期とちょうど重なったんだと思います。だから、自分にはすごくありがたい転機になった出会いだと感じています。

物産展に行って手伝う未来は考えていなかったですからね。離島のおじさんと仲良くなって、島育ちのすごい太いアスパラをいただいて、そんな経験はなかなかないので、そういったことが、役者の表現活動の一つの良い影響になっているなと思います。いろんな経験が面白味に繋がっていくんだと思います。

-そういった流れで、松本組の看板俳優的な形でやっていくイグロさんが出来上がってくるわけですね。

イグロヒデアキ
ただ、僕はシネマ健康会ではないので、どうなんでしょうね。

松本卓也監督
『帰ろうYO!』の時からピンポイントで面白味のある役をやっていて、次の『ライブハウス レクイエム』(2016年)ではもうメインの1人をやっていて、

『ミスムーンライト』(2017年)もそうでした。

『ラフラフダイ』については、1人の単独の主役ではないにせよ、もう過去作品の中でも見せどころ的にも、ついに主演だなという感じですね。

イグロヒデアキ
先ほど、“看板俳優”という言葉がありましたが、実は完全な主演をやらせてもらったことは基本的にはないんです。

松本卓也監督
自分としては、群像というのを一つの武器にしているところがあります。

一人の主役というのもいいんですけど、群像の脚本を書いていると、難解になっていくからこそ楽しいんですよね、

イグロヒデアキ
人を出すのが好きですよね。

松本卓也監督
そうなんですよ。しかも出てもらったからには、何か見せどころがあった方がいいなと思っているんです。

僕自身、リアルに生きていて感じるのは、“一人ひとりが人生の主役”とまでは言わないですけど、いろいろな人が隅々までいるのが好きだし、楽しいし、それが『ダイナマイトソウルバンビ』でも、「スタッフも面白いよ」っていうところがあるわけです。

出演している人たち一人一人が面白いというのは、毎回伝えたいことで、“捨てキャラなし”というのがやりたいところです。実際の人生もそうだから。

▼タイトルにこめた想い

-タイトルに込めた想いを聞かせてください。

 まさに「笑い」と「死」が含まれているわけですが。リズム的にもいい感じですね。

松本卓也監督
企画を温めていた最初の頃のタイトルは、『笑い死に(仮)』だったんです。

ピッチコンテストの時には、英語でのプレゼンもあるし、『ラフラフダイ』というタイトルが、既に生まれていました。『笑い死に』と言いながら企画を温めている一方で、「『笑い死に』ってカッコ悪くない?」って言われて、『ラフラフダイ』というタイトルも生まれていて、実際にクランクインするときの脚本は『ラフラフダイ(仮)』だったと思います。

イグロヒデアキ
ポスターとかチラシにも書いてありますが、「ワラエバー(Whatever!)」もタイトルの候補にありましたよね。

松本卓也監督
英語のWhatever!に、「どうでもいいわぁ」って意味があって。撮影後、僕としては、本タイトルは『Whatever! 』だ!ってなったんですけど、周りに言ったらリアクションが本当に薄かったんですよ…。なので“(仮)”が取れて『ラフラフダイ』になりました。

イグロヒデアキ
チラシをみるまで忘れていましたよ。あまり話題にあがらなかったですよね。

松本卓也監督
「じゃぁ、コピーに入れるわぁ…」って言って、コピーに無理やり入れました。

イグロヒデアキ
コピーになっても気づかないな…。

松本卓也監督
デザイナーさんもリアクションが薄かったんです。

-「なるほど…」とはなるんですけどね。

イグロヒデアキ
スッとは入って来ないですよね。「はぁ…」という感じで。

-“ラフラフ”と重ねた意味は何かあるのでしょうか?

松本卓也監督
リズムが良かったのと、笑うことが多い映画なので、“笑って笑って死んじゃう”というのがいいなと思いました。

-笑笑なんですね。

松本卓也監督
かぶせると、大笑いになるかなと思いまして(笑)

▼お二人にとって、“笑い”とは…

-お二人には、“笑い”という部分で共通点があると思います。お二人にとって、“笑い”って何だと思いますか。

松本卓也監督
僕にとっては、人生のテーマというか、自分の中のド真ん中ですね。笑いについては大人げなくむきになります。負けたくないというか、相当子どもになっちゃいますね。 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でいうところの“チキン”って言われるレベルのスイッチが入ります。だから負けたくないという部分もあれば、1個のテーマでもあります。映画を作るとしてもお笑いをやるとしても、いくらシリアスとか怖いものを撮ってもどこかに笑を潜ませたいというか外せないんですよね。

ラフラフダイ

-イグロさんはいかがですか?

イグロヒデアキ
松本さんの話をきいて思ったんですけど、役者を始めた当時の方が、僕は笑いを意識していたと思います。

役者を始めた時に演劇の知識が私にはなかったんです。今でもそうですけど、お笑い芸人さんが全盛期だったので、別の取材の時にも答えたんですけど、お笑い芸人にはむしろ憧れみたいなものがあって、でも自分はそこには行けないなと思っていました。

そういった流れもあって、テレビドラマが好きだけど、お芝居もかっこいいと思ったし、自分の感じにあっていると思って演劇サークルに入ったというスタートがあったんですね。ある意味、コンプレックスじゃないですけど、お笑い芸人さんって怖い印象がありました。

「笑いこそ全てだ、笑わせてなんぼじゃね」みたいなものがあって、それは松本監督にも会った当初はそういうところがあったんです。舞台挨拶でめちゃめちゃはっちゃけるとか。あまりそういう人見たことなかったので「そんなに壊しちゃうんだ」みたいな感覚がありました。後々、「それってどうなんだ?笑わせればいいってもんじゃないじゃん」と思うようになった部分もあるんですけどね。当時は衝撃的でした。

そういったことがあって、お笑いイベントの話に乗ったという経緯があります。

お笑いイベントをやることによって、私の中の演劇での表現の幅も広がって、その表現を演劇でも使いたいと思ったんです。結局演劇って、そういった笑いも包んでくれるので、お笑いも作品の一部だと思えたことが自分の自由度が上がった印象があります。

私もいま脚本を書いているんですけど、あえて笑わせないことが好きなんですよね。笑いたいだろうと思うところで、全然面白くないことをいうといったことが笑える・面白いという、その自由度が分かった気がします。

松本卓也監督
笑いが特別扱いじゃなくなったんですね。

ラフラフダイ

▼脚本を読んだときの感想

-脚本を初めて読んだときの感想はいかがでしたか?

イグロヒデアキ
脚本をいただいた当時はむちゃくちゃに忙しくて、楽しむ余裕がなかったです。キャスト、キャストメンバーが決まっていなかったんです。松本組特有のことなんですけど。

脚本を読み解いて話をしていくという瞬間がとても少ないので監督に感想を言う暇もないんです。監督もずっと書き続けていますし。

監督と話し合えていない印象があります。「もうやらなきゃ」と思ったイメージが強いので、感想についてきかれると、正直に言うと覚えてないです。

「あぁ、割とまとまっているのかな…」といった感覚でどんどんやっていきました。ただ、松本監督からは「作品に登場するお笑いコンビのどちらかになりそうだぞ。ただ、スケジュール次第でわからんけど」という風に、「どこが看板役者なんだ?」と思うようなことも言われていました。

お笑い芸人の役をやらしてくれるという話をきいて、一つの課題にはなるので難しそうだなという印象を演じる上で感じていました。漫才っぽいシーンもあると聞いていたので練習したいと思ったのですが、スケジュール的に無理だろうなと覚悟もしていました。不安といつものスピード感が入り混じってたイメージですね。

松本卓也監督
イグロさんをはじめ、キャストのみんなからよく言われるのが、「脚本を極力早くあげろ」と長年言われ続けています。代表格のイグロさんからは最初の段階では、「早く上げれば役者というのは準備ができて打ち込めるし、いい作品になる」ということと、「監督は脚本に満足しないで、ギリギリまで脚本を変えまくってください」と言われます。

次の段階では、「松本さんは、ギリギリに脚本を変えるように、脚本を一番にやりたい人なんだ。役者はどうでもいい人なんだ」と、さらに次の段階では、「その場でパワーを発揮する松本作品の面白さがあるから、自分はスケジュールが厳しくても突発性の力を出し切る役者ですし、脚本をギリギリまでやればいいんじゃない?」と、ここ最近はそういった三つの段階をイグロさんから言われています。

僕には僕で、それに対してのまた違う考えがあるんですけどね。

イグロヒデアキ
『ラフラフダイ』は、その三段階目を経て、まだ混乱していたときですけど、結局作品作りの形態って、いろんな担当がいて、プロデューサーもいて、いろんな作り方があるけれど、監督が主導でやるべきだなと基本思うんです。もちろん、それは一般論で、役者としては役者がやりやすい方を言うのも当然なんですけど。

ただ、それを言っても脚本は早くならなかったんです。それならば役者がどう楽しめるか、どうやりがいになるかといった方が大事なのかなというのが、松本監督とやるときにまとまってきた考えになります。

▼完成した作品を観た時の感想

-完成した作品を見たときの感想はいかがでしたか?撮影したときと、監督の編集が加わって印象が変わるのではないかと思いますが。

イグロヒデアキ
試写の時点で本当に面白かったです。今回ロケ地の飯田市の人と一緒に撮ったなっていう感じがあって、どの作品も撮影場所の思いは深いんですけど。地元の方々をある意味スタッフとして扱っている感覚が強かったです。『ラフラフダイ』が描いた“そうなってしまった場所”を飯田市で撮っているので、場所への思い入れは私はかなり強いですね。

私の中で、ロケ地の面白さというか、“ここで撮った”という感じを『ラフラフダイ』ではかなり強く感じる映画です。ほかの松本作品にもそれぞれの撮影地の思い出はあるのですが、撮影地と作品が同化してる感じがするのが、飯田市と『ラフラフダイ』にはあります。

ラフラフダイ

松本卓也監督
すごいロケ地が見つかったからね。

イグロヒデアキ
普段も合宿形式の撮影で、今回もそうなんですけど。場所自体がこの作品のストーリーと、かなり大事なところで絡んでいるので。

松本卓也監督
あの「スマイル」という建物は、元々はほぼ廃墟状態で壊されるギリギリに見つかったんです。それが我々のロケハンで見つかって、壊す前に撮ったんですよね。

イグロヒデアキ
廃墟だった場所を頑張って改修して綺麗にしていただいて、そこに役者とメイクさんたちだけが泊まったんですけど、スタッフの人たちは機材の都合で旅館に帰るんです。

今回の役者陣が、松本組の常連が少なかったので、その人たちだけで泊まっていたことが、『ラフラフダイ』のイメージそのままですね。急に共同生活を強いられるという。

松本卓也監督
疑似家族だね。

イグロヒデアキ
それでスタッフさんがいないので、私がみんなからいろいろと聞かれることが多かったんですけど、「私もよくわかんないです」と答えることが多かったです。コロナと「笑い死に」であったり、世界から隔離されてる状況と、スタッフと離れて役者だけ監禁されているような状況は、世界と映画でリンクすることが多かったですね。

松本卓也監督
テーマが笑いだったので、自分的には恥ずかしい部分でもあるんですよ。今までの作品でも必ず笑いは入れているんですけど、絶対言われるのが、「シリアスなシーンに笑い入れてくるよね、松本さんは」と言われると恥ずかしいというか煙に巻いてきたんですけど、『ラフラフダイ』については煙に巻かないで、初めて正面から笑いという自分が好きなものを描きました。それがどうなるかなと思ったんですけど、長野で先行上映したときに、お客さんの反応が本当に良かったんです。

「よくわからないけどインディペンデント映画を見に来たよ」という県外の人もいたり、長野県内でも遠いところから来た人もいて、自分だけのものじゃなくて、きちんと届いたなというものが、この作品にはありました。

ラフラフダイ

イグロヒデアキ
私の感想として、『ラフラフダイ』って、意外としっとりしている感覚があります。わちゃわちゃと撮ったイメージがあるんですけど、監督の作品中で一番しっとりしているイメージがあります。劇中のお笑いコンビのギャハハキングのネタは、そんなに面白くないんですよ。そんなにみんなが笑うようなネタじゃなくて、向こうでお世話になった方には「めっちゃ面白いよ」という人もいましたが、 そんなにみんな笑わないんですよね。

松本卓也監督
この映画の中でギャハハキングに対して、「お前ら最高だよ!」とか言われてないですしね。

イグロヒデアキ
登場するお笑い芸人がそんなに面白くないというところも、この映画の面白いところだと思います。これでギャハハキングの2人のネタがめちゃくちゃ面白いと、作品としては違う気がするんですよね。

▼思い出に残るエピソード

-撮影時のエピソードで印象に残っていることを教えてください。

松本卓也監督
大体面白いんですけどね。イグロさんが、撮影の中での合宿で、リーダー格としてシネマ健康会の看板を背負ってるんだって感じで、最初の1週間を過ごしていましたよね。

イグロヒデアキ
確かにそういう自覚が出たのは初めてですね。自覚でも看板という感じでもないんですけど、そういった見方をされて、いろいろときかれる立場になるよなと思って、みんなから聞かれたら答える立場でいましたね。

でも、周りの方々もしっかりしていらっしゃったし、私が具体的な方法を知っているわけじゃないことも皆さんわかっていて話に来てくれていたので、私も「そうだよね。わかんないよね」って言ってるだけなんですけどね。そういう立ち位置にしてもらえて、周りもそう見てくれて、そこにハマれたのもいい経験でしたけどね。ただ特に何もしてないんです。

私には部屋が無くて、みんなが集まったり会議する場所が私が寝るところだったんですけど、そこに行けばこの人が寝転がってるみたいな感じで、みんなが話に来てくれました。最終的にはみんな私がいる大広間で寝ていたりしていましたね。

松本卓也監督
スタッフも撮影の2週間目に入ったラストの1週間は、宿に戻る時間が無駄だということになって、宿を無しにして、ぎゅうぎゅうの状態でもいいからみんなこの大広間で寝ようってなりましたもんね。

▼子どもとその親御さんあっての雰囲気

松本卓也監督
子供たちが撮影を楽しんでくれたのが良かったですね。それも親御さんの協力があったおかげですね。一緒になって手伝ってくださったので、学園祭みたいな雰囲気でした。

とにかくバックアップしてくださって、子どもたちだけでなく、僕らも楽しかったですね。

■お客様へのメッセージをお願いします。

イグロヒデアキ
 この映画の話は、ファンタジーというか、ディストピア的な話ですが、日本にある実際の場所をそういう場所と見立てて、映画として世界観を作ることを松本監督作品の中では一番徹底されていると思います。そういったところが、この映画の面白いところであり、変なところだと考えています。
 予算はそんなにない中で、完全なものではないところも含めて、その作り物の楽しさというのが結構出ています。

 これを見に来る人って私の知り合いが多いと思うのですが、身近にいる役者が、お笑い芸人という違う人生を演じる点を楽しめる映画になっていると思っています。全部の役の人たちが、普段知っている役者の姿とは、違う変な世界で演じている姿が楽しめるのではないかと思います。そういうところを感じていただいて、作り物の面白さといった、そこにあるメッセージをそれぞれ楽しんでいただければと思います。

松本卓也監督
 全世界でみんなが経験した新型コロナウイルスの前と後って、人生が変わったと思うんです。

 この作品はまさにその最中なので、コロナウイルス後の中で生まれてきた作品です。その中で光というか、何かしらをこの映画をみて、怖さや不安は無くならないかもしれないけど和らいでもらえたり、考えるきっかけになればと思っています。希望の光というか、暗くならないきっかけになる作品だと思っています。今このタイミングで出すからこそ、そういったことを共有してもらえたら嬉しいですね。

 その踏み込み方は、「もう絶対大丈夫だ。ウイルスなんか怖くない!」というところではないというのは、観ていただけたらわかると思います。

ラフラフダイ

▼作品概要

出演者
むかい誠一 イグロヒデアキ 遠藤史崇 平川亜音 中田陽子 遠山雄
ショウジ 織川えりか 中嶋野乃 古沢優子(サルパラダイス) サトウリュースケ( 上上Brothers) 
鹿野瑠南 杉村玲 木村仁 近藤奈保希 後藤龍馬 菊地由里 新井花菜 川倉志保美 坂井波瑠代 
大津亜佑子( 飯田ケーブルテレビ ) 石川晴敏 星勇希 佐々木裕馬 木下圭一 林悟史 山路基記 他

スタッフ
演出部長:羽石龍平 演出:浜崎正育子 後藤龍馬 撮影監督:岩崎登 撮影:哉司 松本卓也
ドローン撮影:竹原友洋( ㈲竹原運送店/飯田空撮) 録音:鈴木はるか 松本康孝
美術:猪瀬まな美(ノラネコデザイン) メイク:原早織(Ace9) 衣装:中條夏実
演出応援:中島希望 市本えり 新井花菜 撮影応援:近藤奈保希 片山明憲 美術応援:相澤奈那 渡辺麗子
制作応援:小松豊生 中島巧 多田浩志 音楽:ヒの字(Hideki Inoue) 劇中歌:サルパラダイス
整音:井上久美子 グレーディング:後藤龍馬 VFX:哉司 宣伝デザイン:猪瀬まな美(ノラネコデザイン)
制作デスク:杉浦青 プロデューサー:中條夏実 ご当地実行委員会:木下圭一 堀秀麿 佐々木亜矢子 
新井信一郎 小平彰 ご当地サポーター:秋田雅彦 林悟史 内藤了元 佐々木裕馬 小川なおみ 川倉志保美
ご当地ボランティアスタッフの皆さま

《 特別協賛 》株式会社藤測 居酒屋 野花(やおい) 株式会社栄和/有限会社栄和運送 株式会社イマムラ
佐々木動物病院 アルピニア科学研究所 《 協賛 》アトリエ・オフ アビーロード e sサービス  ツリーライフサポート株式会社 菅沼石材店 ザ・リトルダーリンズ ペットのあしあと ビュティーサロン・リュウ-ル 
有限会社島菊花堂 有限会社大門自動車 吉川彰一税理士事務所 《 助成 》AFF

製作:シネマ健康会 監督・脚本・編集:松本卓也

<Twitter> ラフラフダイ 公式 @LaughLaughDie / シネマ健康会 @baka_staff
<HP> シネマ健康会 https://cineken.com/

新宿K’s cinemaにて 4/15(土)~4/21(金)
1週間限定の特別レイトショー 全国順次公開予定

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