奥田庸介監督の原点回帰作にして最高傑作と称される『青春墓場』。監督オフィシャルインタビュー公開

奥田庸介監督の原点回帰作にして最高傑作と称される『青春墓場』。監督オフィシャルインタビュー公開

第22回東京フィルメックスにて日本映画で唯一コンペティションに選出され、数々の衝撃作を手がけた、奥田庸介監督の原点回帰作にして最高傑作と称される『青春墓場』。9月1日(金)から、シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』にて上映。上映後のアフタートークも開催。このたび、奥田庸介監督のオフィシャルインタビューが到着した。

青春慕情
奥田庸介監督

『青春墓場』は、『東京プレイボーイクラブ』『クズとブスとゲス』など、数々の衝撃作を世に放ってきた異才・奥田庸介監督の6年ぶりとなる待望の長編最新作。
中華料理店で働く男とパートの女、そして彼女の高校生の息子。小劇団の女と漫画家志望の男。理不尽に見舞われる名もなき登場人物たちの物悲しさとおかしみに満ちた日常を通して、 “生きるとは何か”を問いかける。
出演は、笠原崇志、古川奈苗、田中惇之のほか、人気ラッパー・呂布カルマなど個性豊かなキャストが顔を揃えました。 痛みを分かち合うような独自の作家性と圧倒的映像センス、そして何より規格外の熱量を携えるも、しばらく映画を撮れない状況が続いていた奥田。
そんな彼が、デビュー作と同名タイトルを冠し、ニーチェの言葉「血をもって書け」に導かれるように人生に向き合ったすえ辿り着いた “嘘のない映画”―――。表現への強烈な渇望に満ちた、渾身の一作となっている。

『青春墓場』奥田庸介監督インタビュー

Q1.様々な紆余曲折を経て本作が完成しました。まずは企画の成り立ちから教えていただけますでしょうか。

シナリオは2017年の時点でありました。なかなか出資者が見つからなかったところ、ある芸能事務所から手が挙がったんです。そこで提案されたのは、当時売れていた某俳優を主演に3000万円で製作するということでした。自分の納得のいく映画にしたいと考えていた私は、自分で主演を演じるって言ったんです。そうしたら結局、1000万円しか集まりませんでした。それから動きがないまま1年。今度は「株で2億円儲けた」と自称する人が現れ、1500万円出すと言われたのです。でもそこから株が暴落してプロデューサーが降りてしまい、結局製作費は借金で賄いました。レギュラースタッフは撮影、照明、録音、助監督、私の5名のみの自主映画。毎日深く後悔しています。

Q2.“死”を日常の地続きに描くことで、“生きるとは何か”を痛烈に描いた作品だと思います。今回の物語はどのようなきっかけで思いつかれましたか。

思いついたというか、ずっと思っていたことを映画にしました。私はひどい人生を送ってきた人間ですので、人生に何の希望も見出せません。明日死んでも100年後に死んでも同じな気がします。今回の映画を撮るにあたり、そのような視点が捉えた人生の景色を観客にも共有してもらおうと思いました。そして、あのような構成にしたのは、小さい頃から「仮面ライダー」を見ていても“このパンチ一発で倒される戦闘員にも、それまでの人生がある”といったことばかり気にしていました。例えばあっという間に倒される戦闘員の人生を見せることで、私なりの人生の捉え方を示せるのではないか?というのが発想の起点です。現代の価値観では「死とは何か?」というものが抜け落ちていますから。

▼Q3.高校生役の笠原崇志さん、小劇場俳優の女を演じた古川奈苗さん、漫画家志望の男を演じた田中惇之さん、皆さんハマり役だと感じましたが、呂布カルマさんの漫画家役が印象的でした。

もともと日本語ラップが好きで、呂布さんの音源も聴いていたんです。そんな中、ラッパーのダースレイダーさんから「呂布くんが『クズとブスとゲス(私の過去作)』が面白いと言っていた」と聞いて、呂布さんが若い頃に漫画家志望だったと知っていたのもあり、ダメ元でオファーさせていただいた所、引き受けてくださいました。呂布さんはとても絵がお上手で、奥さまが現役の漫画家ということもあり、現場でもいろいろとアドバイスをいただきました。

Q4.ご自身の初監督作「青春墓場」と同じタイトルを付けていますが、どのような思いがありましたか。

今回の映画の撮影が終わった際に、意図せず今まで同じモチーフで映画を撮り続けて来た事を旧友に指摘されました。それに、私が18歳くらいの頃からずっと一緒に編集をしてきた人が「とうとう墓場に到達したんじゃないか」とも言っていたんです。自分の不幸な映画人生に区切りを付けたかったのもあり、「青春墓場」とタイトルを付けました。

▼Q5.ご自身も出演され、本作でもハードな暴力シーンで体を張られています。「俳優としての奥田庸介も好きだ」という感想も数々見受けられます。自分が出演することにより、映画や現場にどのような作用があると考えていますか。

私が体を張ると、現場の熱量が上がるような気がします。大好きなシルヴェスター・スタローンの影響もあると思います。言語化するのが難しい感覚をフィジカルでキャストやスタッフに伝えていくのが私の演出なのかもしれません。言い換えれば、体を張らないと現場の熱を上げられない不器用な監督という事だと思います。俳優は二度ともうやりたくありません。

▼Q6.オープニングを飾る楽曲は、友川カズキさんの「一人盆踊り」です。起用の決め手はどこにありましたか。

ずっと友川カズキさんのファンです。「一人盆踊り」は初めて聴いた時に自分の事を歌ってくださっているようで感動しました。辛い時は友川さんの曲をいつも聴いています。

▼Q7.読者にメッセージをお願いできますでしょうか。

私は素晴らしい作品と出会った時、作品を越えて迫ってくる作者の誠実さや切実さに胸を打たれます。私もポンコツなりに嘘くさい映画にだけはならないよう全身で格闘しているのですが、どうやら最近の映画は嘘くさくても「良作」となるようです。私の価値観は時代遅れでしょうか?


シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』にて9月1日より上映! 

アフタートークも開催!

https://k2-cinema.com/event/title/280

9月1日(金)18:50の回 上映後トーク
登壇者:田中惇之さん、古川奈苗さん(出演)、奥田庸介監督、寺岡裕治さん(編集者)

9月2日(土)18:50の回 上映後トーク
登壇者:向里祐香さん(俳優)、奥田庸介監督

9月3日(日)18:50の回 上映後トーク
登壇者:金子鈴幸さん(俳優・脚本家)、奥田庸介監督

9月4日(月)20:45の回 上映後トーク
登壇者:髙橋雄祐さん(俳優)、笠原崇志さん(出演)

9月5日(火)16:30の回  ※イベント無し

9月6日(水)16:30の回  ※イベント無し

9月7日(木)18:50の回 上映後トーク
登壇者:黒田勇樹さん(俳優)、田中惇之さん(出演)

9月9日(土)午後帯予定
登壇者:大西信満さん(俳優)、奥田庸介監督

9月12日(火)夜帯予定
登壇者:横山拓也さん(劇作家・演出家)、田中惇之さん(出演)


■ 作品概要

映画『青春墓場』

監督・脚本:奥田庸介『クズとブスとゲス』『東京プレイボーイクラブ』

笠原崇志 古川奈苗 田中惇之 

堀内暁子 鈴木たまよ 奥田庸介 伊藤竜翼 高川裕也 梅田誠弘 中澤梓佐

武智央 守谷周徒 飯田芳 前田隆成 二階堂新太郎 藤井陽人 中野健治

椎名香織 宇田川さや香 高野春樹 ナカムラユーキ 嶺豪一 藤原珠恵

スミト・ルイ 呂布カルマ

配給:イハフィルムズ 宣伝協力:平井万里子   

2021|96分|日本|カラー|5.1ch  ©映画蛮族

公式HP https://seishunhakaba2023.amebaownd.com/

公式Twitter https://twitter.com/seishunhakaba

青春墓場

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