終戦80年を迎える広島を舞台にしたSFファンタジー映画『惑星ラブソング』。過去と現在が交錯する物語で主演を務めた曽田陵介さんと、ヒロインの秋田汐梨さんにお話を伺いました。広島での学生生活で培った感覚が役柄に生きたという曽田さん、自然体の感性でキャラクターを表現した秋田さん。お二人がそれぞれの役柄にどうアプローチしたのか、そして平和という作品のテーマにどう向き合い、観る人に「考えさせる」きっかけとなる作品の魅力をどのように捉えているのか、深く掘り下げていきます。

■ 映画『惑星ラブソング』曽田陵介× 秋田汐梨 インタビュー
▼1:名前の由来
一: 当サイトでは恒例となっているのですが、最初にお二人のお名前の由来を伺ってもよろしいでしょうか?曽田さんの「リョウスケ」というお名前ですが、山に関係する名前なのではないかと想像したのですが、どういった由来があるのでしょうか。
曽田: はい。「山を越えて人を助ける」といった意味が込められているそうです。また、「曽田」と「リョウスケ」の組み合わせの画数がとても良くて、大吉らしいです。

一: 素晴らしいお名前ですね。やはり、山と関連があったんですね。
一方、秋田さんの「汐梨」というお名前ですが、“しおり”という響きから、本の“栞”や、“詩織”が連想されます。秋田さんのお名前の「汐」という字を使った名前は、比較的珍しいのではないかと思ったのですが、どういった由来がありますか?
秋田: 私の母が「可愛いから『り』をつけたい」と思っていたそうです。それで、“名前辞典”のようなものを見ていたら「“しおり”がいい、可愛いね」となり、名前にあまり使われておらず、珍しい漢字…から、“汐梨”になったと聞いています。
▼2:モッチ役と広島での学生生活、街の雰囲気
一: 曽田さんへの質問です。時川監督は、モッチ役について、広島の大学で学生時代・青春期を過ごした曽田さんの「広島に住んでいたからこそ肌で街を知っている感じ」や「若者の目線で(平和を)感じ取っているところ」が役にうまく生きたと評価されていました。ご自身の学生時代の広島での経験や街の雰囲気に関する肌感覚が、モッチというキャラクターの内面や行動にどのように反映されていると感じますか?
曽田: やはり4年間、大学生として広島に住まわせてもらっていたので、そこは等身大でモッチを演じるにあたって、やりやすいポイントだったと感じています。

▼3:平和というテーマへの探求と準備
一: 監督は、モッチというキャラクターの「心の奥にある広島の街についての思い」や「それが時に溢れ出てくる、デリケートなシーン」を曽田さんがうまく表現してくれたと仰っています。特に、平和のテーマに「真摯に向き合ってくれた」と監督は感じていらっしゃいますが、モッチを演じる上で、広島の歴史や平和というテーマに対して、どのような準備をされましたか?
曽田: 平和についてですが、僕が大学で過ごしていた時にそこまで平和について考えたことはなくて、今回、この映画を通じて調べました。これらは、監督とディスカッションして作っていった部分なので、そこがうまく表現できていたら嬉しいです。
一: ありがとうございます。広島で過ごしたからこその演技や、この映画のテーマに対して、具体的にはどういったことを調べ、また、新しい気づきはありましたか?
曽田: そうですね、平和記念資料館に行きました。この『惑星ラブソング』ではあまり“平和とは!”とか、戦争の残酷さといった部分を見せていないのですが、自分自身は事実として見ておいた方がいいと感じたので、平和記念資料館の方に足を運んで、自分で感じたものを秘めつつ、モッチを演じました。

▼4:アヤカ役への向き合い方と監督からの評価
一: 秋田さんへの質問です。時川監督はアヤカ役について、「役柄の個性を膨らまして何かを足してくる」「自在に反応していく面白い女優さん」という、すごく良い評価をされていました。アヤカがこの物語の「大きな原動力」になったとも仰っています。秋田さんご自身が、アヤカというキャラクターに意識的に「足した」もの、あるいは演じる中で自然に生まれたアヤカらしさについて、具体的に教えていただけますか?
秋田: 意識的に出したものではなく、アヤカとしてお芝居をしていたら自然に出た感情を軸にお芝居をしていました。考え込んで役を作り込んだ感じでもなかったですし、曽田さんが幼馴染みの雰囲気を作ってくださって、そういったもののおかげで、自分をアヤカとして、ただそこにいるだけで、監督が感じた印象につながったのではないかと思います。

▼5:耳の良さとセリフ習得の工夫
一: 監督は秋田さんの「耳の良さ」を称賛し、若い人の広島弁や英語のセリフを難なくこなしたことに驚かれていました。京都出身の秋田さんが、ナチュラルな広島弁や劇中で求められる英語のセリフを習得する上で、特に工夫されたこと、苦労されたこと、楽しかったエピソードがあれば教えてください。
秋田: 耳はずっといいと自分でも思っていました。私は韓国語を少しだけ話せるのですが、英語は話せません。韓国語が少し話せる理由としては、以前、K-POPアイドルが大好きで、曲を聴いたり、バラエティ番組を見ていたら話せるようになっていたんです。
一: すごいですね。
秋田: 最近、韓国の方とお仕事をする機会があって、発音がすごく良いと言われたことがあったので、昔から耳はいいのかなってなんとなく思っています。今回も特に工夫せず、とにかく繰り返し英語の台詞を聞いて覚えました。
▼6:チェイス・ジーグラーさんとの共演エピソード
一: お二人への質問です。今回、謎めいたアメリカ人旅行者・ジョンを演じたチェイス・ジーグラーさんとの共演の部分での質問になります。曽田さんは監督から「ほとんど英語が話せないのに積極的な行動でいろんな溝を埋めてくれた」とコメントされています。英語が話せないなかでのコミュニケーション方法や、言葉の壁を越えてチェイスさんと心を通わせるために工夫したことや、プライベートで一緒に過ごす中で発見したチェイスさんの意外な一面などがあれば教えてください。
曽田: クランクインする前にチェイスに「飲みに行こう!」と2人で出かけて、話しましたね。

一: いわゆるノミニケーション(コミュニケーション)ですね。
曽田:はい。 でも、僕は英語を話せないし、チェイスも日本語が分からないから、スマホアプリのトランスレーターを開いて、それを使って2人で話しました。チェイスも初めての日本で、それで芝居するとなったらやりづらいとおもったんです。なので、話をしておけばやりやすくなるだろうと考えて、彼とは極力話すようにしました。
一: 翻訳アプリを活用・実用されたわけですね。
曽田: はい、チェイスが教えてくれました。
一: 秋田さんは、チェイスさんと共演する中でのコミュニケーションやエピソードはありますか?
秋田: 私は英語が話せないというのもあって、ずっと話しかけられずにいたのですが、撮影の合間に車で2人になるタイミングがあって、その時、急にチェイスが携帯の画面を見せてきたんです。「何もリアクションできない!」と思ったら、それは英語を翻訳されたもので、「日本の好きな食べ物は?」といったことが書かれていました。そうやって、英語を話せない私にもコミュニケーションを取ろうとしてくださる姿がすごく印象的でしたし、私も言語の壁を気にせずにコミュニケーションは取れるんだなと感じたので、そういうことを教えてもらったと思います。

曽田:あとはPPAP(ピコ太郎)の話をしました。チェイスが知らないと言っていたので。
「聞いてみて!“ジャパニーズソング、ベリーフェイマス!”」、「ジャパニーズカルチャー!」とか。そうしたら、チェイスは、「Stupid!」って言っていました。
▼7:八嶋智人さんとの共演エピソード
一: お二人への質問です。八嶋智人さんが演じるUFO博士との共演の部分で、監督が八嶋さんのことを「どんなボールも打ち返してくださる安心感」があるとおっしゃられていました。共演されたお二人から見て、八嶋さんの印象はいかがですか?
曽田: 「どうしよう…」ってなった時に、すぐに進むべき道を示してくれて、「こうやったらいいんじゃない?」というアイデアをすぐ出せる方だと思いました。また、お芝居の面でもすごく助けていただいて、さすが先輩だなと思いました。
一: 東京上映会(6月2日)にも、八嶋さんが追加登壇になって楽しみですね。
曽田: 八嶋さんと久しぶりに会うなぁ。
一: 秋田さんは、八嶋さんとお会いするのは、5月の横浜国際映画祭以来ですね。秋田さんは八嶋さんと舞台で親子役での共演があったそうで、今回の再共演はいかがでしたか?
秋田:前回の舞台の時も本当に気にかけてくださって、毎日八嶋さんが「明日はこうしてみよう」ってアドバイスもしてくださって。朝、楽屋に毎日いらしてくださるのですが、お母さん役の方と2人の楽屋だったので、3人で家族みたいな会話をしていました。その時に「今日は汐梨ちゃん、こういう風にお芝居してみたらて」みたいな感じで八嶋さんが提案してくださることもあって、本当のお父さんのような感じで頼もしい方だと思っていました。今回、共演させていただけることはですごく安心感もありましたし、いろいろなシーンで、現場が行き詰まった時に、改善策を見つけてくださったり、「こういう風にしたら良いんじゃない?」って提案してくださって、その通りにやってみたら良くなったことが多くて、本当に尊敬する先輩です。
一: 八嶋さんはどんなボールも打ち返す柔軟さだけではなく、現場が滞った時にも前に進む力を与えてくれる存在だったんですね。

▼8:映画のタイトルにちなんで、好きなラブソングは?
一: 作品のタイトル『惑星ラブソング』にちなんで、好きなラブソングについて、教えていただこうと思います。
曽田: GReeeeN(現 GRe4N BOYZ)さんの「オレンジ」という曲ですね。中学生の青春という感じで、片思いしていた時によく聞いていた想い出があります。
一: 以前、秋田さんのインタビュー記事で、音楽はあまり聞かないといった話を目にしたことがあったのですが、いかがですか?
秋田: そうですね。でも好きなアーティストはいて、宇多田ヒカルさんやaikoさんも好きです。季節的に言うと、宇多田ヒカルさんは冬に聞きたくなって、aikoさんは夏に聞きたくなります。最近ずっと聞いているのは、aikoさんの「キラキラ」とか、「恋のスーパーボール」とかが好きです。
▼9:本作の良さをひと言で表現すると?
一: この作品の良さについてひとことでいうと、どういった点だと思いますか?戦争や平和に関することがテーマになっているとおもいますが、残酷さや悲惨さを見せるというよりは、SFだったりファンタジーといった表現手法が活用されていると思います。お二人にとってこの作品の良さをひとことで誰かに伝えるとしたら、どのように表現しますか?
曽田:「 戦争ってこういうものだよっていうのを見せる残酷なエンターテイメントではなくて、これからを考える映画」になっていると思います。
秋田: ひとことで表現すると、「誰でも見やすい、戦争を知る入り口になる作品」だと思います。
一: 本作のキャッチフレーズにもつかえるような表現ですね。ありがとうございます。
▼10:初の長編映画主演と座長としての意識
一: 曽田さんにとって、初めての長編映画主演作ということですが、秋田さんが曽田さんに対して、次のようにコメントされていました。「初めての長編映画主演と聞いてびっくりしました」「座長として板につきすぎている」「みんなを正しいレールに持ってきてくれるような存在」といったように高く評価されています。
曽田さんが意識されていたことや、この経験が今後の役者活動に影響を及ぼしそうだと思う点はありますか?

曽田: 映画もドラマも主演って多分一緒だと僕は思うんです。みんなで一つの作品を作るということは、その現場での空気を作らないといけないと思います、ギスギスした雰囲気ではアドリブもできないですから、みんなと話せるように、いい雰囲気作ろうということを心がけていました。
一: 秋田さんから、コメント以外で補足する点はありますか?
秋田: コメントした通り、曽田さんがみんなを1つにしてくれたと思います。私が演じたアヤカにとっても、初日からフレンドリーに話しかけてくださったおかげで、本当に幼馴染みだったかのような空気感が生まれて、アヤカとしてそこにいることができたと思います。それは役者としてすごく尊敬する部分ですし、座長という面では、みなさんと分け隔てなくお話しされている姿を見て、みんなが良い作品にしたいと思えるような座長でいてくださった感じを受けて、すごいなと思っています。
▼11:アヤカとの共通点について
一:明確な答えを定めずに行動し続けるアヤカと秋田さんがコメントされた内容から、アヤカとご自身は似た部分があったのではないかと考えています。アヤカとご自身を比較してみて似ていると感じる点にはどういったことがありますか?
秋田: アヤカと私は似ていると思います。やりたいことがなんとなくあって、それに突き進むのは良いけれども、その先を具体的には考えていないというか(笑)。私もこの芸能のお仕事を始める時に、最初はモデルになりたいと思ってそれを目標にして雑誌の年に1回のオーディションを2回受けて、2年目でやっと受かって芸能界に入りました。でもその雑誌のモデルになることしか考えていなかったので、そこから先のことは全くで(笑)。マネージャーさんに進められるがままお芝居に挑戦し始めて、なんとなく“やってみてい”という感覚だけでスタートした記憶があります。
一: 計画を立てるタイプというよりは、、直感やインスピレーションで動くタイプなんですね。

秋田: そうだと思います。
▼12:お客様へのメッセージ
一: それでは、お話の締めくくりに、映画を見にくるお客様に向けてのメッセージをお願いします。
曽田:平和が大きなテーマになっていると思いますが、あまり構えずに映画館に遊びに来る感じで、気軽に楽しんでいただければと思います。
秋田: やはり、テーマが“戦争“という言葉を耳や目にすると、映画の中で残酷なシーンがあるのではないかと想像される方も多いと思うのですが、とにかく見にいらしていただければ、幸せについて考えるきっかけとなる映画で、ハッピーな気持ちになれると思います。見終わった後は見ただけで終わらせずに、一度立ち止まって幸せについて考える時間を持っていただけたら嬉しいですし、そういったことを考えるきっかけになる映画になっていると思います。

ヘア&メイク:
【曽田陵介】仙波夏海
【秋田汐梨】菅長ふみ
スタイリスト:
【曽田陵介】岡村春輝(FJYM inc.)
【秋田汐梨】高野夏季(KEN OFFICE)
【ストーリー】
ひとつの歌が導くのは―愛と平和を探す不思議な旅
ある日、広島の若者モッチとアヤカは、謎めいたアメリカ人旅行者、ジョンに出会い、広島の街を案内することになる。ジョンには奇妙な力があり街の至る所で何かを見つけていく。一方、小学校で原爆の歴史を学び怖くなった少年ユウヤはその夜夢を見る。夢の中の少女はユウヤを戦時中の広島へと誘う。彼らに起こる不思議な物語は混ざり合い、一つの大きな渦となる。広島の過去と現代が交錯し、幻と現実が融合し始める。やがて忘れられていた歌が街に響き、人々はひとつの奇跡を見つめる。広島から放つ愛と平和のファンタジー。
【出演】
曽田陵介/秋田汐梨 Chase Ziegler 八嶋智人
西川諄 Raimu 谷村美月 佐藤大樹(友情出演) / 川平慈英
さいねい龍二 塚本恋乃葉 西村瑞樹 キコ・ウィルソン 松本裕見子 田口智也 HIPPY
【監督・脚本・編集】時川英之
【プロデューサー】時川英之 横山雄二
【配給】ラビットハウス
(C)映画「惑星ラブソング」製作委員会
<公式HP> https://wakuseilovesong.com
<公式X> @ wakuseilovesong
6月13日(金) よりシネマート 新宿、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー
