指名手配犯・桐島聡の半生描く衝撃作『「桐島です」』完成披露舞台挨拶、キャストが熱い想いを語る

2025年6月12日、新宿武蔵野館で映画『「桐島です」』の完成披露舞台挨拶が開催され、主演の毎熊克哉氏、北香那氏、原田喧太氏、長尾和宏製作総指揮、高橋伴明監督の5名が登壇しました。指名手配犯・桐島聡氏の半生をドラマチックに描く本作は、2025年7月4日より公開されますが、この日の舞台挨拶は東京での初披露となり、登壇者たちは作品への熱い想いを語りました。

■ 『「桐島です」』完成披露舞台挨拶

登壇者の挨拶:東京での初披露に寄せる想い

舞台挨拶の冒頭、まず主演の毎熊克哉さんが、作品への期待感を表明しました。毎熊さんは「この映画が完成して届く時に一体どんな反響があるんだろうなというのを、他の作品よりもより強く、当時から持っていました」と述べ、観客の反応を楽しみにしている様子でした。続いて、ミュージシャン・キーナ役の北香那さんは、作品を観て「心動かされる部分や考えさせられる部分がたくさんあった」とし、「皆様に届くと思うととても嬉しい」と喜びを語りました。バーの店長・ケンタ役の原田喧太さんも、約1年前に撮影した作品が「ようやっとこうやって公開に来たこと」に喜びを覚えていると述べました。製作総指揮の長尾和宏さんは、高橋伴明監督とのこれまでの縁に触れ、「今回のこの作品、関わることができて本当に色々と楽しかった」と制作への満足感を示しました。最後に、共同脚本・監督を務めた高橋伴明監督は、本作を撮るきっかけが企画・プロデューサーの小宮氏からの「この映画を撮らんといかんでしょう」という言葉であったことを明かし、自身の知らないことが多かったからこそ自由に制作できたと振り返りました。

主演・毎熊克哉氏の「伴明組」初参加と役柄への挑戦

司会者から、本作が高橋監督作品への初参加となるのか問われると、毎熊さんは「初参加」と認めつつ、実は約16、7年前に監督の作品にエキストラとして3日間参加していたという意外な過去を明かしました。その過去も踏まえ、今回の主演役を受けた理由については、高橋監督からのオファーそのものが大きかったと述べ、「もうやります」という気持ちだったと語りました。同時に、つい最近までこの世に生きていた「謎に包まれた人物」である桐島聡を演じることへの「怖さ」も感じていたものの、高橋監督作品、特に今回のような役柄への「魅力」が勝り、「10何年間頑張ったご褒美」だと思って引き受けたと明かしました。

これを受け、高橋監督は毎熊さんが過去にエキストラ出演していたことは「後で知りました」と語り、今回の桐島役に毎熊氏を抜擢した理由として、彼の『ケンとカズ』(2016、小路紘史監督)の印象が強く、それが役に「ぴったりとはまりそう」だと感じたことを挙げました。毎熊さんは、監督からそう言われると「ハード」だと感じつつも、監督と俳優として一度も直接のやり取りがない中で、演じる人によって「桐島像が変わってしまう」ようなこの役を任されたことに「不思議」な思いがあったが、「今日も行くかという感じでした」と、役への挑戦の覚悟を語りました。

北香那、実在しない「キーナ」役へのアプローチ

ミュージシャン「キーナ」役を演じた北香那さんは、自身の役が「実在していない」人物であることについて問われると、役作りにおいては「実在していたか実在してないか」に囚われず、桐島とは対照的に「明るくて、夢に向かって希望に満ちている」女性像を意識したと語りました。撮影中に、桐島に「なぜ惚れたのか」という役柄の背景を模索し、毎熊氏の演技からヒントを得て、桐島の「人間らしさ」や「優しさ」に惹かれたのだと感じながら役を作っていったと明かしました。

毎熊さん演じる桐島を間近で見て特に印象的だった点として、北さんは、桐島がどのような人間なのか「あまり見えないところがあった」中で、彼が自然に笑いかけるシーンを挙げました。その笑顔から、桐島の「優しさ」や「よくしたい気持ち」を感じ取り、「同情半分複雑な心境」になり「掻き乱される感覚」があったと述べ、桐島の人間性を深く感じ取った様子でした。

原田喧太氏、バーの店長「ケンタ」としての存在感

ギタリストであり俳優でもある原田喧太さんは、バーの店長「ケンタ」役のオファーを受けた際、「なぜ僕なんだろう」と感じたものの、指名してくれたことに喜びを感じたといいます。実際に桐島が通っていたバーのイメージから、「クールなとこではない」「親しみやすいバーのマスター」像を想像して演じたと語りました。撮影中のエピソードとして、ビールサーバーの操作が「非常に難しく」苦労したことを明かし、特にキーナとの重要な出会いのシーンでは「なるべくかき乱さないよう」に注意したと振り返りました。

毎熊さんは、原田さんが作り出すバーの「居心地のいい雰囲気」が、「フラっと行ける雰囲気」であり、どんな立場の人間でも「なんかお話できる感じがあった」と感謝を述べ、原田さんの存在感が居心地の良さに繋がっていたと語りました。

音楽テーマへの高橋伴明監督の苦悩

本作で「歌」が重要なテーマとなる点について、高橋伴明監督は、劇中で使用される歌の意外な事実を明かしました。当初は別の歌を使用する予定だったものの、「ある事情」と「苦い経験」を経て、急遽現在の曲に変更されたと説明しました。この苦労の詳細は別途出てくるかもと述べ、観客の期待を高めました。

長尾和宏製作総指揮が語る映画化の意義

長尾和宏製作総指揮は、実在の人物である桐島聡を題材に映画を製作した動機について語りました。長尾さん自身が50年前に高校生だったこともあり、この事件について「ぼやっとしか覚えてなくて」「何があったのか知りたいな」という個人的な興味が製作のきっかけになったといいます。また、未逮捕のまま半世紀を過ごした桐島聡の「その後」への関心や、現代社会が「50年前に戻ってきてんのかな」と感じる状況が、高橋監督との協力製作を後押ししたと説明しました。

長尾さんは、自身も本作に「ちゃんと出ている」と明かしました。前作の『夜明けまでバス停で』や『痛くない死に方』にも出演しており、セリフもあるものの「みんなわからない」「どこで出てるのかわかんない」ため、「よかったらあの見つけてください」と観客に呼びかけました。

毎熊克哉さんの「特殊メイクなし」での年齢演じ分け

本作では、毎熊克哉氏が20代から70代までの桐島聡の姿を一人で演じていることが紹介され、しかも「特殊メイクに頼らなかった」という点に注目が集まりました。高橋監督は、特殊メイクを使用しなかった理由として、過去2度の失敗経験から「普通のメイクの方が自然に見える」という経験則があったこと、そして現代の男性が「分かりやすく年取らない」傾向があることを挙げました。

毎熊さんの演技について、高橋監督は「狙い通りでしたね」と絶賛しました。毎熊さん自身も、ヘアメイク担当の佐藤さんの腕に助けられたと感謝しつつ、「何もしてないといえばしてない」と謙遜しました。北香那さんは、完成した作品を観て、特殊メイクなしで自然に年齢を重ねて見える毎熊さんの演技に「すっごい自然で、あ、すごいと思って、あ、特殊メイクじゃないんだって今知りました」と驚きを述べました。

毎熊さんは、撮影前は70歳を演じられるか不安があったものの、実際に鏡に映った自身の姿を見て「なんか見えるな」と感じ、自然に役に入り込めたと振り返りました。原田喧太さんも、毎熊さんの演技を「本当に老けてますよ。徐々に徐々にこうちゃんと年代を踏んでいかれてる」と称賛し、「歩き方とかちょっともそうだし。本当に素晴らしいな」と感銘を受けたと語りました。

映画『「桐島です」』への期待とメッセージ

最後に、登壇者それぞれから映画へのメッセージが送られました。

長尾和宏製作総指揮は、「桐島です」という強烈なタイトルやポスターを多くの人に宣伝してほしいと呼びかけ、「桐島生きてたんだな」と感じてほしいと語りました。

原田喧太さんは、桐島聡の「20歳から70歳までの生き方」だけでなく、その背景や「周りに関わる人たちの人間模様」にも注目してほしいと述べました。

北香那さんは、「現代に生きている人間として、あの、すごく思うところがたくさんあった」とし、「皆さんもあの、そういう気持ちになってなっていくと思う」と、観客に自身の感情や想像を作品を通して楽しんでほしいと伝えました。

主演の毎熊克哉さんは、本作が「この事件全く知らなかった」という人にも楽しめる映画になっていると強調。桐島が「なぜそんなに優しかったり」「なぜこんなに怒ってたり」するのか、その「いい疑問が多分持ったまま終わる」だろうとし、事件を知らなくても「青春映画を観に行くつもりで」気軽に足を運んでほしいと訴えました。

高橋伴明監督は、「なんであの事件を起こしたのかということはクエスチョンのままでいいと思う」と、作品の核心に触れました。50年間という桐島聡氏の「青春」を観客それぞれが「受け止めてもらえればいい」とし、そこに「理由を求めようとはしません」と語りました。そして、理由を求めないことで「この桐島が深ばれるんじゃないかな」と締めくくり、観客に深い問いかけを残しました。


映画『「桐島です」』

あらすじ
1970 年代、⾼度経済成⻑の裏で社会不安が渦巻く⽇本。⼤学⽣の桐島聡は反⽇武装戦線「狼」の活動に共鳴し、組織と⾏動を共にする。しかし、1974 年、三菱重⼯爆破事件で多数の犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれる。組織は警察当局の捜査によって、壊滅状態に。指名⼿配された桐島は偽名を使い逃亡、やがて⼯務店での住み込みの職を得る。ようやく⼿にした静かな⽣活の中で、ライブハウスで知り合った歌⼿キーナの歌「時代遅れ」に⼼を動かされ、相思相愛となるが…。

毎熊克哉

奥野瑛太 北香那 原田喧太 山中聡 影山祐子 テイ龍進 嶺豪一 和田庵

白川和子 下元史朗 甲本雅裕

高橋惠子

監督:高橋伴明  製作総指揮:長尾和宏 

企画:小宮亜里 プロデューサー:高橋惠子、高橋伴明

脚本:梶原阿貴、高橋伴明 音楽:内田勘太郎 撮影監督:根岸憲一

配給:渋谷プロダクション

公式サイト:kirishimadesu.com  X: https://x.com/Kirishimadesu1

2025年7月4日(金)より新宿武蔵野館ほかにて公開

この記事を書いた人 Wrote this article

Hajime Minamoto

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