2026年3月公開の映画『藍反射』。主演の道田里羽さんと野本梢監督にお話を伺いました。生理不順やPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)といった女性の悩みを描いた本作の裏側には、不思議な偶然や制作陣の深いこだわりが隠されていました。タイトルの由来やキャスティング秘話、そして道田さんが語る「言い訳として甘えられる悦び」の真意など、作品の核心に迫るインタビューをお届けします。

■ 映画『藍反射』道田里羽・野本梢監督インタビュー
▼お互いの珍しい名前とバックグラウンドについて
── 当サイトの恒例で、お名前の由来をうかがっています。道田さんのお名前は、里羽(りう)というお名前で珍しいと思ったのですが、どんな由来があるのでしょうか?
道田: 字画がニコニコしているということと音の響きで母親がつけてくれました。兄弟が3人いるんですけど、みんな名前が変わっています。今までに自分や姉弟と同じ名前の人に出会ったことがないです。野本さんのお名前「梢(こずえ)」には由来はありますか?
野本: 私は、母がバレーボール漫画の『アタックNo.1』が好きで、主人公の鮎原こずえから取ったそうです。その影響か、中学時代はバレーボールをやっていました。
── 道田さんのプロフィールには「書家」という肩書きもありますが、俳優と書とどちらを先に始められたのですか?
道田: ほとんど大差ないのですが、先に始めたのは俳優です。芝居に関しては、幼稚園年長の時にお遊戯会でヒロインをやったのが1番古い記憶です。小学校では演劇クラブに入りました。全校集会で演劇の発表があり、ターミネーター役をやったんですけど生徒の皆さんがめちゃくちゃ笑ってくれて。その時にお芝居楽しい!と思いました。入った中学で部活動勧誘の出し物を見る時間に、のちの顧問が演劇部を立ち上げようと制服姿でひとり発生練習をしていたんです。ぶっとんでいましたね。今では恩師です。本当はバスケ部かバレー部に入りたかったんですけど、上手な人たちが多すぎて迷うことなく演劇部に入りました。書道は、小2の時に大好きな友達が書道教室に通うと言い始めたから、その子と一緒にいたくて私も習い始めました。続けていくうちに師範を取得し、今は俳優兼書家として活動しています。

▼映画の始まりと運命的なキャスティング
── 本作には企画者である千種ゆり子プロデューサーがいらっしゃいますが、映画化の経緯を教えてください。
野本:私は高校時代はサッカー部に所属していたのですが、 実は千種さんとはそのチームメイトでした。社会人になってから彼女が自身の体の悩み(早発閉経)を打ち明けてくれて、「もしよかったら映画の題材にしてほしい」と言われました。私自身、子供を持つのか持たないのかくらいしか考えていなかった中で、彼女が人知れず治療や自己注射をしていた事実を知り、そのショックと共に、多くの人に知ってほしいと思い、映画化を決意しました。
── 主演に道田さんを選ばれた理由は?
野本: 以前『透明花火』という映画でご一緒した際、出番は多くなかったものの、その役が抱える多面的な感情をしっかりと表現されていて感激したんです。その後、食事に行った時に彼女の中身に触れて「すごく愛情のある人だ」と感じ、いつか一緒にやりたいと思っていました。そうしたら今回のオーディションに応募してきてくれて、運命を感じました。
── 道田さんは募集要項の何にピンときて応募されたのですか?
道田:募集要項に記載されていた「身近な人との会話を生み出せる映画を製作していきたい」という言葉に感化されました。当時の私は大事な人たちとうまく言葉を交わせていない自覚があったので、「一緒に作る側」に行き、烏滸がましいですが、私と似たような境遇の方々に本作を観て自分の考えを口にしてほしい・一緒にしていこうと思いました。
野本監督とは「透明花火」でご一緒したのですが、その時もあまり交流はしていなくて、勝手に嫌われているかも…と思っていて、私なんかが応募して良いのか…と少し応募を躊躇いました。ちなみに全く嫌われていませんでした。よかったです!

── 初めて会った瞬間の印象はどうでしたか?
野本: 道田さんは別の役(バーで働く葉奈)で応募をしてきてくれましたが、道田さんのお芝居を見て、はるか役を道田さんにお願いしたいと思いました。そこで、千種さん、稲村エグゼクティブプロデューサーに相談したところ、お二人も快諾してくれました。はるかが道田さんに決まったことで、はるかのキャラクターを私もようやくつかめるようになりました。
▼タイトルの変遷と物語の設定
── タイトルは最初から『藍反射』だったのでしょうか?
野本: 最初は『わたしかもしれない(maybe me)』という仮タイトルでした。ストレートで良い反面、映画の余韻や特有性が少し足りない気がしていたので、いつかは変更するつもりでした。千種さんと相談する中で、主人公の行動が巡り巡って自分に返ってくる構造から「反射」という言葉が出てきました。そこに、生理をブルーデーと呼ぶような「青」の意味や、視線が飛び交う様子を掛けて、『藍反射(らんはんしゃ)』と名付けました。
── 本作は、千種さんが「早期閉経」と診断された自身のエピソードをもとにしていますが、映画の主人公の設定を「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」にした理由は?
野本: 千種さんから、実体験をそのまま伝えるよりも、より多くの人に「自分事」として捉えてもらいたいという要望がありました。PCOSは20〜30人に1人といわれるほど潜在的に悩んでいる方が多い疾患です。広く身体のことに関心を持ってもらうために、あえて設定を変更しました。
── 作中に登場する、はるかが携わった化粧品「ゴールデンエッグ」という名前は、物語の中での「卵」というテーマとリンクしていて秀逸だと思ったのですが、どう決まったのですか?
野本: 実はあれ、撮影でお借りしたインキュベーションスペースの名前なんです。
── 「ゴールデンエッグ(金の卵)」という名称が、映画とも強く結び付く卵子や未来への希望と偶然リンクしていて、すごい偶然だと思いました。
▼役作りと演技、印象的なシーンの裏側
── 道田さんは本作のコメントで、ニキビで悩んでいたこと、また、その原因が分かった時のことに対して、「言い訳として甘えられる悦び」という言葉を残されていました。その真意について教えてください。
道田: 思うようにならないことって、あります。例えば、診断名がつくことで「自分の努力不足じゃない、体質のせいだから仕方ない」と諦めがついたり、認めるしかなかったりできます。自分に対して「もう頑張らなくていいよ」と言葉をかけ肩の荷が降りるようなその安堵感を「甘えられる悦び」と表現しました。
また、千種さんからかけてもらった言葉でとてもうれしかったことがあります。私はニキビができやすく、映画のシーンのつながりに悪い影響が出てしまうのではと常々怯えているのですが、ティザームービー撮影の合間にそのことを千種さんにポロッと伝えたら「ぜんっぜん大丈夫です。」と目を真っ直ぐに見て伝えてくれました。全てを理解してくれているような、大きなハグで包んでくれたような、やわらかく芯のある口調に一気に心が救われたんです。

── 先ほど「私なんかが…」という言葉がありましたが、最初から主役を目指していたわけではなかったのですか?
道田: はい。葉奈役でオーディションを受けたのですが、きっと適役の俳優さんが他にいると思いました。なので他の役でこの作品に関われたらいいなと思い、オーディションに参加しました。
── 俳優として、やりたい役と自分に合っている役はどのような考えで選んでいますか?
道田: 自分に近い役もやりたいですが、「これは私じゃないな」と思う役は、もっと合う俳優さんがいるはずだと思ってしまいます。ただ、自分とは遠いと感じる役でも、感情の一部を増幅させることで自分と重なる部分は見つかると思っていますので、できない役はないと信じたいですし、興味さえあればどんな役でもやりたいです。

── はるかという役を演じるのは難しかったですか?
道田: 経験のない医療的なことや空手の稽古など、土台作りは大変でしたが、現場では周りの俳優さんたちが本当に素晴らしくて。彼らから影響を受けるだけではるかになれたので、周りに生かされた感覚でした。
── 道田さんというと俳優と書家の肩書のイメージが強いのですが、こどもたちの空手の指導者として登場するのはなぜでしょうか?
野本: それは千種さんが空手をやっていたことにつながっています。道田さんには空手の経験はありませんでしたが、結果的に、はるかが自分と向き合い、重心を下に下ろして心を整える場所として、空手道場が良い効果を生んだと思います。
── 撮影の中で特に印象に残っているシーンはありますか?
道田: 友人の香織役を演じた平川はる香さんとのキッチンのシーンです。「当たり前に思っちゃっててごめん」と香織に伝える場面なんですが、窓からの光も綺麗で、お互いの心が通じ合っている感覚がしました。何度テイクを重ねてもずっと鮮度高く芝居ができて、平川さんとも「あのシーン良かったよね」、「きっと、この二人は、野本さんと千種さんなんだろうね」と話しています。
野本:香織は早発閉経を抱えている役なのですが、はるかと香織を傍で見ている千種さんが現場で泣いていたんです。それを見て「撮ってよかったな」と心から思いました。
▼これから映画をご覧になる方へ
── 最後に、これから映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
野本: この映画には様々な立場のキャラクターが登場します。はるかはもちろん、彼女を取り巻く人々にもそれぞれの事情や思いがあります。そうした他者が抱えている目に見えないものを、少しでも想像したり慮ったりするきっかけになれば嬉しいです。
道田: 自分の知らないことや体の不安と向き合う一歩に繋がれば嬉しいです。そして身近な人やその人たちとの関係性を”大切にする”とはどういうことなのか、考えるきっかけになれたらこの上ないです。

映画『藍反射』
【ストーリー】
25歳の深山はるか(道田里羽)は、仕事やボランティアに奔走しながら、恋人との結婚を夢見てアクティブに日々を過ごしていた。ある日、同窓会で再会した友人から不妊治療中であることを打ち明けられ、ショックを受けたはるかは、勧められるまま婦人科を受診し「女性なのに男性ホルモンが多い」と診断されるも、忙しさの中で対症療法的に片付けてしまう。しかし、不調を抱えながら迎えた大切な日、大量の出血に見舞われる。昔から持ち前の行動力で他者のために奔走してきたはるかだったが、自身の悩みは誰にも共有することができない……。そんな折、はるかは薬局で万引きを疑われている中学⽣・優佳⾥(滝澤エリカ)と出会う。彼氏に依存し、家族や友人と距離を置く優佳里。はるかは、そんな優佳里や周囲の人々を通して、今までの自分を見つめ返しながら、未婚のままひとり静かに疾患と向き合っていく。
道田里羽
滝澤エリカ / 井上拓哉 平川はる香 中山来未 定本楓馬 野上天翔 幹てつや(かりすま〜ず)
中原シホ 逢坂由委子 大貝瑠美華 大木 空(アバンティーズ) 美桜子 牧海斗 大塚菜々穂 村上りおん
土屋直子 小沼朝生 坂田遥香 大川 大 橋本紗也加 関口 蒼 小沢まゆ 二田絢乃 村田啓治
小島彩乃 岡本詩織 原恭士郎 藤 主税 千綿勇平 蔦 陽子 A O I(G.U.M) 田村魁成
しゅんしゅんクリニックP 岡本宗史 元木大介 大高洋夫
熊谷真実
監督・脚本・編集 野本梢
企画・プロデュース 千種ゆり子
エグゼクティブプロデューサー 稲村久美子
撮影 知多良 照明 斉藤徹 録音 横田彰文
衣裳 大賀のぞみ ヘアメイク 鎌田優子 鈴木ゆうすけ 撮影助手 金子愛奈
助監督・スチール 小関莉沙 助監督 田村魁成 衣裳アシスタント 高橋菜々子 音楽 TAKEYA
メインビジュアル撮影 Fujikawa hinano
制作協力 極真会館埼玉県今井道場 若手映画監督応援上映わかな会 ローズレディースクリニック
制作 エイジアムービー 配給 キノパトス 宣伝協力 倉田雄一郎 協賛 B3is 鴻巣アドバンス株式会社 Quizin
製作 有限会社エイジア 千種ゆり子
©︎2025 RANHANSHA
映画『藍反射』(2025/日本/103分)
プロジェクトH P:https://ranhansha-movie.com/
2026年3月6日(金)~12日(木)/ヒューマントラストシネマ渋谷
2026年3月13日(金)~26日(木)/キネカ大森 全国順次公開

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