6月28日(土)に池袋HUMAXシネマズにて、映画『YOUNG&FINE』の公開記念舞台挨拶が開催され、主演の新原泰佑(灰野勝彦役)、出演の向里祐香(伊沢学役)、新帆ゆきさん(新井玲子役)、そして小南敏也監督が登壇しました。本作は、数々の名作を手がけてきた制作プロダクション「レオーネ」が「LEONE for DREAMS」と銘打ち、長年助監督として活躍してきた小南敏也監督と、先輩監督である城定秀夫氏の脚本によりプロデュースした劇場公開作品。原作は『ビリーバーズ』などで知られる山本直樹氏の傑作漫画であり、城定秀夫氏が脚本を執筆。長年城定組で助監督を務めた俊英、小南敏也氏が監督を務め、城定秀夫氏の遺伝子を受け継ぐ鮮烈な「性春」映画として世に放たれている。

観客への挨拶で、勝彦を演じた新原泰佑さんは、本作がご自身の初主演映画であることを明かし、この作品に巡り合えたことを心から良かったと語りました。

また、伊沢学を演じた向里祐香さんは、短い時間ではあるものの、観客に楽しんで帰ってほしいと述べました。
勝彦の同級生で恋人の玲子を演じた新帆ゆきさんは、本作がご自身の初めての映画出演であり、公開されて観客の顔を見ることができて嬉しいと喜びを表しました。監督を務めた小南敏也氏も、多くの観客が集まったことに感謝を伝え、短い時間ながら楽しんでほしいと述べました。
各キャストは、自身の役作りやキャラクターとの共通点について語りました。勝彦役の新原泰佑さんは、監督から「あまり作り込まず、その場で感じたことを勝彦としてセリフに乗せてほしい」と言われたため、役作りはせず、共演者から受けるものを勝彦を通して返事するような形だったと明かしました。ご自身は運動部出身ではなく、ダンスをされていたため、ラグビー部員を演じることや男子高校生のような賑やかなタイプではなかったことから、非常に新鮮な撮影だったといいます。小南監督は、新原さんが現場で感じたことを表現するアプローチを評価し、まるでブルースのようだと表現しました。

伊沢学役の向里祐香さんは、普段のご自身とは異なる部分が多いとしつつも、高校時代に生物の資料集が好きで「プラナリア」について見ていた共通点があったとユニークなエピソードを披露しました。役作りにおいては、日常生活が伊沢とは異なるため、お酒も飲まないご自身が伊沢の「がさつな感じ」をどう視覚的に見せるか、衣装やメガネ、そして細かな表情(目を細めて人から目を合わせないような視線など)で試行錯誤したと語りました。

監督は、向里さんが入念にシミュレーションして役を作り込み、現場で自身の想像を超える意外性のある面白い演技を見せてくれたことに感銘を受けたと述べました。
玲子役の新帆ゆきさんは、元々山本直樹さんの漫画が好きだったため、そのヒロイン役を演じることに喜びと同時に大きな緊張を感じていたと明かしました。役作りでは、山本さんが描く女の子の「自分の欲しいものがちゃんとある」という点が素敵だと感じていたため、それを自身も持てるように演じたと語りました。

玲子の激しく怒るシーン(自転車を投げる場面など)は、ご自身がそこまで感情を爆発させることがないためどうしようかと思ったものの、楽しい時間だったと振り返りました。投げられた自転車は監督の私物だったという裏話も披露され、会場を和ませました。小南監督は、新帆さんの台本の書き込みの量に驚いたと述べ、初めての映画出演で悩みながらも、最後まで表現を決めつけずに演じきったことが演技に反映されていると評価しました。監督は、3人がそれぞれ異なるアプローチで役に向き合ったことが、映画全体の「三角関係」を効果的に描く上で非常に良かったと締めくくりました。

現場での印象的なエピソードについて、新原さんは、向里さんとの芝居と新帆さんとの芝居でアプローチが全く異なり、それが面白かったと語りました。向里さんとのシーンでは、台本を読み込み監督も交えて細かく話し合いながら作り上げていった一方で、新帆さんとのシーンでは、リハーサルも毎回フィーリングで進んでいき、お互いの出方を見て対応する「舞台を演じているよう」なテンションだったと語り、特に向里さんとの伊沢の部屋での飲み会シーンは、長回しだったため全てを余すことなく映す必要があり、互いの出すものやカメラ映りなどを意識したと述べました。監督も、その長回しの中で新原さんが自然に役に入り込んでいく様子が面白かったと補足しました。
共演者から見た新原さんの印象として、向里さんは、新原さんが本当に明るく、現場が明るくなると述べました。また、見た目とは裏腹に頭の回転が早くスマートな方であり、それをあえて勝彦のような「単細胞な役」「バカな役」(勝彦にとっては褒め言葉)として演じているのが愛おしいと語り、ご自身も青春時代を思い出す感覚があったと付け加えました。新帆さんは、新原さんとの共演を通じて、カメラの位置や表情の見せ方など、実践的なアドバイスをたくさんもらい、演技について学ぶことが多かったと感謝を述べました。新原さん自身も、撮影現場は心から楽しかったと語り、新帆さんが真面目で繊細な役作りをする方だったため、インティマシーシーンなどでは彼女の表情を撮るためにカメラアングルを調整するよう監督に提案したこともあったと明かし、2人で作り上げた感覚があったと述べました。
監督は、本作で最も力を入れたシーンとして、ラグビーシーンを挙げました。長編映画を撮るのは初めてだったため全身でこだわったものの、ラグビーシーンではメガホンを使わず地声で叫ぶほど、ご自身も青春をやり直している気分になったといいます。新帆さんも、そのシーンを2階から見ており、教室から運動部の子どもたちを眺めているような「青春の空気」を感じたと語り、撮影時期が夏の始まりの湿気の多い時期であり、今の時期が映画を見るのに一番良いと監督は締めくくりました。
最後に、新原さんと小南監督が観客へメッセージを送りました。新原さんは、オーディションの時から「僕以外には絶対にやらせない」という強い気持ちで臨んだ作品であり、膝の裏が真っ黒になるまでラグビーをしたことなど、自身を忘れさせるほど没頭できた作品だと語り、完成して皆さんの目に触れることができて本当に嬉しいと感謝を述べました。そして、映画が観客に温かく育ててほしいと応援を求めました。
小南監督は、『YOUNG&FINE』は不完全な人間たちが登場する「少し変わった映画」だと表現し、劇中で高校生がお酒を飲むなど、一部の人には「どうなのか」と感じられるかもしれないとしつつも、観客の中にも不完全ながらも「通ってきた道」があるのではないかと問いかけました。本作を見て、帰り道に自身の青春と照らし合わせ、何かしら思いにふけっていただけたら嬉しいと述べ、公開2日目であり、まだ始まったばかりの映画なので、応援してほしいと呼びかけました。




YOUNG&FINE』

<STORY>
海辺の町に暮らす高校生・灰野勝彦(新原泰佑)は、同級生の玲子(新帆ゆき)と交際しているが最後の一線を越えさせてもらえず悶々とする日々。そんな勝彦の家に、突然風変わりな高校教師・伊沢(向里祐香)が下宿人として現れる。はじめは警戒しつつ徐々に伊沢と距離を縮めてゆく勝彦と、二人に嫉妬心を燃やす玲子。そして伊沢は誰にも言えないある秘密を抱えていた。性欲と恋心、今を生きる力強さと将来への不安……複雑に絡み合う3人の感情は、やがて思いも寄らない未来へと転がり始めてゆく。
新原泰佑 向里祐香 新帆ゆき
高橋健介 佐倉萌 山崎竜太郎 宮川翼 吉田タケシ
仲野温 北村優衣 宇野祥平
原作:山本直樹『YOUNG&FINE』(「漫画アクション」連載)|脚本:城定秀夫|監督:小南敏也
主題歌:downt「AWAKE」 (P-VINE RECORDS)|エグゼクティブプロデューサー:藤本款|プロデューサー:秋山智則・久保和明|撮影・照明:田宮健彦|録音:岸川達也|美術:小泉剛|スタイリスト:藤田賢美|ヘアメイク:藤澤真央|助監督:山口雄也|ラインプロデューサー:浅木大|キャスティング:伊藤尚哉|スチール:柴崎まどか|宣伝美術:廣田毅|制作プロダクション:レオーネ|製作:クロックワークス・レオーネ|配給・宣伝:SPOTTED
PRODUCTIONS|16:9|5.1ch|98min
©クロックワークス・レオーネ公式サイト:leonefordreams.com