指名手配犯・桐島聡を描く衝撃作 映画『「桐島です」』公開記念舞台挨拶

指名手配犯・桐島聡を描く衝撃作 映画『「桐島です」』公開記念舞台挨拶

2024年1月26日に、「ウチダヒロシ」という偽名を使って藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていたことが判明し、3日後に亡くなった指名手配犯・桐島聡氏。桐島は何を思い、どんな事件を起こし、その後、半世紀にわたって、どんな逃亡生活を送っていたのか。7月5日(土)に行われた、映画『「桐島です」』公開記念舞台挨拶には、毎熊克哉、北香那、海空、甲本雅裕、高橋伴明(脚本、監督)が登壇。伴明監督と高橋惠子さんの孫の海空さんは本作でデビューし、人生初の舞台挨拶となった。

舞台挨拶では、毎熊さんと北さんが本作のためにギターの弾き語りを練習した裏話のほか、海空さんが伴明監督に「俺はいつまで生きているかわからない」と言われ、本作に出演した話や、伴明監督ご自身が昔元婚約者に言われた「時代おくれ」という言葉を、本作でご自身の孫・海空さんに毎熊さん相手に言わせた話、甲本さんには、『とてつもなくつまらないジョーク』についてなどの話が披露された。

■ 映画『「桐島です」』公開記念舞台挨拶

冒頭伴明監督が前日の公開初日に、「当時の学生運動の先輩たちから、観終わった後に、OKサインが出た」と報告。
伴明監督は、「私はいい加減な学生運動家だったので、イデオロギーはなしで、思いつきというか、妙な正義感で『これはいかんだろう』と思ったことは口にして、行動に移したタイプ。(桐島も)そういう確固たるものはないような人のような気がしている。50年近く捕まらなかった最大の理由が、イデオロギーのなさってことじゃないかなと思っている」と桐島と自身の共通点を分析。

劇中、毎熊と北は、ギターの弾き語りを披露。毎熊は、「ちゃんとコードを弾いて歌うのは初めてだった」とのこと。北は「趣味でやっていましたが、(いつもは楽譜を見ながら弾くので、)楽譜を覚えるのが大変だったのと、毎熊さんが(練習時に)持っていたギターが本格的すぎて、『あれ、いつもやっているのかな?』と思った」と言うと、毎熊は、「あれは、借りパクしたやつ」と真相を告白した。
毎熊は北演じるキーナの『時代おくれ』の弾き語りを聞いてグッとくるシーンがあるが、「歌詞ももちろん入ってはくるんですけれど、北さんの歌っている姿と、目がキレイだった。それをみて、自分との対比というか、それにグッと来た」と話した。


北は、毎熊について、「演じる桐島がどういう人かをすごく知りたくなる魅力を持っている。『この人をどういう人か知りたい』というのがキーナを演じるにあたって、すごく必要だったので、常に助けられていた」と感謝した。

二人が歌う『時代おくれ』のタイトルについて伴明監督は、「学生運動の真っ最中に警察に捕まりまして、その時に彼女が田舎から出てきたんです。警察署の中で『時代遅れだ』と真っ直ぐに言われたんで愕然としたんですけど、『だったらそれでいいよ、俺は時代遅れだから。帰れ』と追い返した記憶がある」と激白。
その『時代おくれ』という言葉を桐島に言ったヨーコ役の海空は、実は伴明監督と本作にも出演している女優の高橋惠子のお孫さんで、本作が俳優デビュー。「俳優を目指したいという噂を聞きつけた祖父から家で、『こういう役で出てみない?』って言っていただいたんですけど、私の心情としては、事務所にも所属していない状態で、ステップをスキップした状態で出演するのは申し訳ない気持ちもあるし、『俳優として積み重ねてから作品に出たいです』と丁寧にお断りしたんですけれど、その後も2〜3回猛烈なオファーを頂いた。私がやらなきゃと思ったのは、3回目に、『俺はいつまで生きているかわからない』と脅されまして、『先延ばししたらダメなんだ』と私も決心をした」と話し、会場を笑わせた。


毎熊は、その『時代おくれ』と振られるシーンがクランクインだったそう。「桐島が本格的に爆弾闘争をやる前のシーンからやれるというのは、よかった。普通の学生が彼女と映画を見に行ってというシーンが後々大事な何気ないシーンだったので、そのシーンからできたのは、よかったかなと思う。けど、桐島は『帰れ』とは言ってないです!」とジョークを交えて話した。

甲本は、桐島の隣の部屋に住む隣人役。桐島の静かな逃亡生活の中のスパイスとして、どのような思いで演じたか聞かれると、「(スパイスの)甘いのか辛いのかどっちなの?みたいな人間像をイメージしながら、役作りをした気がします」と回想。
桐島のジョークを聞くシーンで、隣の男は、シナリオでは『…笑えないな』と返しているが、完成したら映画では、違う返し方をしている。「そのジョークに、『…笑えないな』と返すはずなんですけど、そのジョークを聞いた時に、『とてつもなくつまらないジョークというのは、世界を沈黙させるんだな』と。声も出ず、ただ頷いたんです。監督はどう言うかなと思ったら、監督は毎熊くんに、『この男はもう喋らないから、喋らない彼を見て、桐島がリアクションしてくれ』みたいな演出をしていて、ホッとしました」と裏話を披露した。

最後に毎熊より、「この映画の中に優しさだったり、怒りだったり色んな感情を感じて、この映画を観たことによって、優しさとは何なんだとか、なんでこの人はこんなに怒ってるんだということを、今この日本でどういうことかを映画を通して語り合うことがこの映画のある価値ではないかと思っていますので、できるだけ多くの方に観ていただきたいです」と熱いメッセージが送られた。


映画『「桐島です」』

【あらすじ】
1970年代、高度経済成長の裏で社会不安が渦巻く日本。大学生の桐島聡は反日武装戦線の活動に共鳴し、組織と行動を共にする。しかし、一連の連続企業爆破事件で犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれる。組織は警察当局の捜査によって、壊滅状態に。指名手配された桐島は偽名を使い逃亡、やがて工務店での住み込みの職を得る。ようやく手にした静かな生活の中で、ライブハウスで知り合った歌手キーナの歌「時代おくれ」に心を動かされ、相思相愛となるが…。

【クレジット】
毎熊克哉
奥野瑛太 北香那 原田喧太 山中聡 影山祐子 テイ龍進 嶺豪一 和田庵
伊藤佳範 宇乃徹 長村航希 海空 安藤瞳 咲耶
 趙珉和 松本勝 秋庭賢二 佐藤寿保 ダーティ工藤
白川和子 下元史朗 甲本雅裕
高橋惠子

監督:高橋伴明  製作総指揮:長尾和宏 
企画:小宮亜里 プロデューサー:高橋惠子、高橋伴明
脚本:梶原阿貴、高橋伴明 音楽:内田勘太郎 撮影監督:根岸憲一 照明:佐藤仁 録音:岩丸恒
美術:鈴木隆之 衣裳:笹倉三佳 ヘアメイク:佐藤泰子 制作担当:柳内孝一 編集:佐藤崇
VFXスーパーバイザー:立石勝 助監督:野本史生 ラインプロデューサー:植野亮
制作協力:ブロウアップ 配給:渋谷プロダクション
製作:北の丸プロダクション 
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語/105min
©北の丸プロダクション

公式サイト:kirishimadesu.com
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新宿武蔵野館ほかにて公開中

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