- 2025年3月17日
MANKAI STAGE『A3!』~Four Seasons LIVE 2024~ -Cinema Edition- 、3面スクリーン版&通常版5月16日(金)公開決定
2024年10月31日(木)~11月4日(月・休)まで東京ガ……
映画『スノードロップ』の公開記念舞台挨拶が、10月11日(土)に新宿武蔵野館にて開催され、西原亜希、イトウハルヒ、小野塚老、みやなおこ、芦原健介、そして吉田浩太監督が登壇した。MCは東紗友美が務め、キャストらは過酷を極めた撮影秘話や作品に込めたメッセージを披露した。

過酷な川のシーン、極寒撮影の舞台裏語る — 家族の絆を深めた即興劇のエピソードも
最も過酷なエピソードとして語られたのは、クライマックスとなる川での撮影だった。撮影は11月頃に行われたため非常に寒く、急に気温が下がったという。出演者はドライスーツを着用していたものの、水がジャバジャバと入る状況での撮影となり、みやなおこさんは「翌日から40度以上の熱を出してしまった」と明かした。長靴姿で入水したスタッフは全身が濡れてしまったという。
水中で体が浮いてしまうのを防ぐため、役者には沈むための重しがつけられ、流れが激しかったため、重しがないと流される危険があったとされる。父役の小野塚老さんは、水中で「昔のライフセーバー感覚」で「流されても浮いていれば死にはしない」と冷静に考え、芝居ができたと振り返った。これに対し、西原さんは、その時のお父さん(小野塚さん)が最後に目線を合わせた時の顔が「未だに残像として頭の中にこびりついている」と語り、その時の小野塚さんは「死にそうだったのかもしれない」と感じていたことを明かした。ちなみに、この撮影日は小野塚さんの結婚記念日であったという。小野塚さんは撮影後、銭湯に行きビールを飲んだことや、奥様が結婚記念日に鍋を用意して待っていてくれたというハートウォーミングなエピソードも披露された。
撮影に入る前、初対面のキャストで「昔は幸せだった家族」という「像」を作るため、エチュード(即興劇)が行われたという。これは娘(直子)の子供時代を想定し、両親がまだ仲が良かった時のピクニックのシーンを演じるというものだった。監督の指示で、急遽5歳児になりきるという設定で行われたエチュードについて、西原さんは「この家族の一番幸せだった時はこの瞬間だったんじゃないかなという記憶が残った」ため、本当にやって良かったと語った。
さらに、イトウハルヒさんが演じた宗村が、西原さん演じる直子に宛てて手紙を書いていたという裏話も披露された。家族が川に飛び込むシーンの撮影があり、その後に直子と面会室で会うシーンが控えているという、撮影が2〜3日空いた間に書かれたという。イトウさんは、家族が大変な状況に直面しているこの期間に、ケースワーカーとして「直子さんに最後に何が言えるんだろう」という思いを、一方通行のコミュニケーションとしてメモにしたためたと説明した。西原さんはその手紙を「今も持っています」と明かし、感謝を伝えた。
最後のメッセージとして、登壇者一同は、作品が提起する社会的テーマについて深く言及した。
西原亜希さんは、観客の心に浮かんだ「なぜ?」という疑問こそが非常に大切であるとし、「その問いを家に持ち帰って考えて」ほしいと訴えた。また、本作が「とても小さな作品」であるとして、友人知人やSNSを通じた拡散への協力を求めた。

イトウハルヒさんは、この映画は「どうしたら他人に寄り添うことができるのか」「困ったり、弱っている人にどうしたら手を差し伸べられるのか」という問いかけをしているとし、観客と「一緒に考える機会を持って」ほしいと語った。

小野塚老さんは、家族が選んだ「みんなで死ぬ」という選択肢以外に、「どうすればそれ以外の選択ができたのか」をみんなで考えていきたいと述べた。

みやなおこさんは、「閉鎖的なものがいかに人間を追い詰めるのか」について触れ、地域や社会が支えていれば、この家族は別の選択ができたのではないかとし、悲惨な選択をさせない社会になってほしいと強く願った。

芦原健介さんは、普段目を向けていない「苦しんでいる人たち」との付き合い方や「人間の尊厳とは何なのか」について考えてほしいと述べ、「とにかく気にかけ続ける」姿勢を持つことで人に優しくなれるのではないか、と結んだ。

吉田浩太監督は、最も伝えたかったことは「人間が存在しているということ」の重要性だと語った。お金や力が強いといった「恐ろしい価値観が蔓延している」時代だからこそ、監督自身は「弱い時の視点」を真実だと信じており、「弱さは人間の本質であって、逆にその弱いものが強い」というメッセージを伝えたかったと締めくくった。


映画『スノードロップ』

あらすじ
認知症の母・キヨと同居している葉波直子の元、長年蒸発していた父・栄治が帰宅し
てくる。長年蒸発したままった父の帰宅に困惑する娘の直子だったが、母・キヨの栄
治を迎えいれたい要望を聞き、同居するようになる。
以来、栄治が新聞配達をし、家計を支えるようになっていく。
父・栄治の同居から10年ほど経ったある日。持病の悪化により栄治は新聞配達が出来
なくなってしまい、栄治は仕事の引退を余儀なくされてしまう。父の仕事の引退を
きっかけに生活保護の申請を考えるようになっていく。
一家を代表した直子が生活保護を申請するため市役所に出向き、ケースワーカー・宗
村とのやり取りを重ねて申請作業を進めていく。母が重度の認知症であり父も病気の
悪化により仕事が出来ない状態で預貯金もほとんどない状態の一家は生活保護を受け
るには十分な資格があった。
宗村の親切な対応により生活保護申請はスムーズに進められていき、葉波家の訪問審
査を受けて生活保護の受託はほぼ決まった。
その訪問審査を無事終えた夜。無事生活保護申請は通るであろう状況の中、栄治が直
子に衝撃の一言を告げた……。


出演
西原亜希 イトウハルヒ
小野塚老 みやなおこ 芦原健介 丸山奈緒 橋野純平 芹澤興人 はな
監督・脚本 吉田浩太
プロデューサー 後藤剛
撮影監督 関将史 撮影 関口洋平 録音森山一輝 美術 岩崎未来
衣裳 高橋栄治 メイク 前田美沙子 スチール 須藤未悠
助監督 工藤渉 制作 古谷蓮
主題歌 浜田真理子「かなしみ」
製作 クラッパー 宣伝・配給 シャイカー
配給協力:ミカタエンタテインメント
2024/98分/ステレオ/DCP
2025年10月10日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
