時のおと

福井の「音」を刻む映画『時のおと』公開初日舞台挨拶 片山享監督や津田寛治らが登壇 地元住民と俳優が融合した撮影の裏側と作品への思いを語る

2026年1月31日、東京・ポレポレ東中野で映画『時のおと』の公開初日舞台挨拶が行われた。福井県出身の片山享監督をはじめ、津田寛治、葵うたの、柳谷一成、上のしおり、窪瀬環ら主要キャストと、福井県で生活している住民ら計8名が登壇した。登壇者の8人中6人が福井県出身者という構成で、地元に根付いた本作ならではの温かい空気に包まれた。方言や生活音を「街の音」として捉えた本作の撮影秘話や、ドキュメンタリーとフィクションが交錯する現場の様子が語られた。

冒頭、片山監督は登壇者の過半数が福井県出身者であることに触れ、なかなかない比率であると会場を和ませた。本作は福井県内5市町(福井市、小浜市、南越前町、鯖江市、勝山市)の協力を得て撮影されたオムニバス形式の作品であり、それぞれの街の「音」がテーマとなっている。

高校演劇部の顧問役を演じた津田寛治は、撮影中にコロナ禍で中断があったエピソードを披露した。空白の期間に、かつて自身が住んでいた街を歩き回ることで、台本の世界に自然に入り込むことができ、生徒役たちへの愛おしい感情が生まれたと語った。

また、津田の方言交じりのアドリブに対し、生徒役の葵うたのが本気で反発する演技を見せたことについて、片山監督は「まとめようとする教師にムカつくのがリアルで素晴らしかった」と称賛した。

本作の特筆すべき点は、プロの俳優と地元住民が共演し、物語とドキュメンタリーの境界が曖昧な点にある。長崎県出身の俳優・柳谷一成は、福井の「音」を体得するために撮影の1ヶ月前から現地に移住し、農業や焼き鳥屋でのアルバイト、太鼓の練習に従事したことを明かした。その馴染み方は、撮影よりも地元の生活が優先されるほどで、地元住民からも「おかえり」と迎えられる関係性を築き上げたという。

実際にその街に暮らす出演者たちも撮影を振り返った。勝山市出身の窪瀬環は、三味線を弾く役作りのために1年間稽古に通い続け、その上達の過程自体が映画の中の「時の音」として記録された。南越前町の漁師役として出演した千馬龍平は、実際の家族と4世代で出演しており、子供の手を引いて歩くシーンでは何度もテイクを重ねて監督の求める情緒を表現した苦労を語った。

また、勝山市の「勝山左義長」の保存会に所属する久保田佳穂里は、独特の動きを見せる太鼓の伝統について解説し、2月末に開催される祭りをPRした。

舞台挨拶の最後には、片山監督が「音を撮るなら、過去の音も撮らなければならないと思った」と制作の意図を述べ、「映画を見終わった後に、自分の生活の音が少しでも愛おしく思えたら嬉しい」と観客にメッセージを送った。フォトセッションでは、劇中の演劇部員役のキャストも客席から呼び込まれるサプライズがあり、終始和やかな雰囲気で初日の幕を閉じた。


映画『時のおと』

■あらすじ
女子高生は演劇部として最後の夏を迎える。
街の音に憧れた女性は時を止めようとする。
漁師はいずれおとずれる世代交代に向き合いながら生きる。
移住してきた男性は春を待つ野菜を育てる。
聴こえてきた音。聴こえている音。時は過ぎて行く。

出演:上のしおり 葵うたの 笹木奈美 窪瀬環 千馬龍平 柳谷一成 もも 千馬和弘 三嘴武志 津田寛治
監督/撮影/編集:片山享
プロデューサー : 宮田耕輔 植山英美 脚本 : 片山享 Kako Annika Esashi 録音 : 杉本崇志 坂元就 整音 : 杉本崇志 カラリスト : 田巻源太 編集協力 : 秦岳志 スチール : 坂本義和 三味線指導 : 杵屋禄宣 もも 英訳 : 服部きえ子
海外セールス : ARTicle Films 制作プロダクション : ハナ映像社 製作 : ふくいまちなかムービープロジェクト
協力 : 福井市 小浜市 南越前町 鯖江市 勝山市 企画:福井県
公式X:https://x.com/Fukuinooto
公式Instagram:https://www.instagram.com/toki_no_oto_291/

1月31日(土)ポレポレ東中野にて公開

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Hajime Minamoto

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