SF界の巨匠・半村良の異色短編を実力派俳優の宇野祥平の主演で描いたSF人情喜劇映画『となりの宇宙人』が6月27日、新宿武蔵野館で公開初日を迎え、舞台挨拶が行われました。主演の宇野祥平さんをはじめ、宙さんの家族のような絆を深める田所運一郎役の前田旺志郎さん、優しいヒロイン淳子役の吉村優花さん、女性にモテる貞さんを演じた猪塚健太さん、そしてメガホンを取った小関裕次郎監督が登壇し、作品への熱い思いと撮影秘話を語りました。

■ 映画『となりの宇宙人』
本作は、謎の宇宙人「宙(ちゅう)さん」を宇野祥平さんが演じ、個性的なアパートの住人たちが織りなすSF人情喜劇。
▼10年来の夢が実現、宇野祥平の存在が不可欠
映画は制作プロダクション”レオーネ”が立ち上げた企画「LEONE for DREAMS」の一環としてプロデュースされました。長年助監督として活躍し、本作が一般商業作品デビューとなる小関裕次郎監督は、この原作を「10年以上前」から映画化したいと熱望していたことを明かしました。敬愛するいまおかしんじさんによる脚本を強く希望し、主演に宇野祥平さんの名前が挙がると、監督は「宇野さんが断っていたらもうやめます」とまで語るほど、宇野さんの存在が作品にとって不可欠であったことを強調しました。監督は自らを「女性にモテない監督」と称し、冒頭から会場の笑いを誘いました。

▼キャストが語る撮影秘話と作品への思い
主演の宇野祥平さんは、自身の役柄について「自分が主役というよりもみんなが主役の映画だと思う」と謙虚に語りました。原作の半村良さんの小説は読んでいたものの、今回映画化された短編「となりの宇宙人」は知らなかったという宇野さん。初めて脚本を読んだ際、「すごく面白いけど映画になりにくい小説」だと感じていたため、これを映画化した制作陣とプロデューサー陣に対し「すごい素晴らしい企画だなと思ってぜひ参加したいと思いました」と、作品への参加を決めた理由を述べました。また、映画を通じて「人との出会いと別れ」という実人生に近いテーマを感じたとし、「皆さんも何か自分の出会いや別れを思い出すきっかけになってくれたら嬉しい」と観客にメッセージを送りました。

アットホームな現場を振り返る 宙さんの家族のような絆を深める田所役を演じた前田旺志郎さんは、脚本と宇野さんが宇宙人役だと聞いた時の第一印象を「なんかよう分からんけどおもろそう」だったと振り返りました。実際の撮影現場では「アパートの住人全員がすごくアットホームな雰囲気」で、人との繋がりを大事にしている役者ばかりだったため、非常に温かい現場だったと語りました。

ヒロイン・淳子役をオーディションで勝ち取った吉村優花さんは、出演決定の連絡を受けた際、「自分がまさかその映画のヒロインを演じられる日が来ると思っていなかった」と、まるで他人事のように感じたことを明かしました。オーディションは「期待しすぎると落ち込むからラフな気持ちで受けた」としつつも、宇野さんや前田さんの出演を知り「このお二人とやれたらすごい楽しいだろうなという妄想はすごいしていました」と笑顔で語りました。当初は共演者に「怖かった」と恐縮する場面もありましたが、今ではすっかり打ち解け、冗談を言い合える関係になったと語りました。また、新体操の経験があるため、撮影では足上げ(Y字バランス)が得意だったと語り、会場を驚かせました。小関監督も、吉村さんの演技は「一発でOKを出した」と評価し、彼女がだんだん「肝が据わってきた」と成長を称えました。

女性にモテる貞さんを演じた猪塚健太さんは、「役作りが楽そう」と冗談を飛ばしつつも、「現実では許されない」(3人の女性と付き合う)役柄を演じる楽しさがあったと告白しました。監督からは「ものすごく好青年」とフォローが入る場面も。自身の役柄については、現場で共演者から「嫉妬」されたと語り、役柄のユニークさを強調しました。

小関監督は、撮影現場では俳優陣の演技がテスト段階から面白く、「もう本番行っちゃえばいいや」と、あまり演出せずに彼らの持ち味を引き出したと語り、「一番楽しんでいました」と笑顔で撮影を振り返りました。最後に、自身の作品を「くだらない」と自虐的に評しつつも、「見て明日頑張ろうと思える作品になったと思っています」と力強く語り、嫌なことがあったら「もう一回見てください。多分明日多分いいことが起きると思います」と観客にエールを送りました。
舞台挨拶の後には、グッズ購入者に対して、小関監督によるサイン会も実施されました。連日トークイベントも予定されており、作品への期待がさらに高まる初日となりました。