内山拓也監督が故郷の冬の新潟を舞台に、少年の成長と母と子の20年間を描いた自伝的作品『しびれ』の完成披露上映会が8月30日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された。9月25日からの全国公開に先駆けて行われた舞台挨拶には、主演の北村匠海、共演の宮沢りえ、内山監督が登壇した。第76回ベルリン国際映画祭をはじめ国内外で高く評価された本作の撮影秘話や作品に込めた想いが熱く語られたほか、登壇者の「しびれた体験」も披露され、朝早くから劇場へ詰めかけた超満員の観客を深く魅了した。

「僕と心中してくれ」覚悟のオファーとセリフなき難役の裏側
劇中で主人公の大地(青年期)を演じた北村匠海は、幼少期の環境から言葉を発しない難役について語った。オファーを受けた際、内山監督から「僕と一緒にこの映画で心中してほしい。その覚悟を一緒にとってくれ」と言われたことを明かし、その一言で出演への固い決心がついたと振り返った。北村は、言葉で説明しない役柄だからこそ、周囲の景色や降る雪、冷たさ、そして人の心の温度に対してものすごく敏感になれたと説明。役者として可能性が無限に広がる感覚があり、非常に自由度の高い芝居を楽しめたと手応えを明かした。
初共演で感じた独特の距離感と心が解けた感動のエピソード
母の亜樹役を演じた宮沢りえと北村は今作が初共演となる。撮影現場では役柄としての独特な距離感を保つため、互いに言葉を交わさず見つめ合う時間を過ごした。しかし撮影終了後のポスター撮影の際、宮沢から「私、怖くないから!」と声をかけられたことで、大地としての心が解けたと北村は微笑んだ。一方の宮沢は、撮影中の張りつめた感情から解放され、成長した大地を抱きしめる時間が幸せだったと語った。また宮沢は、幼少期から青年期まで大地を演じた4人のキャストの瞳に共通する面影を感じ、強い衝撃を受けたことも明かした。
登壇者が明かす「最近しびれた瞬間」とオアシス再結成の涙
作品タイトル『しびれ』にちなみ、登壇者が「最近しびれた瞬間」について語る一幕もあった。北村は10代の頃から大ファンであるロックバンド「オアシス」の再結成を挙げ、兄弟が和解する姿に大人になるのも悪いことばかりではないと涙した感動を熱弁した。宮沢は、約30年前にTHE BLUE HEARTSとレコーディングを行った刺激的な思い出や、長岡花火大会で見せた職人たちのパンクな情熱にしびれたと語った。内山監督は、ラストシーンの撮影前夜に北村と会話した際、監督自身が意図していた言葉と全く同じ表現が返ってきた瞬間を挙げ、10数年の集大成を感じて鳥肌が立ったエピソードを披露した。
構想10余年の結晶 観客とともに歩む作品へのメッセージ
19歳から20歳の頃に脚本を書き始め、10数年の歳月を経て自伝的作品を完成させた内山監督は、フィルムの最後の切れ端まで使い切って結末を収めた撮影裏話を明かし、特別な一日を共にしたキャスト陣への深い感謝を伝えた。最後に北村は、自分たちが撮影現場で記録し続けた時間を観客と共有できた喜びを語り、作品が一人ひとりの人生に寄り添い続けることを願った。宮沢も大切な人や家族と一緒に語り合うきっかけにしてほしいと呼びかけ、会場が温かい拍手に包まれる中で舞台挨拶は幕を閉じた。
映画『しびれ』
監督・原案・脚本:内山拓也
出演:北村匠海 宮沢りえ
榎本 司 加藤庵次 穐本陽月
赤間麻里子 / 永瀬正敏
企画・制作:カラーバード 製作幹事・制作プロダクション:RIKIプロジェクト 配給:NAKACHIKA
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