翔んだタックル大旋風

『翔んだタックル大旋風』プレビュー上映会、小野監督が語る「笑いと怖さの両面」の狙い:森山みつき・藤田健彦登壇

12月26日(金)よりテアトル新宿ほかにて公開される小野峻志監督の初の商業作品『翔んだタックル大旋風』のプレビュー上映会とトークイベントが、本公開に先立ち11月23日(日)にTAMA Cinema FORUMの上映イベントとしてヴィータホールで開催された。ゲストとして、前作『野球どアホウ未亡人』から引き続き出演する森山みつき(沙織役)と藤田健彦(警備員役)、そして小野監督が登壇。司会は映画評論家・プロデューサーのくれい響が務めた。監督が本作を「時速185kmで壁に衝突していくような映画」、藤田さんが「前作とは全く違うベクトルの作品」と評した挑戦作について、制作秘話や観客を驚かせた舞台裏が語られた。

■ 『翔んだタックル大旋風』プレビュー上映会

※記事内に一部ネタバレ事項を含みます。

I. 質問と回答:作品コンセプトと観客の反応

Q1. 前作『野球どアホウ未亡人』との違いは?

前作『野球どアホウ未亡人』がヒットしたことをきっかけに新作の企画が始まったが、監督は「『野球どアホウ未亡人』とは何か違うことをやりたい」という意識があったという。前作の主人公は、最終的に「私は野球になった」と、男を捨てて自立していく設定であったのに対し、本作では「とことん男を見捨てない主人公にしよう」と、地獄の底まで愛しにいくような設定にしたことで差別化を図ったと説明した。 これに対し藤田さんは、「本作は前作と似た構成っぽく見せていて全然違う作品である」と分析し、前作が「2次元的」だったのに対し、本作は「嫉妬」や「人間の内面」にどんどんと突き進んでいく「3次元的」な、ベクトルが全く異なる作品だと評価した。

Q2. プレビュー上映での観客の反応は?

観客の反応について、藤田さんは「お客さんがどういう反応されるんだろうと思って、最後まで端っこで見ていた」と明かした。観客は当初、「どこで笑っていいのかが分からない」という戸惑いの状態が続いたものの、その後、森山みつきさんが登場したタイミングで「ドカン」と大きな笑いが起き、「ちょっと安心したみたいな感じ」になったと振り返った。 藤田さんが自身(警備員役)の登場シーンで「笑いを放り込んだつもりだった」ものの、観客の反応は限定的だったことも示唆された。小野監督は、観客が戸惑った結果になったとしつつ、「本作は2回目以降にお楽しみください」「多少余裕があればもう楽に見れるんじゃないか」と述べた。

Q3. 本作の「怖さ」のベクトルとは?

小野監督は、本作がホラーっていうか、「ホラーテイストな何か」であり、本当に怖いことを狙っているかと言われると「どうかな」としつつも、元々考えていた、恐ろしい『悪魔のいけにえ』みたいなモンスターを出すホラー映画は、派手なユニフォームとヘルメットから「怖く撮る才能がない」と諦めたと明かした。 その結果、「モンスターの怖さというよりは「人間の内面」に焦点を当てた作品になった。本作の怖さは「人間の怖さ」であり、「嫉妬で、殺す」といったストーカー的な要素を持つ作品。「笑いと怖さの両面を狙えれば」という意図があったと監督は語った。


II. 話題:個性的なキャストのエピソード

話題1. 刑事・沙織(森山みつき)役は「当て書き」

森山みつきさんが演じた刑事・沙織役について、監督は、前作で教えられる側だった森山さん(夏子 役)に、本作では「主人公を教え導く側」を担ってもらおうと考え、「森山さんしかおらんだろう」という思いでオファーしたと説明した。 沙織の役柄は、組織から外れた「はぐれもの」や「一匹狼的なんかこうアウトロー」として構想され、イメージは「ダーティハリーのイメージ」であり、「ほとんど当て書きみたいな感じ」で脚本が書かれたという。 森山さんは、自身の役について「全てを見通していそうで実は何も見通せてなくて翻弄しかされてない役」だったとしつつも、「ひたすら思う存分格好つけさせていただいた」と感想を述べた。また、クライマックスの必殺技解説のセリフは、前作の経験からアフレコだと思い込んでおり、当日急いで覚えたという苦労話を披露した。

話題2. 藤田健彦氏、念願の「特撮モノあるある」を熱演

藤田健彦さんの役は、当初、森山さん演じる刑事の上司(先輩刑事)として構想されていたが、脚本変更により警備員役(地獄の警備員)となった。藤田さん演じる警備員が物語に出てくることで、刑事(沙織)が現場にやってくる「重要なきっかけ」となる役だったと小野監督は強調した。 藤田さんの登場シーンは「特撮モノあるある」をやりたかったという監督の期待に応えるものだったと述べ、撮影の際、アドリブで鼻歌を入れる工夫をしたことを明かした。小野監督は、前作では藤田さんのサービス精神を抑え込んでいたが、本作では「藤田さんの好きなように全部やろう」とフリースタイルで演じてもらったと語った。

話題3. 主題歌「恋の危険タックル」レコーディング秘話

本作の主題歌「恋の危険タックル」は、タックル三人娘(吉田伶香、夏海、森山みつき)が歌唱している。前作『野球どアホウ未亡人』の「どアホウのテーマ」で味を占めてまた主題歌を歌っちゃうぞ!という形で制作されたという。 森山さんは、前作では自身が歌い続ける曲が多かったのに対し、今回は一曲を3分割で歌ったため、レコーディングが非常に早く終わり、「楽でした」と振り返った。監督は、今回は特訓場面で流すことを想定して、それに合った曲をオーダーしたと説明した。

III. 終わりに

藤田さんは、本作が「枠組が同じだけど違う型をしている」という点で映画として興味深いと述べ、観客に対し「皆さんが頼りですからね」と、口コミによる応援を呼びかけた。 トークイベント終了後には、出演者によるサイン会が実施され、初のグッズとなるオリジナルポスターの販売が行われた。


【映画情報】
『翔んだタックル大旋風』は12月26日(金)よりテアトル新宿ほかにて公開される。また、12月11日(木)には舞台挨拶付き完成披露上映会がヒューマントラストシネマ渋谷で開催される予定。

この記事を書いた人 Wrote this article

Hajime Minamoto

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