短編作『青めぐる青』インタビュー。大分出身俳優・監督と、初めて大分を訪れた女優・駒井蓮

短編作『青めぐる青』インタビュー。大分出身俳優・監督と、初めて大分を訪れた女優・駒井蓮

宮崎彩監督による短編映像『青めぐる青』がYouTubeで公開中。全編を大分市内で撮影された本作について、大分県出身の井上想良さん、楽駆さん、宮崎監督。そして、本作に出演する青森出身の駒井蓮さんに対してインタビューいたしました。

青めぐる青
左から)宮崎彩監督、井上想良、駒井蓮、楽駆


本作は「大分市ロケーションオフィス」発の作品ということから、大分やご出身地(地元)での思い出や出来事について語っていただくとともに、劇中で描かれる学生時代と成人後の2つの時代・世代に基づき、学生時代の思い出や地元への想いを主軸に本作についてうかがいました。

■ 短編映画『青めぐる青』キャスト、監督インタビュー

▼地元・大分での撮影について

-はじめに宮崎監督に質問したいと思います。本作撮影に対するコメントに「宇宙人でもやってくる映画でも撮ってやろうかと思った」というコメントが気になりました。

 
井上想良
あぁ、それ読んだなぁ

駒井蓮
読んだ読んだ!

-このコメントから、大分での撮影にあたって宮崎監督が苦悩された様子が伺えたのですが、本作はどういったプロセスで撮影に臨んだのでしょうか?

宮崎彩監督
まずクライアントが大分市の大分ロケーションオフィスで、機能としては、FC(フィルムコミッション)なんです。普段は撮影地と制作側を繋ぐ役割をしているところが初めて企画側にまわったというわけです。そのFCから「全編を大分で撮ってください」と言われた時に、いくら内容は何でもいいと言われたとしても、FCの意図を考えた場合に、ある程度、大分のロケーションを映していかないといけないという点から悩みました。
印象的な建物ばかりを映しても脚本の方がついていかないと思うんです。場所ありきになる話やPR動画にはしたくなかったので、あくまでその土地に根ざした個人の話を描きたいなと思っているところがバランスを取る最初の課題でした。
短編なので、「じゃあ何を切って何を入れ込むか」を考えて、街を映すとなると、移動することがひとつのキーになっています。
学生の頃は自転車で、大人になったら車社会。そういった手段も変化してゆく移動の物語として進めていきたいと思って撮影しました。

-作品を観て印象的だったのが、川沿いの堤防につくられるサイクリングコースに代表される、日常生活の風景でした。

青めぐる青
宮崎彩監督

宮崎彩監督
大分市は、海や川があって、水が印象的です。人間が動いていく様も水の流れに例えたく、水に関する部分を映したいと思っていました。

▼地元での撮影の感想

【井上想良さんの感想】

-地元大分での撮影という点で、大分市出身の井上さんに質問します。大分市の生活に根ざした部分を撮りたいという監督の言葉がありましたが、井上さん自身にとってなじみ深い場所での撮影には特別な思いがあったのではないでしょうか?

井上想良
監督が自転車の移動の話をされていましたが、学生時代に実際に通っていた場所で、高校生時代の撮影に使われた学校は母校だったんです。なので、高校生の時の自分を頭の片隅に思い浮かべながらの撮影でした。
その場所でしか作れない作品であり、そこでしか出来ないことが出来たと思います。

青めぐる青
井上想良

【楽駆さんの感想】

-では、楽駆さんに質問です。出身が大分県由布市とのことですが、大分市での撮影の感想はいかがでしたか?

楽駆
「大分でいつか撮影が出来たらいいな…」と思っていたので、その撮影に入れたことが嬉しかったです。この作品には大分の豊かな情景がすごく写っているわけではなく、多分それはあえてだと思うんですけど、さきほど監督がおっしゃられたように、街に関してはどこの街でもそんなに差はなく、大切なのはそこで過ごした時間・住んだ時間だと思っています。
18年ぐらい大分に住んだ場所に仕事で帰ってきて、行ったことがあるところで撮影ができることはとても贅沢なことだと思いました。

青めぐる青
楽駆

【駒井蓮さんの感想】

-駒井さんは大分を訪れるのは初めてだったのでしょうか?ご出身の青森と比べての感想などを聞かせてください。

駒井蓮
大分を訪れるのは初めてでした。
景色についてですが、私の地元は海がない場所で、そこで育ったので海や温泉の湯気が見える景色や特に飛行機で来るときに見た海の色が北の海とは違っていて、その段階から「あぁ、南に来たんだな」と思いました。
ただ、根本的なところは地方・田舎という面で似ていると思いますね。あと、食べ物が本当に美味しかったです。

青めぐる青
駒井蓮

井上想良
でしょ~

駒井蓮
りゅうきゅう丼は、海鮮丼と同じ食べ物に見えるんだけど、“南”感があると思いました。

-駒井さんが感じた北の海と飛行機から見た大分の海の違いとして、どんな点がありましたか?

駒井蓮
日本海って、濃いというか黒い・暗い青の感じなのですが、大分の海は色が薄いんですよね。明るい青でそれはもう一目で全然違うと思います。

楽駆
監督、今度は青森で撮影しましょう!

宮崎彩監督
青森は蓮ちゃんが制覇しているから、何でもOKだよね。

駒井蓮
そうですね(笑)

井上想良
すごいな、撮影の選択肢がひろがりましたね。

楽駆
とりあえず行けばなんとかなりますよね(笑)

-料理の話がありましたが、思い出に残っているものはありますか?

駒井蓮
私はピカイチ、りゅうきゅう丼なんですけどね。

宮崎彩監督
大分の回し者ですか(笑)

駒井蓮
(大分からは)誰も来ていないと思うんですけど(笑)
いまパッとは言えないんですけど、りゅうきゅう丼の作り方を教えてもらいました。盛って、タレをつけて…で終わりじゃないんです。

楽駆
しょうゆとみりんと…とか?

駒井蓮
そうそう。作り方をロケーションオフィスの方が教えてくれて、お弁当食べるたびに、いろいろ説明してもらいました。それがとても楽しかったです。

▼学生時代の思い出について

【井上想良さんの思い出】

-作品の内容にちなんで、学生時代の思い出についてお話をうかがってみたいと思います。
 井上さんは学生時代、テニスをされていたそうですが、その話を聞かせてください。

井上想良
そうですね。自分の中での一番の学生時代というと、高校生の時になります。
中学生まではテニススクールに通っていたのですが、初めて部活動に入って、シンプルにきつかったですね。それは体力的にも精神的にも。
でも頑張ったんです。「頑張らないと大学に行けない。勉強はできないからスポーツ推薦で入るしかない。だったらもうやらないと…」っていう義務感の方が強かったかもしれないです。

青めぐる青

-楽しさがなかったんですね。

井上想良
そうですね今となっては思い出になっていて、引退してからは楽しんでテニスをすることができています。
でも逆に言えば、その義務感で培われた負けない自信とか、努力に対する結果の割合は、この業界に入っても負ける気がしないというか、自分の根本となるものを作ってくれたのは、学生時代のテニスや部活だったなと思っています。

【楽駆さんの思い出】

-楽駆さんは、サッカーをされていたそうですが、学生時代はどのように過ごされていましたか?

楽駆
当時はサッカーばかりしていたので、その思い出は強いです。思い返してみると、結構辛かったです。辛かったものの一つとしては、個人的なものというよりもレギュラー争いがあることでの友達関係があります。
仲のいい友達がレギュラーに選ばれて自分が外されたとしても喜ばなきゃいけないのに、その友達が怪我をしてしまって自分が出られるとなった時は、嬉しいというよりは、何とも言えない感情になってしまいました。
でも、井上さんがさきほど言っていた、忍耐力や何かを続ける力は、サッカーで培ったと思いますし、「やってよかったな」って。今思うと良い経験ができたなと思います。

青めぐる青

【駒井蓮さんの思い出】

-駒井さんのプロフィールに、“ダブルダッチ”といった耳慣れない単語が書いてありましたが、学生時代に力を入れていたものはありますか?

駒井蓮
ダブルダッチは、小学校の時にハマっていたんです。

井上想良
ダブルダッチって、縄跳び?

駒井蓮
大縄跳びを二本の縄でやるんです。

-3人で行うんですよね。劇中の皆さんの組み合わせだとちょうどいいですね(笑)

駒井蓮
学生時代は文系で生きていて、小学校の時は合唱で、中学校のときは美術部をやっていました。

どちらも自分は学生時代の部活動として楽しくやっていたと思います。今も学生なんですけど(笑)
合唱の時は私は部長をやっていました。“心を一つに!”のような、みんなで一緒に何かをやることがとても好きで、団体で一つ、何かのためにやるということに楽しさがあったのかなと思っています。
うちの中学校の文化祭がちょっと特殊で、ダンスコンクールや、歌・絵画等でクラス対抗のものがいっぱいあったんです。そういうのも引っ張ってやっていく感じでした。

-辛かった男性陣2人と対照的ですね。

駒井蓮
エンジョイしていましたね。

楽駆
僕もエンジョイしていたよ(笑)

駒井蓮
ただ、運動部の本気度というのは文化部にはないところだなと思っていて、私はずっと絵を好きなようにキャンパスに描いていたので、そこは全然違うと思っていました。

楽駆
そういえば、作品の中で土手が出てくるじゃないですか。僕はその土手が嫌なんですよね。

駒井蓮
走らされるところだから?

楽駆
そう。なんでこんなに走らされるんだろうって。

井上想良
部活で怒られると、あの土手を走らせられていました。

宮崎彩監督
舞鶴高校といえば、あそこでひたすら走らされるっていう。

井上想良
めっちゃ走りましたね。あそこを1日10周とか。

楽駆
つらいよね。景色が変わらないしね。楽しかったことを話し合いたかったな(笑)

【宮崎彩監督の思い出】

-監督は18歳まで大分にいらしていて、当時は小説に興味を持っていて、大学から映像の世界に入ったそうですが、どういった学生生活を過ごされていたのでしょうか?

宮崎彩監督
はい。高校卒業まで大分でした。本当に友人が少なくて、他のインタビューで大分での学生生活について質問された時も、ぱっと思い出せる良かったことが話せませんでした。どちらかというと鬱屈とした感じで過ごしていたと思いますね。
私は蓮ちゃんとは対照的で、個人プレーが多かった。
あまり人と何かをすることが、得意じゃなかったと思います。「じゃあ、なんでいま映画をやっているんだよ」っていう話なのですが、撮影が終わると誰とも口をきけなくなるんです。
現場の熱量で人とガーッとコミュニケーションを取っているけど、終わってしまうと、どう喋っていいかもうわからない状態になりますね。

-皆さん対照的ですね。

▼劇中で描かれた2つの時代(学生と、社会人になってからと)。皆さんから見て大人の世界を演じるにあたって、感じたことを聞かせてください。

井上想良
学生時代は、義務感や何かに縛られていたというか、“やるべきことがあった”という感じなんです。
テニス以外のことにシャッターを閉じていて、狭い世界で生きていたと思います。
俳優という現在の職業柄、特殊なところはありますが、この世界に入るのが遅かったということもあって、大人になってというか、自立してから始めた仕事です。
そのタイミングで、「自分のやりたいことって何だろう…」となった時に、“自分で選択ができる”というのが、大人の特権だと思いました。それはもちろん学生にもあるけれど、全責任を負うことはないと思うんです。
閉ざしていたシャッターが無くなって、僕は世界が広いことを感じました。いろんなものがあり、いろんな人がいるということがこの業界に入ってから思ったことになります。それがテニスをやめて思ったことになります。
だから今、僕の中で急に世界が広くなっています。

楽駆
学生の頃は、守られているというか、だからこそ自由みたいなものがあると思っています。何をしたとしても、自分の責任にすべてはならないという。でも大人になると自分の行動すべてが、自分の責任になってくると思います。
心の部分って、大人になっても高校生の頃からそんなに変わっていなくて、でも見かけや見栄というものは、いろいろ変わっていくと思っています。ただその見栄や、自分を良く見せようとする部分を大人になった部分として意識したことはあります。

-駒井さんはいかがですか?

駒井蓮
私は早く大人になりたいと思いましたね。
私のイメージの“子ども”とか“大人”っていうのは、子どもは親と一緒にいることがとても強くて、本人が感じているかわからないけど、親といつも一緒にいるイメージが強かったです。
だから、大人になったら一人の人として、選んでいけるような人になりたい・そういう大人になりたいなってずっと思っていました。でも結果的には、一人で出来ることって本当に無くて、親がどうこうというよりも、私が仕事を始めたのも中学生の時だったんです。
その時からみんなに支えられてやっていることは変わっていないです。だから、大人になることって、自立することとか、一人で出来るようになることって思っていたんですけど、意外と今になっても、いつも誰かと何かを一緒にやっているな・誰かに支えられているなっていう実感がありますね。

▼地元への想い、将来の目標

-現在、東京を拠点に全国で活躍されている皆さんにお聞きします。
将来的に地元に戻りたいか、また、地元に戻る・戻らないに関わらず、今後やっていきたいことや目標を聞かせてください。

【井上想良さんの地元への想い、将来の目標】

井上想良
将来は地元に帰りたいですね。
やっぱり日本で一番進んでいるのは東京だと思うんです。最近ではインターネットなどもありどこでもコミュニケーション取れるようになってきましたが、東京は人も多いし、いろんな人がいるから、老後を迎えるまでの元気な間は、いろんな人と出会って、いろんな情報を頭に入れて、いろんなものを見ていたいなって思うので東京にいたいです。
でも、絶対に疲れるじゃないですか。情報過多になってしまいますし、「もういらないよ」ってなったら帰ろうと思います。
それがどのタイミングになるかわかりませんが、居心地が良い地元が好きなので、「いずれ、地元に戻れたらいいなぁ」といった気持ちです。
今後の展望は…。
僕はいろいろな人と関わるのがとても好きなんです。いろんな人と関わって、いろんなもの、良いもの・悪いものを含めて全部見て、いろいろな人になりたいと思います。
絶対に人生って生きていくにつれて、濃くなっていくと思っています。 
今演じている役と、5年後に演じている役は、同じような境遇の役でも絶対違うし、いろんなものに触れていきたい、いろんな人に会っていきたいと思います。

【楽駆さんの地元への想い、将来の目標】

楽駆
地元に戻ることがそこにずっと住み続けることだとしたら、僕は帰らないという答えになります。
ずっと18年間住んでいたところから、東京に来て、1年に1回しか帰らなくなったことによって、そのありがたみを感じるようになりました。
一番好きな大分という場所があって、1年に1回帰ることによってありがたみを感じて、友達も家族ともあらためてきちんと向き合えると思っています。
住んでしまうと恐らくその関係が当たり前になってしまう部分があるので、そうはしたくないと思っています。
だから“帰らない”と思います。
もちろん、家族に心配事ができたとしたら、帰るという選択の話があると思いますが、何も波風が起こらないようであれば、“帰らない”と思いますね。

【駒井蓮さんの地元への想い、将来の目標】

駒井蓮
地元かぁ…
帰るかどうかはわからないですけど、もし帰らなかったとしても、私の中でそこであった思い出をぐっと思い起こすこともできるし、どこにいっても地元を感じられることはできると思うんです。

それぐらい濃い時間があると思います。
小さい頃は私は青森に永住しようと思っていたんです。ちっちゃい時は地元が大好きだったんですけど、仕事でいろんなところに行かせていただくにつれて、自分がまだ見ていない良いところや、そこに住む人と出会うと、せっかく生きているんだったらいろんな人・ものに出会って、自分がどうなるとかではなくて、1回全部見てみたいと思いました。
だから、日本のどこかに行くかもしれないし、海外にも行ってみたいし、それは気の向くままにと考えています。

▼監督の未来像

-監督に質問です。以前のインタビューのコメントにご自身が撮りたい映画として「子どもをフィーチャーした映画」と「地元に根付いた映画」を撮りたいというものがありました。
今回の作品と絡めて、現在の将来的に撮りたい映画について聞かせてください。

宮崎彩監督
おそらく、“地元”というよりは、“土地”に根付いたことを意味したかったのだと思います。
そういう意味で『いとみち』(主演・駒井蓮)は最高ですね。
“ひとつの土地での時間の流れを切り取る”ことをしたいなと。
また今回の作品にも子どもに出てもらう機会があって、やっぱり面白いなって思いました。
何をするかわからないから決められたものとの化学反応が生まれますし、オーディションをしていても、出てくる言葉が生育環境によって全然違うので、その子たちが喋ることで、家族関係など後ろにあるものが透けて見えることが、子どもの面白さだと思っています。
それは前回(映画『グッドバイ』)に続いて、今回も実感したので、これからも子どもや、土地に根ざしたものを撮っていきたいです。
それとこうやって今回の企画で、同世代の生命力があって、活気ある役者のみんなに出逢えたので、今後、もっとこういう縁が続いていけばいいなと思っています。


■ 短編映画『青めぐる青』

【特報】

走れば、あの頃に追いつける気がした。
宮崎彩(『グッドバイ』) 監督作

W主演:井上想良(「明日、私は誰かのカノジョ」「もしも、イケメンだけの高校があったら」)・駒井蓮(「青天を衝け」『いとみち』)

コロナ禍の「いま」と「あの頃」が交錯して描かれる青春譚

青めぐる青

【Introduction】

コロナ禍、一地方都市。後藤健人(井上想良)は、息苦しさや埋まらない孤独を感じていた。そんな中、高校の同級生・江藤(楽駆)との再会で過去に思いを馳せる。

陸上部のエースとしてどこまでも走れていた高校時代、どこか諦めた表情の同級生・藤田皐月(駒井蓮)を、確かに追いかけていたのだった。

キャスト
井上想良 駒井蓮 楽駆

▼スタッフ
監督・脚本・編集:宮崎彩

企画・製作:大分市ロケーションオフィス 制作プロダクション:東映東京撮影所

公式HP:www.oita-location.net Facebook:@OitaCityLocationOffice
© 2022 大分市ロケーションオフィス

大分市ロケーションオフィスYouTubeにて配信中

2022年4月25日9:00公開開始

青めぐる青

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