多くの共感の声を受け観客賞。『マイライフ、ママライフ』舞台挨拶

9月14日、テアトル新宿にて、『マイライフ、ママライフ』が上映。本作は「第14回田辺・弁慶映画祭」で観客賞を受賞。今回、「田辺・弁慶映画祭セレクション2021」の“亀山睦実監督DAY”の初日に上映となった。舞台挨拶には、W主演のひとり尾花貴絵、その夫役の水野勝。家族留学先の夫の池田良、脚本監修の狗飼恭子、亀山睦実監督が登壇。W主演のひとり、鉢嶺杏奈は手紙を届け、尾花が代読した。

マイライフ、ママライフ

本作は、W主演の鉢嶺杏奈&尾花貴絵が「同世代」の女性を等身大に表現。仕事と子育てに悩む女性を応援する女性を主人公に描いている。尾花貴絵演じるキャリア女性の大内綾が、鉢嶺杏奈演じる2児の母・三島沙織のもとへ、水野勝演じる健太郎と「家族留学」をする。妊娠・出産に勇気がもてない綾と、働きながら子どもを育てる沙織。大内家と三島家で起こる夫と妻の悩みと決断。
W主演となる鉢嶺・尾花のふたりは、同世代の仕事・出産・子育てで悩む女性たちのリアルな声を聞いたりと、ひとりで悩みを抱え込んでしまうワーキングマザー、妊娠に前向きになれない仕事熱心な女性を熱演した。本作は田辺・弁慶映画祭にて観客賞を受賞している。

■『マイライフ、ママライフ』舞台挨拶レポート

舞台挨拶の冒頭。登壇者の先頭に立った亀山監督は赤い巻物を抱えていた。監督は舞台に上がると、床にその巻物を敷き始めた。それは監督自ら敷くレッドカーペットだった。

マイライフ、ママライフ
亀山監督が自ら敷いたレッドカーペット


舞台挨拶が始まり、MC(松崎まこと)にレッドカーペットを敷いた意図をたずねられた亀山監督が「レッドカーペットを歩きたいとおっしゃる方がいたので」と答えると、水野勝は「夢が叶いました!」と言葉を返した。

マイライフ、ママライフ
水野勝

■女性の生き方のニュースを見て

-作品をつくるきっかけは?

亀山睦実監督
私の会社と一緒にお仕事させていただいていたプロデューサーの方から「若手の監督さんのオリジナルのストーリーで映画を作りたい」というお話をいただきまして、いくつかあの企画を出していた中で実現したのがこの『マイライフ、ママライフ』という作品でした。

-同世代の女性たちを主役にした企画はどこからきたのでしょうか?

亀山睦実監督
この企画を書いていたときが、平成から令和に変わるときで、私がちょうど30歳になる年でした。SNSを見ていると、私の高校や大学の同級生たちが結婚して子供を育てていて、その愚痴がSNS上にもバーッと流れていたんです。世代的にアルゴリズムに引っかかっていたのかはわからないのですが、そういう女性たちの生き方の問題みたいなニュースを見ていました。なので、私達のこの手の中に、悩みとか、抱えてるものが世の中の問題として並行して並んでいることが私にはかなりインパクトがありました。なので、これを私達の本当に思っていることとして物語に残しておきたいなと思った次第です。

マイライフ、ママライフ
亀山睦実監督

■キャストが語る自身の役について

-皆さんは自身の役を演じてみていかがでしたか?

尾花貴絵(大内綾 役)
私はこの役をいただいた時に、まだ結婚していないですし、子供を作るというイメージも全く湧いていなかったので、想像しづらかったです。ただ、監督もおっしゃっていた通り、私の周りにも20代後半になっていて、結婚・妊娠する人も増えてきていました。なので、話を聞くことが多くて、その中に綾に近い経験をしている友達が何人か居たんです。悩みなどをなんとなく聞いていたんですけど、綾の役をいただいた時に、友達から「旦那さんにわかってもらえない」とか、「公園に行けないんだよね」とか、「どうしても少し子供から距離を置きたくなるんだよね」という言葉を聞いていました。こういう話を綾にも活かせないかなと思って、綾だったらどういう気持ちかを考えました。

マイライフ、ママライフ
尾花貴絵

水野勝(大内健太郎 役)
男性って、「いや俺はちゃんと考えている」という生き物だと思うんですよね。だけど女性からすると「そこが足りてない」とか「わかっているようでわかってないじゃん」って言いたくなる部分があって、ある意味で“能天気”、“無神経”に見えてしまうのだと思います。
僕も結婚したらこうなるのかなと共感できたので、健太郎にはいろんなところから糸口があって役としてとらえていけたと思っています。

池田良(三島博貴 役)
僕も妻に急にキレられたり、溜まっていたものが急に噴き出して、それを言われて初めて気づくといった、映画の最後の方のシーンのようなことがまさにありました。劇中のように素直に謝れず、映画の中の台詞みたいな「俺だってやってんじゃん」、「だってやってんじゃん」と言いながらも、実は全然できてないといったことを繰り返していたと思います。劇中の言葉遣いは駄目ですね。さすがにあそこまでは言ってないですけど。素直に受け止められないところは初めはすごいありました。「やってんじゃん!」とぶつかってしまう。ただ、映画の彼は、妻に気持ちをぶつけられたときに、きちんと向き合ったり、受け止めようとする姿勢があったと思うんです。それは初めの頃、僕には難しかったですね。僕自身がそんなにすぐに受け容れられない感じでした。元の脚本ではその受け容れが早かったのですが、リハーサルの中で、その受け容れをゆっくりにしていただきました。
鉢嶺さんともいろいろ話し合い、リハーサルをしながら少しずつ変えていただきました。

マイライフ、ママライフ

■久しぶりの長編脚本と脚本協力による新たな視点の気付き

-狗飼さんは脚本協力として、男性キャスト2名の話を聴いていていかがですか?

狗飼恭子 (脚本監修)
この男性お二人は本当にいい男です。だから亀山監督の求める男性の優しさが存分に詰まった映画になっていると思います。

マイライフ、ママライフ
狗飼恭子

-脚本監修にあたって狗飼さんが入っていらっしゃいますが、脚本作りをすすめていく中で相談されたり、「この視点は私にはなかった」といったエピソードはありますか?

亀山睦実監督
私がまず、映画の長編の脚本をしっかり書くのが大学の時以来でした。今まで短編・中編ばかりだったので、これだけの尺を書くのが本当に久しぶりで、書き方や忘れていたようなところを引き起こしていただいたというところがあります。やはり、私一人で書いてしまうと物語の選択肢が狭まってしまうと思います。抜け落ちてしまいそうなところを、犬飼さんにも「ここを少しこうしたらいいじゃない?」みたいなことをお話させていただきました。

-具体的にはどこですか?

亀山睦実監督
最後の方の健太郎と綾が子どもを持つことについて話すところです。

狗飼恭子 (脚本監修)
子供を持ちたいと思っても持てない女の人って、たくさんいると思うんです。不妊の問題だけじゃなくって、一度子どもを産むことが怖いと思って、トラウマを克服できないまま生きている人もたくさんいると思うんです。そういう人たちを切り捨てちゃう映画にはして欲しくないと思う所がありました。子どもを持たない人もいるし、自分の血の繋がってない子どもを迎え入れる選択肢もある。そういう家族もいるんだよっていう、全ての人を救える映画になったらいいなっていうのでちょっとゴリ押ししてしまいました。

-田辺・弁慶映画祭がオンライン開催だったこともあり、より広範囲の人に観てもらうことができて、共感の声も上がっていたようですが。どのように考えますか?

亀山睦実監督
とにかくいろんな女性にまずお話を聞かせていただくところからシナリオを書くのが始まりました。私自身の経験はこのお話の中にはほとんどないのですが、私にとってもまず知らない世界がここにあって、それを「本当に皆さんが悩んでいることって何なんですか」とか、「どういうときにちょっとイラっとしてしまいますか」といった細かな話をいろいろ伺って行ってできたのが『マイライフ、ママライフ』なんです。だからみんなが思っていることがそのままお話になっています。その点がきちんと伝わるお話になったのかなと思います。

■キャストによる作品を観ての感想

-尾花さんは先程、実感・実体験がないからいろいろ周りに聞いた話をされていましたが、実際演技をして、男性キャストのお二人も含めて、出来上がった作品をみていかがでしたか?

尾花貴絵
綾と同じような悩みは実際に多いと思います。この映画を観て、受け取ってくださった方が、どういうふうに感じたのかというのは正直ドキドキした部分です。けれど、ツイッターとかでもコメントを書いてくださった方が数多くいらして、その反応が本当にすごく良かったんです。三島家も大内家も、両方どちらも共感してもらえる反応が、とても多かったので、ほっとした部分があります。

水野勝
今回この作品を観て僕も思ったのが、こうだから・ああだからのぶつけ合いではなく、夫婦という形ではあるんですけど、時には友人のように相談してみて、一緒に問題を解決していく、それぞれの家庭の正解を見つけていくことが大事だなと思いました。それは周りを見ていて思いましたし、この映画でもそういうことを感じました。理想と現実って違うと思うんですけど、この映画の男性は割と柔軟に大人になって対応していましたが、「誰のおかげで飯が食えているんだ!」とか言っては駄目なことを学びました。

マイライフ、ママライフ
左)水野勝、右)池田良

池田良
基本的に男の人が観たらしんどい映画だと思いながらも、僕もこういう経験をしながら、実際に結婚生活の中で築いていったことが多かったと思います。きちんと話すとか、向き合うとかって夫婦でも、夫婦だからこそなのかもしれないけど、難しいと思うんです。だから、男性も作品の中で提示されたものをみて何かに気づいたりとか、妻と実際にもめなくても気づけるみたいなことはあるかもしれないです。妻ともめるのはできればやりたくないので。本当にしんどいですから。

■鉢嶺杏奈さんからの手紙

-今回、Wヒロイン(尾花さん、鉢嶺さん)ですが、今日、登壇できなかった鉢嶺さんから手紙を受け取っているので、尾花さん、代読をお願いします。

鉢嶺杏奈さんからの手紙(代読:尾花貴絵)
本日は皆様、この時期にご来場くださいましてありがとうございます。三島沙織役を演じさせていただきました鉢嶺杏奈です。私事ですが、ただいま第一子を妊娠中で、本日は会場に行けず残念です。
沙織役を演じさせていただいた後、リアルに子どもを授かり、日々子どもと家族と自分の未来を考えさせられています。たくさんのヒントを贈り物のようにこの作品から受け取れたこと、そして監督とスタッフの皆さん、出演者の皆さんに巡り会えたことに感謝しています。
初の上映、皆さんもぜひそれぞれの感じた贈り物を大切にお持ち帰りください。本日はありがとうございました。

マイライフ、ママライフ
鉢嶺杏奈さんからの手紙を代読する尾花貴絵

■二人は同級生

-いまタイミング的に、鉢嶺さんは偶然にも同じような状況なんですね。鉢嶺さんは監督の同級生なんですよね。

亀山睦実監督
はい、大学の同期です。彼女がテレビ番組で体当たりな仕事をされていて、なので彼女であれば、実際お子さんがいらっしゃらなくても子どもが2人いる役で働いて仕事して大変そうな役っていうのも、受け止めてくれるんじゃないかなと思いました。

■メッセージ「この映画を広めてください」

-最後に作品のアピールをお願いします。

尾花貴絵
この作品を見て、どういうふうに感じてくれたかなっていうのを、Twitterとか、やっぱりSNSであの感想をつぶやいていただけたら見られるので、ぜひお待ちしております。ハッシュタグ #映画マイママ で、つぶやいてほしいなと思います。私自身この作品を通して、生き方について考えさせられたことがたくさんありました。皆さんも年齢とか性別を問わず、何か響いたものがあるのではないかとすごく思います。
自分らしくとか、自分に合った子育てとか、仕事の働き方とか、家族の形っていうのを、考えるきっかけになったらいいなと思います。本日は本当にありがとうございました。この映画を広めてください。

マイライフ、ママライフ

■作品情報

『マイライフ、ママライフ』HP  https://mymom.mystrikingly.com/

公式SNS 

• Facebook→ https://www.facebook.com/WorkingMotherMoviePJT
• Twitter→ https://twitter.com/mymomlife_PJT
• Instagram→ https://www.instagram.com/mylifemomlife_movie

9月14日(火)、9月16日(木)にテアトル新宿、9月29日(水)にシネ・リーブル梅田にて上映!
※テアトル新宿は連日21:00より上映※

マイライフ、ママライフ

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