<カトウシンスケ特集上映>横浜シネマ ジャック&ベティでスタート。僕のここまでの“カトウシンスケの軌跡”

<カトウシンスケ特集上映>横浜シネマ ジャック&ベティでスタート。僕のここまでの“カトウシンスケの軌跡”

2月26日(土)から3月4日(金)まで、横浜シネマ ジャック&ベティにて、<カトウシンスケ特集上映>が開催。初日にはカトウシンスケさんが登壇するトークイベントが開催。同劇場の30周年記念映画としてつくられた『誰かの花』で主演を務めたカトウさん、出演者の和田光沙さん、奥田裕介監督が登壇し、本作そして、本特集について語った。

カトウシンスケ

■<カトウシンスケ特集上映>『誰かの花』上映前舞台挨拶レポート

奥田裕介監督
今回のこの『誰かの花』という作品は、この映画館、ジャック&ベティさんの30周年の企画映画としてお話をいただきました。私が横浜生まれ横浜育ちでして、ジャックさんでも短編を上映させていただいていたので、そういったご縁もあり、劇場の梶原さんにお声掛けをいただきまして、本作を撮る流れになりました。
30周年というと、「お祭り的」とか、「町おこし的」とか、そういった要素を求められるかなというふうには思うんですけども、梶原さんから僕に話が来た時点で、多分そういった作品は求めていないだろうと思っていました。横浜の観光地的な横浜を撮るというよりは、僕が生まれ育った、人が住まう横浜というものを撮りたかったというのがまずありました。
僕も小学校5年生ぐらいからここのジャック&ベティさんに通っておりました。本当はちょっとシネコンの映画館でゴジラとかそういった映画を観たかったんですけども、母親が新聞の端っこの方にジャック&ベティさんの何か地味なイラン映画とか台湾映画を見つけてきて、引っ張り回されて観ていたんですけども、退屈するかなと思って自分も観ていたんですが、帰り道に階段を降りて商店街を歩きながら母親と、「あのシーンはこうだ、このシーンはこうだ」みたいな話を僕がして、母親が真逆なことを言うんですね。「いや、あのシーンはこうでしょう」とか、逆なことを言ってるんですけど、それがどっちも成立していて、その感覚がすごく面白くて、多分それが僕の映画の原体験なんだろうなというふうに今は感じています。なので、“お祭り的な”とか“町興し的なもの”ではなくて、僕が思うジャック&のベティさんで流れていて欲しい作品というものを意識して撮りました。観ていただけたら嬉しく思います。

カトウシンスケ
奥田裕介監督

カトウシンスケ
“30周年記念映画”ということだったので、確かにお祭りみたいな何かを最初は想像していました。でもそういう作品ではなくこの映画館で観たい映画・観てもらいたい映画を作ったというのはすごい誠実だと思いました。何回かトークイベントに立たせていただいていて、そんな梶原支配人も奥田監督も、映画館ですごく長く愛されるような何回も観てもらえるような映画を作りたかったんだって話していて、この映画を何回も観に来てくださってる方もいたりしますし、実際そういう映画になってきているのかなと思います。
観客の中でしか映画って完成しないとよく言うけれども、この映画はそこから始まるような感覚がすごいあって、面白い映画体験ができるのではないかなと思っています。
和田さんはいかがでしょうか?

カトウシンスケ
カトウシンスケ

和田光沙
公開してもう5週目に入ったんですよね。
ありがたい事に、リピーターというか、何回も観てくださって、その都度すごく違う、いろんな人間が出てくるんですけど、それぞれの視点で観たりとか、こんなところに気づけたというふうにだとか。
あとは、“観ながら自分の中と対話する”みたいなものとか、“観終わった後に味わう”みたいな楽しみ方をしてくださる方がとっても多くて、本当に嬉しいですし、そういうのは私達も作ってる間はどういうふうにお客様に受け入れてもらえるかってのかわからないでやってるんですけど、この4週間を通してすごいありがたい気持ちでいっぱいです。

カトウシンスケ
和田光沙

カトウシンスケ
なんかいいですよね。映画館で座席の上に座って映画を観ているんだけど、全然違う遠くに連れて行ってもらえるというか、過去みたいなことも含めて、自分の体験に照らし合わされる時間というのが、僕はすごい好きです。そういう映画がいいなと思います。
それで言うと、この30周年記念映画に僕が主演で出ているんですけれども、そのご縁でジャック&ベティさんが、<カトウシンスケ特集>というのを今組んでいただいて、何人かの方は今日一日中楽しんでいるのかな。
カトウの顔をずっと見ていると思うんですけど、そういうラインナップが揃ったなと思います。この映画ももちろんそうですし、朝に僕も一緒に観たんですけど、『ONODA』というアルチュール・アラリっていうフランスの監督が撮ったんですけど。
この映画もすごい遠くに連れていかれるというか。そういう映画と、さっきも『ケンとカズ』という、僕が初主演の長編映画でトークショーをしていたんですけど。あれも人生がいろいろと、当時は僕も、カズ役の毎熊克哉くんも、小路紘史監督も、みんなが“底辺”って言っていたけど。本当にどのように・どうなるんだろうと、それこそ人生が行き詰まってるような・抜け出せないなっていうような生活環境の中で作り上げたものになっていた映画だと監督が指摘してくれました。
この映画館でやられている特集っぽいなあと。自分が出ていなければ、すごい通いたい映画が揃っています。『風の電話』の諏訪監督とは僕はすごいお付き合いがなんだかんだで長くて、自分は劇団に所属してるんですけど、12年前に立ち上げたのかな。そのときに自分たちが「こういう表現がやりたいんだ」っていう話をああだこうだ、手振り身振りでやってたことをちゃんと道を示してくれた、「つまりこういうことがやりたいんだよね。こういう表現がいいと思ってるんだよね。」って言ってくれた一人の恩師みたいな方でいらっしゃるんですけど。
その監督の映画『風の電話』は僕はワンシーンだけしか出てないんですけど、そういうのもラインナップに入ってるって、僕のここまでの“カトウシンスケの軌跡”みたいなものが味わえる特集になっているので、よかったら他の作品も観てくださると嬉しいです。
今週1週間やってます。3月4日まで、『ケンとカズ』と『風の電話』は隔日で、明日は『風の電話』、明後日はまた『ケンとカズ』っていう。
『ONODA』と、『誰かの花』は、毎日やってますのでぜひ観てください。
先程、どれもこれも重い映画ってなってたんですけど、そうでもなかったり。ちょっと疲れますけど、良い映画が揃ってますのでぜひ観てください。

奥田裕介監督
今回『誰かの花』で、東京国際映画祭のアジアの未来部門というものに選出していただきまして、僕は初めての国際映画祭だったので、すごく緊張をしていてQ&Aっていうお客さんが質問を投げてくださるのが一番苦手だったんですけど、そこでお客さんから「カトウシンスケの死んだ魚のような目はどうしたんだ」みたいな質問があって、僕はさっき『ケンとカズ』を見て、それを言われてるシーンとかもあって、まさにこの映画も、そんな目から始まる映画です。

カトウシンスケ
『ケンとカズ』は“死んだ鮒みたいな目で何がわりぃーよ?”ってカズに言われているんですよね。
この間、ワラワーカンパニーズのボーカルの鈴木さんがいらしてくれて、“泥のような目”って、表現してくれました。
『ケンとカズ』と絡めてしまうとあれもやっぱり視線が交わる映画だったなって思いながら撮ってたんですけど。今回の奥田監督の『誰かの花』も、これからご覧になるのであまり多くは話せませんが、やっぱり何を見てるのかとか、何に見られているのかっていうのがすごい肝になってくるというか、面白いなと思って、そういうラインナップが並んだという。

奥田裕介監督
僕としてはやっぱり30周年の企画の映画だったので梶原支配人がどう見るのかっていうのはすごく怖かったというか、緊張というかっていうのはものすごくあったんですけども。その中で梶原支配人が“曖昧さの許容”という言葉を使ってくださって、それを聞いたときに僕も脚本の時点ですごく考えていた、僕自身も普段こうやってしまうんですけども、「今、何か、あれってどうなんだろう」とか、「このニュースってどうなんだろう」って思ったときに、Google先生って言葉が出てきたぐらいにパッとスマホで5~10秒で調べられちゃって、本当は白でも黒でもなかったはずのグレーのものが、なんとなく白にやっといた方が自分も楽なので、そういうふうにしがちだなっていうふうにすごく思っていて、でも、と、いうことはグレーのものって本当は存在すべきですし、なのでこの映画が梶原支配人が言ってくださったように曖昧さ・許容をしたときに、観終わった皆さんが白寄りのグレーなのか、本当に真っ白なのか黒なのか、黒寄りのグレーなのかみたいなのをやっぱりわからないことって、多分世の中に本当はいっぱいあるはずで、それを何か苦しいのでわからないままで抱えていることって聴けたら嬉しいですね。

カトウシンスケ
何かわかった気になりたいというかね、何か決めちゃいたい。ある言葉で、本当はこれぐらいあるものをこれぐらいに規定して、こういうことだったんだなって決めちゃいたいみたいなものが溢れている中で、わからないものはわからないまま抱え続けるっていうのはすごい大変なことだと思うんですけど、「これよりはもしかしたらいいことがあるかもしれない」と思っていて、好き嫌いももちろんそうですけど、嫌いだなと思ったものが本当に何年後かに、そうではない味わいが出てきたりするので、そういう映画に、梶原さんの言葉を借りるならなっているのかなというのがすごいありがたい言葉でしたね。

カトウシンスケ

■<カトウシンスケ出演作特集上映>
●上映日程:2022 年2/26(土)~3/4(金)1 週間限定開催
●上映作品・日時:
・「ONODA 一万夜を越えて」2/26(土)~3/4(金)連日12:40~
・「ケンとカズ」2/26(土)、28(月)、3/2(水)、4(金)15:45~
・「風の電話」2/27(日)、3/1(火)、3(木)15:45~
※「誰かの花」は連日上映中。3/5(土)以降も続映。

●トークショー:
初日2/26(土)15:45 回上映後、トークショー開催
登壇者:カトウシンスケさん、小路紘史監督、奥田裕介監督(「誰かの花」)

●上映劇場:横浜シネマ・ジャック&ベティ
〒231-0056 神奈川県横浜市中区若葉町3-51
TEL:045-243-9800
https://www.jackandbetty.net/

●入場料金
・「ONODA 一万夜を越えて」
 「誰かの花」
 一般1800 円、大専1500 円、シニア1100 円、高校以下1000 円
・「ケンとカズ」
 「風の電話」
 一般1500 円、大専1200 円、シニア1100 円、高校以下1000 円

<カトウシンスケ出演作特集上映>2/26(土)~3/4(金)横浜ジャック&ベティにて開催

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