映画『彼方のうた』公開記念舞台挨拶。秘色と花束。若き日に眞島秀和が過ごした撮影地

映画『彼方のうた』公開記念舞台挨拶。秘色と花束。若き日に眞島秀和が過ごした撮影地

1月6日(土)池袋シネマ・ロサにて、映画『彼方のうた』の公開記念舞台挨拶が開催。キャストの小川あん(春役)、中村優子(雪子役)、眞島秀和(剛役)、杉田協士監督が登壇し、キャスティングの経緯や撮影のエピソードを語った。

彼方のうた

■ 映画『彼方のうた』公開記念舞台挨拶

映画『彼⽅のうた』は、短歌を原作として製作された『ひかりの歌』『春原さんのうた』の杉田監督にとって、デビュー作『ひとつの歌』以来の 12 年ぶりのオリジナル作品。
助けを必要としている⾒知らない⼈のことを思い、⼿を差し伸べ、丁寧に関係を築いていこうとする書店員の主⼈公・春を演じるのは⼩川あん。そして、春が⾃分⾃⾝と向き合うきっかけとなる雪⼦役に中村優⼦、剛役に眞島秀和が演じている。

▼小川あん、出演の経緯

出演の経緯について小川さんは「初めて観た杉田監督の作品が『ひかりの歌』でした。当時も今でもすごく大切な作品です。そして、杉田さんに感想を送らせていただき、お会いしましょうという話になってお茶をしました。」、「他愛のない話を含めてお茶をして、それで月日が経って何度かお会いするタイミングがあり、杉田さんから今回の『彼方のうた』のお話がありました。」、「杉田さんから“小川さんで映画を一緒に撮りたいです”とお声がけをいただいたのですが、私は“とんでもございません”と答えました。私は杉田さんの作品が憧れてで、『私はもう難しいです』と申し上げたんですけれども、杉田さんから“何もしなくても、そこにいれば大丈夫です』とおっしゃっていただいて、脚本を読んだ時と同じように、時間とか流れに身を委ねて、『彼方のうた』に参加しようと思いました」と語った。

それに対して杉田監督は、「私は小川さんのことは存じ上げていたのですが、(当時)面識のなかった小川さんから、私の二つ前の映画のすごく長く丁寧な感想をいただきました。」、「そこに、“この映画を作った人とお話をしたいです”と書いてありました」、「そんな方はあまりいらっしゃらなかったので、ちょっとびっくりしたんですけれども、ではお茶をしましょうかという流れで、お茶をして、ただ映画の話を3時間ぐらいずっとしたということが、小川さんとあった最初でした。」と補足した。

▼中村さんに会った杉田監督が挙動不審になった理由

中村さんは「私は半ばプライベートでお会いする機会がありまして、杉田さんにご挨拶したいと思っていたのですが、お会いしたときに杉田さんがすごく挙動不審だったんです。」、「その時は、『彼方のうた』の話は全然なく全く関係ない話をしました。」、「ほどなくして、お手紙をいただきました。“実は私を想定して書いてくださっていたものがあって…”ということ、脚本があるとお手紙をいただきました。」、「すごくタイミングが良かったので、半分疑っていました。」、「過去作も拝見して、この世界に私は飛び込みたいので、よろしくお願いします」と返事をした経緯を説明した。

杉田監督は「『彼方のうた』の脚本を書き上げた日がありまして、勝手に小川さんにはもうお話をしていましたけれども、中村優子さん、眞島秀和さんに依頼もしていないのに当て書きして書き上げていました。」、「全然関係な場所で、中村優子さんがごあいさつしたいとおっしゃっているのを聞いて、昔、助監督時代に一緒に仕事をしたことがある監督の中村佑子さんだと思って、行ってみたら、映画『ユンヒへ』(イム・デヒョン監督) でジュン役の中村さんだ!」、「私が書き上げたばかりの、勝手にあて書きをした方が、いま目の前にいらっしゃったので、“どういうこと?”」、「(脚本のことを中村さんに)言いたかったが、きちんと事務所の方をを通して正式に伝えないといけない、今ここでいきなりご本人に直接言ってはいけないと、いろいろ頭の中でぐるぐると考えていた挙動不審になった」と説明した。

▼眞島さんと杉田監督は20代の時からの仲間

眞島さんは杉田監督とは、20代の頃から一緒に映画を作ってきた仲間という意識があって、それは今でも続いているという。眞島さんは、「しばらくお会いする機会もないまま時間が過ぎてきた中で、また声を掛けていただいて、ただただ嬉しかった。」、「脚本を読んだ時に杉田くんは、若いときから本当に純粋な。丁寧に人物を描いていくような映画を作ってきた方が、同世代ですけど、こんな風に歳を重ねてきたんだなと感慨深いものを感じた」と振り返った。

▼『秘色(ひそく)』について

中村優子
秘色(ひそく)という色を皆さんご存じですか?
冬の天気が良い日・寒さが心地いい日に似合う色という、すごく淡い水色です。なぜか、ぱっとその色が先に浮んで、“あ、雪子が好きな色だ“と思いました。
それを杉田さんに“雪子はこの色が好きだと思うんですけど?”と話したら、杉田さんも“そうだと思います”とおっしゃってくれて、それがクラインクインの前だったんです。
劇中で春が雪子に花束を持ってくるシーンがあって、その花束が、秘色の色が入っているお花だったんです。これは、杉田さんがこの色を指定してくださったんだな、素敵だなと思っていたら、何もそんなことをお伝えしていないのに、(お花を買ってくることを任された)あんさんが、好きな雪子に贈りたい花をその日に買ってきてくださったんです。
すごくそれが忘れられなくて、全てがちゃんと私たちは生きたのかなと感じられた思い出です。

▼小川さんが印象に残ったこと

小川あん
本当に印象に残っているおは、皆さんの横顔です。
撮影という状態で自分がいたというよりかは、『彼方のうた』の時間は、登場人物の皆さんといて、私がいるという、普段、俳優として役を演じるという感覚ではない感覚でいました。
剛さんがタバコを吸っている横顔だったり、雪子さんと過ごした時間を眺め、たくさんの皆さんとの時間を見つめていると、そのひとつひとつすべてが印象に残る・心に残る瞬間です。

▼眞島さんが感じた感覚

眞島秀和
いま、小川さんの話を聞いていて、現場からの印象が同じような感覚なんだなと思って聞いていました。

普段、杉田監督が講師をつとめているワークショップに参加されている、俳優ではない主婦の方やそういったたくさんの方が多く、撮影の参加者としていらしている撮影現場をみていて、普段、自分が俳優であったり役者であるとか、そういう意識を持っていることがおこがましいような感覚になりました。
普段の撮影現場とはまるで違う、とても穏やかな時間が流れていて、不思議な体験をしている現場でした。

▼杉田監督が語る本作の作り方

杉田協士監督
『彼方のうた』は今までつくった映画とは自分の中で違っていて、脚本を書いているときから、到達点というか、最後の春の顔・表情・目を見て映画が終わるはずだという感覚がありました。
「この目をみたら終わる」みたいに思って映画あを作ったのは初めてで、最後の日に中村さんが小川さんを抱きしめているときの小川さんの目を見た時に、「これだ…」と。

自分がイメージしていたものとは違うので、言葉にするのが難しいのですが、この瞬間に自分は立ち会うためにこの映画を作ってきたんだと思えて、胸がいっぱいになりました。その結果、この映画の冒頭が違うと気づいて、脚本になかった本当のファーストシーンを撮影を1日伸ばして、撮りに行った経緯があります。
それは小川さんが導いてくださったなと思っています。

▼眞島さんと撮影地の想い出

眞島秀和
ちょうど20代の役者を目指し始めた21,22歳ぐらいによく行っていた所の連続だったので、すごく不思議な感覚でした。分倍河原とか、この街がこんなにふうになったんだというとこともあってびっくりしました。

杉田協士監督
眞島さんとご一緒するのは本当に久しぶりで、お会いすると忘れていた記憶もすごく鮮明に思出せる瞬間もありながら、眞島さんがかつてのご自身の歴史についてお話をしてくれるのを聞き、移動しながら、この映画を撮影しているというすごく不思議な時間でした。
もう自分が映画をつくっているのか、何をしているのかわからない、そういう状態になれるのは、この映画を作ると決めたからなので、本当に不思議だなと思っています。


■ 作品概要

映画『彼方のうた』

■あらすじ
書店員の春(25)は駅前のベンチに座っていた雪⼦(45)に道を尋ねるふりをして声をかける。春は雪⼦の顔に⾒える悲しみを⾒過ごせずにいた。⼀⽅で春は剛(45)の後をつけながら、その様⼦を確かめる⽇々を過ごしていた。春にはかつてこどもだった頃、街中で⾒かけた雪⼦や剛に声をかけた過去があった。春の⾏動に気づいていた剛が春の職場に現れることで、また、春⾃⾝がふたたび雪⼦に声をかけたことで、それぞれの関係が動き出していく。春は⼆⼈と過ごす⽇々の中で、⾃分⾃⾝が抱えている⺟親への思い、悲しみの気持ちと向き合っていく。



⼩川あん 中村優⼦ 眞島秀和
Kaya 野上絹代 端⽥新菜 深澤しほ 五⼗嵐まりこ
荒⽊知佳 ⿊川由美⼦ ⾦⼦岳憲 ⼤須みづほ 安楽涼
⼩林えみ ⽯原夏実 和⽥清⼈ 伊東茄那 吉川愛歩 伊東沙保
プロデューサー:川村岬 槻舘南菜⼦ 髭野純 杉⽥協⼠
脚本・監督:杉⽥協⼠
撮影:飯岡幸⼦ ⾳響:⻩永昌 照明:秋⼭恵⼆郎 平⾕⾥紗
⾐裳:⼩⾥幸⼦ 阿部勇希 ヘアメイク:齋藤恵理⼦
編集:⼤川景⼦ カラリスト:⽥巻源太 ⾳楽:スカンク/ SKANK
スチール:⼩財美⾹⼦ 宣伝・タイトルデザイン:篠⽥直樹 宣伝:平井万⾥⼦
国際広報:グロリア・ゼルビナーティ 英語字幕:⻑⾕川美樹 増渕愛⼦
アソシエイト・プロデューサー:笹⽊喜絵 ⽥中佐知彦
制作プロダクション・配給:イハフィルムズ 製作:ねこじゃらし
(2023/⽇本/カラー/スタンダード/5.1ch/84 分) ©2023 Nekojarashi Inc.

『彼⽅のうた』公式サイト https://kanatanouta.com/

『彼⽅のうた』公式 SNS https://twitter.com/kanata_no_uta

2024年1⽉5⽇(⾦)より
ポレポレ東中野、渋⾕シネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

彼方のうた

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