愛とは何か、待ち続けるとは── 映画『永遠の待ち人』公開記念舞台挨拶にキャスト・監督登壇

愛とは何か、待ち続けるとは── 映画『永遠の待ち人』公開記念舞台挨拶にキャスト・監督登壇

ドストエフスキーの短編「白夜」をモチーフに、愛を深く考察する映画『永遠の待ち人』(太田慶監督)の公開記念舞台挨拶が6月7日、東京の池袋シネマ・ロサで行われた。主演の永里健太朗、ヒロインの北村優衣、妻役の高崎かなみ、そして太田慶監督が登壇し、満員の観客を前に作品への思いや撮影秘話を語った。

■ 映画『永遠の待ち人』舞台挨拶

本作は、妻に去られ生きる気力を失ったサラリーマン・泰明(永里健太朗)が、帰ってこない恋人を3年間待ち続ける女性・美沙子(北村優衣)に出会う物語。ドストエフスキーの「白夜」を愛する日活社員である太田監督は、なぜこの物語に惹かれるのかを探求したいという思いから本作を制作したと語り、「うまくいかない愛を考察した映画」であると説明した。

泰明役を演じた永里健太朗は、泰明の人間性には自身と近い部分もある一方、妻をなおざりにする点は自身にない部分であり、役作りはメンタル的に大変だったと振り返った。特に、妻にツンツンされるシーンについては、泰明の精神状態や立場を考えると「めんどくさいな」と感じていたと心の内を明かし、大変申し訳なかったと述べる場面もあった。

永遠の愛を信じ待ち続ける美沙子役の北村優衣は、哲学的なセリフが多く、それを自身のものにするのに時間がかかったと役作りの難しさを語った。また、自身の中で美沙子像を作り上げるよりも、泰明から見た美沙子がどうあるべきかを探る作業が難しかったという。撮影中のエピソードとして、北村さんが特技にバスケットボールと書いていたことから取り入れられたというバスケのシーンで、3ポイントシュートを見事1発で成功させ、周囲を驚かせたことを明かした。自身は小学校以来で、よく特技と書いたものだと語り会場の笑いを誘った。さらに、頭にレモンを乗せるシーンでは、ヘアメイクの工夫でヘアピンを使ってレモンを固定していた裏話も披露した。

フラッシュバックや妄想の中に登場する妻・麻美役の高崎かなみは、麻美役のメンタル的に落ち込んだ状態を作るため、撮影の数日前から友達との連絡を断ち、部屋を真っ暗にするなどして自身を役に近づけようと試みたエピソードを披露。その結果、夫に相手にされない切ない雰囲気が伝わってきたと司会を務めた藤岡範子(本作に相沢役で出演)は述べた。また、監督は高崎さんが紙飛行機の折り方を知らなかったことに驚きつつも感動したと述べ、高崎さんは幼稚園以来で忘れてしまったと語った。その紙飛行機を飛ばすシーンでは風が強く苦労したが、綺麗に飛んだと思った紙飛行機が近くのマンションのベランダに入ってしまい、紙に書かれていた「見てくれることに乗りますね。」というメッセージが知らない住人の手に渡ったという珍しいエピソードも披露された。

劇中の「愛は信じることです」というセリフにちなみ、登壇者はそれぞれの「愛の定義」について語った。永里は「相手のことを知りたい、好きなものや嫌いなものを知って色々考える時間」、北村は「生きていく上で必要なこと、自己愛も他人への愛も含まれるギブアンドテイクのようなもの」、高崎は「一緒に幸せになることはもちろん、この人と一緒ならどこまで落ちてもいいと思えること」 とそれぞれ語った。太田監督は、自身の定義ではなく美沙子の定義として、無償の愛や「愛は寛容であり、愛は親切です」といった愛が良いと述べた。

ヒロインが3年間恋人を待ち続けることにちなみ、女性キャストに「3年間好きな人を待てるか」という質問が投げかけられた。高崎は「その人しかいない」となった場合は待てると答えた一方、北村はせっかちな性格のため待てないと即答し、会場の笑いを誘った。

最後に登壇者から観客へメッセージが送られた。高崎は「たくさんの人に見てもらい、愛してもらえたら嬉しい」、北村は「無事スクリーンで届けられて嬉しい、映画館で見るのが一番」、永里は「繰り返し見て深みを知ってほしい、SNSで宣伝してほしい」とそれぞれ述べた。太田監督は自身がサラリーマンとして心に思うことや人生について盛り込んでおり、「色々考えるテーマがたくさんあるので、多くの人に勧めてもらい、愛について話し合ってほしい」と締めくくった。

映画『永遠の待ち人』は、2025年6月6日より池袋シネマ・ロサほか全国で順次公開される。池袋シネマ・ロサでは、6月12日まで上映される。

篠田泰明役:永里健太朗(Kentaro Nagasato)
1987年8月25日生まれ。鹿児島県出身。
2008年初舞台を踏み演劇集団「47ENGINE」では役者の他、脚本・演出も多数手掛ける。『やがて水に歸る』(17/榎戸耕史監督)など映画・ドラマ・CMでも活動し、スマホで撮影した短編映画も製作。監督・出演作『野ざらされる人生へ』はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023国内コンペティション 短編部門に正式出品された。太田慶監督作品には『狂える世界のためのレクイエム』(15)、『桃源郷的娘』(18)に続いての出演。

高村美沙子役:北村優衣(Yui Kitamura)
1999年9月10日生まれ。神奈川県出身。
2013年に女優デビュー。2020年に『かくも長き道のり』(屋良朝建監督)で映画初主演。2022年、『ビリーバーズ』(城定秀夫監督)で“副議長”役を演じ、注目を集める。主な映画出演作に『13月の女の子』(20/戸田彬弘監督)、『コーポ・ア・コーポ』(23/仁同正明監督)、『ブルーイマジン』(24/松林麗監督)など。

篠田麻美役:高崎かなみ(Kanami Takasaki)
1997年7月14日生まれ。神奈川県出身。
「第 1 回サンスポ GoGo クイーン」「ミスジェニック 2019」をはじめ数々のオーディションでグランプリを勝ち取り、“無敵のグラドル”と称される。近年は女優としても活躍の場を広げており、主な出演作に映画『うみべの女の子』、ドラマ「セクシー田中さん」、「ヤりたい男と、殺りたい女。」、舞台「応天の門」などがある。


出演

永里健太朗 北村優衣 高崎かなみ

釜口恵太 藤岡範子 ジョニー高山

監督・脚本・編集:太田慶
撮影:河村永徳 照明:近藤啓二 録音:松川航大 衣裳:赤井優理香 ヘアメイク:清水彩美 配給:OTAK映画社
2023年/日本/カラー/16:9/83分 ©太田慶

2025.6.6金より 池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

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