ADHDをテーマにした映画『星より静かに』が2024年6月21日(土)に全国公開され、新宿K’s cinemaにて初日舞台挨拶が行われた。本作は、日本に300万人いるとされる注意欠如・多動症(ADHD)をテーマに、ドキュメンタリーとドラマを融合させて描かれた作品です。舞台挨拶には、君塚匠監督をはじめ、内浦純一さん、蜂丸明日香さん、三嶋健太さん、渡辺真起子さん、森重晃プロデューサーが登壇しました。

■ 映画『星より静かに』初日舞台挨拶
君塚匠監督は、自身が監督、脚本、企画、出演を兼ねた本作について「最初は非常に個人的な映画としてクラウドファンディングでスタートした」ものの、自身の熱量に賛同する人々が集まり、「全国公開される運びとなった」と明かした。監督自身もADHDという特性や障害を持っていることを告白し、「生きづらさ」を感じ、時には差別的な目で見られてきた経験が映画制作のきっかけであったと語りました。当初は自身を描く目的でしたが、制作過程で「ADHDだけでなく、生きづらさを抱える全ての人たち」に届けたいという思いが広がったと述べました。撮影は「約8日間」という短い期間で、「低予算」かつ「手作り感満載」で行われ、監督が演出と演技を兼任する苦労も振り返った。また、監督の「一生墓場まで持っていきたかった」という太った写真が映画に使用されたことにも触れ、観客の笑いを誘いました。さらに、7月20日には監督自身に密着したMXテレビの番組「東京ワンウィークストーリー」が放送されることを告知しました。

ドラマパートでADHDの夫・佐藤はじめ役を演じた内浦純一さんは、ADHDについてほとんど知識がなかったため、撮影の4ヶ月前から君塚監督と食事や映画鑑賞、美術館巡りなど「デートみたいな感じ」で多くの時間を共有したと語りました。その中で、役と自分自身の境界がなくなるような「不思議な体験」があったと述べ、「それが映画に反映されてたらいいな」と期待を寄せた。

本作の企画・制作にも深く関わった蜂丸明日香さんは、「本当にたくさんの思いを込めた作品」であり、観客と作品を共有できる日が来たことに「胸がいっぱい」だと感謝を述べました。

ADHDの息子・村木純役を演じた三嶋健太さんは、ドキュメンタリーパートに出演している「普段映像に出ない方たちがリスクを冒してでも出ている」ことに感銘を受け、「ものすごい思いの詰まってる作品」だと感じたそうです。ADHDについて「なんとなく知っている」という状態が「めっちゃ怖い」と感じ、役作りに「非常に長い時間をかけて真摯に向き合った」と語りました。セリフを言う前の登場人物の思考プロセスを表現することの難しさを具体的に説明し、この映画を通してADHDが「本当に普通」であること、そしてその特性への認識を広めたいと述べました。

ADHDの夫と息子をサポートする妻・母親役の村木貴和子を演じた渡辺真起子さんは、役を演じる上で、相手を「ADHDだから」という意識ではなく、「本当に平等な一人の人間として接する」ことを心がけたと語りました。しかし、大切な人を支えたいという気持ちから「過保護な表現」になってしまうことについて悩み、「優しさの形」を深く考えさせられたと述べました。病名があることで「この人のことを考えてみよう」という「きっかけ」になるとし、異なる考え方やあり方を持つ人々が同じ社会で生きていくための「きっかけ」となる映画であることを願いました。

エグゼクティブプロデューサーを務め、ドキュメンタリーパートでインタビュアーも担当した森重晃さんは、ADHDについて全てを知っているわけではないが、様々なタイプの人がいることを認識したと述べました。映画業界には「変なやつばっかり」いるが、ADHDという診断が「互いを理解する一つのきっかけになる」と語りました。

最後に、ドキュメンタリーパートに出演した脊尾昌壮さんが一言を求められ観客席から壇上に呼び込まれ、障害者が登場する映画ではモザイクがかかることが多い中で、この映画では「モザイクなしで出ていることの意義」を強調し、「すごくいい映画になった」と感謝を述べました。


君塚監督は、この映画が「ADHDの人だけでなく、様々な『生きづらさ』を抱える全ての人たちに届く」ことを願い、観客にもその思いを感じてほしいと語りました。そして、映画の感想をSNSや対面で広めてほしいと呼びかけました。舞台挨拶終了後には、パンフレット(監督や出演者のサイン入りも)が販売されました。
映画『星より静かに』
- 監督・脚本・企画・出演: 君塚匠
- 出演: 内浦純一、蜂丸明日香、三嶋健太、渡辺真起子、君塚匠、森重晃 ほか
- エグゼクティブプロデューサー: 森重晃、酒井政幸
- 製作: ステューディオスリー
- 配給: 太秦
- 製作年/国/時間: 2024年/日本/105分
- 公式サイト: hoshiyori-shizukani.com
6月21日(土)より K’s cinemaほか全国順次公開

