6月27日(金)公開の映画『となりの宇宙人』でヒロイン・淳子役を演じる吉村優花さん。意外なオーディション合格から、役との一体感や特技を活かしたY字バランス・自作ダンスの舞台裏に迫ります。「暗黒期」を乗り越え人間的に成長した彼女の、仕事への姿勢とは。

■ 吉村優花。その活動の軌跡。
1.お名前の由来
ー: 本日はありがとうございます。まずは、本サイトの恒例の質問なのですが、吉村さんの名前“優花”の由来についてお聞かせいただけますでしょうか?
吉村優花: はい。名前は「優花」と書いて「ゆか」と読みます。これは本名で、字の通り「優しい花のような人になってほしい」という意味を込めて、両親がつけてくれました。
ー: とても素敵なお名前ですね。ご自身の名前に対する思いは、これまでどのように変化してきましたか?
吉村優花: 実は、役者を始めるまでは「吉村優花です」とフルネームを言うのがすごく恥ずかしかったんです。「優花という名前が自分にフィットしているのだろうか…」という感じでした。でも、役者を始めてオーディションや仕事の場でたくさん名前を言うようになって、大好きな名前になりました。
ー: 小さい頃、自分の名前がこうだったら良かったのに、という憧れの名前はありましたか?
吉村優花: 憧れの名前は記憶にはないのですが、漢字の表記上「ゆうか」と読まれることが多いので、水泳教室に通っていた時に、先生から点呼で「ゆか」ではなく、「吉村ゆうかちゃ〜ん」みたいに呼ばれて、「ゆうかじゃないです、ゆかです!」と言っていたのはよく覚えています。

2.芸能界を目指した理由
ー: 続いて、芸能界、特に女優を目指した理由についてお伺いします。小学校5年生の時に、お友達の舞台を見て感銘を受けたというお話は過去のインタビュー記事を拝見しているのですが、そこを詳しくお聞かせください。
吉村優花: はい。本当に大きなきっかけは私の中では、3つくらいあります。
一番最初は幼い頃で、私は親族から可愛いと褒められる子で、おばあちゃんが「ゆかちゃんは将来女優さんだね」と言ってくれていたんです。それを真に受けて「女優という仕事があるんだ」と多分3歳か5歳くらいで知ったのがきっかけです。
その次に、小学校5年生の時に、同じクラスの子がNHK児童劇団に所属して活動していて、その子の主演舞台を学校の先生や友達、親と見に行ったんです。学校では休み時間に一緒に走り回っている友達が、舞台の上でセリフを喋り、何かを演じている姿を見るのが人生で初めてで、その姿に憧れたというか、「私もそれやりたい」と強く思った記憶があります。
また、私は新体操をやってきていて、人前で何かをすることはしてきましたが、踊りとは違う、お芝居をしている姿を、しかも友達がやっているのを見た時に本当に衝撃を受けました。
ー: そのお友達とは今も繋がりがあるのですか?
吉村優花: 実は、私が芸能の仕事を始めてから出会った別の友達と、小学校の時の憧れの的だったその子が共演したんです。彼女は今も舞台を中心に活動しているようです。再会できて、それはすごく大きな出来事でした。

3.本作出演のきっかけ
ー: 今回の映画『となりの宇宙人』での淳子役は、オーディションで勝ち取ったと伺っています。そのオーディションの時の様子についてお聞かせください。
吉村優花: はい。応募したのが去年の3月か4月でした。これまでもヒロインオーディションなどたくさん受けてきましたが、なかなか役をいただくことがなくて、「私、映画の神様に見つけられていないんだな」と思っていました。自分が芝居をやりたくてこの世界を目指しているのに、経歴としてはCMの仕事が多かったので、「ヒロインという重要な役を演じるような星のもとにはいないんだ…」と。
ー: そうだったのですね。では、今回のオーディションにはどのような気持ちで臨まれたのですか?
吉村優花: 「自分で諦めることをしたくない」という頑固なところがあるので、「またヒロインオーディションやるんだ、まずは応募してみるか…」という、本当に正直、そんな気持ちでした。どうなるか分からないし、応募するだけしてみよう、という気持ちでした。
ー: 実際のオーディションでの手応えはいかがでしたか?
吉村優花: 手応えは正直なかったです。脚本も事前にいただいて読みましたが、自分が確実に演じると思っていなかったので、そこまでじっくりと読み込んだわけではありませんでした。ただ、オーディションの同じ組に、役のことをびっしりと台本に書き込んでいる方がいて、それを見て「やば!私マジでなにもやってないかも…」と焦りました。
部屋に入ると監督やクロックワークスの社長さん、レオーネの久保さんなど、5、6人いらっしゃって、人数は多い印象でした。準備せずにすごくフラットな気持ちでいられたと思います。というのも、期待しすぎると落ちた時にまた傷ついてしまうので、あくまで自然体でいよう、と。久保さんからの質問にも「映画やりたいんですけど、全然決まらなくてCMばかりなんですよねぇ〜」と普通におしゃべりする感覚で返してしまって。
実際のお芝居のシーンでもセリフを噛んだりして、「あ、もうこれはまたダメだ」と思いましたね。私の中の点数で言ったら30点、40点くらいのオーディションだったので、「今日は遊びに行っただけだったな」という気持ちで帰ったのを覚えています。
ー: それが、まさか決まったと。その時の驚きはすごかったのではないでしょうか?
吉村優花: はい。「マジ!?」という感じですね。そもそも決まると思っていないので、ガッツポーズもなかったです。自分の中ではすごく客観的でしたね。
ー: 役を得て、淳子という役柄に対してどのように取り組んでいきましたか?
吉村優花: 実際に決まってから台本を何回も読みました。オーディションの時に読んだ段階で淳子というキャラクターにすごく親近感があったんです。知らない子じゃない気がするというか、「私も知ってる子だし、もしかしたら私かもしれない」みたいな。決まってからも、台本をとにかく何回も何回も読みました。
作り込む必要性のある役ではないので、「等身大の私でいいのかもしれない」というか、「吉村優花が演じているけど、もしかしたら吉村なのかもしれない」というくらい、役と自分との距離感が近かったです。だから、台本を読み込み、この世界に生きているということを感じられるようにしました。

4.演じた役について(カラオケ、アイドル、Y字バランス)
ー: 作品を観たうえで、淳子に対して、カラオケ、アイドル、Y字バランスというキーワードが頭に浮かびました。キーワードに関係するそれぞれのシーンについてお聞かせください。
吉村優花:
Y字バランスのシーンは、実は私発信なんです。撮影前日の夜に監督に「“こんなに体柔らかくなりました”っていうセリフがあるけど、これどういうシチュエーションで言ってるんですかね」と確認したら、監督が「吉村さんがやれることあるならやっちゃっていいよ」とおっしゃってくださって。「じゃあ私、足を上げられるので、足上げますね」と、本当にそんな会話で生まれました。新体操をやっていたので、こういう、役者とは関係ないところでやってきた経歴が、お芝居にも使えるというのは面白いですよね。監督は全く驚かれずに受け入れてくださいました。
アンパンマンのカラオケを歌うシーンについては、 私はアンパンマンで育ってはいますが、劇中で出てきたカラオケ大会のアンパンマンの歌の歌詞は、2番の歌詞で知らなかったんです。キャストの皆さんも「意外と知らなかったね、この歌詞」という話になりましたが、「めちゃくちゃいいじゃん」となりました。
アイドルの格好については、衣装合わせの時に緑のフリフリパニエの衣装を着させていただいたのですが、「これ…行けるか?」と正直心配でした。「本当に大丈夫ですか?」と監督に聞くと、監督も遊び心のある方なので「いいじゃん、全然いけるよ」と。先行上映を見に来てくださったお客様があのシーンのことを言ってくださる方がすごく多くて、「良かった、自分が心配してることって人にとってはマイナスに見えてないんだな」と思いました。 あのシーンは、歌と音源だけ渡されて撮影までに覚えておいてくださいという形でした。アイドルを目指していた主人公で、カラオケ大会でこんな衣装まで着ているのに踊らないのは変じゃないかと思って、踊りの振り付けは自分で作りました。「踊っていいですか?」と監督に聞いたら「いいよ、やっちゃってよ」と快諾してくださったのでやりました。
ー: 吉村さんご自身は、アイドルになりたいと思ったことはありますか?
吉村優花: まったくないんです。だから、アイドルっぽく、映画のお芝居の中でやれて、それはそれで楽しかったです。

5.胆力が足りない(マネージャーの一言)と、この数年を振り返って…吉村さんにとって何期?
ー: 過去のインタビューで「欲しいのは人間力」といったお話がありましたが、この6年弱で人間力や、マネージャーさんから言われたという「胆力」(困難や課題に物怖じせずに立ち向かう能力)といったものは身についたと思いますか?
吉村優花: もちろん、自分が出来上がったとは全く思っていませんが、6年前の自分を振り返ると、人間にちゃんとなったんじゃないかなと思います。自分で責任を持つ機会が増えましたし、26歳で6年間在籍した事務所を辞めてフリーランスになってからは、大人の方々とやり取りする機会が増えたので、それは役者としてだけでなく、一人の人間として経験できて良かったなと思います。
ー: 周りの方々から何か言われることはありますか?
吉村優花: 昔から私と仲良くしてくださっている役者の仲間たちにも「強くなったね」とすごく言われます。昔はすごくクヨクヨしていましたし、自信はないけど過信はあるみたいな、「自分はできるはずなのになんでこんななんだろう」という気持ちでいました。オーディションに行ってもずっと緊張して不安で、体調もメンタルから来てすぐお腹を壊したり痩せたりしていました。
ー: それが変わったのには、何が大きなきっかけだったのでしょうか?
吉村優花: 多分、何か一つ大きなきっかけがあったわけではなく、経験を重ねる中で「もう上がるしかない」というところまで下がったというか、自分の中で下がるところまで下がったんだと感じました。「もうダメだったものはダメだし、クヨクヨしてもしょうがない」と思うようになりました。
あと、撮影現場でヘアメイクさんやスタイリストさんといる時間が長いのに、すごく緊張して頭痛がしたり、疲れてとんでもない時期があったんです。その時に、ある年配のヘアメイクさんが、私が背中もつけずにギチギチに座っていたのを見て、「緊張しなくていいのよ、リラックスして背中をつけなさい」と力を抜いてくださったんです。多分、その頃から、「自分が自分でいやすい空間を自分で作ればいいんだ」と思うようになったのを覚えています。
正直、相手に「態度でかいな」とか「生意気だな」と思われてしまっても、それは自分のいやすいように自分で仕切るということを意図してやりましたね。それがきっかけで、初めての方や大人がいっぱいいる空間でも疲れなくなりましたし、緊張もしなくなりました。それが良かったんだと思います。
ー: 映画『冗談じゃないよ』のインタビューでは「2年目の暗黒期」という言葉も使われていましたが、そこから今までの期間を振り返って、吉村さんにとってどんな期間でしたか?
吉村優花: うーん、なんだろう。成長期とか変革期とか、色々な言葉がありますが、成長ともちょっと違うんですよね。難しいな。
ー: 何か一言で表すとしたら?
吉村優花: その感覚としてあるのが、暗黒期は「人間じゃなかった時期」で、今は逆に「宇宙人から地球人になった」みたいな感じですかね。この映画のタイトルにも絡めて言うなら、そんな感じです。

6.お客様へのメッセージ
ー: 最後に、お客様に向けてのメッセージをお願いします。
吉村優花: 情報が色々とある時代に、何も考えずに見られる映画が誕生したというか、もうそれでいいと思っています。何かを伝えたい映画とかもありますが、そうではなくて、本当に気楽に面白かったら笑ってほしい、という気持ちです。世間的に映画って、「映画を見に行くぞ」という気合が入ることだと思っているのですが、そうじゃなく、「なんか人の生活を覗き見しに行くぞ」みたいな、それくらいの本当に緩い、プカプカ浮かぶ魚みたいな気持ちで見て欲しいなと思っています。
本当に大人たちがふざけている映画です。いまおかしんじさんらしさが本当にすごいですよね。出てくる女性たちもそうですが、細部も何回見ていただいても面白い発見がある映画だと思います。ぜひ1回だけでなく、疲れた時とかに見れる映画なんじゃないかなと思うので、「ラッキーアイテム映画」みたいな感じで色々な人に届いたら嬉しいです。
ー: 本日は貴重なお話をありがとうございました。
吉村優花: ありがとうございました。



舞台挨拶情報
【⽇時】2025年6⽉27⽇(⾦) 18:55の回 上映後舞台挨拶
【登壇】宇野祥平、前⽥旺志郎、吉村優花、猪塚健太、⼩関裕次郎監督 ※敬称略
【会場】新宿武蔵野館スクリーン1(新宿区新宿3丁⽬27ー10 3階)
『となりの宇宙人』
<STORY>
夜ごと隣の愛の囁きが響き渡る下町のとあるボロアパートの庭に、ある夜突然正体不明の物体が現れた。中から出てきたのは自ら“宇宙人”を名乗る全裸の男(宇野祥平)。宇宙船の故障で不時着したのだという。アパートに暮らす田所(前田旺志郎)ら住人たちは、行くあてもなく傷ついたその男を“宙さん”と名付け、ひとまず田所の部屋に居候させることに。「星に帰りたい」という宙さんの願いを何とか叶えようと奔走する住人たち。果たして宙さんは無事“故郷”へ帰ることができるのか!?
宇野祥平 前田旺志郎 吉村優花 猪塚健太
三上寛 和田光沙 安藤ヒロキオ ほたる 山本宗介 麻木貴仁
北村優衣 森羅万象 いまおかしんじ
原作:半村良「となりの宇宙人」(『となりの宇宙人』所収/河出文庫刊)|脚本:いまおかしんじ|監督:小関裕次郎|エグゼクティブプロデューサー:藤本款|プロデューサー:秋山智則・久保和明|音楽:林魏堂|撮影:岡村浩代
|照明:金子秀樹|録音:大塚学|美術:小泉剛|編集:鷹野朋子|スタイリスト:後原利基|ヘアメイク:藤澤真央
|助監督:山口雄也|ラインプロデューサー:浅木大|キャスティング:伊藤尚哉|スチール:柴崎まどか|宣伝美術:廣田毅|制作プロダクション:レオーネ|製作:クロックワークス・レオーネ|配給・宣伝:SPOTTED
PRODUCTIONS|16:9|5.1ch|103min
©クロックワークス・レオーネ公式サイト:leonefordreams.com
2025年6月27日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
