ROPE

映画『ROPE』先行プレミア上映会開催!20代才能集結の人間ドラマ、監督・キャストが語る制作秘話と作品への熱い想い

2025年7月10日、新宿武蔵野館スクリーン1にて映画『ROPE』の先行プレミア上映会が開催され、上映前に主演のさん、芋生悠さん、藤江琢磨さん、中尾有伽さん、そして八木伶音監督が登壇し、舞台挨拶を行いました。本作は、俳優でありモデルでもあるさんと八木伶音監督が企画を立ち上げ、主に20代のキャスト・スタッフが集結した意欲作です。ゆるやかにディストピア化しつつある社会に生きる不眠症の青年(主人公・修二)と悲しい過去を持つ女性(小川翠)の出会い、そして彼らを取り巻く人々との対話を通して、モラトリアムにかすかな希望の光が差し込む様子を描く人間ドラマとなっています。

1. 公開への喜びと作品への期待

先行プレミア上映会を迎えた心境について、登壇者一人ひとりが感謝と喜びを語りました。

企画も手掛け、主人公の修二を演じたさんは、本作が「映画を撮ろう」という段階から始まり、上映の機会が得られるか分からないところから2年間走り続けてきたことを明かし、大好きな映画館の新宿武蔵野館で先行プレミアができることを大変幸せで嬉しく思うと述べました。また、これまでの努力が「たくさんのスタッフやキャストと、関わってくれた方々のおかげで実現した」と感謝を伝えました。

悲しい過去を持った小川翠を演じた芋生悠さんは、足元の悪い中、来場してくれた観客に感謝し、皆で頑張ったこの作品を届けられることが本当に嬉しいと語りました。初日公開はこれから先となるため、今日の先行上映をきっかけに「皆さんの力をお借りして、どんどんいろんな人に届けられるようになったらいいな」と作品の広がりへの期待を語りました。

修二と関わることになる聡を演じた藤江琢磨さんは、雨の中の来場に感謝しつつ、「個人的には、この天気がちょっと映画にふさわしいかな」と感じると述べ、見終わった後に共感されるのではないかと期待を寄せました。

翠の友人の貴子を演じた中尾有伽さんは、数多くの映画が上映されている中で、この日のこの時間、この映画を選んで見に来てくれた観客一人ひとりに感謝の気持ちを伝え、「楽しんでいてだければ」と笑顔で挨拶しました。

八木伶音監督は、多くの人々の手助けや応援を得て今日の日を迎えられたことに感謝を示し、「映画を楽しんでください」と締めくくりました。

2. 企画立ち上げの経緯

司会者から、さんと八木監督が共に企画を立ち上げたきっかけについて質問がありました。

さんは、自身と八木監督が「同じ大学で友人だった」ことが企画の始まりだと説明しました。学生時代から「いつか一緒に作品作りしたいね」と話しており、さん自身が長編の主演作を持っていなかったことから、「自分で企画をしてみよう」と思い立ったと語りました。友人であり、脚本家や監督としても尊敬している八木監督に依頼し、一緒に企画を進めていった形だと説明。最初は自身の主演作が欲しいという思いだったものの、話し合いを進める中で、「同世代で、今だからこそ作れる映画があるんじゃないか」という強い気持ちになり、八木監督と話し合いながら企画したと明かしました。

八木監督は、さんから「映画を一緒に作らないか」と声をかけてもらったことが始まりだと述べ、「は一番信頼できる役者だと思っていた」と語りました。企画書をゼロから作り、脚本も執筆し、二人でキャラクターや物語を肉付けして作ったと強調。撮影から編集まで、多くの人に助けられながらも「完全にゼロから二人で作ってきた」と、作品への深い関わりを語りました。

3. 物語の着想とキャスティングの舞台裏

物語の着想とキャスティングについて、さらに詳しい話が語られました。

八木監督は、企画の着想のきっかけとして、「いつもロケ地が世田谷の住宅街だった」と語りはじめました。そのドメスティックな住宅街の中で「夜に眠れない男が歩いていて、尋ね人の貼り紙を見つける」というビジュアルが先に頭の中にあったと説明。それを自身の好きな「ロードムービーだったり、会話劇だったり、群像劇だったり」を盛り込んで映画にしたいという形で物語を形作っていったと述べました。

キャスティングについては、さんと八木監督で「どんな俳優さんがいるだろうか」と話し合いを重ねた結果、友人や同世代の俳優の中からオファーする人を決めていったと説明。「映画で活躍されている方々が『ROPE』という作品に集まっていただいて実現した」ことは「本当に僕たちとしてもすごい光栄なこと」だと感謝を述べました。多くのキャストやスタッフが「元々の関係性ありき」で集まったと語りました。

八木監督は、脚本を書いていた段階では特定の役者を当て書きしていなかったと明かしました。さんと脚本の打ち合わせを重ねる中で「この人がいいんじゃないか」と提案しあい、「この人がものすごいマッチしてるな」という選び方をしていったと説明。芋生さん、藤江さん、中尾さんについては「元から作品を拝見しててすごいやってみたいなと思わせていただいてた方々だった」と述べ、実際に読み合わせや撮影に進んだ時には「いつも違う役だったりした時にすごい新鮮な驚きがあって楽しかった」と語りました。

さんは、キャスティングにあたっては八木監督と綿密にディスカッションしたと述べました。企画段階から「背伸びしない身丈の話にしよう」という思いがあり、「キャストも同世代がたくさん出演するものになるだろう」という考えがあったと説明。自身が「俳優さんとしても人としてもこう尊敬している友人の方であったり、その友人の過去の作品であったり、SNSだったり」と八木監督に多くの情報を送り、「この中からいいなと思う方がいたら考えてみるのはどうか」と提案した結果、「一気に信頼できるチームが作られるのが早いんじゃないか」と考えたと語りました。

しかし、翠役の芋生さんだけは例外で、「八木本人が、この緑は絶対にもう芋生さんでお願いしたい」と強く希望したと明かしました。八木監督の強い希望もあり、さんが芋生さんへ送るメールの文面を一緒に考えて送った結果、芋生さんのキャスティングに至ったと説明しました。

4. オファーを受けたキャストの心境

さんと八木監督からのオファーを受けた際の心境について、キャスト陣がそれぞれの想いを語りました。

芋生悠さんは、最初にさんから依頼のメールを受け取った際、「本当に長文で熱いメール」だったと振り返りました。その中で「同世代で作る映画だけどそれだけにとどまらず、戦える作品にしたい」「この作品で、どこまでも連れていけるように頑張ります」と書かれていたことに感銘を受け、「頼もしいな」という印象を抱いたと述べました。添付されていた初稿の脚本を読んだ際には、「すごく面白いし、すごく切実なんですけど、その中にユーモアもあって、面白い作品だなっていうので、すぐにやってみたいですと答えた」と語りました。芋生さんは、同世代のスタッフやキャストとの「仲間うちで作ってるその青春っていう部分」と、「冷静に映画をちゃんと届けたいっていうなんか冷静な熱さみたいなのもちゃんとあって」と、制作現場の独特な雰囲気と緊張感を表現しました。

藤江琢磨さんは、さんが友人でもあったため「連絡いただいてとっても嬉しかった」と率直な気持ちを述べました。自身の「心のどこか寂しがり屋なところがある」ため、「そういうお誘いがあると本当に嬉しくて」と笑顔を見せました。話を聞いた時には「もうやりたい」と即答したそうで、さんから誘いを受けた時点ですでに「ほぼほぼ決まっていた」が、脚本を読んで「さらにやりたいな」と思ったと語りました。本作を「すごい不思議な現代劇」と表現しました。

中尾有伽さんも、「君が元々友人で、直接ご依頼いただいて」と、藤江さんと同様にさんからの連絡を受けた時点で「もうほぼ出る、出たいなっていうのは決まっていた」と述べました。さらに、「一緒にどういう俳優の方が出るのか」と聞いた時に、「本当に映画で、すごくいいなって思う俳優さんばっかりだった」ことに驚きと喜びを感じたと語りました。芋生さん、藤江さん、そしてさんといった、俳優としての好奇心を書き立てられるようなキャスティングが集まっているのは「その君の人望だったりとかっていうのものすごくあると思います」とさんを称賛しました。脚本についても、「監督の本をいっぱいに読んでもすごく面白く読める本だった」とし、「本として読んだ、読み物として読んだだけでもすごく面白いなって思うようなもの」であり、「自分が演じた時にまた色がついていくというか、役者が動いた時にどういう風になってくんだろうみたいなのがすごくワクワクする」ものだったと、脚本の魅力を熱く語りました。

5. 同世代を描くキャラクターへの共感

物語に出てくる登場人物たちが20代のキャラクターであることについて、俳優陣が感じたことを語りました。

芋生悠さんは、「人と人の距離感が独特」で、「埋まらない距離感が常にずっとある」と感じたことを述べました。これは「現代の若者たち」が持つ感覚であり、「人とどういう風に距離感を縮めていいのか分からなかったり、どこまで信じていいのかとかどこまで期待していいのかとか」という「難しい世の中になってるのかな」と感じたと語りました。また、「若い人たちの貧困」にも触れ、「なかなか生きづらい世の中にはなってるかな」と客観的に述べつつ、「その中でもこう一つ一つ自分の中でこう希望の光を見つけていくっていうところがなんかちょっとでも感じ取れるんじゃないかな」と作品が持つメッセージについて語りました。

藤江琢磨さんも芋生さんに同意し、「すごく丁寧に今話していただいて」と語りました。自身も20代であり、「すごい感じてるものが近い」と感じたため、「そういうところをちゃんと丁寧にできたらいいな」という思いで役に取り組んだと述べました。

中尾有伽さんも芋生さんの話に「全部言ってくださった」と同意しつつ、「本音が言いづらい世の中」という感覚を表現しました。芋生さんの役と自身の役は「ものすごく仲いい友達関係」であり、「普通の友達じゃ知らないことも知ってるぐらいの関係」であるにもかかわらず、「一番心の奥の方にある言葉とかっていうのをこう言い合ったりとかはしてないんだろうなみたいな」関係性が「若い世代独特の関係」だと感じたと述べました。そのような部分を「監督と樹さんが等身大という風に描いてるのがすごく素敵なこと」だと称賛しました。

企画から立ち上げ、主演として物語の中心に立つさんは、脚本を初めて読んだ際、「八木監督をビシビシ感じる」と語りました。芋生さんや中尾さんが述べたような「一人で生きてるわけではないけど、いろんな場所にこうある種の窓的にこう、村から村へいろんなコミュニティであったり職場であったり行く時に家に置いていくものであったり、その友達に会う時は持っていくものだったりっていうのがみんな心の中にあると思っていて」、それを監督が「すごく優しさっていう側面からすごい大事にして」いると感じたそうです。初めて長編の脚本を読ませてもらい、「八木監督の優しさであったり、思いやりであったり、でも今は不満や不安を抱えているっていうものがすごい前向きに、光が見える方向に脚本に起こされてた」ため、友人としても俳優としても「撮影が楽しみだなって」思ったと述べました。

6. 20代中心の制作現場エピソード

20代が中心となった撮影現場での印象的なエピソードについて語られました。

八木伶音監督は、スタッフもキャストも「みんな大学の同級生だったり、前から映画を一緒に作ってきたりで信頼できる方が多かった」ため、準備段階から各部署と「すごい綿密に打ち合わせ」ができていたと語りました。撮影が始まってからは「イレギュラーなことで大変みたいなことは少なかった」とし、「みんな一体感がチームとしてはあってものすごいスムーズだった」と振り返りました。また、さんが「すごい大雨の日があったよね」と話すと、八木監督も「今日みたいな雨が降ってて、すごいしかも寒い時期だったんで」と大変だった日を振り返り、その時の「チーム感すごかった」と語りました。

藤江琢磨さんは、現場について「もう最高でした。やりやすいし、居やすいし、意見も言いやすいし」と絶賛しました。脚本で共感しやすかったことも含め、「すごい最高でした」と繰り返し強調しました。

中尾有伽さんも「最高だったよね」と同意し、「なんかこう自分がなんかこう素敵だなとかいいなって思ってる人たちが輪になったら、そりゃその輪になったやつもいいかみたいな、そういう感覚がすごくありました」と語りました。スタッフの方たちも同年代で、さんと八木監督の「学校の方だったりっていうのが多かった」ため、初めましてだったものの「一緒に学校生活を過ごしてきたんじゃないかっていうくらいなんかこう温かな雰囲気」だったと振り返りました。また、「締まってる時は締まってるし、でもこうカットかかってじゃあ休憩ですとかってなったら一緒に本当に学校の休憩時間みたいな感じでご飯一緒に食べたりとかでまた再開したらやることはやりましょうみたいな」と、メリハリがはっきりしている現場だったと語りました。これは「信頼関係がみんなになんかそれぞれがなんかこう持ってるからできてることなんだな」と感じたそうで、「大変楽しい現場だった」と述べました。

さんも「最高」という言葉がたくさん出たことに対し、「めちゃくちゃ嬉しい」と喜びを表明しました。さんは、同年代や友人との現場になることは分かっていたため、「メリハリがない、準備不足の現場にはしない」と監督とかなり話し合ったことを明かしました。八木監督が「取り方であるとか脚本であるとか」という部分を「毎日毎日考え考え準備してくださって」、スタッフの方々とも準備して臨んだ結果、このような評価を得られたことが嬉しいと語りました。

7. 監督が発見した役者の新たな一面

八木伶音監督は、共演した俳優陣から見た新たな表情について語りました。

芋生さんに関しては、「塞ぎ込んで、暗いだけのステレオタイプな役」になりがちなところを、「ちょっと何層も感情が伺えるようなお芝居をしていただいて、それがとても良かった」と述べました。

二と関わることになる聡を演じた藤江さんと、貴子を演じた中尾有伽さんについては、「二人が並んで言葉を交わした時に、ちょっと想像とは違ったような二人の力関係とかがちょっと立ちってきてる感じがあって、それがすごいすごい気に入ってます」と、新鮮な驚きがあったことを明かしました。

8. 登壇者からのメッセージ

最後に、さんと八木伶音監督から、来場者への挨拶と今後の展望が語られました。

さんは、大雨の中集まってくれた観客に改めて感謝を伝え、「この作品は僕たちにとってすごい大事なものですし、特別なものなんですけども、皆さんのひとりひとりの特別になればいいなとも思ってる」と作品への思いを語りました。観客には「頑張って作ってきたんだなっていうか、そういうのは一旦飲み込んでいただいて素直にフラットな感じで映画を見ていただければ楽しんでいただければな」と呼びかけました。そして、「7月25日から公開なんですけど、これからももっと作品が広がるようなことをちょっと八木とスタッフとみんなで考えておりますので、その辺もぜひチェックしていただけたらと思います」と、今後の展開にも期待を持たせました。

八木伶音監督は、「本作は自主制作映画なんですけども、根性とか若さとか体力とかだけで乗り切ったような作品ではなくて、何か話したくなるような、議論したくなるような作品だと思う」と述べました。観客の感想を「肌で感じてみたいし、いろいろ気になってるんで、お話できたらなと思います」と、観客との交流への意欲を見せ、「皆様の反応がとても楽しみです」と締めくくりました。

映画『ROPE』は、2025年7月25日より全国公開されます。


『ROPE』

樹 芋生悠 藤江琢磨 中尾有伽
倉悠貴 安野澄 村田凪 小川未祐 小川李奈 前田旺志郎
大東駿介 荻野友里 水澤 紳吾

監督・脚本:八木伶音
劇伴:TAKU(韻シスト) 主題歌:玉置周啓(MONO NO AWARE/MIZ)
助監督:横浜岳城 撮影:遠藤匠 照明:内田寛崇 録音:家守亨 グレーディング: 杉元文香
現場スチール: 竹内誠 ヘアメイク:村宮有紗 衣装澪 小道具・美術:天薬虹花
ポスタースチール:野口花梨 ポスターデザイン:徐誉俊
音楽協力:nico 宣伝:平井万里子 配給:S・D・P
2024 年 / 日本 / 16:9 / 5.1ch / 93分 ©映画「ROPE」

7/25(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

この記事を書いた人 Wrote this article

Hajime Minamoto

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