8月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開される映画『蔵のある街』。岡山県倉敷市を舞台に、自閉スペクトラム症の兄を持つ同級生のために、型破りな花火を打ち上げようと奮闘する高校生たちの姿を描いた本作で主演・蒼役を務めた山時聡真さんにお話を伺いました。作品に込められた「希望」のメッセージ、そして倉敷での撮影が山時さんにもたらした変化について深掘りします。

■ 山時聡真インタビュー
1. お名前について
ー: 本サイト恒例の質問で、お名前の由来についてうかがっています。山時さんの「聡真」というお名前の由来をお聞かせいただけますか?あまりみかけない漢字の組み合わせですね。
山時聡真:「聡明」の聡に、真実の真です。漢字の“真”とつけられた意味は忘れてしまったのですが、“聡”については、「聡明」の“聡”とよく言われていました。僕はキーボードで自分の名前を打つ時もいつも「そうめい」と打ってから、「そうま」と入力するんです。それくらい珍しいって言われていました。僕はこの漢字も名前も大好きです。
2.手応えのあったシーン、ターニングポイント
ー: 今回の撮影で、特に「手応えがあった」と感じたシーンについての質問です。すでにコメントされている“集会所での感情をあらわにするシーン”について、その時の感覚や気持ちを詳しくお聞かせください。
山時聡真:あのシーンは、特に自分のプレッシャーとなっていたシーンでした。監督からも「挑戦」という意味でいただいたシーンでもあったので、撮影の前日からずっと緊張していました。泣き芝居ということもありますし、皆さんの前で一人舞台であるかのようなお芝居をするというのは今まであまり経験がなかったんです。
1回目にやったものが、あまりうまくいかなくて、「スランプにはまりそうだな…」みたいな感覚があったのですが、2回目には、1回目の不安要素が消えるくらいすっきりとしたお芝居ができたんです。
そういった意味で、自分の中では一番心に残っていますし、うまくいったなという印象です。監督からも「本当によかったよ」と言っていただき、また泣きそうになりました。
ー: 1回目とうまくいった2回目の違いはどんなところにあったのでしょうか?
山時聡真:お芝居をしている時、自分の不安や緊張を感じながら演じてしまう時があって、集中しようとしているのに集中できないということが結構あるんです。特にシリアスなシーンでそうなりがちです。
うまくいった時というのは、余計なことを考えずに、セリフを言うというより「もう(感情が)出てくる」ぐらいの感覚なんです。もちろん分かりやすい芝居もやろうと思えばできますし、それがそう見えたら成功ではあると思うんです。でも、自分が納得するかしないかという面では、分かりやすい芝居だけだと気持ち良くないし、納得もできないので、2回目は心の底から納得できた芝居だったと感じています。

3.監督との共鳴と若者の力
ー: 平松恵美子監督は、ご自身の故郷である倉敷を舞台に、「こどもたちには夢に向かうことの素晴らしさを、おとなたちには本気の夢に向かう子どもたちを応援することの大切さを伝えたい」という強いメッセージを込めて本作を企画されたとお聞きしています。主演として、監督のこの故郷への愛情や若者たちへのメッセージをどのように受け止め、蒼という役を通して観客に伝えるために、どのようなディレクションがありましたか?
山時聡真:監督のメッセージは、作品を作っていく中で強く感じました。僕自身は、やはり蒼と同じこどもの立場にいる年齢に近いので、こどもの方に共感してしまう部分があったのですが、監督と話す中で「おとなたちの目線」というものにも気づきました。もうすぐおとなになる立場として、おとなになった時に今の気持ちを忘れないようにしよう、といったことを思いました。こどものことしか考えていなかったので、監督と話していく中でおとなたちの立場も考えながら、この作品を進めたいと思いました。
具体的なディレクションとしては、実は監督とは会話をせずとも通じ合っている感覚がずっとありました。悩んだことや「こうした方がいい」というアドバイスは聞きましたが、最初に僕がお芝居を持っていった時も、話す前にまず一旦やってみて、その中で少し変えるところがあれば、という感じで臨んでいました。ずっと「ここはこうしようね」と事前に話していたわけではなくて、僕が心の中で監督の求めているものを読み取ったり、監督も僕の表情を見て体力面なども気づいてくださったりしました。なので、具体的な言葉でのやり取りというよりは、その場で生まれるセリフのニュアンスや動き方など、具体的なことの積み重ねが多かったかもしれません。
ー: 映画では、蒼たちの「本気」が大人たちを「本気」にさせていく瞬間が描かれます。ご自身の高校時代の経験(コロナ禍での体育祭での声出し制限変更)を引き合いに出し、「若者がおとなや街に与える力の大きさ」に改めて感動したと仰っていますが、蒼としてどのような「力」を意識して発揮しようとされましたか?
山時聡真:この作品を通して、目の前のことから逃げないこと、そして自分一人で壁に立ち向かっていくのではなく、良い意味で色々な方を巻き込みながら皆で乗り越えることがすごく大切だと学びました。
今の時代って、何か言おうとしても言わなくなってしまったり、行動しなくなってしまったりすることが多いと思うんです。SNSなども増えてきて、自分の言葉で直接伝えたり、行動に移したりすることが減っているように感じます。だからこそ、どんどん自発的に、自分から行動していくことが大切だと思います。蒼のそうした姿勢が、大人たちを動かす誠実さにつながっていくのだと感じました。

4.共演者との絆と座長としての成長
ー: 今回、長編映画の主演を務めるにあたり、「主演として周りを引っ張るというよりも、櫻井さんと堀家さん、中島さんに支えられながら、山時さんと4人で力を合わせて頑張った感覚が強い」と率直に述べられています。共演者の方々との関係性や、座長という立場を経験したことで、俳優としての今後の活動において、どのような新たな視点や目標が生まれましたか?
山時聡真:僕が引っ張ったといったエピソードは一つもないんです。櫻井健人君も堀家一希さんも、現場での雰囲気を読み取る能力がすごく高くて、そういったことを教えてくださいました。
堀家さんには特に驚かされました。自分が出ていないシーンでも見学に来ていたりするのを見て、すごく熱量を持っている方だなと感じ、「この作品に、堀家さんに負けないぐらい熱い思いを注がなければいけない」と気づかされました。健人君は本当にずっと現場を明るくしてくれて、お芝居の時にアドリブで色々と突っ込んできたりするので、すごく現場が和んでいました。僕と健人君はホテルの部屋も隣同士で、お互いの部屋を行き来してプライベートの話もたくさんしました。共通の知り合いの話や、恋バナで「どういう人が好きなのか」とか男子高校生みたいな話で盛り上がっていました(笑)。蒼と祈一(櫻井健人)の関係性では、健人君との関係が一番築き上げられたなと思います。
今回の経験を経て、今後もし主演を務めることがあったら、芝居もそうですが、現場での雰囲気を変えられるような、引っ張っていけるような、頼もしい座長になりたいと感じました。
ー: 現場の雰囲気を明るくすることに意識を置かれたとのことですが、具体的に何かされたことはありますか?
山時聡真:何か特別なことをしたわけではなくて、僕自身、普段から本当に明るい性格なんです。MBTI(性格診断テスト)の結果もエンターテイナーなので、普段からエンターテイナー気質で自然とちょっとボケてしまったりすることがあるんです。誰かを笑わせることが好きなので、今回の現場も多分そういう雰囲気で臨めていた、という意味では明るくできていたんだと思います。

5.お客様へのメッセージと本作の見どころ
ー: 最後に、映画を楽しみにしているお客様へメッセージと、本作の見どころをお願いします。
山時聡真:はい。この作品は、どの年代の方も、誰かしらに共感できる部分があるんじゃないかなと思います。とても温かい作品で、見ていてすごく気持ちがいいと思います。
倉敷の街の良さをもっと知れる作品ですし、皆さんが住んでいる街にも希望や勇気を与えられるような、そんな温かくもあり、熱い作品でもあるので、ぜひ見ていただきたいです。平松監督も「見終わって元気が出る映画、希望が感じられる映画」を目指したとおっしゃっています。僕自身も、完成した映画を見て「背中を押してもらえる映画」だと感じました。この作品が、何かを変えたいけど難しいなと思っている方にとって、発言や行動のきっかけになったら嬉しいです。子どもも大人も、お互いを思いやることや、初心に帰ることの大切さを感じてもらえたら、と願っています。
僕にとって「初心を思い返せる場所が故郷になる」というのが故郷の定義です。もし何年か後にこの映画を見て、当時悩んでいたことを思い出して初心に戻れるとしたら、倉敷は「第二の故郷」になると思います。

スタイリスト:西村咲喜
ヘアメイク/AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
ブルゾン¥90,200、パンツ¥38,500/ともにsaby(evolve 03-6823-5074) シャツ¥26,400/texnh(canall 03-6661-6190) その他スタイリスト私物
映画『蔵のある街』
山時聡真 中島瑠菜
堀家一希 櫻井健人 田中壮太郎 陽月華 長尾卓磨 前野朋哉 ミズモトカナコ
高橋大輔 MEGUMI 林家正蔵 橋爪功
監督・脚本:平松恵美子 音楽:村松崇継
主題歌:手嶌葵「風につつまれて」(ビクターエンタテインメント)
プロデューサー:平松恵美子 撮影:森口大督 照明:宮西孝明 美術:倉田智子 録音:西山徹 編集:小堀由起子
装飾:極並浩史 衣裳:小堀あさみ ヘアメイク:反町雄一 音楽編集:本谷侑紀 音響効果:勝亦さくら VFXプロデューサー:浅野秀二
助監督:相良健一 協力プロデューサー:深澤宏 音楽プロデューサー:高石真美
プロダクションマネージャー:小松次郎 ラインプロデューサー:前場恭平
企画・製作:つなぐ映画「蔵のある街」実行委員会 制作プロダクション:松竹撮影所 企画協力:倉敷市 配給・宣伝:マジックアワー
2025年/日本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/DCP/103分
©︎ 2025 つなぐ映画「蔵のある街」実行委員会
8月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開

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