1月8日、ポレポレ東中野にて、映画『春原さんのうた』の上映が開始。初日舞台挨拶には、主演の荒木知佳、原作の歌人・東直子、杉田協士監督が登壇。公開初日を迎えた喜びを語った。
この日、舞台上では、マルセイユ国際映画祭(FID)俳優賞受賞の賞状が杉田監督から荒木さんに手渡された。

■映画『春原さんのうた』
あらすじ
美術館での仕事を辞めてカフェでのアルバイトを始めた沙知(24)は常連客から勧められたアパートの部屋に引越しをする。そこでの新しい生活を始めた沙知だったが、心にはもう会うことの叶わないパートナーの姿が残っている。
概要
歌人の東直子による第一歌集『春原さんのリコーダー』の表題歌を杉田協士監督が映画化。
撮影を飯岡幸子(『うたうひと』『ひかりの歌』『偶然と想像』)、照明を秋山恵ニ郎(『花束みたいな恋をした』『きみの⿃はうたえる』)、音響を黄永昌(『不気味なものの肌に触れる』 『VIDEOPHOBIA』)が務める。前作『ひかりの歌』が口コミなどの評判により全国各地での公開へとつながった杉田協士監督の長編第3作。第32回マルセイユ国際映画祭 インターナショナル・コンペティション部門にて日本映画初となるグランプリのほか俳優賞、観客賞の三冠に輝いた。
■映画『春原さんのうた』初日舞台挨拶
▼公開初日をむかえての感想
荒木知佳
昨日杉田監督のツイートで、2019年9月3日に春原さんの製作がスタートして、そこから映画が作られて無事に完成して、昨年は映画祭をたくさん回らせていただいて、こうやって初日を迎えさせていただいたことを嬉しく思います。

東直子
短歌を原作に映画を作りたいというお話を杉田監督からいただいたのが2019年の9月頃でした。すごく嬉しくて、秒で返そうと思ったんですけど。数分待ってからお返事をしました。
まさか一首がこんな素敵な2時間の映画になるなんて夢にも思っていませんでした。本当に実現して映画館でこんなにたくさんの方に見守っていただけるとは今でも夢を見ている気がします。
映画の制作は2019年なので2年前なんですけど、短歌をつくったのは1996年です。短歌の新人賞みたいなコンテストがあって、そこで「草かんむりの訪問者」という連作で受賞させていただいたのが1996年でした。
受賞すると受賞第一作ということで同じボリュームの30首の連作を都度発表しなければいけないんですけれども。その受賞後の第一作が、「春原さんのリコーダー」というタイトルで、映画の原作になった作品もその時に作ったんです。それを作ったのが1996年なんですね。こんなに長い長い年月を経て、映画としてまた、短歌が新しい広がりをみせて、しかも去年はずっと世界中をまわって、なんて長い旅を春原さんがしているんんだろうと感慨深く思っております。
春原さんというのは私の友達の友達みたいな感じで直接濃いやりとりをした人ではないんですけど、名前が素敵だなと思って、それで短歌を書いていたんですけれども、ずっと長い旅をしてきました。友達に、「春原さんに伝えて」と言ったので、春原さんはきっとどこかで喜んでいると思います。

▼マルセイユ国際映画祭(FID)俳優賞受賞の賞状の授与と受賞後の変化、エピソード
杉田協士監督
今日は賞状を持ってきました。これは「マルセイユ国際映画祭(FID) 杉田協士監督『春原さんのうた』俳優賞受賞」の賞状です。「ベストアクティングアワード チカ アラキ」
今日まで私の家にあったのですが、やっと渡せます。おめでとうございます。

荒木知佳
ありがとうございます。
杉田協士監督
私は結構ノンビリしているんですけど、ありがたいことにこの映画を注目していただいて、受賞後すぐに一作つくらなきゃいけない空気をみんなから感じています。私としてはゆっくりしていたいんですけど、もしかしたら今年も映画を撮っているかのしれません。
荒木知佳
楽しみですね。
杉田協士監督
私には勢いみたいなものは似合わない感じがありますけれども…。
東直子
私もあまり勢いはないんですけど、当時締切があったので、受賞がわかって一ヶ月位で30首つくったんです。その時に夢中でつくったものがこうやって、不思議な広がりをすることがあるんだなと思いました。また、それぞれの縁で広がるんじゃないかと思っています。
今日、観てくださった方にもいろいろあると思います。映画の中もいろんな人の出会いが淡い様ですごく濃いんですよね。その感じをみんなで映画館で共有できるのって素敵だなと思います。
杉田協士監督
東さんがいてくださると、非常に心強いです。
私と荒木さんでまわっている時は話がすぐ終わってしまっていたので。
東直子
3人で話すのは意外と初めてかもしれませんね。
荒木知佳
撮影の時は何度か顔を合わせていましたけれど。
杉田協士監督
現場に美味しいブドウを持ってきてくださいましたね。
荒木知佳
すごく美味しかったです。
東直子
お役に立てて良かったです。
杉田協士監督
私は現場の時から今もですけど、カバンの中に「春原さんのリコーダー」を入れていました。ボロボロになって表紙もちぎれてしまいました。
東直子
一首が原作ですけれども他の作品も雰囲気というか、味わいも加味してくださいました。
杉田協士監督
やはり東直子さんの短歌をお預かりして映画を作るっていうときに、選んだのは一首なんですけれども、東直子さんの原作ぐらいの気持ちにどんどんとなっていって、いろんな短歌以外も本も読んで1990年代の後半にお住まいだった街を一緒にまわらせていただいたりだとか、段々と自分の中に落とし込んでいってこの一首を映画にすることになりました。
あと、ここ(本に挟んである)にお守りがあります。撮影の最終日に荒木さんが手紙を書いてくださって。
荒木知佳
私も杉田監督と東さんからもお手紙をいただきました。
▼お客様へのメッセージ
杉田協士監督
映画は120分になります。
『春原さんのうた』をつくる前に、「ねむらない樹」(http://www.kankanbou.com/books/nemuranaiki/0370)という短歌のムック本で東直子さんと何名かの方と座談会をした際に、短歌一首を映画にするとだいたい35分から40分くらいなんですと話したのですが、2時間になってしまいました。東直子さんの短歌が広がればと思っています。よかったらまわりに広めてください。よろしくおねがいします。
荒木千佳
この作品は食べ物がいっぱい出てきて、お腹が空くかもしれないですけど、撮影中もすごく美味しかったのでそこにも注目して観ていただければと思います。楽しんでください。よろしくお願いします。
東直子
そうですね。見どころはたくさんあって、確かにご飯がおいしそうで、お腹が空いてしまうと思います。
あと、この映画は自由に楽しんでいい映画なのかなと思っています。様々な映画がありますけども、特に余韻や余白を楽しむ映画なのかなと思うんで、作中の人物と共に、それぞれの見てくださる一人一人の人生の、いろいろな大切な記憶と響き合わせながら見ていただけたら本当に嬉しいなと思います。
映画『春原さんのうた』
<出演>
荒木知佳 新部聖子 金子岳憲 伊東沙保 能島瑞穂 日髙啓介 名児耶ゆり 北村美岬 黒川由美子 深澤しほ 安楽涼 大須みづほ DEG 徳倉マドカ 清水啓吾 吉川愛歩
<原作短歌>
原作短歌:転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー
(ちくま文庫『春原さんのリコーダー』より)
<スタッフ>
原作:東直子 プロデューサー:髭野純 アソシエイト・プロデューサー:川村岬 撮影:飯岡幸子 照明:秋山恵二郎 音響:黄永昌 衣裳:小宮山芽以 編集:大川景子 仕上監修:田巻源太 音楽:スカンク/ SKANK 照明助手:平谷里紗 衣裳助手:田島あかり スチール:鈴木理絵 イラスト:カシワイ 題字:荒木知佳 デザイン:篠田直樹 英語字幕:長谷川美樹 / AC・クロフォード 国際映画祭コーディネート:槻舘南菜子 国際広報:グロリア・ゼルビナーティ 配給・宣伝:イハフィルムズ 宣伝:平井万里子
製作:Genuine Light Pictures/ねこじゃらし 2021/Japan/Color/Standard/DCP/5.1ch/120min © Genuine Light Pictures
公式サイト: https://haruharasannouta.com
公式Twitter: @haruharasanno
2022年1月8日(土)よりポレポレ東中野ほかにてロードショー
