2025年10月10日(金)から、新宿シナネカリテほか、映画『爽子の衝動』で主演を務める古澤メイさんにインタビューを実施しました。本作は、現代社会が抱える困難な問題に焦点を当てた重厚な作品であり、古澤さんにとって初の主演作となります。彼女のパーソナルな部分から、役者としての挑戦、そして作品に込めたメッセージまで、その深い思いに迫ります。

■ 映画『爽子の衝動』主演 古澤メイ インタビュー
▼お名前の由来
ー:本サイトの恒例でお名前の由来をうかがっています。古澤さんの「メイ」というお名前の由来についてお聞かせいただけますか?
古澤メイ:私の父と、父の兄妹はみんな名前の漢字が八画だったんです。父の両親が早くに亡くなっていたので、母がその意思を受け継ごうと考え、私の姉にも八画の漢字から選び、私も八画の漢字から「芽」という字を選んだことがきっかけでした。
ただ、実はこれは最近あらためてわかったことなのですが、親戚で集まった時に母が八画の画数の話をして、みんなで数えてみたら、父の姉だけ七画だったんです(笑)

ー:えっ!?
古澤メイ:結局、名前が八画でそろっていなかったんです(笑)。母の勘違いでした。(笑)でも、「芽」という字が選ばれたのは、草木が「芽吹く」生命力の強さや、「芽生える」という初々しさ、両方を持って生きてほしいという母の願いがあるそうです。
▼ 役者を始めたきっかけ
ー:役者を始めたきっかけについて教えてください。
古澤メイ:5歳の頃からバトンを習っていて、人前にいることだったり、表現を追求する生活を小さい頃からずっと続けていました。その中で最初に出会ったのは音楽でした。中学3年生の時に音楽事務所に入り、音楽やダンスに向き合う中で、身体を壊してしまって学校に行けなくなった時期がありました。その時に家でずっと映画を見ていたんです。映画が自分の居場所だと強く感じて、そこからお芝居に興味を持ち始めました。
「自分の経験とか、持っている考えとか、いろいろなものが全て活かされるお仕事だ」というところから、お芝居の道に進もうと決めました。
ー:プロフィールには「トライストーンアクティングラボで優秀成績を収め…」とありますが、こちらにはいつ頃から入られたのですか?
古澤メイ:高校卒業後にこちらの養成所でお芝居を習い始めました。
インタビュアー:養成所ではどのようなことを学ばれましたか?
古澤メイ:4年間通ったのですが、お芝居のことはもちろんですが、人としても成長させてもらえた場所でした。例えば、当たり前のことですが、時間を守るというところとか。レッスンが始まる1時間前にスタジオが開いているのですが、レッスンに間に合えばよいという事ではなく、なるべく早めに行って開始時間には万全な状態で挑めるような時間の使い方をするとか、スタジオを使い終わった後の掃除をちゃんとやるとか、役者である前に一人の人間として学ぶものが多かったです。
ー:なるほど。
古澤メイ:お芝居のレッスンも、3ヶ月に1回くらい講師の方が変わっていって、舞台の演出の方とか映画の監督とか、いろんな形のお芝居を学べる養成所でした。講師の方が定期的に変わることでお芝居に対しての考え方の振り幅も広くなっていったのでとても有難かったです。

▼多彩な特技と趣味
ー:特技にバトントワリングの経験が12年とありますが、アクロバット、殺陣なども、役者を目指してから始めたのでしょうか?
古澤メイ:バトンの中で結構アクロバットをするんです。体操の要素が入っていて、アクロバットはずっとやっていました。殺陣は、習っていた時期もありますが、バトンのような細い棒の扱いが得意なので、その棒さばきを殺陣の練習の時に褒めてもらったことがきっかけで特技として書かせてもらっています。
ー:殺陣は最近の役者さんにとって重要な要素ですよね。そういえば、趣味の“味噌作り”が気になったのですが、これはどのようなきっかけで始められたのですか?
古澤メイ:味噌作りは、大豆や麹、塩を使ってつくるんですけど、ちょこちょこと研究することが好きなんです。どうしたら美味しくなるかとか、どれくらいの期間寝かせたらどうなるのかとか、今回は失敗したなとか、そういった実験のように研究することが好きです。
ー:発酵ものなので、温度や塩加減、水加減など、試行錯誤のし甲斐がありますね。
古澤メイ:作ってもつくっても正解が分からなくて、カレーもスパイスから作ったりするのですが、これも同じように何をどれぐらい入れたらどうなんだろうみたいなのを一人で黙々とやっているのですが、まだどちらもたどり着けていないです。
▼映画『爽子の衝動』出演の経緯
ー:では、徐々に作品の話に移りたいと思います。今回の作品『爽子の衝動』に出演する経緯についてお聞かせください。
古澤メイ:今から2年くらい前、撮影の1年くらい前に、たまたま戸田監督とご一緒する機会があったんです。その時、私が出演していた舞台が終わったばかりで、次の仕事も決まっておらず、「この熱量を次にどこに向けたらいいんだろう」という焦りがすごくあった時期でした。その時に戸田監督にご相談をさせていただいたんです。自分がこうなりたいとか、何年までにこうなっていたいとかという自分の人生設計をお話しました。
ー:未来への展望を話されたのですね。
古澤メイ:その時に「何年にこの賞を獲るんだったら、何年までに作品を作らないといけないよね」という逆算の話になり、「じゃあ作ってみる?」という流れで、その日が本作への出演のきっかけだったと思います。
ー:普段からご自身の未来に関する考えをお持ちなのでしょうか?
古澤メイ:はい。幼稚園ぐらいからずっと未来のことを考えているというか、早く大人になりたかったんです。今はお芝居をする環境にいて、自分がどうなりたいかという指針みたいなものを持っておかないと、大勢の中で自分を見失ってしまいそうで、自分と向き合うことは日々大切にしています。
ー:養成所での経験も影響していますか?
古澤メイ:そうですね。養成所は週に1回のレッスンが命だったので、終わったら講師の方を捕まえて色々聞いたり、お話をさせていただいていました。当時は「お芝居がしたい」という想いが強かったのでとにかく自発的に動いていました。
▼台本を読んだ際の衝撃と葛藤
ー:台本を初めて読んだ際、「物語全てに殴られたような放心状態になった」とコメントされていましたが、その時の感想や衝撃についてお聞かせください。
古澤メイ:ものすごく作品自体の力があると感じました。言葉通り、物語に殴られたような感覚です。今でも初めて読ませていただいた時のことを覚えています。戸田監督から台本がデータで送られてきて、すぐに感想を送ることができませんでした。「こういう現実が自分の目に見えていないところで起こっているんだ」ということを知り、放心状態になりました。
ー:役者としてその役に入り込む上で、葛藤や覚悟があったのではないでしょうか?
古澤メイ:そうですね、爽子の境遇、生活基盤、社会との関わり、爽子自身について、自分が演じるにあたり、不安はありました。でも一つずつ一つずつ丁寧に“爽子”という女の子を知っていかなければいけない、と強く思いそれが覚悟に繋がっていきました。

▼困難な役柄を演じる上での挑戦
ー:爽子は、ヤングケアラーとしての苦悩、生活保護申請における困難、ADHDの症状、そして性的暴行という、非常に重く困難な状況に直面するキャラクターです。古澤さん自身が「大切にしたい、自分がちゃんと守りたい」という強い思いを抱いた一方で、これほど複雑で痛ましい役柄を演じる上で、最も挑戦することとなった点は何でしょうか。
古澤メイ:撮影期間は、爽子自身にどれだけ私が向き合い続けられるかというところが挑戦でした。爽子を見つめていくうちに、やっぱり自分の中で大きな存在になっていきました。それ故に自分の芝居で爽子のすべてが表れるんだ、と思うと正直不安で怖かったです。だからこそ、1シーン毎に立ち止まって考え、とにかく爽子として立った時に目に見えるもの、感じた事を必死で信じ抜きました。
▼役作りと「知る」ことの重要性
ー:資料には、爽子を演じるにあたり、医療監修の方と話したり、撮影前のロケハンに同行したりしたとあります。この経験は役に立ちましたか?
古澤メイ:はい、演じるにあたってすごく力を貰いました。父の介護をして暮らしている爽子にとって、何が日常になっているのか、どんな生活を送っているのか、専門の方から知識を得ることでより想像が膨らみました。また、戸田監督にお声がけいただき、ロケハンにも同行させていただきました。海と山が見える爽子の家。爽子が普段使っている道や聞いている音。事前に伺ったことで、撮影時にはなじみのある場所として、環境にも力を貰いました。
ー:古澤さんも「知る」ことが映画の強みだとコメントされていますが、この役作りを通して得た「知る」ことの重要性について、改めてどのようにお考えですか?
古澤メイ:やっぱり自分自身も映画を通して、沢山の事を学んできました。そして今回爽子と出会い向き合う中でも初めて知ることもありました。“自分の目に見えていないところで起こっている現状”を知った上でどう日々を過ごしていくか。考えのふり幅を持つ事が大切だと思いました。この作品は「知る」ということが非常に重要なキーワードだと思います。
▼初主演作品としての意味
ー:本作は古澤さんにとって初主演作であり、「役者としても自分の名刺代わりになる作品」と捉えているとコメントされています。初主演という大役を経験されて、俳優としてどのような成長や変化を感じていますか。座長としての心構えなどはありましたか?
素晴らしいスタッフさんやキャストの方々の中で主演を務めることも多くの経験につながったのでは?
古澤メイ:そうですね、こういった素晴らしいスタッフさんやキャストの方々の真ん中にいるというのは緊張しましたが、撮影期間中はとにかく「自分が役者としてどれだけこの作品に向き合っていけるか」ということをずっと考えていました。
他のキャストの方々を見ていただければわかる通り、素晴らしい役者さんばかりで、一方的に作品を拝見していた方々とご一緒できたのは、とても光栄でした。沢山のことを学ばせていただきました。そんな皆さんの胸を借りながら、そして戸田監督をはじめとするスタッフの方々が芝居に集中できる環境を作って下さっていたので、自分が変なプレッシャーを気負うことなく、作品創りに参加することが出来ました。
ー:共演者の方々とのエピソードはありますか?
古澤メイ:梅田さん(ケースワーカー役)にはすごく助けてもらいました。梅田さんがケースワーカーとして来てくださったから、自然にそれを受け取れたという部分があります。でも、共演者の皆さんとはそんなに話をする機会はなかったんです。
ー:父親役の間瀬さんとも話さなかったのでしょうか?
古澤メイ:父役の間瀬さんとも全然話さなかったです。クランクアップした後に聞いた話なんですけど、間瀬さんから「撮影期間中は話そうか話さないかすごい迷った」と伺いました。爽子自身は自分の記憶の中の“お父さんとの思い出”と“目の前の現状”との間で葛藤があったので、撮影期間は間瀬さんご本人とはあまりお話せずに過ごしました。
ー:確かに関係性を考えると、その方が良いのかもしれませんね。
古澤メイ:そうですね。この間、舞台挨拶で間瀬さんと久々にお会いしたんですけど、私が間瀬さん見つけた時に「間瀬さん!」って言ったら、「あ、そんな明るい子だったんだ!」とびっくりされました。現場で全然喋らないからって(笑)。

▼今後の俳優としての展望
ー:今後、俳優としてどのような役柄やジャンルに挑戦してみたいですか?また、長期的な視点で、どのような俳優を目指していきたいとお考えですか?
古澤メイ:そうですね、やりたい役というか、私は時代物をやりたいです。ずっと、朝ドラに出るのが一番の目標なんです。私自身、朝ドラがすごく好きでいつも見ています。
昔も今も変わらず、生きていく上で様々な問題はありますが、主人公の自分の道を切り開き突き進んでいく強さやたくましさにとても惹かれますし、そういう方々がいたからこその今がある、と自分も意志を引き継いで頑張ろうと前向きになります。
あと、私の顔は和服が似合うとよく褒められます。親しみやすい顔の持ち主だと思うので、見てくださる方が少しでも近く感じられる役者になれると思っています。

ー:ちなみに一番好きな朝ドラは何ですか?
古澤メイ:『おちょやん』です。上方女優の浪花千栄子さんをモデルにした、女優を目指す子が主人公なのですが、当時芝居を始めたての自分と重ねて、食い入るように見ていました。杉咲花さん演じる主人公千代が、劇中の作品「太陽の女 カルメン」に、出演が決まり、お芝居をするシーンがあるのですが、その時の杉咲さんのお芝居に引き込まれ、記憶に残っています。
▼お客様へのメッセージ
ー:最後に、映画をご覧になるお客様へのメッセージや、見どころなどをお願いします。
古澤メイ:沢山の方々のお力添えのもと「爽子の衝動」の劇場公開が決まりました。関わっていただいた方には感謝の気持ちでいっぱいです。そして、作品全体を通して、私が台本を初めて読んだ時と同じように、とても現実を突きつけられる作品だと思います。でも、自分が普段暮らしていて目を向けられていなかった存在、影に隠れている人たちを映し出せるのが映画の強みでもあると思うし、“知る”という事の窓だと思います。爽子という一人の女の子がその街で息をしている。とにかくそれを知ってもらいたい。その上で現実世界と照らし合わせたときに考える一つのきっかけになる作品になれたら嬉しいです。

映画『爽子の衝動』
古澤メイ
間瀬英正、小川黎
菊池豪、遠藤隆太、木寺響、木村恒介、中川朱巳 / 黒沢あすか、梅田誠弘
・スタッフ
監督・脚本・編集:戸田彬弘
プロデューサー:King-Guu、亀山暢央、戸田彬弘
アソシエイトプロデューサー:西原龍熙
ラインプロデューサー:深澤知
撮影:春木康輔
照明:藤井隆二
録音:北野愛有
美術:坂入智広
ヘアメイク:七絵
助監督:片山名緒子
MA・音響効果:吉方淳二
VFX:三輪航大
スチール:柴崎まどか
宣伝美術:大久保篤
挿入歌:「ダーリン」Norenn
インティマシーコーディネーター:西山ももこ
医療監修:堀エリカ
絵画指導:間瀬英正
製作:basil、チーズfilm
制作協力:ポーラスター
特別協賛:レジェンドプロモーション
制作プロダクション:チーズfilm
©「爽子の衝動」製作委員会 2024年 45分 アメリカンビスタ 5.1ch
【公式X】https://x.com/soyoko_movie
2025年10月10日(金)新宿シネマカリテより順次公開

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