ライフテープ

難病と向き合う家族の日常を親友の視点で描くドキュメンタリー映画『ライフテープ』公開記念舞台挨拶、安楽監督や出演者らが登壇

映画『ライフテープ』の3月29日の上映後に舞台挨拶が行われ、安楽涼監督、出演者の隆一(RYUFO)さん、朱香さん、そして本作プロデューサーの前田亜紀さんが登壇した。息子の珀久くんは体調を崩し大事をとって欠席となったが、登壇者たちは珀久くんへの思いとともに、映画制作の裏側や作品に込めた思いを語った。幼馴染である監督と家族の間の親密な距離感から生まれた本作は、難病という過酷な現実の中にもある「幸せ」を切り取った作品として注目を集めている。本記事ではその舞台挨拶の詳細をレポートする。

親友だからこそ撮れた家族の真実、撮影のきっかけ

安楽涼監督は、小学校からの同級生である隆一さんから息子の珀久くんが指定難病のメンケス病であることを電話で知らされた時の衝撃を振り返った。何もできない無力感に苛まれる中、隆一さんから直接話を聞く機会を得た。「俺たちめちゃくちゃ幸せに暮らしてるし、本当に可愛い。そんな俺たちの姿を撮ってほしい」という隆一さんの言葉が、本作の始まりだったという。隆一さんは当時を振り返り、病気について周囲に言えなかったが、映画にすることで打ち明けられる道具ができたと語り、夫婦でドキュメンタリーを見て目標ができたことが前へ進むきっかけになったと明かした。朱香さんも、安楽監督が普段からカメラを持っていることが日常であったため、撮影に対して特別な抵抗はなかったと当時の心境を語った。

絶妙な距離感とカメラの後ろの覚悟

本作のプロデューサーである前田亜紀さんは、ドキュメンタリー制作において最も気を使う「被写体との距離感」について言及した。親友という間柄でありながら、客観的なカメラワークを保ち続けた安楽監督の姿勢を「覚悟を持って撮りに行っているからこそ人に伝わるものがある」と高く評価した。

これに対し安楽監督は、普段の友達としての空気感を保ちつつも、カメラを回す瞬間は「映画にする」という強い意志を持っていたと語る。特に夫婦が過去の壮絶な体験を語る場面では、友人として心を揺さぶられ泣きそうになりながらも、「これを映画にできるのは自分しかいない」と必死に監督としての冷静さを保っていたと当時の胸中を吐露した。

手渡された日記と、現在に続く家族の幸せ

映画の重要な要素となっている朱香さんの日記について、朱香さん自身が安楽監督に手渡した経緯も語られた。朱香さんは、日記を自身の闇の部分であり読み返すことはないとしながらも、当時のすべてを話しきれていないため、日記を読むことで本当の気持ちを理解してほしいという思いから監督に託したと明かした。撮影開始から約二年が経過した現在、一家は妹と新しい猫を迎え、さらに賑やかになっている。珀久くんの体調も喉の手術を経て安定し、以前は途中で引き返すしかなかった桜を見に行くこともできたと、現在の穏やかな日々が報告された。

スクリーンを通して届ける「小さな家庭」の姿

最後に登壇者それぞれが観客へメッセージを送った。朱香さんは、珀久くんの欠席を残念がりつつも、映画を通して多くの人が出会ってくれたことに感謝を述べた。隆一さんは、家族のプライベートが全国に流れることへの思いを語り、塞ぎ込むこともできた状況の中で、温かい仲間たちによって自分たちの姿が映画になり、発信できることへの深い感謝を示した。

そして安楽監督は、この家族の暮らしが必ず誰かに届くと信じて制作したと語り、様々な感想を寄せてほしいと力強く呼びかけ、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。


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Hajime Minamoto

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