耽美と官能の作家として知られる文豪・谷崎潤一郎の生誕百四十周年を記念した映画『JOTARO』(山嵜晋平監督)の公開記念舞台挨拶が十六日、都内で行われた。本作は谷崎の「饒太郎」を原案に、人間の欲望やフェティシズムを現代の視点で描いた意欲作である。イベントには、満たされない欲望を抱える主人公・泉饒太郎を演じた芳村宗治郎をはじめ、山﨑翠佳、行平あい佳、平野宏周といった主要キャストと山嵜監督が登壇した。それぞれが撮影から一年を経て公開を迎えた喜びや、予測不能だった現場でのエピソードを余すところなく語った。

キャラクターの多面性と台本を超えた役作り
本作の登場人物たちは人間の欲や精神の多面性を体現しており、一筋縄ではいかないキャラクターばかりだ。主人公の饒太郎を演じた芳村宗治郎は、自身の恥ずかしい部分が出ている作品だと率直な思いを明かしつつ、観客がどう受け取るか楽しみだと語った。また、役柄については「やばい奴だが、自分にはなんとなく理解できる部分もあった」と分析し、特異なキャラクターへの共感を示した。

一方で、饒太郎に金を貸す編集者・松村英司役の平野宏周は、台本を読んだ時点では饒太郎との間に信頼感があると解釈していたが、実際の撮影現場では全くキャッチボールができず、自身のスタイルが崩されたと振り返った。台本にないやり取りが次々と生まれ、最終的には芳村の作り上げる饒太郎に身を委ねて演じたという。芳村自身も、相手のセリフを理解しつつも自分本位で芝居を進める状況を意図的に作り出しており、それが周囲に「良い意味でのやりづらさ」を与えていたのではないかと撮影当時を回顧した。

変化し続けた現場と予測不能な演出
撮影現場は、当初の想定から大きく変化していく空間であった。饒太郎に執着する写真家・貴島蘭子を演じた行平あい佳は、蘭子のキャラクター像について事前に考えてはいたものの、現場でのやり取りを通じて作り上げられた部分が圧倒的に多かったと語る。饒太郎を愛しく思うと同時に苛立ちを感じることもあり、プレッシャーをかけるシーンでは自ら楽しみを見出しながら真剣に取り組んだという。

ヒロインであり、「美しき犯罪者」と呼ばれる海原杏奈を演じた山﨑翠佳にとっても、過酷な現場であったようだ。撮影中は演出が次々と変わり、やればやるほど沼にはまっていくような感覚を味わったと吐露した。複雑な人物像を一面からだけでは捉えきれない難しさに直面しながらも、真摯に役と向き合った様子がうかがえる。

作品を指揮した山嵜晋平監督は、本作を「渾身のドロドロキラキラ青春映画」と独特の表現で形容した。監督自身も、どのような言葉で表せばいいのか分からない映画になったと手応えを感じており、「皆さまのおかげで良い映画が出来上がった」と感謝を述べた。

お客様へのメッセージ
舞台挨拶の終盤、登壇者たちはこれから映画を鑑賞する観客に向けて思いを語った。芳村は、最初から最後まで見終えた時に必ず何か思うことが出てくるはずだと力を込め、その感情を誰かにぶつけたり、SNSなどに書き殴って発信してほしいと呼びかけた。山﨑や行平も、見るたびに違う角度から感想が出てくる作品であり、様々な見方ができるとアピールした。キャストや監督の言葉からは、人間の根源的な欲望やエゴ、歪んだ愛を描いた本作が、観る者に強烈な印象を残す意欲作であることが伝わってくる。
▼舞台挨拶映像
映画『JOTARO』
STORY
文藝賞を受賞し華々しくデビューした小説家・泉饒太郎(芳村宗治郎)。しかし成功は長く続かず、執筆を条件に編集者・ 松村英司(平野宏周)から金を借りては、堕落した日々を送っていた。写真家・貴島蘭子(行平あい佳)に執着され、流さ れるままに彼女の家に身を寄せ関係を重ねるが、饒太郎の内に蠢く歪んだ欲望は満たされることがない。そんな折、松 村から取材対象として紹介されたのが、かつてパパ活で三千万円をだまし取り「美しき犯罪者」と呼ばれた女・海原杏奈 (山﨑翠佳)だった。おとなしく従順に見える彼女の奥に潜む、説明のつかない異様さ。饒太郎は、彼女こそが自分の欲 望を満たしてくれるのではないかと感じ始める―。
5 月 15 日(金)より『JOTARO』(原案:「饒太郎」)が公開、5 月 29 日(金)より『お艶殺し』がシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほかにて全国公開
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