国際俳優、映画プロデューサー、映画監督など多彩な顔を持ち、世界を舞台に活躍し続けるジャッキー・ウー氏。彼が携わった最新映画2作品が、世界の権威ある映画祭で高い評価を受けている。プロデュース・出演を務めた『PILA』は第48回モスクワ国際映画祭にノミネート。また、メインキャストとして出演した『WARLA』はBFIフレアロンドンLGBTQIA映画祭に入選するなど、続々と快挙が届いています。本記事では、各作品の魅力とともに、ジャッキー・ウー氏へのインタビューによる撮影秘話や今後の展望をお届けします。

ワンテイクムービーの極限に挑んだ『PILA』がモスクワ国際映画祭ノミネート
映画『PILA』は、病気の夫の医療費を稼ぐため、政府の厳しい医療援助プログラムに参加する75歳のレジーナを主人公とした物語です。彼女は腐敗したフィクサーと立ち向かいながら、いなくなった孫娘を探すために列を離れるという過酷な状況に直面します。本作でジャッキー・ウー氏はプロデューサーおよび出演(アドルフ・ボリナガ・アリックス・ジュニア監督)を務めています。

本作は、第48回モスクワ国際映画祭(MIFF)に見事ノミネートされました。ジャッキー・ウー氏は、この名誉ある映画祭に選ばれた喜びとともに、本作が「ワンテイクムービー(カットなし)」という新しい形の映画制作であったことを明かしています。 「NGが出れば一からやり直し」という極度の緊張感の中、エキストラの列がずれるだけでも最初から撮り直す過酷な現場でした。4時間弱に及ぶ撮影中は、誰もがトイレを我慢し、出演した全俳優がNGを出せないというプレッシャーの中で作り上げられました。ジャッキー・ウー氏自身も、エンターテイメントの原点を確かめるためにこのワンテイクムービーに挑み、補助金をもらう列に並ぶものの「外国人だから」という理由で不公平な扱いを受ける役柄を熱演しています。
トランスジェンダーの苦悩と絆を描く『WARLA』が各国の映画祭で躍進
映画『WARLA』(ケビン・Z・アランブラ監督)は、家族に受け入れられず悩む19歳のトランスジェンダー女性・キットカットが、トランスジェンダー女性だけの犯罪組織「WARLA」に引き取られ、アイデンティティと向き合う姿を描いた作品です。この組織は外国人を誘拐して性別適合手術の資金を得ており、ジャッキー・ウー氏は誘拐される外国人役として出演しています。

本作は、BFIフレアロンドンLGBTQIA映画祭での入選をはじめ、マカオ、メキシコ、カナダなど世界各国の国際映画祭でプレミア上映されるなど、高い評価を得ています。 ジャッキー・ウー氏は、レインボーフラッグを掲げる先進国イギリスでの入選に対し、「すごく価値のあること」と大きな喜びを語っています。また、海外での撮影現場でメイクや衣装を担当するトランスジェンダーのスタッフたちの笑顔に癒されてきた経験から、彼らの「潜在的にある苦悩の物語」だからこそ出演を決意したと語り、深い敬意を示しています。 撮影時の印象的なエピソードとして、主役の女性と取っ組み合いの喧嘩をするシーンの過酷さを挙げています。テイクを重ねるうちに、喧嘩に慣れていない主役の女性がパニック症候群(過呼吸)を起こしてしまったという、リアルな緊張感が伝わる秘話も明かされました。
ケビン・Z・アランブラ監督も、フィリピン初のトランスジェンダー女性ギャングの事件に着想を得た本作について、ジャッキー・ウー氏の参加が「日本とフィリピンの創造的な架け橋」となり、映画と観客の繋がりを深めていると絶賛しています。
ジャッキー・ウーが目指す「メイドインワールド」の映画作り
中国人2世の父を持ち横浜で育ったジャッキー・ウー氏は、1999年に香港でキャリアをスタートさせ、フィリピン映画監督協会の正規メンバーに外国人として初めて選ばれるなど、アジアを中心に国際的な活躍を続けています。

今後の映画制作について、日本と海外の撮影システムやクオリティの違い(記録係の厳しさ、機材の配置、ケータリングの有無など)に触れつつ、様々な環境での撮影経験を統合した「メイドインワールド」の視点で映画を作ることが理想であると語っています。 さらに、自身が俳優として海外で辛い思いをした経験から、カメラを向けられた待ち時間の役者の緊張を解くために「カメラと役者の間を遮るようにしている」と述べ、役者のメンタルを大切にする映画監督でありたいという真摯な思いを明かしました。

中国人2世の父を持ち、横浜で生まれ育つ。エンター テインメントへの夢とアジアへの熱い思いから、1999 年、香港を皮切りにキャリアをスタート。2001年以降、 フィリピンでの映画監督、俳優、歌手として活躍。 数々の映画の監督、主演を努める。現在、その功績が 評価され、外国人として初めてフィリピン映画監督協 会の正規メンバーである。歌手活動では「ゴールド・ ディスク」を受賞している。中国、台湾、韓国などの 映画に出演しており、日本国内でも活躍の場を広げている。
-
谷崎潤一郎生誕140年記念映画『JOTARO』公開記念舞台挨拶が開催、登壇キャスト陣が明かす予測不能な撮影現場の裏側
-
映画『トランジット・イン・フラミンゴ』初日舞台挨拶、山下リオら登壇 「人生の分岐点」を描く撮影の裏側を告白