インディーズレーベル「murffin discs」設立20周年記念映画『はじまりのさよなら』の東京先行プレミア上映会が11月4日、kino cinéma新宿で開催され、上映前舞台挨拶に主演の大倉琉人、共演の久保田紗友、原田琥之佑、深水元基、そして隈本遼平監督が登壇した。第31回釜山国際映画祭で「Face of the Future Award」を受賞した本作。登壇者は受賞の喜びとともに、作品への思いやリアルな生活感が漂う撮影現場での裏話、タイトルにちなんだ「忘れられない初挑戦」の体験談などを和やかに明かした。

釜山国際映画祭受賞への喜びと東京上映を迎えた熱気
音楽レーベル「murffin discs」の設立20周年を記念して製作され、SUPER BEAVERの柳沢亮太が映画音楽、sumikaが主題歌を担当した映画『はじまりのさよなら』が、11月20日の全国公開に先立ち東京で初めてお披露目された。
第31回釜山国際映画祭にて「Face of the Future Award」を受賞した喜びについて、映画初主演を務めた大倉琉人は、言語が異なる海外上映での伝わり方に当初は不安があったと振り返りつつも、賞という形での評価に接し、音楽や無言の表情が持つ力を再確認できたと語った。また、各地での上映を経て身近な東京で上映を迎えられたことへの感慨を口にした。

初の長編映画を手がけた隈本遼平監督は、上映を前にした緊張感をのぞかせながらも、釜山で観客とともにスクリーンを見つめる中で作品が生まれ変わっていく感覚を味わえたと回想した。上映後の質疑応答を通じて観客一人ひとりの心の中に映画が芽生えていく様子を実感できたと述べ、東京の観客へ作品が届くことへの期待を寄せた。
キャスト陣が抱いた第一印象と人物像のリアリティ
脚本を初めて読んだ際の印象について、主人公・長沢樹太役の男倉琉人は、登場人物それぞれに強い芯があり、関わり合いの中で良き変化をもたらし合っていく物語の構造に惹かれたと明かした。
岬舞奈役の久保田紗友は、瑞々しさと痛々しさが同居する物語に自身の思春期を重ね合わせたと語り、捉えどころのない魅力を持つ舞奈という役に挑む高揚感を振り返った。

樹太の親友・岩隈大也役を演じた原田琥之佑は、最終オーディション前に台本を開いた際、ちょうどギターを始めた自身の状況と役柄との共通点の多さに運命的なものを感じ、「掴むしかない」と強い意志で臨んだエピソードを披露した。

樹太の父・松野雷太役の深水元基は、中学生の頃の心情を思い出しながら読んだとし、ロケーションやキャスト同士の芝居の重なり合いが映像化において重要になると感じたと述べた。

隈本監督は、変声期や揺れ動く成長を描く本作において、このキャストとロケーション、そしてこの瞬間だからこそ生まれた映画であるという実感を語った。
アドリブが生み出した空気感と撮影現場のリアル
撮影現場の思い出に話題が及ぶと、樹太の父・雷太が暮らす部屋のセットのリアルさが話題に上った。大倉と原田は、生活感が溢れるセット内を探検するように撮影を楽しんだと語り、食事のシーンなどではアドリブを交えた和やかなやり取りが行われたことを明かした。
原田と大倉が夜の街を見下ろしながら語り合うシーンでは、監督からカメラを回し続ける指示があり、5分近くアドリブで会話を続けたという舞台裏も明かされた。久保田や原田も、本編鑑賞時にセリフとアドリブの境界線が分からなくなるほど自然な撮影空間であったと振り返った。
また、深水は撮影から約1年が経過し、大倉の身長が10センチ以上伸びたことに驚きを隠せない様子を見せ、「親戚のおじさんのような感覚になった」とコメントして会場の笑いを誘った。
今へとつながる登壇陣の「忘れられない初挑戦」
作品タイトル『はじまりのさよなら』にちなみ「忘れられない初挑戦」について問われると、大倉は撮影現場のセットにあったピアノを原田が滑らかに演奏する姿に刺激を受け、自らピアノを購入して音楽に挑み始めたエピソードを明かした。
久保田は地元・札幌から高校進学と同時に上京した経験を挙げ、多種多様な人との出会いを通じて自身が抱えていた悩みが解放され、現在の自分を形作る大きな一歩であったと振り返った。
原田は本作のために初めて髪を茶髪に染め、人前でのギター弾き語りに初挑戦した際の緊張感が今も心に残っていると語った。深水は、社会へ踏み出す第一歩として自らの意志で挑んだ人生初の受験体験を挙げた。隈本監督は幼少期に深く巨大に思えた市民プールが、成長後に訪れると小さく見えた体験を引き合いに出し、時間の経過とともに物事の見え方が変化する感覚の原点を語った。
全国公開へ向けたキャスト・監督からのメッセージ
舞台挨拶の締めくくりとして、登壇者それぞれから来場者へメッセージが送られた。
大倉は、変声期という誰もが通過する時期を描いた主人公に対し、身近な視点で寄り添って観てほしいと呼びかけた。久保田は、思春期に抱いた感情を思い起こしながら柔らかい時間を過ごしてほしいと語りかけた。
原田は、心にモヤモヤや悩みを抱える人が自分らしさを見つけるきっかけになればと願いを込めた。深水は、観客それぞれの受け止め方で作品を楽しんでほしいと伝えた。
最後に隈本監督は、スクリーンの中でキャスト陣がまるで街に実在しているかのように生き生きと表現された空気感と、成長ゆえに移り変わっていく少年たちの姿を心ゆくまで堪能してほしいと締めくくり、温かな拍手の中でイベントは終了した。

映画『はじまりのさよなら』
<ストーリー>
いつまでも子どもで、いつからか大人だった。
長沢樹太(大倉琉人)は、音楽教室を営む目の見えない母・花江(板谷由夏)のもとで、音楽とともに育った少年。美しい歌声を持つ樹太だっ たが、変声期を迎えたことで、自分の声だけでなく、これまで当たり前だった日常も少しずつ変わり始める。唯一心を許せる存在は、幼い頃 からいつも一緒に過ごしてきた親友・大也(原田琥之佑)。近所で喫茶店を営むケン(笠原秀幸)の店で語り合う時間は、樹太にとって何より 大切な居場所だった。しかし、樹太が胸の奥で抱いていた大也への淡い恋心は、大也が恋や将来へと歩み始めたことで行き場を失い、樹太 は言葉にできない孤独と喪失感を募らせていく。
大也との関係の変化、そして母との暮らしにも閉塞感を抱えた樹太は、幼い頃から母の話の中で憧れを抱いていた、会ったことのない父・ 雷太(深水元基)を訪ねて東京へ向かう。父から届いた荷物の送り状に記された住所を訪れると、そこは風俗店が入る雑居ビル。戸惑う樹 太の前に現れたのは、派手な装いの女性・舞奈(久保田紗友)。舞奈に導かれながら街を巡り、ついに父・雷太と再会を果たす。しかし、そこ で待っていたのは、母から聞かされてきた父の姿とはまったく異なる現実だった。
変わりゆく声、揺れ動く恋心、そして初めて知る家族の真実――。
いくつもの「はじまり」と「さよなら」に出会いながら、樹太はこれまで知らなかった世界と、自分自身の心に向き合っていく。
◆出演:
大倉琉人/久保田紗友 原田琥之佑/坂槇莉緒 梅山恋和 芹澤雛梨 渋谷龍太(SUPER BEAVER) 藤原”36 才”広明(SUPER BEAVER) 小川貴之(sumika) はっとり(マカロニえんぴつ) タカハシマイ(Checho No Republic) 木村浩大(SAKANAMON)
笠原秀幸 深水元基/板谷由夏
◆監督:隈本遼平
◆脚本:灯敦生
◆音楽:柳沢亮太(SUPER BEAVER) 河野圭
◆主題歌:「はじまりのさよなら」sumika(Sony Music Labels Inc.)
◆配給:TO ブックス
【制作プロダクション】AOI Pro.
【製作】映画「はじまりのさよなら」製作委員会
©2026 映画「はじまりのさよなら」製作委員会
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2026 年 11 月 20 日(金)kino cinéma 新宿ほか全国ロードショー