「第15回TAMA映画賞」授賞式 ダイジェスト

2023年11月25日、東京・パルテノン多摩大ホールにて「第15回TAMA映画賞」授賞式が開催。各賞の受賞者が登壇。喜びのコメントを語った。

■ 「第15回TAMA映画賞」受賞作品及び受賞者

【最優秀作品賞】(本年度最も活力溢れる作品の監督およびスタッフ・キャストに対し表彰
・『怪物』(是枝裕和監督及びスタッフ・キャスト一同)
・『雑魚どもよ、大志を抱け!』(足立紳監督及びスタッフ・キャスト一同)

【特別賞】(映画ファンを魅了した事象に対し表彰)
・宮崎駿監督及びスタッフ・キャスト一同(『君たちはどう生きるか』)
・上田誠氏、山口淳太監督はじめヨーロッパ企画及びスタッフ・キャスト一同(『リバー、流れないでよ』)

【最優秀男優賞】(本年度最も心に残った男優を表彰)
・佐藤浩市(『春に散る』『せかいのおきく』『仕掛け人・藤枝梅安2』『大名倒産』『キングダム運命の炎』『ファミリア』『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』)
・鈴木亮平(『エゴイスト』『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』)

【最優秀女優賞】(本年度最も心に残った女優を表彰)
・菊地凛子(『658km、陽子の旅』)
・黒木華(『せかいのおきく』『ヴィレッジ』『映画 イチケイのカラス』『ほつれる』、『マンホール』)

【最優秀新進監督賞】(本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活動をした新人監督を表彰)
・福永壮志監督(『山女』)
・金子由里奈監督(『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』)

【最優秀新進男優賞】(本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活動をした新人男優を表彰)
・目黒蓮(『わたしの幸せな結婚』『月の満ち欠け』)
・奥平大兼(『君は放課後インソムニア』『ヴィレッジ』『あつい胸さわぎ』『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』)

【最優秀新進女優賞】(本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活動をした新人女優を表彰)
・山田杏奈(『山女』)
・高石あかり(『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』『Single8』『セフレの品格 決意』『わたしの幸せな結婚』ほか)


▼最優秀新進監督賞

金子由里奈監督と福永壮志監督が、本年度最も飛躍した監督として、最優秀新進監督賞を受賞。

・金子由里奈監督(『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』)
金子監督は「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」で、大学のぬいぐるみサークルを舞台にしたヒューマンドラマを描いた。
金子監督は、原作者や映画関係者に感謝の言葉を述べ、生きづらい世の中だが、この物語は対話のきっかけになる力があると語った。

・福永壮志監督(『山女』)

福永監督は「山女」で、飢饉に見舞われた18世紀末の東北の女性の生き様を描いた。
福永監督は、海外での生活から帰国後に日本で初めて作った作品で賞をいただけて嬉しいと話し、民衆の言葉で語った物語や世界観を制作したと明かした。


▼最優秀新進女優賞

高石あかりと山田杏奈が受賞。高石は本年いくつもの作品でさまざまなキャラクターと演技を見せ、山田は時代劇「山女」で強い眼差しと観るものを圧倒する力を存分にみせた。

・髙石あかり
女優になることが夢だったと語り、「お芝居が大好き」だと感謝。アクションにも挑戦し、「楽しくアクションが出来ました」と振り返った。

髙石あかり

・山田杏奈

初の時代劇で「戦いながらの撮影」だったと述べ、「みなさんに届いていることを実感できてうれしい」と笑顔。山の中で自分の髪をとく場面が一番好きなシーンだと明かした。

山田杏奈

▼最優秀新進男優賞

奥平さんは、4作品に出演し、新人男優として飛躍した。その中で、「君は放課後インソムニア」は、原作の漫画の雰囲気を実写で再現した作品で、森七菜さんとダブル主演を務めた。
目黒蓮さんは「わたしの幸せな結婚」と「月の満ち欠け」に出演。現実世界とかけ離れたキャラクターを華やかに演じたことが評価された。

・奥平大兼
奥平さんは、作品の撮影に協力してくれた石川県七尾市や原作者の先生に感謝した。また、自分の性格に近い役や感じたことがない役にも挑戦したいと語った。
奥平さんは、若い力を借りて、今しかできない役を表現していきたいと意気込みを語った。

奥平大兼

・目黒蓮

目黒さんは「わたしの幸せな結婚」の塚原監督とのやりとりが人生を変えたと語った。塚原監督からリアルを大切にしてほしいと伝えられ、芝居経験が少ない時に出会えて幸せ。今後の出演作にもよい影響があると語った。

目黒蓮

▼特別賞

「リバー、流れないでよ」は、上田誠氏が原案と脚本を担当したSFコメディー作品。2分間のタイムリープに陥った人々がその原因を究明し、ループから抜け出すために奮闘する。上田氏は「素晴らしい映画がたくさんある中で(賞をいただき)光栄です」と喜んだ。

・上田誠氏、山口淳太監督はじめヨーロッパ企画及びスタッフ・キャスト一同
登壇者:上田誠、藤谷理子、永野宗典

舞台では、永野さんと藤谷さんが天をあおぎ、ガッツポーズをする場面も。

上田誠
藤谷理子
永野宗典

・宮崎駿監督及びスタッフ・キャスト一同
登壇者:野中晋輔(スタジオジブリ執行役員)

「君たちはどう生きるか」は、宮崎駿監督が10年ぶりに手がけた自伝的ファンタジー作品。構想に7年を費やし、手書きで描く手法でつくられた。宮崎監督のコメントを野中さんが代読。スタッフとキャストに感謝した。

野中晋輔(スタジオジブリ執行役員)

▼最優秀女優賞

・黒木華

黒木華さんは、時代劇「せかいのおきく」やドラマ「ヴィレッジ」「映画 イチケイのカラス」など、5本の作品に出演し、多彩な演技力を見せた。
黒木さんは、着物姿で授賞式に登壇し、10年前に最優秀新進女優賞を受賞したことを振り返り、感謝の気持ちを述べた。また、「せかいのおきく」の阪本順治監督からも祝福の言葉を受けた。
黒木さんは、今後も変わらずに目の前の仕事に一生懸命取り組んでいきたいと語った。彼女のさらなる活躍に期待が高まる。

黒木華

・菊地凛子

「658 km、陽子の旅」は、ひきこもりの女性がヒッチハイクで故郷に向かう感動のロードムービー。菊地凛子は主人公の陽子役を演じた。
菊地さんは、「映画は観客の皆さんの所へ旅していくもの。心の励みになりました」と感謝の言葉を述べた。また、監督との丁寧なやりとりや、海辺のシーンの印象などを語った。
菊地さんは、「今後も役を理解して行きたい。丁寧に真摯に向き合っていければ良いなと思っています」と語った。

菊地凛子

▼最優秀男優賞

・鈴木亮平

鈴木亮平は「エゴイスト」と「劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室」で主演を務めた。「エゴイスト」では、恋人とその母に献身的な愛を見せる役柄で、繊細で切ない演技を披露した。

鈴木さんは、「エゴイスト」の撮影は夢のような期間だったと語り、原作者の高山真さんに感謝しました。また、松永大司監督からも祝福の言葉を受けました。
鈴木さんは、「エゴイスト」は客観的に見られるまでに時間がかかると述べた。今後の抱負について、先輩方のすごさに感服した。役者道に恥じない俳優になっていきたい。鈴木の映画を見たいと思ってもらえる俳優になりたいと決意をあらたにした。

鈴木亮平
松永大司監督

・佐藤浩市

佐藤浩市は、今年公開されたジャンルや役柄にとらわれない多くの作品に出演した。その中で、渋さと若手俳優の魅力も引き出す手腕に高い評価を得た。

授賞式では、佐藤さんは共演者との思い出や感謝の言葉を語った。特に、「春に散る」でボクシングの師弟を演じた横浜流星と窪田正孝に対しては、準備期間から本番までの努力を称え、「引きの絵でもボクシングをやっているように見えた」と絶賛した。

佐藤さんは、多くの作品に出演する中で、出演の決め手は「人間関係」と明かした。前作と近い役は難しいということで、距離感がある方がやりやすいと語った。また、黒木華との共演を振り返り、若い俳優との共演は、数年後にまた会えることが楽しみだと笑顔を見せた。

今後の抱負については、一瞬間を置き、「やったことがない役」と答えた。40年以上のキャリアを持つ佐藤浩市だが、まだまだ挑戦する気持ちを忘れずにいることが伝わってきた。

佐藤浩市
佐藤浩市

▼最優秀作品賞

◆『雑魚どもよ、大志を抱け!』(足立紳監督及びスタッフ・キャスト一同)


登壇者:足立紳監督、田代輝、白石葵一、松藤史恩、岩田奏、蒼井旬、坂元愛登、(欠席:主演・池川侑希弥)
足立紳監督に、出演した少年たちから寄せ書きがサプライズで贈られた。寄せ書きを受け取った足立監督は思わず読みふけり、舞台挨拶後にじっくりと読むように促される場面も。
足立監督は「主演の池川侑希弥君はじめ、彼らが連れてきてくれたと思っています。本当にありがとう」と感謝の気持ちを述べた。

足立紳監督

◆『怪物』(是枝裕和監督及びスタッフ・キャスト一同)

登壇者:是枝裕和監督、黒川想矢、柊木陽太
是枝裕和監督の『怪物』最優秀作品賞を受賞。この作品は、世界中で高い評価を受けたヒューマンドラマ。主演の黒川想矢さんと柊木陽太さんは、10代前半という若さで見事な演技を披露しました。

是枝監督は、作品の出来について「キャストスタッフ全員の力が集まって出来上がっているもの。何より今隣にいる2人の役者さんに出会えたことが良かったです」と語った。
黒川さんと柊木さんも、この作品に携われたことに感謝の気持ちを表し、黒川さんは「こんな大きな舞台に立つことは想像していませんでした。出演させて頂けて感動しています」と言い、柊木さんは「大きな反響を頂いて改めて、すごい監督とキャスト、スタッフさんとこの作品に携わらせてもらえたことがうれしいです。これから悩むこともあると思いますが、この作品での経験を活かして、この仕事を続けて行きたい」と述べた。

この作品の音楽は、故・坂本龍一さんが手がけたもので、彼の劇伴としては最後の作品となった。是枝監督は、坂本さんからの手紙について「『全部を作曲する気力はないけれども、1、2曲浮かんだので作ってみます』と言われてうれしかった。元々映画の中に存在していたかのような音楽でした」と感想を語った。

是枝裕和監督


◆授賞式の模様は、TAMA映画祭 公式YouTubeにて視聴可

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