映画『水いらずの星』初日舞台挨拶。「映画の神様が降りた」

映画『水いらずの星』初日舞台挨拶。「映画の神様が降りた」

2023年11月24日(金)、新宿武蔵野館にて、映画『水いらずの星』が公開初日を迎えた。初日舞台挨拶が上映前に行われ、河野知美さん、梅田誠弘さん、滝沢涼子さん、越川道夫監督が登壇。本作撮影時を振り返った。

左から)滝沢涼子、梅田誠弘、河野知美、越川道夫監督

■ 映画『水いらずの星』初日舞台挨拶

越川道夫監督
今日は本当にどうもありがとうございます。
前に雑誌で、「“これで映画の仕事をするようになりました”という1本を挙げてください」といったことを聞かれたことがあるんですけど、僕は無いんですよ。無いんですけども、無い映画をね、妄想するのが好きなんですよね。
映画化されなかった原作とか、なんでもいいんですけど読んで、「こういうのがあったらいいよな…」って思うのが好きなんです。
『海辺の生と死』もそうだったんですけれど、『水いらずの星』も別に映画化するつもりがあって読み始めたわけではなくって、そういうふうに妄想して自分の心の中だけで上映する1本としてあったんですが、今日こういう形で映画が出来上がりまして、皆さんにご覧いただけることになりましたので、とても嬉しく思っております。今日はどうもありがとうございます。お楽しみください。


河野知美
本作の主演とプロデューサーをさせていただきました河野知美です。
今日は泣かないと決めているので、泣かないんですけれども…。
今日、こうやって皆さんと迎えられたことが本当に嬉しくて、新宿武蔵野館のスタッフの皆さんに毎日、応援していただいて、出会った皆様に、「頑張ってね」と言っていただいて、こうやって初日を迎えられて本当に嬉しいです。
感無量なので梅田さんに振ります。今日は本当にありがとうございました。


梅田誠弘
梅田誠弘と申します。自分もこの作品が公開されて見ていただけるということは本当に嬉しいの一言です。上映前なので、あまり詳しくは喋れませんけども、短い時間ですがよろしくお願いします。


滝沢涼子
皆様こんばんは。滝沢涼子と申します。
なぜ私がここに立っているのかなというぐらい、部外者な感じの私なんですけれども、皆さんも映画を観ていただいたら、「あれ?滝沢さんってどこに出てたのかな?」っていうぐらいで、わかっていただけると嬉しいんですけれども、ちょっとなんですけど、すごく嬉しかったんです。
映画らしい映画にすごく久しぶりに関わらせていただいて楽しかったので、皆さんがどう感じるかは観た方におまかせしますけれども、こういう映画がどんどん作られてみていただきたいと思う映画です。よろしくお願いいたします。


▼越川監督が映画化に踏み切った訳

-まずは越川監督にお聞きしたいと思います。先ほど、“『水いらずの星』も別に映画化するつもりがあって読み始めたわけではなくて、妄想して自分の心の中だけで上映する1本としてあった”という話がありましたが、この『水いらずの星』について、越川さんが原作の戯曲をどう思っていたのかだったりそこから踏ん切って映画にしようと思ったきっかけだったり、想いを伺ってもよろしいでしょうか?

越川道夫監督
映画化を絶対しないと決めていたわけでもないんですけど、河野さんからお話があった時に…(この場に)河野さんがいらっしゃるので(話をするのは)あれなんですけど、この人(河野さん)が活きるのが一番いいじゃないですか。素敵に見えるのが一番いいと思うんですけど、「それは何かな…」ということを散々考えて、そのときに…詳しくは観ていただくしかないわけですけど…『水いらずの星』はどう撮るか、舞台を僕は見ていて、あの戯曲を内田淳子さんからいただいていたりもしたので、これが良いんじゃないかっていうのが最初なんです。


『水いらずの星』っていうのがすごくいい松田正隆さんの戯曲のタイトルだと思うんですけど、わりと残酷な話ではあるんですが、皆さんが今から観ていただくわけですが、その“水いらず”っていうのがすごく大事な戯曲で、それはいろんな“水いらず”があるんですけれど、それが何とかみんなで作り得るといいなと思って作っていました。

-河野さんは元々、この戯曲はご存知だったんでしょうか?

河野知美
私は『水いらずの星』は知らなくて、松田正隆さんの『雨と日傘』の舞台は見たことがあったんですけれども、それ以外の戯曲の舞台は観たことがありませんでしたし、『水いらずの星』という作品があることも知りませんでした。

-越川さんから「これを映画にしないか」という提案をいただいたときの思いだったり、そのとき印象に残った気持ちはいかがですか?

河野知美
そもそも越川監督に映画を一緒に作らせていただけないかというお話をしたときに、今まで私が出演させていただいた作品ももちろん自分の中では特別なものなんですけれども、その中で表現できていない部分というのが見ての通りこういう面(ツラ)なので、その面の中にある内面というものをもっと女として表現できる作品をやりたいなっていうことを越川監督にお伝えしていたんです。
1年ぐらい経った後に越川監督が、私のこういう外づらと内面っていうものを成立させる役だと思うんだけどどうかなっていうふうにご提案いただいて、ずっと戯曲の台本を黙読で読み進めていたら、私が嗚咽を出しまくるくらい泣いたんですよね。
多分その一節に対して泣いたっていうのもあるかもしれないんですけど、やっぱり越川監督がどれだけのことを思ってこの役を私に与えてくれたのかなっていうこと、すごく考えてくださったんだなっていうのをすごく感じて、多分私はそのときに泣いたんだなと思うんですけど、すごく嬉しかったです。

▼戯曲から映画となった脚本を読んだ時の印象は?

-戯曲からの脚本も今回、越川監督が手がけられていますが、河野さんと梅田さんのお二方にお聞きしたいと思います。河野さんも梅田さんもあらためて出来上がってきた映画となったこの『水いらずの星』の脚本を読んだときの印象はお二方はいかがだったでしょうか?

梅田誠弘
脚本はわりと戯曲そのままで。

越川道夫監督
わりとっていうかほとんどそのままなんでね。

梅田誠弘
最初に読んだのは戯曲だったんですけど、最初に読ませてもらったときに、自分は地方出身というか鳥取県出身なので、その地方の土地の独特な雰囲気・人の雰囲気というものがあって、本を読んだらその土地にしかない、人と人の本当に独特な空気のまま、その時間のまま、脚本になっていて、それがいきなりスペクタクルな感じになっていくので、「なんだこの本は!?」と思って、すごいもんだなという印象はありました。

▼ボリュームのある会話劇

-かなりボリュームのある会話劇で、全編今回は長崎弁のセリフにもなりますが、セリフを覚えるのは大変だったんじゃないでしょうか?

梅田誠弘
自分で覚えた部分もありますけど、2人で話して、セリフを合わせながら覚えていったっていう感じはありますね。


▼演じたキャラクター、相手の印象

-今回の映画はカメラマンの上澤さんによる、河野さんと梅田さんが演じる女と男の過去を巡る写真というものが様々な形でSNS等に投稿されています。この劇場公開にかけて2人のこれまでの人生というものをより深く感じられるような企画が、今もまた続いております。
長い間男女、なかなかなキャラクターを演じたからこそもうそれぞれの役に対しての印象っていうものをまず河野さんから伺ってもよろしいでしょうか?

河野知美
女役に対しても、私は本当に不器用なタイプなので演じるということよりも何かに没頭するというか、そういうふうにしか演技ができないやつだなと、自分のことを思っているのであんまり語れないんですけど…。なので、梅田さんのことを話させていただいても大丈夫ですか?

梅田さんとは、まず2人で越川監督とリハーサルをする3ヶ月くらい前から2人で本読みをさせていただいて、すごくいつも引っ張っていただいて、こういうことをしてみようとか、例えば公園とかでいろんな人がいる中でセリフを言えるように2人で実験したりとかさせていただきました。
(梅田さんは)劇中のイメージとは多分違って、かなり先頭を切ってグイグイと行く方だったので、男役の側面も持ちつつも、しっかりされている方だなと思いました。

梅田誠弘
僕が引っ張ってってもらってたような…。

河野知美
いやいやそんなことないです。

© 2023松田正隆/屋号 河野知美 映画製作団体

-梅田さんはいかがでしたか?この女と男はかなり強烈なキャラクターと言っていいのか、表現が難しいキャラクターではありますが、あの役についてどうお考えになって演じられましたか。

梅田誠弘
最初、本を読んだときの印象というのもあるんですけど、セリフを2人で全部覚えて、何回も何回も繰り返してるうちに、その役としての印象はどこかへいってしまって、自分たちでやってる印象になってくるんです。
でも役としては、上澤さんが写真を撮ってくれている“昔の…いろいろ起こる前の何年も前の写真を撮っていただいて(いる写真)”…から時系列で物語を作っていく感じなので、作品を撮影する前に、だいぶ前にクランクインしたような気持ちにはなっていました。

2人とも大変な役ではあるので、その役が自分の中にずっとあるってことは、だんだんと重さというか苦しいなと、お互いに思ってはいたんですけど、そこから抜け出して、例えばもっと他の明るい映画とか楽しい方がいいなとか思いながら…。

越川道夫監督
今から観る人がいるからね(苦笑)

梅田誠弘
大丈夫です。この話は繋がるので。
それで、「楽しいのがいいな」と思いながら、ああいう役が自分の中にあったから楽しい気持ちになるのかなとか、そういう抜け出したい気持ちはあったんですけど、でも役としても、あまり言えないんですけど、役としても造船所で働いていたとか理想は持っている男なので、自分の現状から抜け出したい思いとしては、役の思いでもあったのかなという印象でした。個人的な意見ですけど。

© 2023松田正隆/屋号 河野知美 映画製作団体

▼滝沢さんの感想

-滝沢さんの演じられた役についてもこの後伺いたいと思うんですが、滝沢さんが完成した本編をご覧になったとき、この二人について、観終わった直後の感情がどういったものだったのか、この男と女2人をどう感じとりましたか。

滝沢涼子
これから観る方たちの前で、「私はこう思いました」って言っちゃってどうなのかなっていうのは、すごいありますけど、とにかく長いんですね。長い。長いんだよね。

越川道夫監督
短くしませんでしたからね。

滝沢涼子
長いんですけど、この『水いらずの星』の中に入っちゃってるような、この星があるんじゃないかなっていう、観る方に先入観を与えてはいけないと思うんですけど、昭和何年ぐらいにこんな星あったんじゃないぐらいの、その中に自分も入って抜け出たときに…。
私は渋谷で(試写を)観たんですけど、渋谷のホテル街みたいなところを帰りに歩きながら、「世の中って面白いことがまだありそうだな」っていうような気持ちになったんですよね。
映画ってこの作品に対して云々っていうのはあると思うんですけど、映画館を出たときに、明日から自分がまた違う自分に会えるかもとか、そういう感じをこの映画は持たせてくれるような気がするんです。
だから観る前の方にこんないろいろ情報をお話するのってすごいあれなんですけど、ぜひ観終わった後の皆さんのお顔がねどんな感じになってるのかすごく楽しみです。

ーそんな滝沢さんの演じる役がスナックのママですが、本編では、ただならぬ雰囲気を出しているようなシーンに登場してくる役どころになるのですが、実際の現場の空気感は、滝沢さんはどう感じられましたか?
短いシーンではあるのですが、ぞっとするシーンの登場になってくるとは思いますので、どういった形であのシーンを現場で作られたのかを越川監督からの演出で印象的だったことも踏まえてお伺いさせていただいてよろしいでしょうか?

© 2023松田正隆/屋号 河野知美 映画製作団体

滝沢涼子
越川監督は本当にあたたかくて、現場に入ると、すごい甘えたくなっちゃうんですよね。
だけど、すごく「お前はそれでいいのか、お前のやってることはそれでいいのか」っていうのが底辺にすごく流れていて、河野さんもすごく役に入られてたし、私もすごい飲まれてしまいまして、すごいゾクゾクしたというか、1日の撮影だったんですけど、ものすごく疲れたんですよね。
そのぐらい現場は濃い空気が流れていました。

▼現場で印象的なこと

-越川さんはいかがですか。今のお話を伺って現場の思い出というか、監督からこういうふうに現場の空気を作っていこうということだったり、現場で印象的なことがありましたらおきかせください。

越川道夫監督
あそこに助監督がいるので聞いていただいた方が良いんですけれど、戯曲ほとんどそのままなので、滝沢さんの部分だけが戯曲の前提になる部分だったりするので、滝沢さんの部分は逆にないんです。
その後はもうずっと、元々は二人芝居なので、端的に言えばその最初の戯曲を読んで、そのまま舞台に上げても成立するくらいに芝居を詰めておいて、現場に入ってなおかつそれを映画として撮るということを考えていたんですよね。
だから2人がいろいろ言っている関係があるんですけど、その奥にある本当のことっていうのをどうつかみ出せるかっていうことをずっと考えていたので、大体朝の8時ぐらいから始まるんですけど、朝の10時ぐらいまで回らないんです。カメラが。
そういう状態で、でも夜は寝たいんで終わりたいっていう、夜9時半ぐらいには終わりたいって思いながら、終わらない日もありましたけど…っていう中でずっと撮影した7日間…8日間でした。

▼皆様へのメッセージ

河野知美
改めまして本日は本当にご来場いただきましてありがとうございます。
私は本作の撮影のときに越川監督やスタッフの方が、「映画の神様が降りた」っていう言葉をおっしゃっていて、それは言葉にしなくても私も多分、勝手に思ってるんですけど、梅田さんもしっかり見ながらそのときに感じていた感覚があって、それがあの本編が出来上がったときに本当に映っているなって自信を持って言えるような作品になったので、もしよかったら、他の映画とは違うかもしれないですけど、そういう部分も感じていただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

梅田誠弘
いろいろな作り手の思いはあると思いますけれども、フラットに、あの松田さんと越川さんの世界観を楽しんでいただければと思います。今日はありがとうございます。

滝沢涼子
梅田さんと同じく、そんな感じでよろしくお願いいたします。

越川道夫監督
映っている人たちが、素敵であれば良いと思ってやってるんですけれども、そう思っていただくためには、やっている間は皆さんに、「これが終わったらもう役者辞めりゃいい」って思ってやってたんです。
でもまだやってたりするんで自分もまだまだだなと思ったりするのですが、もうできません・もうやめますというくらい、芝居に没頭できれば、おそらく素敵な2人の姿、滝沢さんも含めてですけど、映ってるんじゃないかというふうに思っておりますので、ぜひお楽しみいただければと思います。


■ 作品概要

映画『水いらずの星』

◆キャスト・スタッフ
河野知美 梅田誠弘 滝沢涼子

脚本・監督:越川道夫 原作:松田正隆 企画・プロデューサー:古山知美(河野知美)
音楽:宇波拓 撮影:髙野大樹 美術・装飾:平井淳郎 音響:川口陽一 編集:菊井貴繁
衣装:藤崎コウイチ ヘアメイク:薩日内麻由 特殊造形:百武朋 スチール:上澤友香 スチールヘアメイク:西村桜子
助監督:二宮崇 制作担当:藤原恵美子
製作:屋号 河野知美 映画製作団体/Ihr HERz Inc.
配給・宣伝:フルモテルモ/Ihr HERz Inc.  R15+
© 2023松田正隆/屋号 河野知美 映画製作団体
2023年/日本/164分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/DCP

映画公式HP:https://mizuirazu-movie.com
公式 X:@Mizuirazu_movie  公式Instagram:@mizuirazu_movie

2023年11月24日(金)より新宿武蔵野館、シネマート心斎橋他にて公開

水いらずの星
© 2023松田正隆/屋号 河野知美 映画製作団体

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