映画『カラフルな魔女』初日舞台挨拶。「角野さんは魔女、宮﨑さんは天女もしくはかぐや姫」

映画『カラフルな魔女』初日舞台挨拶。「角野さんは魔女、宮﨑さんは天女もしくはかぐや姫」

1月26日(金)角川シネマ有楽町にて、「魔女の宅急便」の作者として知られる、児童文学作家・角野栄子の日常に4年にわたって密着したドキュメンタリー映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』(KADOKAWA配給)の初日舞台挨拶が行われた。イベントには角野栄子と、本作でナレーションを務めた宮﨑あおい、宮川麻里奈監督が登壇し、4年に渡る密着取材の裏話やナレーション秘話、映画完成、お披露目の喜びをたっぷりと披露した。

角野栄子は鎌倉の自宅では自分で選んだ「いちご色」の壁や本棚に囲まれ、カラフルなファッションと個性的な眼鏡がトレードマーク。一方、5歳で母を亡くし戦争を経験。結婚後24歳でブラジルに渡り、35歳で作家デビューするなど、波乱万丈な人生を歩みながら、持ち前の冒険心と好奇心で幾多の苦難を乗り越えてきた。
“想像力こそ、人間が持つ一番の魔法”と語る角野栄子とはどういう人物なのか?88歳のキュートな“魔女”が、老いや衰えさえも逆手にとって今もなお、夢いっぱいな物語を生み出す秘訣とはー。

■ 映画『カラフルな魔女』初日舞台挨拶

▼お互いの初対面の印象

初対面の宮﨑の印象は「キュートでスマートな方」とニッコリの角野。宮崎は控室に入った瞬間に「児童文学作家の角野栄子さん、本物だ!」という衝撃があったと興奮気味に初対面の瞬間を振り返る。テレビ、映画とナレーションを務めてきた宮﨑は「お洋服はアイロンをかけるのかな、とか個人的に気になっていたことが(直接)訊けたのでうれしいです」と大満足といった様子。

▼素晴らしいナレーション!

宮﨑の起用理由を「さまざまな表現の全部ができるのは宮﨑さんしかいない、と思いました」と明かした宮川監督は、「映画のナレーションのアフレコで、第一声を聞いた時に鳥肌が立ちました。映画の主語は私たち制作者になっていて、(テレビ)番組とは主語が違うんです。でも、その説明をしなくても分かってくれたうえで読んでいただいて。“そういうふうに読んでいただきたかった!”と感じながら聞いていました。素晴らしいナレーション!」と大絶賛。

▼ラブレターを書いたことがあって…

テレビと映画では(ナレーションへの)意識の違いはあったという宮﨑は「今まで番組で観てきた角野さんへのラブレターのつもりで」と映画のアフレコ時の心境を説明。さらに「実は、角野さんにラブレターを書いたことがあって」と告白し、角野への“大好き”という気持ちを直接伝える機会がなかったので、手紙で伝える手段を選んだことを明かしていた。気になるラブレターの中身については「シンプルに“好きです”ということと、私は角野さんの喜んでいる表情が好きなので、そういうところがとても好きという思いを手紙にしました」と話した宮﨑。ラブレターを受け取った角野は「すごく字がお綺麗。最近は、パソコンなどを使うので字に気をつかわない方が多いけれど、すごく綺麗でびっくりしました」と宮﨑の書く文字を称賛。続けて「(手紙を)いただくとは思っていなかったので、それもびっくりしました」と二重の驚きだったと報告し、「身に余る光栄です」と感謝の言葉を伝えていた。

ラブレターは「小さなお子さんからも来ます。とても可愛いし、絵を描いてくださったりするので、そういうのはとてもうれしいですね」と微笑む角野。文字がたくさん書いてあるラブレターもたくさんもらうそうで「(本を)読んでくださっているんだな、とうれしく思います」とキュートな笑顔を見せていた。手紙を書くのが好きだという宮﨑は「角野さんに届くラブレターは、角野さんの本を読んで“ありがとう”の気持ちを伝えたい、でも、伝える術がないからお手紙にしようという衝動になるのだと思います」と分析。さらに手紙は自分にとって特別なものと付け加えた宮﨑は「読み返したくなるのは(メールより)お手紙。手書きのものから伝わってくるもの、便箋も選んでくれた思いが伝わってくるので」と、自筆の手紙への思いを明かしていた。

▼角野さんは晴れ女

宮川監督は映画の編集作業を振り返り「随分たくさんの映像を撮らせてもらったんだなと思いました。いいところだけ、素敵なところだけをつまんで作っていると訊かれることもあるけれど、そんなことはないんです。いつお会いしても本当に愉快で、ご機嫌が良くてこちらが楽しくなります」と角野の魅力を語り、「角野さんはものすごい晴れ女。4年の撮影期間中に雨の映像がまったくないんです。台風が2つ直撃している時も、撮影の間だけは雨が降らなくて。(撮影スタッフが)渋谷に帰ってくるとバケツをひっくり返したような大雨が降っていて…。やっぱり角野さんは魔女なんじゃないかなって思います(笑)」とコメント。唯一降ったのは映画のラストシーンだとし、貴重な雨の映像に注目してほしいとおすすめした。

▼宮﨑さんが想像する将来の姿

現在角野は89歳。宮﨑は、自身の89歳の姿を想像できるかという質問に「90歳の祖父母と一緒に旅行に行きたいと、誕生日にディズニーランドへ車椅子を使って連れ出したことがあって。でも、自分がその年齢になった時に、できるかなぁって。角野さんを見ていると、とても元気なので素敵な目標になるなぁと思いました」と回答。ものづくりが大好きなので「何かしらものづくりに関わっていたいと思います。自分の手を使って作った何かを誰かに届けたいです」と89歳への期待を言葉にしていた。

▼ワンポイントに「いちご色」で

イベントには「いちご色」をワンポイントにしたファッションで登壇した三人。角野は目立つ色を着ることについて「“えいやーっ!”という気持ちで着ちゃいます」と茶目っ気たっぷりに語り、「派手かなと思っても、もういいや、着ちゃおうって思っちゃう。あまり遠慮はしません!私に気づいた人から“角野さんですか?”って訊かれることは時々ありますが、大抵は、遠くからの会釈くらい。親しみを込めた会釈をもらうことがあります(笑)」と日頃のファンとの交流についても明かした。久しぶりにカラフルな洋服を身につけたという宮﨑は「気分が上がったので、(カラフルな色を選ぶことも)大事だなと思いました」とニコニコ。「すごくお似合いよ」との角野の言葉に、満面の笑みを浮かべた宮﨑は「しばらくはイチゴ色で行きたいと思います」と宣言する場面もあった。

▼質問「どんな魔女?」

タイトルにちなみ、自分はどんな魔女かという質問に角野は「さぁ?」と首をかしげつつ、「89歳なのでだいぶ魔力も落ちていると思います。でも、予感はするんです。今日は誰が来るとか、子どもの頃からそういう予感はあるんです」と自身の魔力を明かし、「今日は魔法をいっぱいかけますよ!」とノリノリでトークを展開。「私は“ポジティブな魔女”」と話した宮﨑は「物事を前向きにしか考えないタイプ。毎日ご機嫌に生活しています」と充実感を漂わせた。角野を魔女、宮﨑を天女、もしくはかぐや姫のようだとたとえた宮川監督は「私は魔女に憧れる普通の人間です」と即答し、会場の笑いを誘っていた。

▼撮影がひと段落して…

さらに「角野さんは撮影がひと段落して、もう撮られなくていいってせいせいしているはず(笑)」と角野の顔を覗き込んだ宮川監督が「スタッフが(撮影がなくて)寂しがっているんです。次回『カラフルな魔女2』はいかがでしょうか。撮影については帰りに相談させてください!」と角野の反応をうかがっていると、「家にはいつでもおにぎりとおみおつけはあるから、食べながらおしゃべりしましょう。この縁を大切にしてずっと仲良くしたいけれど、(撮影が)途中で止まっちゃったら困るでしょ?完結しなかったら困るでしょ?」と自身の年齢を気にする様子で答えた角野だったが、会場からの溢れんばかりの“続編への期待”の拍手を浴び、前向きな表情を見せていた。

▼また新しい扉が開いた

最後の挨拶で「素晴らしい映画を作っていただいた」と改めて感謝した角野は、「また新しい扉が開いたかなという気がして。何か楽しいことが起きるんじゃないかと期待しております」と今後の自身の生活に胸を躍らせながら「私の魔法にかかったつもりになって、楽しくご覧いただきたいと思います」とアピールし、笑顔いっぱいのイベントを締めくくった。


語り:宮﨑あおい 
監督:宮川麻里奈 音楽:藤倉大
プロデューサー:山田駿平 宣伝プロデューサー:大﨑かれん 編集部協力:岡山智子
ラインプロデューサー:松本智恵 撮影:髙野大樹 編集:荊尾明子 音響効果:河原久美子 監督補:岡澤千恵 
制作:NHKエンタープライズ 制作協力:角野栄子オフィス エネット 映像提供:NHK 製作・配給:KADOKAWA 
ⒸKADOKAWA

公式HP:https://movies.kadokawa.co.jp/majo_kadono 
X(旧Twitter):@majo_movie  Instagram:@majo_movie

2024月1月26日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー

カラフルな魔女

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