文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2023」合評上映会 西ヶ谷寿一スーパーバイザー総評

文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2023」合評上映会 西ヶ谷寿一スーパーバイザー総評

2024年3月7日、文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト 2023」合評上映会が開催され、選ばれた4人の監督の短編映画が上映。作品ごとに監督とキャストが登壇し、舞台挨拶を行った。本記事では、西ヶ谷寿一スーパーバイザーによる4作品の総評を取り上げる。

■ 文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2023」合評上映会 総評

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総評は、「ndjc 若手映画作家育成プロジェクト2023」西ヶ谷寿一スーパーバイザーから発表。

▼城真也監督『明るいニュース』

城 真也監督プロフィール
1993年 ドイツ・ミュンヘン生まれ、東京育ち。
早稲田大学文化構想学部卒業。映画美学校フィクションコース19期修了。2017年『さようなら、ごくろうさん』、2019 年『アボカドの固さ』がぴあフィルムフェスティバルに入選。ユーロスペース他にて、自主配給での劇場公開を果たす。

西ヶ谷寿一スーパーバイザー
今回4作品、脚本を提出していただいた中から選んだんですけども、脚本通りに、割と行ったものとそうでないものが結構わかれてます。わかれてる中で、城さんの作品を選ぶときに、「これはどこに行き着くんだろうな」ってすごく思ったんですね。

それは最後の最後ですごく悩んでやることだなと思った中で、一つ今日舞台挨拶を見ながら思ったのが、やっぱり主演の篠原君を設定したことでかなり作品のカラーが決まったのかなと思いました。

後でまたいろいろ聞かせてもらえればと思うんですけど、そんな中で多分僕らがみていた脚本から、プロダクションに渡っていろいろな作品が、プロデューサー、スタッフ共々切磋琢磨して、それから撮影にはまるようにいろんなことを計算して作った中で、こういう取捨選択をしたんだなっていうところで、それから僕は現場に1日お邪魔させてもらったときに、すごくいい顔をしていたので、明るい顔をしていた通りの出来になったと思っています。

元々の台本からどれだけ変わったのかっていうのはあとで自分でいろいろ見て、その差異とか、それから感想をいろいろ人に聞いて今後の映画制作に生かしてもらったらと思います。


▼野田麗未監督『光はどこにある』

野田麗未監督プロフィール:
神奈川県生まれ。
看護師として4年間勤務後、映像業界へ転向。
UTB映像アカデミー(現TMS東京映画映像学校)卒業後、複数の制作会社で制作部を経験しフリーランスへ。
映画やドラマの助監督として経験を積みながら、自主制作等を進める。
監督した短編映画『紡ぐ』が第19回中之島映画祭入賞。

西ヶ谷寿一スーパーバイザー
もう野田さんは多分、思いをですね、とにかく映画に収めきれるかっていうことだと思ってました。セレクションのときにも、本当にこの企画に関する思いってのはすごくあるんで、尺的なものと、それから制作の日程的なものの中で、全部それが収めきれるかなっていう中でいくと本当によくやったなと思っています。

後でちょっと言い忘れちゃいけないんですけど今回ご協力いただいたプロダクション、プロデューサーの皆さん、本当にありがとうございます。

今回作品を拝見しまして、監督の個性はもちろんなんですけども、プロダクション、それからプロデューサーの個性がすごく発揮されたなと思ってます。その中で野田さんは非常に自分の、このあふれる想いっていうものをうまく演出できたんじゃないかなと思っています。

お母さんである鷲尾さんが入ってきてから、皆ががっとのびだすところがすごく良かったです。


▼山本十雄馬監督『勝手口の少女』

山本十雄馬監督プロフィール
1989年 富山県生まれ。信州大学大学院理工学系研究科建築学専攻修了。建築系出版社を退職後、映画美学校フィクションコース21期に入学し、映画制作の基本を学ぶ。修了制作の短編『灰の蛇』が西東京市民映画祭自主制作映画コンペティションにて、優秀作品賞を受賞。

西ヶ谷寿一スーパーバイザー
山本くんも当初から脚本がすごく変わったうちの一つだったんですけれども、とにかくご自身でもわかってらっしゃると思うんですけども、幽霊だったりタイムトラベルだったり、幻的なものだったりとか、かなり状況的にはカオスな設定になっています。

そのカオスがどうなるかというと、やっぱりこれは本当に監督の個性そのものなんですけど、カオスを抱えたままなんか落ち着いてる感じがすごくって、舞台挨拶を聞いていてもすごくそうだなと思ったんですけど。

そこにさらにやっぱり縛られている、そこから、ループから抜け出せるかっていうドラマとなっていて、かなりまだ、やっていきながら発見した面白いアイテムがたくさんあるので、また今後長編とかに活かせるんじゃないかなと観ていて思いました。

今回の感想を聞きながらまた新しいチャレンジをしてもらえればと思います。


▼西口洸監督『恋は真っ赤に燃えて』

西口洸監督プロフィール:
1995年 大阪府生まれ。
大阪芸術大学映像学科卒業。卒業制作『ED あるいは(君がもたらす予期せぬ勃起)』が、うえだ城下町映画祭審査員特別賞、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018オフシアター・コンペティショングランプリ、沖縄国際映画祭U-25審査員特別賞受賞。監督作に『性春まみれ』等。

西ヶ谷寿一スーパーバイザー
もうこれは本当に、「西口洸はこういう人だな」っていう形の作品だったと思います。本当にある意味で青春映画の解体ショーを見てるみたいな感じがありまして、やっぱりいたずらごころだったりとかそれから反抗心だとか、こういったもの塊みたいなものをすごく見せてもらいました。

本当にどこを切っても多分西口くんがやりたかったことってのはすごい出ていまして、それがちゃんとある種のフォーマットから完全にハズレるんじゃなくて、その中で崩していくっていう、西口くんらしいアプローチの仕方があるので、すごく楽しませてもらいました。ありがとうございます。

最後にタコをずっと見たときにはどうなるんだろうと思ったんですけど。初号のときに。
こういったところを絶対外さないっていうのが西口君かなと思いました。


▼まとめ

西ヶ谷寿一スーパーバイザー
以上、4作品にざっと簡単に感想を言わせていただきました。最後にちょっと一つ言っておきますと、映画、特に映画監督っていうのはもう1人じゃできない作業です。

何をやるにしても機会とお金が必要になってくる。その中でこんな企画っていいますか、こういった機会を与えていただけるのはすごくありがたいことだと思います

監督、ディレクターといいますかディレクションというのは本当に人がやることを指す王道になります。映画はやっぱりムービーといっているぐらいなんで、まず自分が動いて…といった中で、人の心を動かして、さらに現場を動かして、最終的に出来上がったものが、人の心を動かせるようなものに、作るための機会の第一歩を踏み出したと思ってますんで、これからも皆さん頑張ってください。


ndjc(New Directions in Japanese Cinema):若手映画作家育成プロジェクト www.vipo-ndjc.jp とは


優れた若手映画作家を公募し、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップや製作実地研修を実施すると同時に、作品発表の場を提供することで、次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指している。
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