伊東蒼

第35回TAMA映画祭 伊東蒼、大九明子監督と語る 観客の心掴む「さっちゃん」告白シーン秘話

第35回 映画祭 TAMA CINEMA FORUMにて、映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』で特別賞を受賞した同作の監督・脚本を務めた大九明子監督と俳優の伊東蒼によるトークイベント「観客の心を掴んで離さない 俳優・伊東蒼の魅力」が、11月23日、ヴィータホールで行われました。イベントは、伊東さん出演の『大きな玉ねぎの下で』と『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の2作品上映後に開催され、司会は映画パーソナリティの伊藤さとりが務めた。

© TAMA映画フォーラム実行委員会

■ 観客の心を掴んで離さない 俳優・伊東蒼の魅力

感動の再会と特別賞受賞の喜び

満員の観客を前に登壇した伊東蒼さんは、「こんなたくさんの方にこうして来ていただけるなんて思っていなくてすごく嬉しい」と述べ、「こんな景色を見せていただける日が来るなんて夢にも思わなかった」と、感極まり涙ぐむ場面があった。伊東さんは、「この光景は今後も自身が頑張っていく中で必ず思い出す景色になるだろうな」と語り、この経験を与えてくれた作品に感謝の気持ちでいっぱいだと述べた。

大九明子監督は、自身も伊東さんのファンであるとし、今回一緒に話せることをとても嬉しく思っていると語った。監督は、伊東さんの涙を見て「だいぶ満足して、もう今日はこれで終わりでいいんじゃないかと感じるほど感激した」と明かしました。

今回、第35回 TAMA CINEMA FORUMにおいて『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は特別賞を受賞。大九監督は、「この特別賞は作品全体、キャスト、スタッフ全員に贈られる賞であるため、すごく感慨深く嬉しかった」とコメントした。伊東さんは、公開からしばらく経った今でも、初めて会う人から「これを見た」と言われることが多く、改めてこの作品に携われたことを公開を終えてからも感じ続けていると語った。

長回し告白シーンの裏側と役者としての信頼

伊藤さとりさんは、観客の心に強く残った伊東さん演じる「さっちゃん」の告白シーンについて、「演技がうまい人じゃなきゃ、あの長回しはきつい」と述べ、伊東さんの演技力を高く評価した。この告白シーンは尺が約10分にも及び、ほぼカットを変えずに撮影されている。

伊東さんは、台本を受け取った際、長ゼリフの多さに驚いたものの、読み進めると、さっちゃんとして小西君に「伝えたいこと」が全て台本にあったため、むしろ嬉しかったと振り返った。そのため、「自分の言いやすい言葉に変えちゃったりしないで、しっかり台本通り、原作通りの言葉で言いたいと思った」という。長ゼリフの部分は2回撮影されたものの、基本的に撮影は「1発でドンドン」と進められたとのこと。

この長ゼリフのシーンでさっちゃんが抱いていた感情について問われると、伊東さんは「本当にシンプルに小西君に振られたくない一心」だったと明かしました。さっちゃんは、好きな人に気持ちを伝えることが「すごく苦しい」と感じながらも、「こんなに仲良くならなかったら良かったかも」というセリフにあるように、親友でいる関係が終わってしまうことを恐れる複雑な苦しさが混ざり合っていたと述べた。

役作りと監督が評価する「透明感」

大九監督は、伊東さんの印象について、「すごく大人、フラットで、普段は元気の良し悪しが見えにくいが、カメラの前に立つと、いるだけでいろんなものが透けて見えてくるようなパワーを持っており、演出する側が泣けてきちゃうほどの力がある」と語った。

伊東さんが出演したもう一つの作品『大きな玉ねぎの下で』では、病弱な京子役を演じました。伊東さんは、共演した瀧七海さんが同い年だったことが非常に嬉しかったと述べ、役作りにおいては、監督から「昭和感」を出すよう要望があったため、当時の映像を調べ、話すスピードや感情を大げさかと思うくらい出すことを意識して演じたと明かした。

© TAMA映画フォーラム実行委員会

また、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の冒頭で披露されるエレキギターの演奏について、伊東さんは高校時代にギター部であったものの、エレキギターの練習は撮影前に集中的に行った期間が一番真面目にギターをやった時期だったと述べた。大九監督は、伊東さんがクラシックギターの経験があるという情報を得たため、当初予定していたバンド演奏に加え、クラシックギターで「月の光」も演奏してもらうことを決めたという。伊東さんは、劇中で私物であるクラシックギターを使用できたため、「普段の役作りとはまた違ったところからアプローチができてすごく楽しかった」と語った。

質問と回答:少女と女性のボーダーライン

観客から、俳優として「少女と女性の境界(ボーダーライン)」をどのように捉えているかという質問が寄せられた。

伊東さんは、この問いに対し「あまり考えたことがなくて難しい」と考えこんだところで、大九監督は、本人には自覚がないかもしれないが、観客は俳優の肉体を通してそのボーダーラインを「鑑賞させてもらっている」のだという見解を示しました。

伊東さんは、20歳になり年下との共演が増えた経験から、これまでの現場で「こども子ども」として扱われるのではなく、「一人の人間として意見を尊重されてきたから今の自分がある」と述べた。そして、『「この人に相談してみたい」「頼れるな」と思われるような大人になっていきたい』と、今後の目標を語った。

周囲の人々からかけられた言葉や、その存在によって印象に残っていること

伊東さんは、現在の事務所の先輩である安藤サクラさんと山田真歩さんと一緒に仕事をした経験があり、このお二人が事務所に入りたいと思うきっかけになったと述べている。お二人だけではなく、事務所の先輩方や、スクリーンやテレビ、舞台などで活躍する皆さんの姿は、伊東さんにとっての「一つのエンジン」になっており、「こんなにかっこいい人たちと自分が同じ事務所にいるっていうだけで、すごく頑張らなきゃって思わせてもらえる」存在であり、「皆さんの存在は大きい」と語った

© TAMA映画フォーラム実行委員会

伊東さんは、自身が演じている中で「本番の中で急に生まれてきてしまう感情」があり、それを現場で出してしまうことがあると述べた。そのような行動に対し、「やりづらいって思わせてるだろうな」と思うことがあるという。
しかし、その急に生まれた感情を含めて受け止めてくださる皆さんの姿に、伊東さんは非常に救われていると感じているとのこと。
また、「皆さんの感想をいただけることもすごく大きく」、観客や周囲の人々が「そんなところまで見てくださってるんだな」といつも思うことが、伊東さんにとって、「難しいって思った時にも、きっとこれを楽しんで受け止めてくださる皆さんがいる」と思うと、それが頑張れる理由になっている、「そういう皆さんがいるから私はのびのびとやれている」と語った。

今後の活動について

伊東さんは、現在の事務所の先輩である安藤サクラさんと山田真歩さんと一緒に仕事をした経験があり、このお二人が事務所に入りたいと思うきっかけになったと述べている。お二人だけではなく、事務所の先輩方や、スクリーンやテレビ、舞台などで活躍する皆さんの姿は、伊東さんにとっての「一つのエンジン」になっており、「こんなにかっこいい人たちと自分が同じ事務所にいるっていうだけで、すごく頑張らなきゃって思わせてもらえる」存在であり、「皆さんの存在は大きい」と語っている。
また、

伊東蒼さんは、今後の活動予定として、2026年1月1日に公開予定の長編アニメーション映画『迷宮のしおり』で、自身初の声優に挑戦したことを報告した。伊東さんは、「映像でやるような役とは全然違う役になっています」と述べ、正月のお供にしてほしいと呼びかけた。

大九明子監督は、現在編集中の、永作博美主演の映画『あきらめません!』の制作に取り組んでいると語った。

© TAMA映画フォーラム実行委員会

この記事を書いた人 Wrote this article

Hajime Minamoto

TOP