大事なことはパートナーときちんと話し合うこと。『マイライフ、ママライフ』亀山睦実監督

大事なことはパートナーときちんと話し合うこと。『マイライフ、ママライフ』亀山睦実監督

4月1日(金)より渋谷HUMAXシネマにて、映画『マイライフ、ママライフ』が公開。
本作は仕事と子育ての両立で悩む女性たちの経験談を入念にリサーチし、ひとりで悩みを抱え込んでしまうワーキングマザー、仕事に夢中で妊娠に前向きになれない女性を平成元年生まれの亀山睦実監督が描き、監督と同世代の鉢嶺杏奈、尾花貴絵などの俳優たちが等身大で今を生きる女性を演じた作品。
夫役には水野勝、池田良のほか、柳英里紗、中田クルミなど個性的な面々が肩を並べている。
脚本監修には狗飼恭子(『風の電話』)が参加。現代女性がもつ<生き方>の悩みや、夫との子育てをめぐる軋轢などをリアルに描いている。第14回田辺・弁慶映画祭では観客賞を受賞。ジェンダーギャップ指数120位※の日本の現実を描く。

マイライフ、ママライフ
亀山睦実監督


今回、亀山睦実監督にお時間をいただき、本作制作の経緯や撮影時のエピソードについてたっぷりと語っていただきました。※参考:世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2021」を公表
( https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html )

■映画『マイライフ、ママライフ』

【STORY】
結婚から3年、大内綾(30)は仕事に熱中する日々を送っていた。夫・健太郎から「そろそろ子どもが欲しい」と言われるが、綾は妊娠・出産に勇気が持てない。ある日、綾は仕事で、子どもを持たない夫婦が子どものいる家庭を体験する『家族留学』のイベント運営を任される。2人の子どもを育てながら働く三島沙織(30)の家庭に体験に行くが、綾は生活のためには「本当にやりたい仕事」を諦め事務職で働く沙織の気持ちが理解出来ず傷つけてしまう。一方の沙織も、夫からの家事育児の協力が得られず不満が積もる日々を送っていて…。

■ 映画『マイライフ、ママライフ』 亀山睦実監督インタビュー

映画『マイライフ、ママライフ』の公開を前に、亀山睦実監督が毎日行っている『マイライフ、ママライフ』上映日までのカウントダウンツイートに関して、深堀りして質問させていただきました。

▼映画制作プロジェクトとしての3つの案

-『マイライフ、ママライフ』の撮影にあたり、当初、本作を含めて3つのプロジェクトがあったそうですが、他の2つはどういったストーリーだったのでしょうか?

亀山睦実監督
1つは、私には美容師の友達がいたので、美容師さんの卵である専門学校生・美容学生さんの話です。『ちはやふる』のような青春ものをイメージして書いていました。
もう一つは、予備校の話です。この2つの企画は10代から20代前半がターゲットの青春モノの話になります。
予備校の話も『ドラゴン桜』とはまた違うんですけれど、『ビリギャル』に近いといえばよいでしょうか、東大受験を目指す女の子が主人公の話でした。

-今回の『マイライフ、ママライフ』とは、まったく毛色が違うお話なんですね。

亀山睦実監督
全然違いました。3つのお話を考えていった中で、「実現させられそうだね」って一番進んでいったのが今回の『マイライフ、ママライフ』でした。

マイライフ、ママライフ

▼企画のはじまり

-今回の撮影にあたっては、プロデューサーからの話をもちかけられたことがきっかけになっているそうですが、どういった経緯だったのでしょうか?

亀山睦実監督
最初にプロデューサーの方から、「若手の監督によるオリジナルの話で映画を作りたい」という話を持ちかけられました。そのご相談をいただいた後に、予備校・東大受験の話はプロデューサーの方から「こういうのもいいんじゃないか?」っていただいた1案を、もうちょっとブラッシュアップして練ったものだったんです。
美容学生さんの話は私の知り合いにリサーチをして出したお話です。
今回の『マイライフ、ママライフ』は、私が平成元年生まれなので、平成世代の映画みたいなものを1本残しておきたいと思ったことが理由です。それをちょうど平成から令和に変わるタイミングで思いつきました。
世代の象徴みたいなお話を作りたいと思った時に、身の回りの女性たちの生きづらさや、日々の働くお母さんたちのワンオペ(ワンマン・オペレーション)がつらいといった愚痴などを見ていて、「これを物語に残すのはありなんじゃないかな」と思って始めたところが背景としてあります。

-子育てを経験した私にとっても、育児中に観たかった映画だと思いました。見覚えや心当たりがあることばかりでした。

亀山睦実監督
「あの時の自分に観せたい」っていうやつですね。

▼当初の主人公は3人

-初期段階では、主人公が3人だったとのことで、綾と沙織に加えて”響子”という登場人物について書かれていました。
完成した作品では描かれなかった3人目の主人公について教えて下さい。

亀山睦実監督
3人目はしっかりプロットに深堀して落とし込む前に主人公を綾と沙織の二人に決めてしまったので、そこまでは広げられていなかったのですが、“自分がやりたいことを結局選ぶキャラクター”としてイメージしていたと思います。
このお話の中に出ていた主人公たちの年齢っていうのは、社会のバイアスから「結婚した方がいいんじゃないか」と、そういうことを考える時期なんですよね。
それを“周りのため”とか“社会に馴染むため”に自分をそこに押し込めて、結婚だとか妊娠・出産だとかっていう、自身にとって取るべきではない選択肢を取ってしまう人も中にはいるのかなと思いました。
ただ、響子にはそういう選択肢はとって欲しくないと思っていたので、きちんと3人目も描くんだとしたら、そういうゴールになったんじゃないかなと思います。

-その物語も観てみたいですね。

亀山睦実監督
是非、スピンオフで。(制作依頼の)お話をお待ちしております(笑)

▼もう一度会って、聴いてみたいこと。

-作品づくりにあたって、たくさんのリサーチをされたと思います。その時から数年経って、時代も変わっていく中で、お話をうかがった皆さんにもう一度話を聴くとしたら、どんなことを聴きたいですか?

亀山睦実監督
あの時に私はシンプルに、物語のアイディアを拾うためにお話を伺っていたんですけど、彼女たち自身の中にも「もうちょっとこうしたらよかったんじゃないか」みたいな、後悔というか、「他に方法はあったんじゃないか」っていう思いがある人たちが何人かいらっしゃいました。
そういった方たちが、“その後のプライベートの中で何か変化があったのかどうか”というのを聞いてみたいですね。

-興味深いですね。現在、満足しているのか、それともやはりこうしたい・こうすればよかったという思いを持ち続けているのか。

亀山睦実監督
私が『マイライフ、ママライフ』を作っていて、「物語を作っているとこういうこともあるんだな」って一番印象的だったのは、二人の主人公の一人、子どもを育てながら働くお母さん・沙織役をされていた鉢嶺さんのことです。
撮影前はご結婚前だったのですが、撮影を終えた頃にご結婚が発表されて、今なんとお子さんがいらして。

-昨年秋にテアトル新宿で行われた田辺・弁慶映画祭セレクションでお話されていた件ですね。

亀山睦実監督
はい。劇場にはいらっしゃらなかったんですけれど、鉢嶺さんがお手紙をくださったんです。
彼女曰く、『マイライフ、ママライフ』の役作りの中で、夫役の池田良さんの実際にお子さんがいるご家庭に行って、沙織役の鉢嶺さん自身も家族留学のような体験をしたことによって、自分の人生の見え方が変わったっていうお話がありました。こうやって人の人生が変わることもあるんだなっていうことにすごい感動したんですよね。その話を聞いたときは本当に嬉しかったです。

マイライフ、ママライフ

▼亀山監督が考える「平成生まれの人たち」とはどんな人たち?

-監督が平成生まれということもあり、本作を制作するにあたって「平成生まれとはどんな人たちなのか」というのを掘り下げて考えたと思うのですが、あらためて平成生まれの人たちとはどんな人たちだと考えますか?

亀山睦実監督
過渡期にいた人たちだなというのをすごく思います。
時代柄、あまりポジティブな時間を過ごしてこなかったので、“諦めやすい・自分を押し込めみやすい”のかなと思うところがあります。
彼ら自身・私達自身が、「もっとこうしたい」とか、「こうあるべきなんじゃないか」と思っていることはずっとあるんですけれど、それをなかなか外に出しづらいというか、「それを言っても結局変わらないしな…」みたいな、政治のような話になってしまうんですけど、諦めているところがあるんじゃないかなって思っています。
世の中のニュース自体も明るくないものが全体としては多かったなという印象があります。そんな中でも自分たちの環境を良くしたいと思っている人は確実に着実にいて、そういう人たちが大人になって力を持ち始めて、立場を持ち始めているので、私がこうやって映画を撮ったみたいに、「なにかしら変えられることはあるんじゃないかな。」、「届けられる声はあるんだろうな」って今、思い始めています。

-30代になると実力もついて、自ら若い頃にできなかった夢を実現するための動きや活動をできるようになりますよね。

▼脚本監修に狗飼恭子さんが入られていますが、覚えている感想やエピソードなどは?

-今回、脚本監修に狗飼さんが入られていて、狗飼さんがインタビューの中で、「私は感想を述べるだけで、そんなに意見はしなかった」といった書き方をされていました。お二人のやりとりの中で、覚えている狗飼さんの感想や作品に影響したエピソードなどをお聴かせください。

亀山睦実監督
基本的にはものすごく肯定的に物語を見ていただけたという印象が強いです。
クライマックスのシーンの話になってしまうのですが、綾と健太郎が“この先、自分たちの人生をどうする?”みたいな話をする時に、健太郎がある提案をするんですが、“こういうふうな考え方があってもいいんじゃないか?”みたいなアドバイスを狗飼さんからいただきまして、そこに一つのアイディアをいただいたというのが個人的には結構印象的です。
私は大学が日大の芸術学部だったんですけれど、狗飼さんが大学の先生のように感じました。大学のシナリオの授業では自分シナリオが添削されて、「もっとこうした方がいい」っていうアドバイスをいただくんですけれど、それを受けているのに近い感覚でした。
かつ、脚本の直しも2週間に一度直接お会いしてミーティングして…みたいな形だったので、本当に大学の課題提出をするみたいな感覚で書いていました。

-それは緊張しますね。

亀山睦実監督
脚本の初稿を書くまでに、プロットの段階で1年間ぐらい時間をかけて書いていたんです。その時も狗飼さんに確認していただく前に「すいません、ちょっと今回あんまりうまく書けてないです…」みたいなのを正直に話していました。
本当に緊張しましたね。「もう駄目なら駄目で、でもどうしたらいいかの話し合いは狗飼さんとちゃんとしよう」って学生気分で狗飼さんとのミーティングに行っていましたね。

マイライフ、ママライフ

▼脚本は何稿まで?

-脚本は何稿まで書き直したのでしょうか?

亀山睦実監督
プロットで結構練っていたので、そんなに脚本は何度も直したりにはなりませんでした。後日、この話をどこかで出すと思うんですけど、最終的に8稿まで書いて、なぜか撮影稿第3稿までありました。だから8+3で11稿相当ですかね。
本当は撮影稿にしたら、それが最終のはずなんですけど、なぜか撮影稿が3までありました。
撮影始まった後に書き換わっていくところが差し込みっていうんですけど、その差し込みが6、7シーンぐらいありました。
やっぱり撮って行くと時間の制約の中で「あ、ここできない」となって変えたりとか、実際にロケ場所に行って、「え、ここおかしい」となって変えたりとか、そういうことも発生するので、そこはよくある話だとは思うんですけれども。

▼タイトルの決定について

-映画のタイトルについて、普段は、いつ、どのように行っていますか?

亀山睦実監督
私の記憶では比較的撮影直前に決めていた記憶があったんですけど、Twitterによく載せているEvernoteの記憶を見たら、夏・8月ぐらいに決めていたらしいんです。
その理由をちょっと忘れてしまったんですけど、多分、制作のリリースを出すタイミングで決めたと思います。

-クラウドファンディングの発表が9月で、その時にはタイトルが掲載されていました。

亀山睦実監督
そうです。そのために多分決めたんだと思います。
私とプロデューサーともう1人の女性のプロデューサーの方と3人で、お互いに20個ずつぐらいの案を持ってきて、ホワイトボードに全部並べて、「いや、これはないね」っていうのを消していって、決めたような気がします。
10個ぐらい残った中にいたのが『マイライフ、ママライフ』でその『マイライフ、ママライフ』が、実はその女性のプロデューサーの方が持ってきてくださった案だったんですよ。
だから私があのTwitterに載っけていたダサすぎるタイトルは全部なくなったやつです。
ボツ案です。あの中のどれかにならなくてよかったですね。『マイライフ、ママライフ』でよかったです。

-タイトル付けは苦手ですか?

亀山睦実監督
いいえ、そんなことはないんですけれど、元々、タイトルを決めずにずっとプロットを考えていて、脚本のタイトルを決めずに書きはじめてしまったので、なので客観的にプロデューサーからタイトルを出していただけてよかったなと思っています。「いや、わかんないな…」ってなっちゃうんですよね。

▼脚本の執筆場所。カプセルホテルの話

-脚本執筆の時を振り返ってカプセルホテルの話をされていました。宿泊施設というと、人間観察や、利用時のエピソードみたいなものがあるのではないかと思うのですが、エピソードはありますか?

亀山睦実監督
ちょうど、平成から令和になる瞬間のゴールデンウィークのときに、「もうこのゴールデンウィークの期間を使って初稿を上げないと、多分一生上がらないな」みたいなプレッシャーを自分でも感じていました。 家で書くとなるとやっぱりだらけちゃうじゃないですか(笑)。なので、よく物を書く方は泊まり込みで書かれるらしいという情報を手に入れて、「それを私もやってみよう」と思いました。
ただ、普通のホテルに泊まるとやっぱりお値段が高いので、たまたまその時期に、よくカプセルホテルや安めのおしゃれなホテルに泊まることが趣味の友人がいまして、その子から「“9hours”という女性でも泊まりやすいカプセルホテルがあるよ」と聞いて、しかもそこに作業ができる机もあるらしいということで、「これだ!」と思って、その浅草のカプセルホテルに泊まり込んで、
ゴールデンウィークの10日間ある中の前半4泊くらいで書き上げました。

-そのホテルはもう無いそうですね。

亀山睦実監督
そうなんですよ。外国の方が多くいらしていた場所だったので、カプセルホテルだと場所の性質的に、このコロナ禍でなくなってしまったようです。
ただ、毎朝朝食をとっていた1階のフグレンというコーヒー屋さんはまだ残っています。カプセルホテルは、浅草店はなくなってしまいました。

-不思議なデザインの建物自体は残っているそうですね。

亀山睦実監督
そうなんですよ。なんか飛行機のコックピットっぽいデザインで、少し宇宙感があるという。

▼ロケハンと三島家の決定が難航した話

-ロケハンの話について、特に三島家、沙織さん家探しが難航したそうですが、その難航した話を教えて下さい。

亀山睦実監督
まず、家を決めないとこの話は具体的に終わらないと思いました。脚本の1稿が上がったところでロケ地リストというか、全体香盤、お話の中全体にどういうシーンがあって、どういう人がどれぐらい出てみたいな情報を洗い出すんですけれど、それをしてからロケハン・ロケ地探しを始めました。
三島さんの家は、三島家がどういう家なのかというのを台本上では結構イメージしていたんですけど、実際に彼らの暮らしに当てはまるような家というのが意外と見つかりませんでした。
世帯年収とか、どれぐらいの大きさの家か、周りのご近所さんがどれぐらい・どういうところにいるかとか、自転車を使っている家庭なのか、それとも徒歩で電車に乗っちゃっている家庭なのかとか。最初ロケハンしていたのが都心から少し離れた葛西とか千葉の方が多かったんです。
でも私がイメージしていた沙織さんの家というのはもうちょっと都心の方に生きている方たちだったので、なかなかそれが予算的な問題とかいろいろあって、見つからないなあと。
でも最後の最後に「何とか見つけました!」っていう感じではありました。

-借りた家は、一般のご家庭が住む実際の家ですか?それともレンタルスペースですか?

亀山睦実監督
レンタルスペースです。ソファは後から入れたのですが、元々インテリアは、ダイニングのテーブルとか大人用のベッドとか棚とか鏡とかっていうのは備え付けであったもので、それがものすごくおしゃれな不動産だったんですよね。おしゃれな物件で。そのおしゃれさがすごく沙織さんぽいなと思いまして、それでそこに決めさせていただきました。

-撮影用に借りた家は1軒だったのでしょうか?

亀山睦実監督
はい。同じ家の中で撮影しています。平屋もしくは2階建て風に見せていますけど、あの家は実は3階建てなんです。

▼美術・小道具収集について

-ロケ地決め作業と並行して美術・小道具の収集もすすめていたそうですが、大変だったことは?

亀山睦実監督

お子さんグッズはとにかく量も多かったですし、本当にあの量をよく美術部さんは集めてくれたなっていう感じでした。再現が本当にお上手で、中村さんっていう美術の方なんですけど、

家族の生活感を出すのが本当にうまい方でした。

私は台本しか書いていないので、実際どういう家にどれぐらいどういうものが置いてあるかとか、オムツや水筒っていうことも含めて、あの辺のリストアップは、ほぼほぼ中村さんがやってくださったんですよね。

そこから例えば重要なもの、例えばベビーカーであれば、「どういうベビーカーがイメージですか」といったものを、画像を見せながら、「色はこういうもの」でといった具合に話を具体的に中村さんとやっていったっていう感じです。

マイライフ、ママライフ

▼やってみないとわからないこと。

-主演のお二人のリハをしてみての“やってみなければわからないことだらけ”と書かれていた点、どういった点が、わからなかったことだったのでしょうか。

亀山睦実監督
一番は、心情の面だと思います。あとは実際に撮った時はやっぱりリハとは勝手が変わっちゃうので、リハの時通りにはならなかった部分もありました。お子さんを抱っこしたままお芝居してもらうことをリハの時ではやっていたんですよ。
でもそれも「じゃあ、どの体勢でどうやって喋るのか」とか、実際に抱っこするふりしてみないとわからないじゃないですか。
その体勢になって喋るお芝居をしてもらったときに、「ここちょっとやりにくいな」みたいなことが絶対出てくると思うんですよ、私は子どもをもった経験もないですし、あくまで自分の想像でしか脚本をかけていないので、「綾として沙織として、ここのシーンは演じやすいですかどうですか?」っていう不都合ないですかっていうのが、リハで細かく確認していったところですね。
お母さんっていう役柄以外、大学生の話だったとしても、私はお芝居をしたことがほぼほぼないので、演技をしてくださる役者さんにやってみていただかないと、本当にこの脚本でいいのか本当にその話の流れでいいのかっていうのは、決定できないんですよ。

-役者さんの演技を見て、またあらためて気づきがあるわけですね。

亀山睦実監督
そうですね。その間合いでいけるのかとか、そういう言い方で納得できるのか。だから多分、撮影稿が3まで行ったんですけどね。そういうことです。

-現場で気づくいろんなことが、反映されていく環境だったんですね。

亀山睦実監督
ただそのリハを始める前に撮影稿として1回固めたんだと思うんですけど、リハしていく中でちょっとずつ変わっていって、それで3稿までいったのかなと。

▼「家族留学」について

-作品の中の重要なキーワードとして“家族留学”という言葉がでてきます。
私にとって初耳だったのですが、こちらは一般的に知られているものなのでしょうか?

亀山睦実監督
一般の方に周知されているかどうかはまだまだだと思います。まず“留学”って聞くと、「海外に行く語学留学かな?」みたいな感覚だと思います。もしくは、「家族で海外に行くのかな?」っていうイメージを持たれると思うんですけれど、そうではなくて、実際にお子さんがいらっしゃるご家庭に、プレママプレパパの夫婦ですとかカップルの方ですとか、学生さんとか、「これからの自分のキャリア、ちょっとどうしようかな」って考えている若い方々が、実際にお子さんがいるご家庭に一日、家族の過ごし方を体験させてもらうっていうプログラムがあるんです。manma( https://manma.co/ )さんという実在するサービスなんですけれども、たまたまそこの代表の新居日南恵さんが元々知り合いでした。
綾さんと沙織さんって、そのまま生きていたら多分交わらない人たちじゃないですか。この2人を何とかして一つのお話に物語に繋げないといけないとなった時に、「家族留学してもらおう!」となりまして、そこから繋がりました。

-そこの流れがすごくいいと思いました。

亀山睦実監督
ありがとうございます(笑)それをまた綾のイベント会社の上司がおせっかい気味な言葉とともに、「これやってよ」って言うところから始まるんですよね。良かれと思ってっていう。

▼宣伝活動について

-宣伝活動が活発なイメージがあります。今回考えられている活動は?

亀山睦実監督
今やっている個人的な思い出カウントダウンと、プロデューサー陣の方で関係者の試写を進めてくださっていてそこで出てきた感想をいくつかSNSにツイートしてくださっているんですね、既に。
そこの方々の反応や感想っていうのが一番生々しいというかリアルで、沁みるものがあるので、その感想ツイートはもうこれでもかっていうぐらい、公開中も何回もリツイートすると思います。もちろん観てくださった方のツイートもガンガン拾っていきたいと思っています。

マイライフ、ママライフ
試写会で挨拶する亀山睦実監督

▼作品紹介、みどころ、好きなシーン、メッセージ

-観にいらっしゃるお客様へのメッセージや見どころ、好きなシーンなどをお願いします。

亀山睦実監督
最初は同世代の女性たち向けに、お母さんたち、お子さんを持とうか悩んでいる女性たちに向けて書いていた話ではあるんですけれど、これを映画祭や、昨年2日間あったテアトル新宿の劇場での先行上映・イベント上映を経て、男性の方ですとか、若い方からの反応が、ものすごく好評をいただけていたので、もっと男性側に観ていただきたいな。
という思いと、学生さんですとか、これからの就職できたけどこの後どうしようかなって思っている若い方々にぜひどんどん観ていただきたいんです。
好きなシーンは…夫婦がちゃんと話し合うシーン、そこが何より一番大事なんじゃないかなって思います。
どちらの夫婦の話し合うシーンも、なかなか時間がない中でやってしまったので、お芝居としてはちょっと落ち着かない環境でやらせてしまったところがあったかもしれないですけど、すごく
俳優部さんが、みんながバタバタしていた中で落ち着いてお芝居をしてくださっていたので、彼・彼女らは本当に素晴らしいと思いますし、彼らが発した言葉とか、相槌の瞬間とか、納得できていないけど、返事をしたときの間合いとか、そういう微妙なところを、感じ取って観ていただけたら嬉しいですね。

マイライフ、ママライフ

■ 映画『マイライフ、ママライフ』


妊娠・出産を先延ばしにして、仕事に⽣きる綾。
2⼈の⼦どもを育てながら、働く沙織。
異なる2⼈が、現代⼥性ならではの⽣きづらさを少しずつ解きほぐし、
諦めていた夢に向かってもう⼀度、歩み始めるーーー。

【INTRODUTION】
仕事と⼦育ての両⽴で悩む⼥性たちの経験談を⼊念にリサーチし、ひとりで悩みを抱え込んでしまうワーキングマザー、仕事に夢中で妊娠に前向きになれない⼥性を描いたのは、平成元年⽣まれの⻲⼭睦実。鉢嶺杏奈、尾花貴絵など監督と同世代の俳優たちが等⾝⼤で今を⽣きる⼥性を演じた。夫役の⽔野勝、池⽥良のほか、柳英⾥紗、中⽥クルミなど個性的な⾯々が揃った。また脚本監修に狗飼恭⼦(『⾵の電話』)が参加。現代⼥性がもつ<⽣き⽅>の悩みや、夫との⼦育てをめぐる軋轢などをリアルに描き、第14 回⽥辺・弁慶映画祭では観客賞を受賞。ジェンダーギャップ指数120 位の⽇本の現実を描く。

▼キャスト
鉢嶺杏奈 尾花貴絵
池⽥良 柳英⾥紗 中⽥クルミ 多⽥真翔 澤邊優愛
真辺幸星 ⼭中雄輔 ⾼⽊悠⾐ 蔦陽⼦ ヴァネッサ・パン 広野桜 清瀬やえこ
中野マサアキ 森本のぶ ⽔野勝

▼スタッフ
監督・脚本 ⻲⼭睦実
脚本監修︓狗飼恭⼦ エグゼクティブプロデューサー︓⻲⼭暢央 ⼤和⽥廣樹 浦野⼤輔
プロデューサー︓藤井克依 新居⽇南恵 撮影︓島⼤和 照明︓酒井隆英 録⾳︓⽥中秀樹 美術︓中村哲太郎
⾐装︓部坂尚吾 ヘアメイク︓清⽔彩美 ⾳楽︓久保⽥千陽 助監督︓⼩泉宗仁 主題歌︓⼩⽟しのぶ
製作︓Kugumi 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協⼒︓ミカタ・エンタテインメント
2021年|⽇本|カラー|86分 c2021「マイライフ、ママライフ」製作委員会

4⽉1⽇(⾦)より渋⾕HUMAX シネマほか全国順次ロードショー︕

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