映画『to…』出演の竹内詩乃、猪征大。「青春を返せ」コロナ禍で抱いた気持ちを映画に

映画『to…』出演の竹内詩乃、猪征大。「青春を返せ」コロナ禍で抱いた気持ちを映画に

5月6日、映画『to…』が池袋シネマ・ロサでの上映最終日を迎えた。3編からなる本作のPart3に出演する竹内詩乃、猪征大が上映後舞台挨拶に登壇。塩野峻平監督とともに、オーディション時の感想や撮影時のエピソードを語った。

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左)猪征大 中)竹内詩乃 右)塩野峻平監督

■ 映画『to…』舞台挨拶レポート

▼登壇者からのあいさつ・自己紹介

塩野峻平監督
映画『to…』の監督・脚本を務めました塩野峻平と申します。本日はよろしくお願いします。

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塩野峻平監督

竹内詩乃
楠本役を演じました竹内詩乃です。よろしくお願いします。

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竹内詩乃(演劇好きの女子高生・楠本 役)

猪征大
Part3で大内役を演じました猪征大です。
今日は大型連休の中、お越しいただきありがとうございます。

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猪征大(舞台俳優・大内 役)

▼役を演じてみての感想 ~演劇好きの女子高生・楠本役:竹内詩乃~

MC 中村綾菜
キャストのお二人に質問です。今回のPart3は、舞台役者と女子高生の話でしたが、大内と楠本という役を演じてみていかがでしたか。

竹内詩乃
緊張しているので温かい目で見てください。
楠本は高校生の役だったんですけど、当時撮影したのが約1年ほど前で私は高校を卒業したばかりの頃でした。
高校最後の高3の頃に、コロナの影響をもろに受けて、「青春を返せ!」って、ずっと思いながら卒業した高校生活でした。
その気持ちを全部、この映画にぶつけようと、楠本役を演じていました。
もちろん元々、楠本の性格に寄せる役作りだったというのもありますけど、私と結構近い境遇になっているかなと思っています。

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MC 中村綾菜
実際に詩乃ちゃんも、舞台が好きなのでしょうか?

竹内詩乃
そうですね舞台は結構観に行きますね。

MC 中村綾菜
ありがとうございます。

▼役を演じてみての感想 ~舞台役者・大内役:猪征大~

MC 中村綾菜
では、猪さんに質問です。大内というキャラクターを演じていかがでしたか。

猪征大
観ていただいた通り、大内は日々くすぶっている中で、一生懸命頑張る人なんですけど、当時の自分も俳優としての仕事がなかなかうまくいっていない時期でした。
そんなときにオーディションを受けて、塩野さんにチャンスをいただきました。
何かを考えてやるっていうよりかは全力で取り組みました。
(作品としても最終章の)Part3だったんで、Part1,Part2を背負う気持ちで、「やってやる!」っていう気持ちでやりました。

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MC 中村綾菜
その思い、とても届きましたよ。

▼オーディションでのお二人の印象を受けての脚本

MC 中村綾菜
それでは塩野監督に質問します。
このPart3のオーディションで竹内さんと猪さんの様子をご覧になって、あて書きされたとのことですが、お二人のどんな要素が楠本と大内というキャラクターにたどり着いたのでしょうか?

塩野峻平監督
まずこの作品が元々Part1のお話だけを作る予定だったんです。オーディションではそのシーンをそれぞれやっていただいたんです。
結果として、東出さんと植松さんでPart1を撮ることになったんですけれども、猪さんの大内という役は、熱・まっすぐな思いというのがオーディションからでも伝わってきて、もう少し感情を
表に出して、すごいまっすぐな役を演じさせてあげたい・演じてもらいたいなという思いで大内というキャラクターを作りました。

楠本というキャラクターは竹内さんにとっては静かな役だったと思います。
竹内さんがPart1のオーディションに来たときに、寂しさというか、繕った中に見える寂しさみたいな、そういう部分をすごい感じて、その結果、Part3の舞台好きの女子高生っていう役を今回書かせていただきました。
とても役にはまっていたというか、いい役を演じていただいたなぁと思っています。

▼役をいただいての感想

MC 中村綾菜
実際、Part1ではない役、楠本と大内という役をいただいて、どういう気持ちを受けましたか。

竹内詩乃
Part1を演じる気持ちでオーディションに行ったので、「あ、違うんだ」って思ったのが、一番最初でしたね。でも、その後にPart3の脚本を読んだときに、「こっちの方が私にぴったりかも」って思って、今ではPart3を演じられて良かったと思っています。

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MC 中村綾菜
結構、ご自身と通じるところがあると思いましたか?

竹内詩乃
そうですね。Part1は大学生の話ですけど、Part3は高校生だったので、一番近い心境でできるなっていう感じでした。

▼オーディションの結果と監督からの意外な連絡

MC 中村綾菜
猪さんはいかがでしたか。直接塩野監督から電話があったと思うのですが。

猪征大
元々、オーディションに行ったときに大学生が題材で、受けに行った時に28歳だったので「無理だろうな」っていう気持ちで行ったんです。
そうしたら塩野監督から電話がかかってきたので、「わざわざこんなお断りの電話をしてくるなんて、律儀な監督だな」と思ったら、「よかったら別の役をやりませんか?」と言ってくださったんです。その後、台本を読んで、これはやりがいある自分がやりたいものだなと思って演じました。完成したPart1を観た時に、「これは俺じゃないほうが良かったな」って思いました。

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▼怖かった(?)オーディション

MC 中村綾菜
猪さんは大内という役こそが適任でしたね。
オーディションの話が出ましたが、詩乃ちゃんはいかがでしたか?

竹内詩乃
めちゃくちゃ緊張しました。
コロナ禍が題材の作品だから、オーディションを受ける前から「これ絶対受かりたい!」って思っていたんです。
その分、緊張もすごかったし、オーディションでの監督たちの空気感が本当に怖くて射されるような感じでした。
オーディションの後で、Part2に出演した藍川きあらちゃんと同じ回だったので、帰るときにもずっときあらちゃんに抱きついて、「怖かった、コワかった~」って言っていました。

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MC 中村綾菜
確かに怖かったってよく言われますね。
猪さんはいかがでしたか。

猪征大
怖かったですよ。中央大学の方々が映画を作るっていう情報はもらっていたんです。僕は大学を出てないので、「大学生ってどんな感じなんだろう」と思って現場に行ったら、塩野さんが真ん中に座っていて、「お疲れっす…」 みたいな感じで。

塩野峻平監督
そんなんじゃないです(汗)

猪征大
1回、演技が終わったら、「2回目はちょっと違う感じでお願いします。」といった感じでした。
その後で、笑顔もなく、「良かった!いいですね。」といったものもなく、「はい、ありがとうございました…。」といった感じで、「大学生、怖っ…」って思いました。

MC 中村綾菜
そういわれて、塩野さんはいかがでしたか?

塩野峻平監督
そんなに怖かったですか?

竹内詩乃猪征大
怖かったです!

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塩野峻平監督
そんなに怖くはなかったと思うんですけど…。
きちんとした役者さんと映画を撮るっていうのが初めてだったんです。
この作品で初めてオーディションをやったんです。そもそもは僕は学生映画を撮っていたので、僕学生だったんで、その役者さんの役者さんと映画を撮って、ちょっとどこかにナメられちゃいけないなっていうのは、どこかに確かにあったかもしれません。堂々とした気持ちで向き合おうという気持ちがあったと思います。

▼再度鑑賞をしてみて、撮影時と感想で変わった点は?

MC 中村綾菜
事前にGoogleフォームにて、ご質問を募集いたしました。その質問をいくつか紹介したいと思います。
「クラウドファンディング、試写会以来、池袋シネマ・ロサで鑑賞しましたが、昨年とはコロナの状況も違いますが、セリフの一つ一つの重みがまた違って感じられました。撮影時と今年で再度鑑賞してみて、何か感想が変わった点はありますか。」

竹内詩乃
去年よりもコロナに対しての警戒心が薄くなってきているじゃないですか。その上で、またこの映画を見たときに、「そういえば、私、コロナに対して、こんな感情を持っていたんだ」と、忘れていたことが思い出しました。こんな言い方をしていいかわかりませんがコロナに対して、すごくイライラしました。

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MC 中村綾菜
素直でいいですね。

竹内詩乃
すみません。いいコメントが思いつかなくて(苦笑)

MC 中村綾菜
猪さんはいかがでしたか?

猪征大
この1週間上映している間、僕も毎日来て観ていたんですけれども、コロナが始まったのが2年前ぐらいだと思いますが、当時撮っていたときの、リアルでやっていて、それこそPart3の舞台の内容も結構、思想が強めな感じだったと思うんです。
けれど、当時ってワクチンがある/ないといった話題で、世間が騒いでいたので、今観ると、「え?なに?」ってなるんですけど、当時はそれで世の中のみんなが騒いで、日常がモヤモヤしていたかと思うと、「日々って変わっていくんだな」って思いました。

MC 中村綾菜
日々、変わりますよね。
塩野さんはいかがですか?

塩野峻平監督
自分で映画を作っていたわけですけど、今の方が自由度が高いですね。いろんなことができているなっていうのが当然あります。
逆にこの映画を観てもらって、「あぁ、その時、こういう気持ちだったな」とか、コロナの状況だけではなくて、その時代の社会で自分がどう過ごしていたかといったところの、何か自分の記憶とリンクさせて観ていただければと思うし、自分もそういうふうに観ているところがありました。そういう面では、思い出と言っては変かもしれませんけれども、その時代の記憶を呼び起こしてくれる鍵ではなかったかなと思っています。

▼「やっちまった!」というNGシーンは?

MC  中村綾菜
それでは最後の質問です。
「“これは、やっちまった”というNGシーンがあれば教えてください。」

竹内詩乃
これはさっき猪さんとも「何かある?」って話していたんですけれども。

猪征大
僕らこうみえても優秀なんでNGがないんですよ。

竹内詩乃
そうなんですよ。

塩野峻平監督
NGは確かになかったよね。

猪征大
NGはなかったんですけど、同じシーンを何回も繰り返し撮るみたいなことはありました。

竹内詩乃
序盤の部屋でいきなり叫びだすシーン、多分映画全部を観たら、「あぁ、なるほど」となると思います。
最初に観た時に「え?どうした?」ってなったと思います。あのシーンは、七、八回ぐらいやったと思うんですけど、何度やっても、「もう一回やりましょう」っていわれてOKがでなくて、「どうしたらいいんだろう」と、どんどん追い込まれながら、回数を重ねていったんです。
とりあえず終わったんですけど、納得できる感じじゃなくて、本当にしんどい夜でしたね。

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MC 中村綾菜
確かに「心が折れた」っておっしゃっていましたものね。
でも、完成したものを観ていかがでしたか?

猪征大
個人的には観るのがちょっと恥ずかしいというか、あんまり観たくないシーンなんですよ。でも前回観てくれた人の感想で、「この部屋で1人の、シーンがすごいよかった」って感想が一番多かったので、「そういうもんなのかな…」って思ったし、うれしいです。

MC 中村綾菜
苦しんだ分、心に響いたのかもしれませんね。
詩乃ちゃんはいかがですか?

▼塩野監督はなんでもお見通し

竹内詩乃
そうですね。私は最後の大内の演技を観て泣くシーンが一番苦戦しましたね。
塩野監督ってなんでもお見通しなんですよ。ちょっとでも違う感情を入れて涙を流したら、「なんか違うよね」っていうんです。それで感情を作るのもすごく難しくて、猪さんもすごく大きな声を出すシーンで、何テイクも、たぶん10回くらい撮りましたよね。

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猪征大
そうだね。

竹内詩乃
何回も付き合っていただいて、それがすごい苦戦して大変でした。

塩野峻平監督
一回、はさみましたよね。

竹内詩乃
1回監督が、「これでOK!」って出してくださったんですけど、納得がいかずにもう一度ってなりましたね。

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塩野峻平監督
先に猪さんのシーンを撮ったんですよね。それを受けて「もう一回やってみようか」って。

竹内詩乃
挟んで猪さんのシーンを撮っているときも、心の中では絶望していました。「どうしたらいいんだろう…」って。
でも最終的にいいものが撮れたので達成感がありました。

MC 中村綾菜
詩乃ちゃんのシーンを撮っているところで、猪さんが実際に演技をしてくださっていたんですけど、そこの2人の空間が今までのテイクと違う感じがしていましたよ。

塩野峻平監督
OKがでた時に滑り込んできましたよね。

猪征大
すごいうれしくてハイタッチしましたね。
あれでノドがやられました。翌日、声が出ませんでした。バイト先に迷惑をかけました(苦笑)

MC 中村綾菜
それではフォトセッションに移りたいと思います。

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クロスした腕(t)と丸を描いた(o)で『to…』のポーズ

最後は、お客様と一緒にお写真を記念に撮りたいと思います。



『to…』
(2021 年 / 日本 /82 分 / カラー /DCP)

出演
植松優、東出薫、清水陽介、藍川きあら、竹内詩乃、猪征大、江連健司、下石知美、内海詩野、小野孝弘、小澤うい、ほりかわひろき、笠木紘(赤枠工場)、円城寺正俊(赤枠工場)、早乙女大和(赤枠工場)、佐藤友里(赤枠工場)、湯淺惇紀(赤枠工場)


挿入歌
〈Part1〉「なんでもない今日」早希 〈Part2〉「あなたへ」Day and Night 〈Part3〉「溶けないように」マリナ

スタッフ
〈監督・脚本・編集〉塩野峻平、〈プロデューサー〉中村綾菜、〈撮影・照明〉近藤実佐輝、〈録音〉大津研、釘本勇気、園田晃平、中山春佳、〈美術〉じんりょうすけ、〈制作〉中山春佳、中村優希、松田美羽、〈グレーディング・コンポジター〉堤脩太郎、〈ポスターデザイン・Web 制作・パンフレット〉渡辺淳一、〈製作協力〉イトーカンパニー、〈撮影協力〉三鷹フィルムコミッション他



公式サイト https://2021to-someone.com/

 2022 年 4/30 日 ( 土 )~5/6( 金 )池袋シネマ・ロサにて上映

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