「絶望と希望が交錯する、ひと夏の物語」― 映画『ナマズのいた夏』、2月8日(土)から、新宿 K’s cinema にて上映中。この作品は、地方都市を舞台に、生きづらさを抱えた若者たちが、過去と向き合いながら未来へと歩む姿を描いています。主演の中山雄斗さんと架乃ゆらさんに、役への想い、主題歌に感じたこと、SNSの投稿内容、今後の目標など、幅広くお話を伺いました。

■ 映画『ナマズのいた夏』 中山雄斗x架乃ゆらインタビュー
▼1.名前の由来
インタビュアー: まずは、お二人の名前の由来についてお伺いしたいのですが、中山さんのお名前には何か特別な意味があるのでしょうか?
中山雄斗: はい、僕の名前は父がつけてくれたのですが、「オスの雄」という字を父の名前から一文字もらっていて、男らしく北斗七星のように輝いてほしいという願いが込められているそうです。

インタビュアー: 素敵なお名前ですね。では、架乃さんの「架乃ゆら」というお名前は以前うかがいましたが、確か…
架乃ゆら:「架乃ゆら」は芸名で、事務所につけていただきました。“架乃”の漢字一字一字に意味があるらしいのですが、詳しい意味は私も知らないんです。
▼2. 映画への出演経緯について
インタビュアー: 次に、映画『ナマズのいた夏』への出演経緯について教えていただけますか?
中山雄斗: 僕の場合は、脚本家の平谷さんが僕が出演したドラマを見てオファーしてくださったのがきっかけです。その後、監督とリモートでお会いして、演技を披露した上で出演が決まりました。
インタビュアー: リモートでの面談だったのですね。架乃さんはいかがでしたか?
架乃ゆら: 私は、プロデューサーの宮西さんと以前お仕事でご一緒したことがあり、そのご縁でオファーをいただきました。監督とは、顔合わせの日に初めてお会いしたんです。監督が以前撮られた映画の主演がセクシー女優だったことも、オファーの理由の一つだったみたいです。

▼3. 脚本を読んだ時の感想と完成した作品を観ての感想
インタビュアー: 最後に、最初に脚本を読んだ時の感想と、完成した作品を観た感想についてお聞かせください。
中山雄斗: 脚本を読む前に企画書を読んだのですが、現代の若者が日本で絶望する権利があるという内容に、少し重たい印象を受けました。ただ、脚本自体は登場人物それぞれに寄り添う、とても誠実なものだと感じました。完成した作品を観た時は、映像の色がとても強く、夏休み映画のような雰囲気があり、重いテーマとのギャップが面白いと思いました。
インタビュアー: なるほど。架乃さんはいかがでしたか?
架乃ゆら: 私も、企画書を読んだ時は少し重たい話なのかなと思いましたが、完成した作品は映像が爽やかで、とても見やすい映画になっていると感じました。登場人物の背景が丁寧に描かれている点もすごく良いなと思いました。
▼4. 映画を通して考えたこと
インタビュアー: 次に、お二人が映画を通して考えたことについてお聞かせください。まず、中山さんは「友達や身近な人の死をどう受け入れればいいか、この映画の自分の役を通して考え抜きました」とコメントされていますが、具体的にどのようなことを考えられたのでしょうか?
中山雄斗: 大学生の時に友人を亡くした経験から、その死をどう受け止めれば良いのか、ずっと考えていました。この映画を通して、生きている人間は亡くなった大切な人を思い出すことができるという、ごく当たり前のことに気づきました。そして、そのように思い出せることは素晴らしいことだと感じました。
インタビュアー: なるほど。では、架乃さんは「人はみんな誰かに理解されたいと思っているし、同時に誰かを理解したいとも思っているんじゃないかと考えています」とコメントされていますが、この考えに至った経緯を教えていただけますか?
架乃ゆら: この映画の撮影を通して、人は誰かに理解されたいと願うと同時に、誰かを理解したいとも思っていると感じました。会話やコミュニケーションは、自分が人を理解したい気持ちと、人に理解されたいという気持ちから生まれるのではないかと思ったんです。映画の登場人物たちも、互いを理解しようとしながら、実は自分も理解されたいという気持ちを持っていて、それがうまくいったり、うまくいかなかったりする様子が描かれていると感じました。
インタビュアー: お二人のコメントを踏まえ、それぞれが相手の考えをどのように捉えているか、ご自身の考えと合わせてお聞かせいただけますか?まず、中山さん、架乃さんの考えについてどう思われますか?
中山雄斗: そうですね、架乃さんの「人は誰かに理解されたいし、理解したい」という考えは、すごく共感できます。ただ、一番はまず自分自身を理解したいと思っています。そして、自分を理解することが、他者を理解することに繋がるのではないかと感じています。
インタビュアー: ありがとうございます。では、架乃さんは、中山さんの考えについてはいかがですか?
架乃ゆら: 中山さんの、「人の死をどう受け入れるか」という問いに対して、私はまだ身近な人の死を経験したことがないため、具体的な考えを持っているわけではありません。ただ、亡くなった人にどう向き合うかという問いは、自分自身と向き合うことにも繋がってくるのだと感じました。中山さんの考えは、私にとって新たな気づきになりました。
▼5. ポスタービジュアルと場面写真
インタビュアー: 次に、ポスタービジュアルと場面写真についてお伺いします。まず、架乃さんのポスタービジュアルについて、撮影時のエピソードや、どのようなことを考えていたか教えてください。
架乃ゆら: はい、ポスターの撮影は、撮影の最終日でした。それまでは中山さんも含めたキャストみんなで撮影していたのですが、最終日は私とベトナム人の子役の二人だけのシーンでした。川辺を歩くシーンで、その子がすごく可愛くて、リラックスした状態で撮影できたのを覚えています。また、場面としても、結衣の中で一つの決断が出た後の表情を切り取ったものだと思います。ポスタービジュアルが公開されたとき、友人から「あなたらしくない」と言われたのが印象的で、今までそういう感想をもらったことがなかったので、少し驚きましたが、役者としては良いことなのかなとも思いました。

インタビュアー: なるほど。では、中山さんの場面写真についてはいかがですか?撮影時のエピソードや、どのようなことを考えていたか教えてください。

中山雄斗: 僕の場合は、場面写真は撮影中に撮られているもので、意識して撮られているわけではありません。ただ、3人や4人でいる時に、僕は絶対に真ん中に立たないように意識していました。常に端っこにいるようにしていて、それは、役としての達生の立ち位置を考えてのことでした。監督が最終的な画を決めるのですが、ポジションを先に確保することで、後から色々言われるのを避けていました。食事のシーン以外では、ほとんど真ん中にいないと思います。

インタビュアー: 意識的に端に立つようにしていたのですね。架乃さんは、そのことに気づいていましたか?
架乃ゆら: いえ、全く気づいていませんでした。言われてみれば、確かに中山さんは真ん中にいないなと思いました。オフショットの時も、少し端にいることが多くて、普通なら真ん中にいればいいのに、と思っていました。
インタビュアー: 中山さんは、なぜそのような立ち位置にこだわったのでしょうか?
中山雄斗: そうですね。例えば、僕が2人の間を繋ぐような構図になることが多いのですが、普通なら僕が真ん中に立って、2人に話させるべきだと思うんです。でも、あえて少し後ろから見ているような立ち位置を取ることで、達生のキャラクターを表現したかったんです。あるカットでは、女の子にふてくされているような表情をしていて、それは僕が監督に提案したものです。その表情が、達生というキャラクターを象徴するものになったと思います。
インタビュアー: ありがとうございます。お二人のポスタービジュアルや立ち位置に対する考え方がよくわかりました。
▼6. 主題歌「川辺にて」について
インタビュアー: 続いて、主題歌「川辺にて」についてお伺いします。この曲を初めて聴いたときの印象や、特に好きなフレーズなどがあれば教えてください。
中山雄斗: この曲はめちゃくちゃ良い曲で、僕もすごく好きです。特に好きなのは、「朝焼けの中で 最後の星消える時 あの日の約束 なぜかふと思い出す」というフレーズです。何か、ふとした瞬間に、昔誰かとした約束を思い出す、その美しい瞬間を味わうために生きているんじゃないかと思えるほど、心に響きます。
歌詞を読んでいると、まるで映画の映像や思い出が蘇ってくるような感覚になります。全体を通して、映画を包み込むような、僕のことを歌ってくれているような、そんな風にも感じました。

インタビュアー: 映画のことを歌っているように感じられたのですね。架乃さんはいかがですか?
架乃ゆら: 私は、「喧噪の中で 私たちはすれ違う 歯車の中で 私たちは気づくだろう」というフレーズが好きです。この映画でも、人と人がすれ違う様子が描かれているので、この歌詞がとても響きました。
たくさんの人がいる中で、それぞれが自分の人生を生きているのに、なかなか出会うことがない。でも、この仕事をしていると、どこかで誰かと繋がることがあるかもしれない、そういうことを考えると、すごく素敵なことだなと思えます。
この曲は、映画の完成後に、映像を観てから作られたと聞きました。

インタビュアー: この曲は、お二人にとって、映画と深く結びついた曲になっているようですね。
中山雄斗: 僕はこの曲を聴いたとき、結衣が達生に歌っているような感じがしました。ポスタービジュアルと合わせて、そう感じました。
インタビュアー: そういった解釈があるのですね。この主題歌が、映画をさらに深く彩っていることがよくわかりました。
▼7. SNSの投稿からの質問
インタビュアー: 次に、SNSからの質問に移ります。中山さんへの質問です。年明けに本棚から手に取った本のタイトルが「『三十歳までなんか生きるな』と思っていた」とのことですが、この本を読んだ時の気持ちや、特に「ドキッとした」という感想について教えてください。
中山雄斗: はい、この本について、普段はこういったことをしないのですが、僕が30歳の誕生日に投稿した時の話です。実は、この本は僕が20代前半の頃に読んでいたもので、自分の部屋にあったんです。久しぶりに手に取ったら、「三十歳までなんか生きるな」という衝撃的な言葉が書かれていて、すごくドキッとしました。
インタビュアー: なぜ、その言葉にドキッとしたのでしょうか?
中山雄斗 20代前半の自分が、「30歳までなんか生きるな」と思っていたことを思い出したんです。もちろん、それは死を意味するわけではないのですが、当時の自分が、30歳という年齢に対して、何か区切りをつけていたような気がして、ハッとしました。でも、今は30歳を迎えて、これからも生きていくのだろうな、と普通に思っています。その過去の自分の考えと今の自分の考えのギャップに、驚いたんです。
インタビュアー: なるほど。過去の自分と今の自分との変化を感じられたのですね。
中山雄斗: この本には、将棋・棋士を例にした話が書かれているんです。将棋の棋士が10代や20代でピークを迎えることが多いという話から、30歳以降は、能力が落ちていくだけだと思っていたと書かれています。しかし、それは体力的な面の話であって、思考力はずっと成長し続けるということが書かれていました。だから、考え続けることが重要だと。
インタビュアー: ありがとうございます。もう一つ質問です。「20代を思い返すといくら考えても周りの人への感謝しか思い浮かびませんでした」とのことですが、具体的にどのようなことに感謝を感じましたか?
中山雄斗: そうですね。22歳か23歳で上京した時、周りの人たちがいなかったら、絶対に地元に帰っていただろうと思います。本当に、周りの人たちには感謝しかありません。実は、30歳の誕生日の日も、友達がお祝いしてくれる予定だったのですが、その前に、実家の母に電話をしたんです。トイレの中で電話して、母親に感謝の気持ちを伝えていたんです。「20代のうちにありがとうを言いたいんだ」って。そうしたら、友達がたまたまトイレに入ってきて、僕が感謝の言葉を言っているのを聞いたそうなんですけど、そのトイレにいた人たちが、用を足し終わっているのにずっと耳をそばだてていた場に居合わせて驚いていました。
インタビュアー: トイレの中で感謝の電話をしていた、というのは面白いエピソードですね。周りの方々への感謝の気持ちが、ひしひしと伝わってきました。
▼8. 今後出演したい作品
インタビュアー: 続いて、今後の出演してみたい作品についてお伺いします。架乃さんは、「仮面ライダー」に出演したいとのことですが、その理由や演じたい役について教えてください。
架乃ゆら: はい、仮面ライダーにはぜひ出演したいと思っています。平成仮面ライダーシリーズはほとんど見ていて、とても好きなんです。仮面ライダーの原作にある、正体を隠して一人で戦う、悲しみを背負う、という要素が、とても魅力的に感じています。作品ごとにその要素の現れ方が違うのも面白いんです。悪役を演じるのも楽しそうだなと思うのですが、できれば、主人公が変身するのを知らない妹のような役をやってみたいです。

インタビュアー: なるほど。仮面ライダーがお好きなんですね。中山さんはいかがですか?今後出演してみたい作品や、演じてみたい役について教えてください。
中山雄斗: 僕は、西川美和監督の映画に出演してみたいです。最近、過去の作品を見返したら、やっぱり面白いなと思って。西川監督が描く世界の、男性の持つダサさや人間らしさに、すごく共感できるんです。自分の何かを作品に活かせるんじゃないかと感じました。演じたい役は、まだ具体的には分からないのですが、人間らしさや愚かさを出せるような役に挑戦してみたいです。
インタビュアー: お二人の今後の活躍が楽しみです。
▼9. 観客へのメッセージ
インタビュアー: 最後に、作品を観る方々へのメッセージをお願いします。
架乃ゆら: はい。まず、この作品を見て、主題歌「川辺にて」 が流れると思うのですが、この曲が本当に素晴らしいです。エンドロールでこの曲を聴きながら、映画の登場人物たちのその後の人生を少しでも考えてもらえたら嬉しいです。この映画では、登場人物たちがうまくいったり、うまくいかなかったりする様子がリアルに描かれています。それは、私たちが生きている中で経験することであり、大きな悩みにも繋がると思います。この映画を通して、そういった辛さに寄り添えるような、そんな作品になっていれば嬉しいです。
インタビュアー: ありがとうございます。中山さんはいかがでしょうか。
中山雄斗: そうですね。人の愚かさや、辛い過去、劣等感といったものと、どう付き合っていくのかが重要だと思います。それらは、無くなってしまえば良いと思いがちですが、そうではなく、それらとどう歩んでいくかを考えることが、一番の近道だと思います。今の社会では、ダメなものはダメだと切り捨ててしまいがちですが、そうではなく、それらとどう向き合っていくのかを、この映画を通して感じてもらえたら嬉しいです。そして、主題歌を聴きながら、何を思い出すかは、観る人次第です。その時に、何を思い出しながらこの曲を聴いてくれるのか、とても楽しみです。
インタビュアー: ありがとうございます。主題歌が、観客それぞれの心に響くことを願っています。

ナマズのいた夏
あらすじ……
中学時代に亡くなった友人の墓前で旧友の哲也と再会した達生は、バイト先の元同僚・結衣と3人で、夏休みの数日間を地元の田舎町で過ごすことになる。達生の父が社長を務める経営不振の工場の寮に滞在しながら、彼らはそこで働くベトナム人技能実習生たちと交流し、それぞれが抱えていた過去と向き合っていく。
中山雄斗 架乃ゆら
松山歩夢 渡辺紘文 河屋秀俊 グエン・ティ・ザン グエン・ティ・バオ
山岡竜弘 川瀬陽太 西尾信也 古林南 岡村洋一 林田麻里 高崎二郎
清なおみ まなこ 平岡明純 大瀬勇希 細谷隆広 柴田愛之助
プロデューサー:宮西克典 中川究矢 監督:中川究矢 脚本:平谷悦郎 中川究矢
撮影:金碩柱 照明:市川高穂 録音:横山萌 助監督:國谷陽介 制作担当:天野修敬
スタイリスト:富丸晏菜 ヘアメイク:桑原里奈 美術:葉佐文香 VFX:東海林毅
スチール:中野愛子 カラリスト:大渕友加 アクションコーディネーター:柴田愛之助
セカンドユニットディレクター:佐藤周 セカンドユニット撮影:滝澤智志
ヘアメイク助手:中原優菜 演出応援:滝野弘仁 制作応援:牛丸亮 田原イサヲ
助監督見習い:仁藤颯太 車両応援:松下竜之介 宮下勇次
音楽:吉村和晃 主題歌「川辺にて」歌・作詞・作曲:寺尾紗穂
製作:ファブトーン 制作プロダクション:Power Arts Production
配給宣伝:MAP 配給協力:ミカタ・エンタテインメント ©️FABTONE
公式HP:https://mikata-ent.com/movie/2010/
公式X: @namazu_noita
公式Instagram : @namazu_noita_natsu
2025年2月8日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開!
