2025年11月15日(土)、第17回TAMA映画賞の授賞式がパルテノン多摩大ホールにて執り行われ、今年度「明日への元気を与えてくれる・夢をみさせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」として選出された豪華な顔ぶれが一堂に会した。35周年という記念すべき開催となったこの映画祭では、実行委員長の竹内昇氏が開会宣言を行い、パンデミックの経験や、戦争の記憶といった忘れられない体験を世代を超えて伝え続けることの重要性に言及した。また、名誉会長の阿部裕行多摩市長は、映画が私たちに「生きる意味と喜びと感動」を訴えかけ、平和と人権を愛する社会を共に築いていきたいと祝辞を述べた。

最優秀新進女優賞・最優秀新進男優賞
授賞式はまず、将来を嘱望される若き才能たちへの表彰から始まった。最優秀新進女優賞を受賞した中野有紗さん(『この夏の星を見る』)は、世界に入って間もない自身が素晴らしい舞台に立てたのは、チームの皆さんと支えて導いてくれた方々のおかげだと感謝を述べた。彼女は、役柄について、自身も高校時代にコロナ禍で学校行事が全てなくなった経験から、登場人物たちの葛藤や不安に「すごく共感できた」と語り、今後は役との時間を大切にしていきたいと抱負を述べた。

続いて、最優秀新進男優賞の表彰では、黒川想矢さん(『国宝』『この夏の星を見る』)が登壇し、2年ぶりにTAMA映画祭に戻ってくることができた奇跡的な出会いに感謝しつつ、この賞は「自分自身とちゃんと向き合って、守ることなく精進していきなさいという戒め」として受け取ると、謙虚な姿勢を示した。主人公の少年期を演じるにあたり、歌舞伎の稽古は約半年間行ったことを語った。欠席となった萩原利久さん(『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』他)からはビデオメッセージが寄せられ、受賞を心から喜び、「現場での日々を更に強く心に残して」もらえたこの賞は、今後の「僕自身の励みになり、自信になり、もっと頑張っていきたい」という気持ちにさせてくれたと述べた。

最優秀新進監督賞
最優秀新進監督賞を受賞した山元環監督(『この夏の星を見る』)は、初めての商業長編映画であり、非常に「挑戦的な作品」であったと振り返った。辻村深月さんの文章が持つ美しさと、コロナ禍の純粋で熱い物語をどう映像化するか悩みながら作ったが、「映画にはそういう信じる力があるんだな」と実感したと語った。今回は、若い感性のようなものを気にして挑んでいったという。

共に受賞した平一紘監督(『木の上の軍隊』他)は、11年ぶりにこの場に戻り、素晴らしい賞をもらったことに「感極まりそうになっております」と喜びを表現した。沖縄出身である平監督は、沖縄戦から80年の節目にこの作品を撮れたことは一生大事な経験であり、今まで沖縄戦に距離を置いていた人たちにも届く物語になると「確信した」と述べ、ユーモラスな要素を盛り込んだことで、辛いだけの戦闘以外の側面を描けたことに意義があったと語った。

特別賞
映画ファンを魅了した事象に対して贈られる特別賞は2作品に贈られた。
大九明子監督(『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』)は、受賞を全キャスト・スタッフと共に喜んでいると述べ、原作の小説を読んだ際、若い俳優たちが「とてつもなく喋る長いセリフのシーン」に心が震え、映画化を決意したと語った。俳優たちは裏で努力していると思うが、現場では「何の勢いもなく」素晴らしく演じてくれたと賛辞を送った。

呉美保監督(『ふつうの子ども』)は、市民の映画祭で選出されたことに「実感を噛みしめさせてもらってます」と述べ、撮影現場は子役たち(嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大)のために作られ、毎日喧嘩と仲直りが繰り返される「濃厚な夏」だったと振り返った。

主演の子役の一人である嶋田鉄太さんは、受賞を感謝しつつも、授賞式で「吠える」ことを期待されていたのに力が足りずできなかったと、ユーモラスにコメント。

また、瑠璃さんは、この作品に関わった全ての方々に感謝した。

味元耀大さんは、この賞が作品に関わった「全ての皆様に与えられる」ことができ嬉しく思うとコメントした。



最優秀女優賞
最優秀女優賞は2名に贈られた。広瀬すずさん(『遠い山なみの光』他)は、尊敬する監督、スタッフ、キャストと共に作品を作り、その評価をいただけたことは「すごく本当に励まされる」と喜びを語った。彼女は、戦後高校の長崎を舞台とした時代の中で、主人公が前向きに生きる姿を演じることは「覚悟のいる役」であり、貴重な経験で勉強になったと振り返った。また、美術や衣装からパワーをもらえたとし、特にイギリスチームと共演した80年代の描写は、完成した作品を見て初めて自身の未来を知るようだったと明かした。



欠席となった瀧内公美さん(『レイブンズ』他)からはビデオメッセージが寄せられた
※ビデオメッセージについて記事化に制約があり、内容を掲載できない点、ご了承ください。
最優秀男優賞
最優秀男優賞を受賞した吉沢亮さん(『国宝』『ババンババンバンバンパイア』)は、TAMA映画賞での2年連続受賞は映画祭史上初めてであることに触れ、光栄に思うと述べた。歌舞伎を題材とした『国宝』では、ゼロからのスタートで、「すり足」からトータルで約1年半の稽古を積んだことを明かした。共演した横浜流星さん(俊介役)の「ストイックな姿」を隣で見られたことが自身の「励みになり」感謝していると語った。

共に受賞した長塚京三さん(『敵』)は、筒井康隆先生の素晴らしい原作をシナリオ化した吉田大八監督のキャスティングに恵まれたことに感謝を述べた。長塚さんにとって映画とは「生活人ではないもう1人の私が見る夢」であると定義し、演じた元大学教授の生き方について、現実に浮かずに生きようとしたその生き方が「結局彼に復讐している」ので、「あまりに正直にしてはいけない」というテーマだと説明した。

最優秀作品賞
最優秀作品賞は2作品が選出された。
『ルノワール』 の早川千絵監督は、ちょうど去年の今頃フィリピンで撮影しており、1年後に映画が完成し、日本公開を経てこの賞をいただけたことは「なんていう幸せなことだろう」と感激を語った。映画は一人では作れないとし、関わった全ての人、そして見てくれた観客に感謝を表明した。主演の鈴木唯さんは、最優秀作品賞をいただいたことは大変光栄であり、この賞は関わった「皆さまの勲章みたいな素晴らしい賞」だと喜びを語った。撮影時の印象的なエピソードとして、雨の中の橋の下でのシーンを挙げ、大変だったが、完成した作品を見ると父親の優しさが伝わってくるシーンになったと振り返った。



『国宝』 の李相日監督は、吉沢亮さんと黒川想矢さんと共に登壇し、歌舞伎という400年の伝統を映画でいかに魅力的に伝えるか、皆で「映画の知恵を絞りに絞って」作品になったと述べた。監督は、光を浴びる役者たちの影の苦しみや献身を含め、全てをひっくるめて美しく感じ取ってもらうことが大事なテーマであったと語った。

最優秀新進女優賞(遅れて登壇)
式も終盤に差し掛かり、仕事の都合で遅れていた最優秀新進女優賞の桜田ひよりさん(『この夏の星を見る』他)が登壇した。桜田さんは受賞の喜びを述べ、自身も高校時代にコロナ禍を経験し、すべてが中止になった世の中で、役柄に共感できたと語った。彼女にとって映画は「なくてはならない存在」であり、過去に好きな映画のワンシーンを何度も見返し、「いつかこのお芝居ができるようになりたい」と活力をもらっていた経験が、今の自分を形作っていると語った。

全ての表彰を終え、受賞者全員で記念撮影が行われた後、第17回TAMA映画賞授賞式は盛況のうちに幕を閉じた。

-
西堀文 初主演映画『いってきます。』、予告編再生回数7.5万回突破。各界からのコメントが続々と到着
-
第17回TAMA映画賞:最優秀新進監督賞に平一紘監督 『木の上の軍隊』で「目論見成功」 11年越しの凱旋受賞に感極まる