2025年11月24日、第35回映画祭TAMA CINEMA FORUMにて、「映画監督 外山文治短編作品集の集い」がベルブホールにて開催され、長編『ソワレ』『茶飲友達』のヒットで知られる外山文治監督のキャリアを辿る短編6作品が一挙上映されました。上映後には外山文治監督と、星乃あんな、遠藤雄弥、内海誠子、イトウハルヒがゲストとして登壇し、トークセッションが行われた。観客に対し、6本という「かなりの長丁場」の鑑賞の労をねぎらった監督とキャスト陣は、撮影現場の自由な雰囲気や、俳優の自主性を尊重する演出術、そして自主映画として短編を取り続ける理由など、凝縮された作品群の舞台裏を詳細に明かしました。内海さんとイトウさんは、今回が『東京予報』シリーズの「都内最後」の上映機会となる可能性に触れ、「寂しい気持ち」があると述べながらも、アフタートークを楽しむ意欲を示した。

■ 、「映画監督 外山文治短編作品集の集い」トークセッション
監督の「笑顔」が導く温かい現場と俳優の証言

登壇した俳優陣は、外山監督の撮影現場の印象について、その自由さと温かい雰囲気を強調しました。星乃あんなさん(『はるうらら』ハル役)は、撮影から時間が経過しているものの、監督が「ずっと笑顔だった」ことが強く記憶に残っていると述べました。演技が上手くできずに悔しい思いをすることもあったが、現場に笑顔が絶えず、温かい雰囲気のままクランクアップまで終えられる作品は珍しく、多くのことを学んだ良い現場だったと振り返った。

遠藤雄弥さん(『名前、呼んでほしい』涼太役)は、共演した田中麗奈さんのファンだったため大変嬉しかったと語る一方で、物語の内容も相まってしっかりと役に没頭することが課題であったと明かしました。その中で、外山監督が「温かいまなざし」で俳優の芝居を現場で見てくれていたのが印象的で、「とても自由に芝居をさせてくれる素敵な監督」だと評価した。

内海誠子さん(『forget-me-not』ミカ役)とイトウハルヒさん(同エリ役)が共演した『forget-me-not』(フォーゲットミーノット)は、対人関係においてドライな関係性を描く作品でしたが、リハーサルを通じてキャストの間に一体感が生まれ、「脚本の枠を超えて」アドリブとセリフの境目が分からないほどだったとイトウさんは述べました。

内海さんも、カットがかからずに会話が自然と続けられたのは、監督が温かく見守ってくれていたからだと感じたとし、自由にやらせてもらえたと語りました。
キャスティングの裏側と「ビジョンを超えていく」演出哲学
外山監督は、キャスティングについて、俳優たちが持つ個性と作品にもたらす空気感を重視したと説明しました。星乃さんについては、中学2年生の時に初めて会ったが、「完成が鋭く、技術があって、短編『わさび』で主演した芳根京子さんを撮った時に感じたものと似た将来性を感じた記憶があると述べました。遠藤さんについては、「色気がすごかった」と評し、何気ない暮らしの中でも「この人に惹かれるなら無理もない」と思わせるような説得力を持たせてくれる人を探していたと述べ、遠藤さんと何か一緒にやりたいという思いから『名前、呼んでほしい』の企画が始まったため、念願が叶った撮影だったと喜びを語った。

また、内海さんとイトウさんについては「バランスがすごい良い」とし、「東京の今、まさに今」という空気感を出せる俳優だと感じていたため、作品が支持を得ているのは「この3人だからこそのバランス」だと分析した。
外山監督は、自身の演出方針について、「俳優は監督の頭の中のビジョンを実現するための駒ではない」と断言した。監督は、役を託した人たちとどういったものを作っていくんだろうという、ビジョンを超えていくことに喜びを感じているとし、俳優から湧き立つものをきちんと見ていたいという思いで撮影に臨んでいるため、自由な表現を促していると説明した。
役柄への深いアプローチ:リアリティと共感の追求
登壇した俳優陣は、自身の役柄をどのように作り上げたかについて、内面的な葛藤を明かしました。
星乃さん(『はるうらら』ハル役)は、ハルという役は自分に近い性格で重ね合わせやすかったが、私生活で経験がない父親と会うシーンでは、あまり素直じゃないハルちゃんをどう表現するかを深く考えて演じたと述べた。

遠藤さん(『名前、呼んでほしい』涼太役)は、妻を持つ女性(田中麗奈さん)と恋人関係にある涼太という役柄に対し、客観的に演じるべきか、寄り添って演じるべきかを熟考した結果、観客に「こういうことが溢れているのかも」というリアリティと共感を持ってもらうため、涼太のキャラクターに寄り添って演じることを意識したと語った。

内海さん(『forget-me-not』ミカ役)は、常連客の君島がなぜミカに惹かれたのか、ミカの魅力を探る中で、彼女を社会に飲まれながらも、君島さんに寄り添える光を持った明るさを持つ子として演じるアプローチをとり、君島との関係を通じてミカが大人に成長していく様子を表現しようとしたと説明した。

イトウさん(同エリ役)は、この作品が3人の関係性で成り立っていると感じていたため、台本を読んだ時やリハーサルで感じた「しっくり来た感覚」を頼りに、台本に書かれていない日常の会話などを想像して役作りをしていったと述べた。

「東京予報」に見るロケーションの意図と短編制作の哲学
監督のキャリア初期作『此の岸のこと』から最新作『東京予報』に至る中で、スポットライトを当てる主人公をどのように決めているのかという質問が出ました。
外山監督は、その時々で「今これを自分が撮るべきだ」と感じたことが題材として現れるとし、短編映画にはそれを撮る「瞬発力」があると述べました。例えば、監督自身がガールズバーに行ったことがなくても、その子たちを撮りたくなる衝動がその瞬間に現れるのだという。
また、今回上映された短編作品は、すべて学生が撮るのと全く同じスタンスで制作され続けている自主映画であると明かしました。監督は、道路使用許可を自ら出しに行くなど、手作りで作るということが自身の制作の根本にずっとあるため、短編を取り続けている理由もそこにあると説明した。
ロケーション選択の意図について監督は、「現代の東京を描こう」と考えたが、観光地や「いわゆる東京を代表するようなところ」(新宿、渋谷など)は避け、そこから「少し外れたところ」で「まっすぐ生きてる人たち」を描くために場所を選んだと説明しました。遠藤さんは、自身が出演した『名前、呼んでほしい』の阿佐ヶ谷の商店街での撮影に触れ、監督の東京を軸から外れた角度で捉える切り取り方が、この短編集に「とても合っていた」と感想を述べました。
閉会の辞:短編を「お休み」しつつ、観客に感謝
外山監督は、2010年の『此の岸のこと』から一挙に作品を観てもらえたことに感謝を述べました。監督は現在、「短編をお休みして長編に向かう時期に来ているが、また機会があれば短編も撮りたい」という思いを表明した。最後に、観客に対し、今日の感想をSNSなどで教えてほしいと呼びかけ、この「チャレンジングな企画」を設けてくれた映画祭に感謝を述べ、トークセッションを締めくくった。












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