グッドワン

映画『グッドワン』試写会でゆっきゅんと児玉美月が語る、17歳の沈黙と「いい子」の脱却。「石」に込められたもの

 2026年1月16日の日本公開に先立ち、映画『グッドワン』のプレミア試写会が1月6日、東京・渋谷のユーロライブで開催された。イベントには「DIVA」のゆっきゅんと映画批評家の児玉美月さんが登壇した。インディア・ドナルドソン監督の長編デビュー作となる本作は、17歳の少女と父親、その友人の3人によるキャンプ旅行を描いた物語だ。トークでは、劇中の「沈黙」や「違和感」、そして「いい子」という呪縛からの解放を巡り、鋭くも共感を呼ぶ考察が展開された。

グッドワン
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 冒頭、児玉さんは本作について、監督が17歳の頃の自身のために書き始めた物語であることに触れ、「10代の頃の自分に見せてあげられていたら、もう少し息がしやすくなっていたかもしれない」と語り、あらゆる世代の心に響く作品であると強調した。ゆっきゅんは、自身の10代を振り返りながら、「これくらいの『つまらなさ』がすごいあった」と共感を示し、派手な展開ではなく、主人公のサムが「黙っていたり、何かを聞いていたりする」時間が続く点に、当時のリアルな空気感を見出したと語った。

 物語は、17歳のサムが父クリスとその親友マットと共に森へ入るところから始まる。一見、穏やかな「癒やしキャンプ映画」のように見えるが、児玉氏は焚き火のシーンでその認識が一変したという。食事作りを任されたり、サムだけが床で寝ることになったりする描写を通じ、「振り返ると違和感がたくさんあったことに気づく」と述べ、日常に潜む家父長制的な抑圧やケア労働の不均衡が浮き彫りになる構成を指摘した。また、劇中でサムが生理用品を4回も交換するシーンがあることについて、「あくびを噛み殺すような表情も含め、リアリティが素晴らしい」と、主演のリリー・コリアスの繊細な演技を称賛した。

 トークの焦点は、クライマックスにおけるサムの行動へと移った。父と友人の会話に対する違和感を募らせたサムが、最終的にとった行動について、ゆっきゅんは「無言の抵抗」と表現した。サムが父のリュックに大きな石を詰め込むシーンについて、ゆっきゅんは「言葉で訴えかけても聞き流された後、激しい口論になるのではなく、あの『岩』のような石を詰めることで表明した」と分析。それは、ヘラヘラと会話に参加して「いい子」を演じる必要はないという、彼女なりの拒絶の示し方だったと語った。

 児玉さんはサムが自ら車の運転席に座るシーンに着目し、「この映画の美点」と評価し、自分の人生の操縦桿を父親には委ねないという意思表示として読み解いた。また、監督が過去の短編作品で一貫して社会的な規範から外れた「悪い女の子」を描いてきたことに触れ、本作もまた、社会から押し付けられる「いい子像」を切り崩す試みであると解説した。

 最後にゆっきゅんは、サムが一人になった瞬間の森の風景について、「自分の中にある抑圧や、他人からの抑圧から抜け出した時、画面が清々しく見えた」と振り返った。大人の理屈や都合に沈黙を強いられてきた少女が、言葉にならない「石」という重みを他者に預け、自らの足で歩み出す姿は、現代を生きる観客に静かなカタルシスを与えたようだ。


映画『グッドワン』

監督・脚本:インディア・ドナルドソン 
出演:リリー・コリアス ジェームズ・レグロス ダニー・マッカーシー
2024年/アメリカ/英語/89分/2.00:1/5.1ch/カラー/原題:Good One/日本語字幕:堀上香/
提供:スターキャット/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム 
©2024 Hey Bear LLC. 
公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/goodone/

2026年1月16日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー

この記事を書いた人 Wrote this article

Hajime Minamoto

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