枯れ木に銃弾

75歳の新人・司慎一郎監督『枯れ木に銃弾』公開記念舞台挨拶 鷲田五郎・田所ちさと語る「シニア・ノワール」の熱量と生涯映画監督宣言

2月21日(土)、東京・下北沢のシモキタ-エキマエ-シネマK2にて、映画『枯れ木に銃弾』の公開記念舞台挨拶が行われた。登壇者は、75歳にして本作で長編商業デビューを果たした司慎一郎監督と、主演を務めた鷲田五郎、田所ちさの3名。当初1週間の公開予定が口コミで評判を呼び3週間に延長、連日満席が続く異例のヒットとなっている。熱気溢れる会場で、監督らが「シニア・ノワール」に込めた情熱と、ハンガーを使った自主練習など過酷ながらも温かかった撮影秘話を披露し、会場を沸かせた。

(C)1st Generation

冒頭、司会者から紹介を受けた司慎一郎監督は、満席の客席を見渡し、公開期間が延長された喜びと共に「3連休の真ん中(※実際は、3連休の初日)にお越しいただき感謝申し上げます」と深々と頭を下げた。高校時代からの夢であった映画監督の道を、75歳にして実現させた司監督。「シニアの1丁目1番地に立った今だからこそ見える風景、分かったことがある」と語り、人生の集大成として本作で勝負をかけたことを明かした。

本作は、社会から孤立した高齢者夫婦が理不尽な世の中に抗う姿を描いた「シニア・ノワール」作品だ。主人公の喜一郎を演じた鷲田五郎は、自身と同世代の役柄について「集団就職で上京し、必死に働いてきたのに報われない。老人には冷たい社会への怒りが脚本から伝わってきた」と共感を寄せた。また、妻のあかねを演じた田所ちさは、脚本を読んだ際に「監督の思いが溢れすぎていてプレッシャーを感じた」と告白。しかし、撮影では「鷲田さん演じる喜一郎を信じてついていけば、自然と夫婦に見えるはず」と確信し、役作りを超えた信頼関係で夫婦役を演じきったと振り返った。

撮影現場の裏話として会場の笑いを誘ったのは、鷲田さんによるアクション練習のエピソードだ。劇中で猟銃を構えるシーンがある鷲田は、自宅アパートで近所迷惑にならないよう、一人カラオケボックスにこもり、ハンガーを猟銃に見立てて発砲の衝撃や叫び声を練習していたという。これには司監督も「今初めて聞きました」と驚きの表情を見せ、その役者魂に感動していた。一方の田所さんも、血糊を浴びるシーンのために自宅の風呂場で「死に方」の練習を繰り返したと語り、5日間という過酷な撮影スケジュールの中で、キャスト陣が体当たりで挑んだ様子が浮き彫りとなった。

イベントの終盤、今後の展望を問われた司監督は「死ぬまで毎年1本、映画を作り続ける」と力強く宣言した。すでに4月には次回作のクランクインを控えており、さらにその次の作品の取材も始めているという。最後に監督は、本作の続編となる「シニア・ノワール第2弾」の構想があることも明かし、観客へ熱いメッセージを送ってイベントを締めくくった。


映画『枯れ木に銃弾』


STORY
東京の下町で暮らす74歳の喜一郎と62歳の妻・あかねは、静かに貧しい老後を送っていた。治療費で貯金を失い、社会からの冷遇と生活困窮の中で、「価値のない人間」とまで言われ絶望するふたり。最後の希望として、喜一郎とあかねは亡き父から受け継いだ猟銃を手に、富裕層の家を襲撃するが、計画は思わぬ惨劇へと変わる。逃亡の末に辿り着いたのは、かつての憩いの場所・銭湯。血まみれの身体を洗い流し、もう一度「人間」として戻ろうとするふたりだったが、運命は彼らに最後の選択を迫る——。これは、“老い”と“怒り”と“愛”を抱えたふたりの、破滅と祈りの物語。

シモキタ-エキマエ-シネマ K2 にて、2026年2月20日(金)から上映中

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Hajime Minamoto

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