映画『藍反射』の舞台挨拶が4月5日、大阪市北区のテアトル梅田で行われた。東京での公開から約1か月を経ての関西上映となり、主演の道田里羽、出演の井上拓哉、監督の野本梢、企画・プロデュースの千種ゆり子が登壇した。本作は早発閉経や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という女性の身体の悩みをテーマにしながら、人間関係のすれ違いやコミュニケーションの重要性を描いた作品である。当日は、作品に込められた強い思いや、登場人物のリアルな心理描写、そして撮影当日に結末が変更された制作の裏側などが詳細に語られた。

■自身の経験と長く伝えるための「映画」という選択
本作の企画は、千種自身が26歳で早発閉経の診断を受けた経験が出発点となっている。気象キャスターとして活動していた千種は、当初Webメディアで自身の経験を発信し大きな反響を得たが、一時の盛り上がりで消費されてしまう感覚を抱き、課題を長く伝え続ける方法として映画という媒体を選択した。その思いを託したのが、高校時代にサッカー部で苦楽を共にした同級生である野本監督だった。野本監督は、身近な友人が苦しんでいたことにショックを受け、啓発にとどまらず、まずは彼女が向き合ってきたことを広く知ってもらいたいとの思いからメガホンを取った。

■すれ違う男女のリアルな描写と演出
劇中では、道田演じる主人公・はるかがPCOSと診断される。道田は、自身の思い描いていた将来の家庭というレールが崩れそうになる漠然とした怖さを繊細に表現したと語った。一方で、パートナーである誠治役の井上は、仕事の重圧の中で「体外受精」という言葉に余裕をなくし、二人は衝突してしまう。井上は撮影当時、自身の疲労感と役柄の抱える空気に乗れない「違和感」が重なり、それがすれ違う男女のリアルな空気感を生み出したと振り返った。また、千種が5つの病院を回ってようやく診断に至った経験から、セカンドオピニオンの重要性も作中に反映されているほか、誰にも言えなかった思いを綴った千種の非公開のSNSアカウント(鍵垢)の日記も、脚本の感情描写に深く息づいている。
■当日に変更されたラストシーンの真意
舞台挨拶の終盤では、ラストシーンについての重要な裏話が明かされた。当初の台本では、疾患を抱える女性同士が連帯して生きていく結末が予定されていた。しかし、野本監督は「女性同士が連帯して男性や他の人間関係から離れていかなければならないというメッセージになってしまうのは違う」と考え、それぞれの未来へと進んでいく形に撮影当日に変更を申し出たという。演出面でも、常に見下ろすような位置から話していた誠治との対峙関係とは対照的に、新しいパートナーとは同じ方向を向いて横並びになるようカメラワークや椅子の配置が工夫されていることが語られ、観客の関心を惹きつけた。
■知ることで優しくなれる社会を目指して
最後の挨拶では、登壇者それぞれが作品を通じたメッセージを送った。井上が「知らないことが悪いのではなく、知ることで得することが多い。少しでも優しい人間が多くなれば」と呼びかけると、道田も「コミュニケーションを取り続けることは本当に愛だ」と続いた。野本監督は、この映画が将来の選択肢が減らないためのきっかけになることを願い、千種は啓発ムービーの枠に収まらない映画としての高い完成度と、パンフレットによる詳細な医療情報の補完をアピールし、和やかな雰囲気の中で舞台挨拶を締めくくった。

