猫を放つ

制作に7年を費やした映画「猫を放つ」公開2日目舞台挨拶。志萱監督、藤井草馬、村上由規乃、望月めいり、古矢航之介、登壇キャストが想いを語る

制作に7年を費やした映画「猫を放つ」公開2日目舞台挨拶。志萱監督、藤井草馬、村上由規乃ら登壇キャスト5名が秘話を語る

志萱大輔監督の初長編作品となる映画「猫を放つ」が公開され、上映2日目となる劇場で上映後舞台挨拶が開催された。この日のイベントには、志萱監督をはじめ、モリ役の藤井草馬、アサコ役の村上由規乃、チカ役の望月メイリ、古矢役の古矢航之助ら5名が登壇した。本作は劇中の過去の場面に実際の7年前の映像素材をそのまま使用するという斬新な構成が特徴であり、完成までには7年という長い歳月が費やされている。舞台挨拶では、監督とキャスト陣が長きにわたる制作の裏側や作品への思いについて感慨深く語り合った。

猫を放つ

7年の歳月がそのまま映画の記憶へと結実
イベントの冒頭、志萱大輔監督は一本の映画を作るために約七年もの時間をかけたことに触れ、初日を経てようやく一つの区切りを迎えた喜びを観客に伝えた。本作は二〇一八年に短編映画として撮影が開始されたものの、現場で生まれた脚本にはないアイデアが当時の編集では表現しきれず、一度制作が止まってしまったという。その後、二〇二四年に撮影が再開された際、過去に撮影した素材そのものに距離感が生まれ、制作期間の七年という現実の時間がそのまま映画の中に「記憶」として流れ込む特異な作りになったと制作の経緯を明かした。

空白の期間を経て深まる役への理解と関係性
制作が止まっていた空白の期間は、俳優たちにも大きな影響を与えた。

モリ役を演じた藤井草馬は、撮影の合間に監督と頻繁に会って話し合いを重ねていたと語る。モリが芸術に取り組んでいくという役柄の変化が、実際に音楽活動を行う自身の心情とリンクし、無理に表現を作るのではなく、自身が抱いていた等身大の葛藤をそのまま作品に落とし込むことができたと振り返った。

アサコ役を演じた村上由規乃は、二〇一八年の過去パートの撮影当時は初対面だったものの、その撮影を機に関係性が深まり、現在パートの撮影では言葉を交わさずとも互いの意図が分かるようになっていたと当時の現場の空気感を語った。また、七年前にその時の心と体で存在した時間が画面に残っていることの喜びを語り、時間を置いてから当時の芝居の真意に気付く瞬間もあったと明かした。



古矢役を演じた古矢航之助は、大学時代から共に作品を作ってきた仲間たちがこうして報われている現状に喜びを滲ませた。

擬似的な青春の記憶とタイトルに込められた思い
チカ役を演じた望月メイリは、撮影の再開によってアサコに再会できることが、役としても自身としても本当に楽しみだったと振り返った。「覚えのない青春が自分の中に作られ、過ごした時間が本当に愛おしい」と、長期間の撮影が生み出した不思議な感覚と作品への愛着を語った。



また、印象的な「猫を放つ」というタイトルについて問われると、志萱監督は「記憶」を猫に例え、ふとすり寄ってきたり離れていったりする存在から少しずつ離れ、楽になっていくようなニュアンスを込めたと語った。
藤井は、現在の状態から放たれて前に進みたいという切実な思いとして解釈したと述べた。村上は深い意味は考えず、志萱監督らしいタイトルだと納得していたと笑顔を見せた。最後に監督は、映画は見てくれる人がいて初めて存在するものだと観客への深い感謝を述べ、温かい雰囲気の中で舞台挨拶は締めくくられた。


▼劇場情報

渋谷ユーロスペース
http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000963


映画「猫を放つ」

監督・脚本:志萱⼤輔
出演:藤井草馬、村上由規乃、谷口蘭
望月めいり、宮原尚之、カトウシンスケ、菅原大吉、古矢航之介、佐藤ケイ ほか
プロデューサー:板⾕洋
撮影:平井諒、三代郁也 照明:颯輝 サウンドデザイン:荒川翔太郎 録⾳:庄野廉太朗
アートディレクター:Rak ⾳楽:soma
制作プロダクション:HUT Pictures
配給・宣伝:イハフィルムズ
英題:Leave the Cat Alone
2025年/ステレオ/カラー/1.85:1/102分

公式サイト
https://hutpictures.jp/Leave_the_Cat_Alone/

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Hajime Minamoto

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