志萱大輔監督の初長編作品となる映画『猫を放つ』。休職中の音楽家と写真家の妻のすれ違い、かつての友人との再会を通し、過去の記憶と現在地を見つめ直す本作は、実際に7年前に撮影された映像を過去のシーンに使用する斬新な手法で制作されました。完成までに費やされた7年という空白の時間が、作品や俳優たちに何をもたらしたのか。公開を記念し、志萱大輔監督、藤井草馬さん、村上由規乃さん、望月めいりさん、古矢航之介さんの5名全員に、長きにわたる制作の経緯やタイトルに込められた思いをたっぷりと語っていただきました。

■ 映画「猫を放つ」 監督、キャストインタビュー
Q1. 本作と7年という月日について
ー:本作は制作に7年という月日が費やされていますが、どのような経緯で撮影が進んでいったのでしょうか。皆さんのご参加のきっかけも含めて教えてください。
志萱大輔監督:最初は村上さんと映画を作りたいというところから始まり、藤井さんや望月さんにお声がけして、中編の予定で撮影をスタートしました。しかし、現場で生まれたアイデアが当時の編集ではうまく一つの時間軸で表現しきれず、一度制作が止まってしまいました。再び撮り出そうとした時には、昔撮っていた素材が文字通り「過去の記憶」になっていたという経緯です。
藤井草馬:僕は一番最初の中編を撮ろうとなった時に、「初めまして」と参加しました。ただ、7年という間が空いてはいますが、監督とはその間も普通の友人として頻繁に会って一緒に時間を過ごしていたので、撮影が再開するにあたっての苦労や大変さはあまり感じませんでした。
村上由規乃:私も2018年の撮影当時は皆さんと初対面だったのですが、その撮影を機に仲良くなりました。7年の空白期間にも友人としての時間があったからこそ、現在パートの撮影では言葉を交わさずともお互いの意図が分かるようになっていました。
望月めいり:私も当時から皆さんと知り合いではあったので、7年というリアルな時間が経って、またアサコたちと作品の中で時間を過ごせるということが、単純に喜びとして大きかったですね。
古矢航之介:僕は現在パートからの追加撮影での参加になりました。監督とは大学時代からの縁で過去作にも出させてもらっていたので、皆さんが作品を作っているのを小耳に挟んでいて、今回お声がけいただいた時は率直に嬉しかったです。
Q2. 7年間の経過を踏まえて、考えたこと
ー:7年という期間を踏まえ、演じるにあたってご自身の現在地や役への向き合い方など、考えたことはありますか。
志萱大輔監督:7年が経つ中で、映画自体も僕自身も変化していきましたし、俳優たちも見た目などが変わっていきました。想定していなかった方向に進み、そのリアルな時間が経ったこと自体がそのまま映画に流れ込む特異な作りになったと考えています。
藤井草馬:普段から脚本の話を聞いていて、行く先が決まっていなかった過去の話から、芸術に触れ合いながら社会に出て感じる生きづらさみたいな事も物語に加わってきました。僕自身も実際に音楽をやっているので、現代パートでは自分が感じていた事に似た葛藤を役として落とし込めたら良いなと思っていました。
村上由規乃:アサコの視点で見ると、東京でチカちゃんに会い、たまたまモリと再会して散歩をし、自分の居場所に帰っていくという一日の話だと捉えていました。でも、離婚届を出しに行く前やシュークリームを食べるシーンなどでは、どうしても過去のチカちゃんたちと過ごした時間を思い出してしまう感覚がありました。
望月めいり:皆と再会をして、本読みでアサコの声を聞いた瞬間に、「そうだ、このトーンとテンポだ」と当時の記憶が一気にフラッシュバックしてきて、すっと役に通じるものを感じました。
古矢航之介:7年を経て再会した時、皆がそれぞれの分野の現場で経験を積んで活躍してきていて、集まった時にはプロとしてビシッとやるべきことをやっていたので、その姿がとても頼もしく感じられました。
Q3. 撮影時のエピソード
ー:撮影現場でのエピソードや、特に印象に残っていることを教えてください。
志萱大輔監督:現在パートを撮る時に、藤井くんが実際に音楽活動で使っている自分の機材やギターを使って、自らの曲を作っている過程を映画の中に入れたいと思い、そのシーンを撮影したのが印象深いです。
藤井草馬:まさに自分がどうやってその曲を生み出したのか一番分かっているので、自分の内面で起きたことを役に落とし込めたのがすごく楽しかったです。過去パートをのびのびやっていたのに対して、現在のモリは精神的にうつうつとしていてヒリヒリする雰囲気があり、その違いを演じるのも印象的でした。
村上由規乃:過去パートで、閉店したスーパーのバックヤードで撮影したシーンがとても印象に残っています。寒さや冷蔵庫の匂いなどリアルな感覚があって、ちょっとした心霊現象みたいなことも起きたりして(笑)。過去のシーンは本当に楽しかったです。
望月めいり:古矢くんとの短いワンシーンの中で、どうやって恋人としての関係性を見せるか、現場で「バッグを閉めてあげようか」などと細かいやり取りを話し合いながら作っていったのが印象的です。
古矢航之介:自主映画の延長のような同窓会みたいな空気になるのかなと思いきや、現場は撮影スタッフも含めてプロとしての緊張感があり、しっかりと作品に向き合っている空気がとても良かったです。
Q4. タイトル「猫を放つ」について考えたこと
ー:本作のタイトル「猫を放つ」について、皆様はどう解釈し、何を感じられましたか。
志萱大輔監督:脚本ができる前からこの言葉を置いて作っていました。明確なきっかけはないのですが、記憶というものを猫に例えていて、ふとすり寄ってきたり離れていったりする存在から少し離れて、荷物を下ろして楽になるようなニュアンスを込めています。
藤井草馬:僕も、関係を断ち切るというよりは、自分の中で重荷になっていたものを少し下ろして軽くなる感覚だと思っていました。内面的な気持ちみたいことを猫に例えるのかなと感じました。
村上由規乃:私は最初は深い意味をあまり考えていなくて、ただ志萱監督らしい響きのフレーズだなと勝手に納得していました。でも今、皆さんの話を聞いて「確かに!」とすごくすっきりしました。
望月めいり:7年前はアサコが猫っぽいなと思っていたんです。でも年月を経て、友情ゆえの嫉妬や憧れといったものを自分から手放し、取捨選択をして身軽になっていく、そういう変化のイメージなのかなと解釈していました。
古矢航之介:僕も皆さんの解釈を伺ってとても腑に落ちました。人それぞれが抱える手放したい記憶や感情を「猫」として捉えることで、観る人にとっても自分事として響く素晴らしいタイトルだと感じています。
Q5. 見どころと映画を見る方へのメッセージ
ー:最後に、これから映画をご覧になる方へのメッセージと見どころをお願いします。
志萱大輔監督:リアルな時間の流れが一本の映画の中に入っているところを見てほしいです。強いお酒のような感じではなく、映画館を出たあとの日常や天気などと一緒に、後になってじんわりと心に来るような感じで楽しんでいただけたらとても嬉しいです。
藤井草馬:作られたセリフではなく、本当の日常のやり取りに聞こえてきたら嬉しいですね。ご自身の本当の日常に焦点が当たるような感覚で楽しんでもらいたいです。
村上由規乃:言葉の余白や、登場人物が見ている景色を感じてもらいたいです。私にとって過去の時間はスタート地点ですが、お客さんからすると「現在の時間軸の中の過去」になるので、その見え方の違いも面白いと思います。
望月めいり:観る方とは違った青春の時間がこの映画の中で作られていますが、観る方の記憶とリンクする部分がきっとあると思います。ご自身の生活や思い出を思い返すきっかけになったらいいなと思っています。
古矢航之介:大学時代から共に作品を作ってきた仲間たちが、7年の歳月をかけてこうして一つの映画を完成させ、報われている現状が本当に感慨深いです。観客の皆様にも、この作品に込められた長い時間と熱量を感じていただければ幸いです。
▼劇場情報
渋谷ユーロスペース
http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000963
映画「猫を放つ」
監督・脚本:志萱⼤輔
出演:藤井草馬、村上由規乃、谷口蘭
望月めいり、宮原尚之、カトウシンスケ、菅原大吉、古矢航之介、佐藤ケイ ほか
プロデューサー:板⾕洋
撮影:平井諒、三代郁也 照明:颯輝 サウンドデザイン:荒川翔太郎 録⾳:庄野廉太朗
アートディレクター:Rak ⾳楽:soma
制作プロダクション:HUT Pictures
配給・宣伝:イハフィルムズ
英題:Leave the Cat Alone
2025年/ステレオ/カラー/1.85:1/102分
公式サイト
https://hutpictures.jp/Leave_the_Cat_Alone/
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